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経営者とはどうあるべきか?あるべき姿を名軍師:竹中半兵衛の生き方に学ぶ

経営者という「生き物」はどうあるべきなのでしょうか。

学校で、国語、算数、理科、社会などの科目の勉強を教わることができても、会社の経営方法は教えてくれません。

そんな中、経営者のあり方を求めて本記事をご覧になっている経営者の方も多いのではないでしょうか。

本記事では、竹中半兵衛の生き方から、あるべき経営者の姿を解説します。

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経営者が愚鈍なら組織は機能しない

19世紀、欧州を広く支配したナポレオンは「一頭の狼に率いられた百頭の羊の群れは、一頭の羊に率いられた百頭の狼の群れに勝る」という有名な言葉を残している。

リーダーが愚鈍であればメンバーがどれほど優秀でも組織は機能せず、また逆にリーダーが優れていればどれほどの寄せ集めでも十分に戦うことができるという意味だが、古今東西、その真理を裏付ける逸話には事欠かない。

日本の戦国時代にこのような事例を求めてみると、あるいは竹中重治(通称:半兵衛)の活躍が、これにあたるかも知れない。

黒田孝高(通称:官兵衛)と並び「両兵衛」と称される、戦国を代表する2大軍師の一人だが、その半兵衛が最初に注目を集めたのは、若干21歳の時だった。

羽柴秀吉の軍師として歴史に名を挙げた半兵衛だが、当時は織田家の宿敵・斉藤家に仕えていた。
そしてその主君は、斉藤義龍から代替わりしたばかりの龍興。

しかし龍興は、家督を継いでも一向に政務を顧みず、酒色に溺れ、その生活態度を注意する忠臣を遠ざけるなど、とても主君の器と言えるトップではなかった。

そのような日々が続く中、半兵衛は、義理の父である安藤守就までも謹慎を命じられたことを機に、お家の存続に深刻な危機感を抱くようになる。

そしてあろうことか、ある夜、手勢わずか17騎を率いて龍興の居城である稲葉山城を攻め落としてしまった。

正確には、半兵衛の奇襲に驚いた龍興が早々に逃げてしまい、そこに安藤守就率いる1000騎を招き入れて占拠に成功してしまうという流れだった。

下剋上の象徴とも言われる斉藤道三から、数えて3代目。

龍興は最終的に織田信長に攻められ家も国も失い、失意の中で人生を終えている。

暗愚な主君が率いる組織は、半兵衛ほどの武将を部下に抱えていてもまるで機能せず、そしてこれほどまでに脆く弱い。

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実体験:経営者は優秀な役員を周りに置きなさい

私は会社の役員だった

話は変わるが、筆者は26歳で初めて会社の役員に就いて以降、組織のNO.2として人生の多くの時間を過ごしてきた。

中でも印象的なトップは、29歳の時から6年間、TAM(ターンアラウンドマネージャー)として支えた中堅製造業の経営者だ。

一代で起こした会社は30期を数え、従業員も800名を数えるなど業界では知られた会社だったが、しかし過剰な設備投資が重しになり、深刻な経営危機を迎えている状態だった。

そんな会社の経営立て直しを期待され、任されたTAMのポジションだったが、あらゆる手段を尽くしても多額の借り入れ負担が重く、根本的な経営の立て直しは見通せなかった。

