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レヴィンの三段階組織変革プロセスに学ぶ、組織変革を進める上での留意事項とその事例

レヴィンの3段階組織変革プロセスから、変革を進める上での留意事項やその事例を紹介します。

企業が時代の変化を捉えて成長するためには、時に、既存の組織文化を破壊し新しい組織文化を構築することも必要です。しかし、大胆な組織変革には社内の混乱を招き収拾がつかなくなるリスクも付きまといます。こうしたリスクを回避するために、一定のプロセスに則って変革を進めることが重要とも言われています。

では、具体的にどのようなプロセスが必要となるのか、今回は、クルト・レヴィンが提唱した組織変革プロセスについてご紹介します。

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レヴィンの三段階組織変革プロセス

レヴィンの三段階組織変革プロセス

「社会心理学の父」とも呼ばれるクルト・レヴィン(1890―1947年)は、ドイツで生まれ、ベルリン大学で哲学及び心理学の教授を務めていました。しかし、1932年にナチスから逃れるために渡米。その後はアイオワ大学で児童心理学の教授となり、1944年にはマサチューセッツ工科大学にグループダイナミクス研究所を創設しました。

第二次大戦以降の研究により、変革には従来のやり方や価値観を壊し(解凍)、それらを変化させ(変革)、新たな方法や価値観を構築する(再凍結)という3段階のプロセスが必要だとする変革のモデルを提唱しました。その3段階の各フェーズについて詳しくご紹介します。

フェーズ1:解凍

組織を変革するために、レヴィンはまず「今までの組織文化が通用しない」「変えていかなければ会社の経営状態に悪影響を及ぼす」といった現状認識と危機感を社内で共有した上で、「新しい考え方、やり方によって改善していく」といった雰囲気を醸成することを提唱しました。既存の価値観や伝統、方法論などの組織文化を「解凍」し、新たな組織文化への変化に向けての準備を行うということです。

ここで注意するべきとしているのは、こうした変革の「推進力」に対して、現状を維持しようとする「抑止力」が必ず働くということです。今までの価値観を変えるといった変化の「推進力」が大きければ大きいほど、組織内に不安が広がり、その「抑止力」も大きくなります。

このため、経営者は、社員に変化の必要性を理解させると同時に、その変化に対する不安を和らげながら変革を進めてなければならない、とレヴィンは語っています。

フェーズ2:変革

フェーズ1の「解凍」によって変革の必要性などが社内で共有されても、それが認識や議論だけで終わってしまっては「結局何も変わらなかった」といった無力感により、却って企業の成長を阻害してしまう危険性があります。そのため、「解凍」の状況を見極めつつ、早めに次のプロセスに移行する必要がある、とレヴィンは捉えました。

フェーズ2は、新しい考え方、やり方を「学習する」プロセスです。変革の必要性に対し社員個々がどのような役割を果たすのか、果たしていくべきなのかを、社内学習や人材育成プログラムなどにより学習することで、組織内の考え方や行動が少しずつ変わっていくことを想定していると思われます。

フェーズ3:再凍結

さらにレヴィンは、フェーズ2で学習したものを長期間維持するため、「再凍結」として今度は定着化・慣習化させることを主張しました。新しいやり方を単に継続していくことで根付く部分もありますが、指示されたからやるのではなく、新しいやり方で成功事例が出てくることで、手応えを感じることが重要である、というものです。

それにより従業員が納得して行動するため、成功事例が増え、「成功の方程式」が見えてくる、というものです。後は、「成功の方程式」を組織内に広め定着させ、新たな組織文化を定着させる、としています。

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変革を進める上での留意点とは?

変革を進める上での留意点とは?

