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戦時中の「スパイの罠」と「日本の生産性が低い理由」が一致しすぎて驚かされる話

日本の生産性の低さが、長年に渡り話題になっています。
2020年の日本生産性本部が行った「労働生産性の国際比較 2020」調査によれば、先進国7カ国で1970年以降ずっと最下位だそうです[1]。
米国の6割程度、フランスやイタリアよりも低い数字です。

しかし、気になるのが、なぜずっと低いままなのかということです。

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実は少しずつ上がっている

 

数字を読み解いてみると、実は日本の生産性は、少しずつですが上がってきています。
2020年の生産性調査によると、以下のような記述があります

日本の生産性水準は 2 年連続で上昇しているが、順位でみると OECD に加盟する主要 31 カ国の中で 16 位にとどまっている。
[1]日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2020」https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf

生産性を改善するためのノウハウは、世の中に溢れています。
日本の会社もそれらを取り入れて、少しずつ状況改善に取り組んでいると言えるでしょう。しかしそれでも、外国に比べてここまで低いのです。

これはどういうことでしょうか。

一つのヒントとして、おそらく、日本人が考える「生産性」と海外での「生産性」の尺度が違うことがあるかもしれません。

そもそも、「生産性が高い」とはどういう状態なのか。ピンとこない管理職の方も多いでしょう。
であればいっそのこと、「生産性が低いとはどういうことか」を海外から学んでみてはいかがでしょうか。

 

旧CIAのマニュアルに見る「生産性の下げ方」

 

そんなときに頭に入れておいて損がないのが、第二次世界大戦中にCIAの前身のスパイ組織が作った「サボタージュ・マニュアル」と言われる文書です。
日本のメディアでも一時話題になっていたので、知っている人も多いかもしれません。

これは世界大戦中、米国が敵組織を混乱させるために作成した秘密の現場マニュアルで、ハーバード・ビジネス・スクールのページで一部公開されています。
どうやったら、人々の士気が下がり、生産性が落ちるのか、スパイたちがとった行動をみると驚かれるかもしれません。
一部を簡単に訳してみます。

第二次世界大戦中、米国中央情報局(今のCIA)の前身となる組織は、「市民妨害工作員」が敵組織の活動をどのように混乱させられるかーーを研究。妨害のための、秘密の現場マニュアルを作成しました。

マニュアルには、物理​​的な損傷に加えて、内部の労働者に対し、「人間の妨害」戦術で生産性を深刻に妨げる可能性を記載しています。
「人間の妨害」戦術とは、意図的に密かに不適切な決定を下したり、非協力的でいたりすることです。(翻訳は筆者)
[2]
Are You Sabotaging Your Own Company?(Harvard Business Schoolのウエブより)https://hbswk.hbs.edu/item/are-you-sabotaging-your-own-company

これはスパイたちが、どうやって内部の労働者たちの「生産性」を深刻に妨げられるか? を紹介したマニュアルなのです。

 

マニュアルの具体的な内容は?

 

このマニュアルの具体的な内容を読んでみましょう。簡単にまとめると、こんな感じです。

・「注意深さ」を強調し、「拙速な判断をして恥をかかないように意見する」
・コミュニケーションでは毎回「正確な言い回し」にいちいちこだわること

それから、指揮系統をやたら厳しくするのも一つの方法です。

・命令系統を一つにして、意思決定を早くするための抜け道を許さない
・全ての事項を委員会に照会させ、委員会の人数を増やす

長い会議を増やすのも、生産性を下げるために大いに寄与します。

・「長いスピーチを頻繁に行う」
・「関係ない問題を頻繁に持ち出す」

また、「決定事項を蒸し返す」戦術も入っていました。

日々の業務では、こうしたことが「生産性の低下」につながります。
ごく一部ですが、思い当たる節があれば、「生産性を改善できる」かもしれません。

 

いつの間にか大量に失われる「時間」に気を付ける

 

長いミーティング、煩雑なマニュアル、判断の保留ーーこのにハマっている日本企業は多いのではないでしょうか。

実は、東南アジアの企業から「日本企業に対する不満」を聞くと、

・長すぎるミーティング
・煩雑なマニュアル
・判断が遅い

ーーに関するクレームが非常に多いのです。

一例が、海外の企業に「見学」「ご挨拶」と銘打って、大勢でやってくる「表敬訪問」です。

日本のビジネスマンからしたら、
「お近づきになって、お茶でもしながら距離を縮めて情報交換しましょう」
というところですが、現地のビジネスパーソンからは
「なんの意味があるのかわからない」
「時間の無駄だ」
と評判が悪いのです。

また、よくある不満が、
「せっかくビジネスで実のあるミーティングをしても、『持ち帰って上司と相談します』と言ったまま、保留になるケースが多い」
というもの。

現地会社同士のミーティングでは、その場で合意が形成され、次回ミーティングでは契約内容に入ることが多いのです。

ところが、自分で判断せずに「いちいち上司のお伺いを立てる」慣習がある会社では、判断が遅くなります。
「はじめから、現場で判断できる人材を会議に出して欲しい」というのです。
ある程度は現場の判断に任せた方が、素早く仕事できることもあります。

ある日本企業で働くビジネスパーソンは、
「朝のミーティングで本社に行く必要があるため、本来なら朝イチで直行したい客先があるのに、行けない」
とこぼしていました。
この会社の朝のミーティングは形式的なもので、お互いの本日の予定を確認するだけ。
「それならば、チャットでやれば充分なのでは」
と彼はいいます。

会議は、設置したときには意義があっても、時間と共にその価値が薄れていくことがあります。定期的に「本当に必要か」を見直した方が良いのです。

 

完璧主義は良し悪しである

 

日本のサービスは丁寧できめ細かいことで知られます。外国人はここに感激するのです。

しかし、必要以上に部下に「注意深くするように」促し、やたらとマナーや規則を増やしすぎることで、生産性が妨げられているかもしれません。

昨今は、メールやチャットでさらに「新しいマナー」が増えている職場もあります。

東南アジアではチャットの顔文字で顧客との仕事が進むことも少なくありません。

日本人からみたら「ふざけているのか?」と思うかもしれませんが、お互い短いやりとりで誰も怒らずに進めば、それだけ効率が良いのです。

日本企業から渡された「マニュアルが長すぎる」「企画書が長すぎる」という不満も少なくありません。

主義も良し悪しです。
サービス業ならともかく、箸の上げ下ろしまで細かくチェックされるような環境では、人々は萎縮して、失敗しないように時間を使うようになります。

もし、あなたの職場がこんなふうになっていたら、それはすでに「生産性低下の」にはまっていないか、検討する価値があります。

ルールは多分、組織の数だけあります。
時代によって変わるので「絶対に正しいもの」があるわけではないのです。
自分で作った「スパイの」にハマっていないか、見直してみる必要があるかもしれません。

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参照
[1]日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2020」
https://www.jpc-net.jp/research/assets/pdf/report_2020.pdf
[2]Are You Sabotaging Your Own Company?
(Harvard Business Schoolのウエブより)
https://hbswk.hbs.edu/item/are-you-sabotaging-your-own-company

 

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