そこでやむを得ず最後の手段として、私は会社の稼ぎ頭の事業を本体から切り離し子会社化して、その株式を売却することでまとまった資金を得ることを計画した。

そしてビット(入札)方式による売却先を募った結果、同業の大手企業A社とB社が残り、最終的な買収提示額を受ける。

結果、A社は子会社の買収資金として10億円を提示し、対するB社は子会社の買収資金として3億円+親会社(本体)に対し3億円の貸し付けを提示してきた。

いうまでもなく、この条件は全く比べ物にならない。

さらにB社の条件は、時価による転換条項付き社債による貸付条件であったので、少しばかりエクイティに詳しい人であればその下心は容易に想像できるだろう。

「親会社も手に入れる」という意思表示であり、そのための毒まんじゅうを喰わせるという考えである。

そのため私は丁寧に、B社が考えているであろう下心を経営トップに説明し、そして条件的にも全く比べ物にならないので、A社を選ぶよう進言する。

経営トップはこれを受け入れ、A社の東京本社に二人で出向くと先方のトップと握手を交わし、最終的な口頭合意を交わした。

そして次週に正式に書類を整え、また本体同士の事業アライアンスも推し進めるべく両社に専門チームを立ち上げることでも合意し、こうして会社は経営危機を脱する見通しがついた。

「これでやっと、久しぶりに攻めに転じることができる。キミのおかげや。ありがとう。」

「社長こそ、事業売却は断腸の思いであったと思います。よく決断して下さいました。虎の子のこのお金を、丁寧に大事に使っていきましょう。」

そんな言葉をかわしながら、帰りの新幹線の中で経営トップと私は、缶ビールとスルメイカで乾杯した。そしてその場で私はB社に電話を入れ、交渉の打ち切りを告げた。

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経営者トップは必ずしも正しい決断をするとは限らない

その翌日は土曜日だった。

会社は事業の性質上、365日休み無しで稼働しているので私も土曜日に会社に詰めていることは多かったが、なんせ大きな仕事をやり遂げた後だ。

「今週末は久しぶりに、2日間何も考えずに遊ばせて下さい」

と、帰りの新幹線の中でトップに申し入れ、私は朝から心地よい疲労感を自宅で楽しんでいた。
するとそこに、部下から携帯に電話が入る。

「なぜかわかりませんが、B社の社長さんが来ていますよ?今、社長と話してます。」

M&Aのデュー・デリジェンス(会社・事業の精査)には多額の費用と手間暇がかかる。

そのため、おそらくそのグチの一つも言いに来ているんだろう。

すでに結果は出ているのに、B社のような大企業の社長ともあろう人が東京から急遽、無意味な文句を言うために来るとは・・・。

正直、その無意味さに驚いたものの、それに付き合うのもトップの仕事だろう。

わざわざ、NO.2である私も同席して頭を下げる必要があるとは思えない。

そう考えた私は、

「教えてくれてありがとう。まあ、文句の一つも言いたい気持ちもわかるので、いいんじゃないかな。」
「そうですか・・・。だいぶ長時間社長室にこもっているので、少し心配なのですが。」
「まあ、億のお金が動く話だったからね。社長にはしっかりと、頭を下げてもらったらいいよ。」
「・・・わかりました。」

こうして私は特に深く考えることもなく、週末の2日間をのんびりと過ごした。

そして迎えた、翌週月曜日。出社すると早速私は、経営トップから社長室に来るよう内線を受ける。

おそらく、朝っぱらからM&Aの感想戦でも改めて楽しもうと言うのだろう。そんな、脳天気な明るい気持ちで社長室に入った私に、経営トップは開口一番、こう告げた。

「なあ、まだA社とは正式調印してないんで断れるよな?」
「・・・意味がわかりません。何をおっしゃってるんですか?」
「悪いけど、俺はやっぱりB社を売却先に選ぶ。だから、A社に断りに行って欲しいねん。」
「社長、悪い冗談はやめて下さい。口頭合意でも契約は成立するんですよ?両社のトップと担当役員が揃って合意をした事項をひっくり返せると思ってるんですか?」
「そこをなんとかするのが、キミの手腕だろう。頼むわ。」
「社長、あらゆる意味でメチャクチャです。先方は法務担当役員も同席していたことを軽く考えないで下さい。せめて、なぜ決断を変えたのか理由を聞かせて下さい。」

すると経営トップは、土曜日にB社の社長が来社し、話したことをかいつまんで説明した。
ざっと要約すると、

  • 自分たちを売却先に選べば、当社の商品を黒字になるまで買い続け、経営を支えると約束すること
  • 目先のキャッシュフローに困ることがあったら、いくらでも即時、追加融資すること
  • 社長が社長でい続けられるよう、あらゆる支援を約束すること