レヴィンは研究者の立場から、変革に向けたプロセスをこのように整理しました。では組織のリーダーとして、現実の中で変革を実行に移す際に心がけるべき点は何があるのでしょうか。

たとえば、組織の中で認識されているルールの変更によって変革を進めようとするケースです。こうした際、組織の人数規模や変革がゴールとする地点と現状のギャップなどに起因して、ロスが起きてしまう場合もあります。そうした際に必要とされる手順について、レヴィンの三段階組織変革プロセスを用いた実例を交えながら考えていきます。

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レヴィンの三段階組織変革プロセスを基にしたコッターの8段階プロセス

レヴィンの三段階組織変革プロセスを基にしたコッターの8段階プロセス

組織変革のフレームワークには、レヴィンのほかに「コッターの8段階プロセス」という有名なものがあります。コッターの8段階プロセスの内容は以下の通りです。

ステップ1:危機意識を高めるステップ2:変革推進のための連帯チームを作る
ステップ3:ビジョンと戦略を打ち出す
ステップ4:変革のためのビジョンを周知徹底する
ステップ5:従業員の自発を促す
ステップ6:短期的成果を実現する
ステップ7:成果を活かして、更なる変革を推進する
ステップ8:新しい方法を企業文化に定着させる

コッターの8段階プロセスはレヴィンの三段階組織変革をさらに細分化したもので、解凍(ステップ1-4)→変革(ステップ5-7)→凍結(ステップ8 )と合致しています。[4]

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レヴィンの三段階組織変革プロセスを用いた実例

レヴィンの三段階組織変革プロセスを用いた実例

実際にレヴィンの三段階組織変革プロセスに合致する組織変革、あるいは合致させながら進めた組織改革の例をご紹介します。有名企業の改革の例もありますので、是非参考にしてください。

看護の現場における実用例

産婦人科A医院は経営者産婦人科医のBと医師1名および助産師10名の小さな医院です。膨らみ続ける残業手当により経営状態が常に厳しく、経営者である医師Bは世間で産婦人科における「妊婦搬送拒否」事件での訴訟が発生したことに対して不安を募らせていました。経営者は組織改革の意思決定を下し、助産師の能力・経験値アップと大学病院や総合病院との連携強化を表明しました。この時点が「解凍」という時期です。

助産師の能力・経験値アップのために、定期的に助産師を大学病院や総合病院に派遣しました。その間A医院側での人手不足については、病院から逆派遣された医師によって補われるよう医院・病院間で協定を結びました。派遣された助産師の能力アップのおかげで夜勤常駐の人数を削減することができました。また、逆派遣されてきた医師たちの経験の無さや非積極的な態度を嘆く声が聴かれましたが、分娩異常の妊婦を大学病院へ搬送した際、逆派遣された経験がある医師たちの対応が良く、逆派遣に対する反対意見は少なくなっていきました。

また、3キロほど離れた場所にあった産婦人科Bクリニックが医院長の引退により閉院されたことを機に、Bクリニックの患者の70%が産婦人科A医院に流れてきました。多くの患者がA医院を選んだ理由の多くは「助産師の腕が良い」「大きな病院との提携で安心感がある」というものでした。この時期は変革の時期であり、経営状態が上向いてきています。

A医院では大病院との連携が密になったことを好機に、母子に危険が及びそうな分娩は早めに病院へ移すこと・インターン医師の研修生をA医院で受け入れることを協定に盛り込みました。このことにより、医師・助産師の精神的負担は以前より軽くなりました。受診患者数が増加したことにより医師を1名、助産師を3名増員し、一人一人の残業時間が30%カットされ、助産師の退職率が下がりました。また、これまでの業務の見直しを行い、よりミスが少ないチェック体制への変更と無駄の削減を実現しました。この時期はA医院と周辺病院との協定強化、および医院内での業務精査を行うことにより改革前の状態に戻りづらくしており、この時期が再凍結の時期といえるでしょう。

 

ヤフー株式会社の組織開発例

2012年に宮坂氏が前任者の井上氏から社長を引き継ぎ、「脱皮をしない蛇は死ぬ」というニーチェの名言を用い組織改革を明言しました。その当時スマートフォンの急激な利用拡大など、インターネット利用環境の急速な変化に対応するべく新執行体制に移行したのです。この時期が「解凍」という時期です。新リーダにおける組織改革が明言された点がこれにあたります。

