企業にとってのコンプライアンスの重要性が叫ばれる中、社内全体にコンプライアンスに対する意識を植え付けるためには、充実した社内研修を行うことが非常に重要です。
日々の業務に追われてコンプライアンス意識が希薄になりがちな従業員にとって、社内研修は業務への取り組み方を見直す良い機会となります。
コンプライアンスに関する社内研修を実施する場合、外部の事業者に講師を依頼するのが通常です。
その際、委託先の業者をどのように選定すべきかについて解説します。
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目次
コンプライアンス研修の委託先として優れた業者の特徴とは
コンプライアンス研修は、ただ実施すればいいというものではなく、従業員の理解と意識を向上させることに成功してはじめて意義があります。
したがって、コンプライアンス研修の講師派遣を委託する業者を選定する際には、以下の各条件を満たしているかどうかをチェックしましょう。
受講者を意識したわかりやすい説明|セミナー経験が豊富だと
法務・コンプライアンス部門の従業員を対象とする場合などは別として、一般的なコンプライアンス研修の受講者の大半は、コンプライアンスに関して理解が浅いのが通常です。
このような受講者層を想定して、コンプライアンス研修の講師には、専門用語などを極力避けた分かりやすい説明が求められます。
業者が提供している研修講義のサンプル動画などがあれば、事前にそれをチェックしておくと良いでしょう。
また、セミナーなどで人気を博している講師がいれば、知識の浅い受講者に向けて説明をすることに慣れている可能性が高いので、指名を検討しても良いかもしれません。
事例を用いた解説|実務経験の豊富さがポイント
コンプライアンスに関する理論的な説明に終始するようでは、受講者は「自分のこと」として問題を捉えられません。
そのため、実際に受講者自身が巻き込まれそうなコンプライアンス違反の事例を交えた講義が望ましいでしょう。
臨場感を持って事例を用いた解説を行うことができるのは、コンプライアンスや法務に関する実務経験を豊富に有している講師です。
社内研修の講師を選定する際には、講師の経歴や専門分野に着目してみましょう。
きめ細かい質問対応|サービスの内容を確認
講義後に受講者から講師に対して質問をすることが認められれば、受講者のコンプライアンスに対する理解をより深めることが可能です。
講義に割り当てられた時間の範囲だけでなく、その後もメールなどで質問を受け付けるアフターフォローのサービスが、プランに含まれているかどうかを確認すると良いでしょう。
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コンプライアンス研修の委託先候補と得意分野
コンプライアンス研修の委託先候補は、大きく分けて「人材研修会社」と「法律事務所」の2つがあります。
一般論として、それぞれ得意分野が異なるため、自社のニーズに応じて適切な方を選択しましょう。
人材研修会社|コンプライアンスの基礎を幅広く講義
人材研修会社は、研修を専門的に取り扱っているため、講義のカリキュラムが体系化されていることが通常です。
コンプライアンスに関して言えば、意義・ハラスメント・情報管理など、基礎的な事項に関する講義を網羅的に取り揃えているのが特徴といえるでしょう。
法律事務所|法律的な観点を重視
これに対して法律事務所の弁護士が研修講師を担当する場合、法律に関係する領域に特化して、受講者がさらに深い理解を得るための助けとなるでしょう。
「法令遵守」がコンプライアンスの中核的な要素である以上、法律的な観点からコンプライアンスについて理解しておくことは大切です。
たとえば「パワハラ防止法」「個人情報保護法」といったコンプライアンス関連の法律や、会社のビジネスを規制する法律の内容などについての講義は、法律事務所の弁護士の得意分野です。
ただし法律事務所は、普段は弁護士業を専門としていることから、研修講師の業務はあくまでも副次的な業務という位置づけになります。
そのため、必ずしも講師慣れしていない弁護士がアサインされる可能性もありますので、事前に講師候補の弁護士と面談をして、印象を確かめると良いでしょう。
テーマと受講者の属性を考慮して委託先を選びましょう
コンプライアンス研修を人材研修会社と法律事務所のどちらに委託するのが適切かは、研修の目的(テーマ)や受講者の属性に応じて変わります。
人材研修会社に委託した方が良い場合
人材研修会社にコンプライアンス研修を委託した方が適切と考えられるのは、以下のような場合です。
①複数回の研修をワンストップで任せたい場合
人材研修会社の強みは、体系化された研修ラインナップの豊富さです。
コンプライアンス研修をシリーズ化し、複数回の研修で体系的に受講者の意識付けをしたいという場合には、人材研修会社に委託するのが便利でしょう。
②全従業員向けに浅く広く講義してほしい場合
研修を専門に取り扱う人材研修会社は、一般的に受講者にとっての分かりやすさを重視して講義をする意識を強く持っています。
そのため、コンプライアンスの基礎を社内全体向けにさらっと講義してほしいという場合には、人材研修会社の方が分かりやすさの点で勝ることが多いでしょう。
法律事務所に委託した方が良い場合
一方、法律事務所にコンプライアンス研修を委託した方が良いと考えられる例としては、以下の場合が挙げられます。
①法律に関連した研修を単発で依頼する場合
法律に関する専門的な講義については、法律事務所の弁護士に依頼するのが適任といえます。
特に最新法令に関するアップデート講義などは、法律に関する情報を常に収集している法律事務所に依頼するのが良いでしょう。
②法務、コンプライアンス部門などの従業員が受講者の場合
法務部門やコンプライアンス部門の従業員は、すでにコンプライアンスに関する知識と経験を一定以上有しているため、研修から何かを得てもらうためには、レベルの高い講義を展開しなければなりません。
この点、法律事務所の弁護士であれば、知識と経験を活かして充実した講義をしてくれることに加えて、権威付けの面からもメリットがあるでしょう。
③業法により規制されたビジネスを扱う会社の場合
金融業界(銀行、証券、保険など)や不動産業界など、いわゆる「業法」によって規制がかけられている業界では、コンプライアンスをいっそう厳密に意識する必要があります。
こうした業界においては、従業員のコンプライアンスに対する理解度も比較的高いと思われますので、弁護士による法律に依拠した堅めの講義が適していることが多いでしょう。
まとめ コンプライアンス研修を効果的に
コンプライアンス研修を効果的に実施することによって、社内の隅々までコンプライアンスに関する意識が行き届き、会社のリスクを大きく軽減することが可能です。
自社のニーズに応じて、人材研修会社または法律事務所の中から、従業員の理解度を高める分かりやすい講義を展開してくれる業者を選定しましょう。
もちろん、コンプライアンス研修を実施すればそれで終わりというわけではなく、研修後も従業員が共同して、コンプライアンスに対する意識を高め合える環境づくりも大切です。
そのためには、マネジメントから管理職クラスに対して適切に指示を出して、コンプライアンスに関する声掛け・注意喚起が日常的に行われるような社風を作っていく必要があるでしょう。
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