などであった。それを、経営トップが真に受けて信じてしまい、翻意したということであった。

経営者に必要不可欠だったNo.2の失態

「社長、バカも休み休みに言って下さい。そんな虫のいい条件をまさか真に受けたんじゃないでしょうね?」
「B社の社長がわざわざ東京から、土曜日に来てくれたんやぞ。それだけウチに魅力を感じてるってことや。俺は信じる。」
「では、それを事前に書面にしてもらうようにいいましたか?M&Aの条件として正式に約束を取り付けられるんですね?」
「善意の申し出の全てを、細かく書面にできるわけ無いだろう。キミは人を疑いすぎるねん。」
「・・・社長。転換条項付き社債を含めて、この条件を飲めば本当に会社を失いますよ。絶対にです。」
「もういい、一度決めたことや。キミはA社に謝りに行ってくれ。協力してくれへんのなら、俺一人でB社と契約を進める準備に入る。」
「・・・」

こうして私は本当にA社に一人で謝りに行くことになり、そして当たり前だが、門前払いに近い形で怒りを込めて追い出された。そして経営トップは本当にB社と契約を進めてしまい、私は会社を去ることを決めた。

それから数年後、B社はしっかりと転換権を行使して本体の経営権まで手に入れ、売却した子会社だけでなく本体も、完全子会社として吸収したことを元部下から聞かされた。

当然といえば当然の結果だが、私は組織のNo.2として、経営トップだけでなく800人以上の社員の人生に対し、責任を果たすことができなかった。

経営者はどうあるべきなのか

話は冒頭の、竹中半兵衛の主君に対するクーデターについてだ。
半兵衛は、龍興が余りにもリーダーとしての資質を欠いていることに危機感を感じ、わずか17騎の手勢で主君の城を乗っ取ったのは先述の通りである。

しかし実はその後、信長から破格の条件で城を明け渡し自分の部下になるよう誘いを受けるのだが、これを全て断り、ただちに龍興に城を返し自ら謹慎生活に入る。

その行動の目的は、命をかけて主君を諌め、たった17騎の奇襲でも城が落ちる危機感を肌感覚で知らしめるためだったからだ。いわば、経営トップや組織のために、自分の人生を差し出す覚悟で信念を貫いたということである。

だからこそ、信長や秀吉は半兵衛を自分の部下に欲しがったのだろう。

普通に考えれば、自分の主君に奇襲をかけ、クーデターを起こすようなヤバイやつを重用することなど、とても怖くてできない。

しかしその後、秀吉の部下となった半兵衛はその決断力と行動力を大いに活かし、歴史に残る活躍を重ねたことは、史実のとおりだ。

その才能の片鱗は、若干21歳の頃からすでに、破格の行動力と合わせ滲み出ていたと言うことである。

翻ってみて私は、明らかに間違った決断を下した経営トップに対し、何もできなかった。

その気になれば、胸ぐらをつかんで怒り狂い、改めて翻意させることもできただろう。

その程度のこと、17騎の手勢で主君に夜襲をかけるよりも遥かに容易いことだ。

だが私はできなかった。私にしかできないことであったにも関わらず。

そして城は無意味に陥落し、経営トップは首を取られた。

半兵衛と比較することなどおこがましいことではあるが、これが歴史に残るNo.2と、愚鈍なNo.2の差なのだろう。

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まとめ | 経営者のあるべき姿はNo.2で変わることがある

ナポレオンはトップの立場として経験したことを

「一頭の狼に率いられた百頭の羊の群れは、一頭の羊に率いられた百頭の狼の群れに勝る」

と表現したが、No.2を長く経験した私には、組織運営に関し全く別の教訓がある。

経営トップを狼にできるか羊で終わらせるのかは、No.2の覚悟次第である。

No.2として経営トップを支える取締役諸氏には、その覚悟で組織に対し責任を担って欲しいと思う。そして経営者トップはそんな取締役を捕まえて欲しい。

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