移り変わりの大きいインターネット業界において、トップダウン方式の情報伝達は非常に時間の無駄でした。「1on1」と呼ばれる上司と部下が週に一度行う1対1のミーティングを導入し、部下はミーティングの準備として自分の業務の「内省」「考察」「意思決定」が、上司には「傾聴」「コーチングの手法」が必要となりました。この能力を養うため、5000人の社員に対して週に2500時間を必要とし、社員たちの負担となっていました。この間、宮坂氏は1on1の趣旨と重要性を説き続けました。この時期は「改革」の時期です。社員たちに変化を求め、リーダー自らこの改革の重要性を説き、社員たちの改革へのモチベーションを維持し続けました。[5]

この改革が後半に差し掛かった際に、大きくなりつつあった一つ一つの組織をサイズダウンし、現場の自由裁量度を上げました。これと同時に行動規範をより明確にし、現場への混乱を最小限に抑えるよう尽力しています。この時期が「再凍結」の時期です。大きいままではすぐにトップダウン式に戻ってしまうであろう組織サイズをダウンすることにより、小さな組織で各社員の裁量度が上がりやすくしたのです。

2012年以降ヤフー株式会社の収益は伸びつづけています。2012年以降の組織改革で養われた個々の社員のリーダーシップと1on1の手法は、その後の収益増大に大いに役立ったはずです。[6]

 

富士フィルムの組織変革例

2000年を境にデジタルカメラの広がりに立場を追われた富士フィルムは、創業以来の大きな危機を迎え利益が急速に落ち込み始めました。社員のだれもが危惧する中、2003 年に CEO に就任した古森氏が2004 年、2009 年度までの中期計画「VISION75」を発表しました。「富士フイルムを没落より救い出し、2~3 兆円の売上高を持つリーディングカンパニーとして、存続させる」をビジョンを基に、富士フィルムの改革が始まりました。(解凍の時期)

これまで機能別に各地に点在していた研究所を1か所に集め「富士フイルム先進研究所」を設立しました。これにより研究所の垣根を越え、自発的かつ自由にコミュニケーションをとることが可能になりました。また経営的に苦しい中、年間2000億円を研究費に投資し続けたことにより、新しい化粧品に関する技術が開発されました。2007年の化粧品「アフタリスト」販売を皮切りに、2008年には医薬品の販売事業にも着手しています。この時期は改革期と呼んでよいでしょう。

その後CEO自らが先頭に立ち、社内報やイントラネット等で会社の現状や課題、対応策等を発信し続けました。組織変革でできた新たな仕事や文化を定着させる「再凍結」の工程に一役買っているといえるでしょう。[7]

富士フィルムの業績は2018年現在も好調です。苦しい時代を改革という手法で乗り切ったことが、現在の好業績の礎となったことは言うまでもありません。

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変革を進めるうえでの留意点

変革を進めるうえでの留意点

「解凍」「変革」「再凍結」という3つのステップのどこかで躓いてしまうと、「やっぱりやらなければよかったではないか」という意見が強まります。そうなると、元の木阿弥どころか、以前よりも企業内の緊張が高まるなど、悪い影響が出る可能性があります。そのため、躓きがないように、もし躓いてしまったらどうしたらよいかをあらかじめ検討しておき第二、第三の手を考えておく必要があります。

また、変革における組織リーダーの働きは重要です。リーダー自らが変革を推進し成果が上がるよう支援するのですが、「解凍」「改革」「再凍結」という全ての工程において、早い段階でマネージャーやリーダーたちを参加させ、改革を「自分たちが主導してやっていく」という考えを植え付けていく必要があります。[8]

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まとめ レヴィンの三段階組織変革プロセスに学ぶ、組織変革を進める上での留意事項とその事例

まとめ レヴィンの三段階組織変革プロセスに学ぶ、組織変革を進める上での留意事項とその事例

「組織を変革する」というと、先の見えないブラックホールの中を泳いでいくような、不安な感覚に襲われるかもしれません。しかしながら、レヴィンの三段階組織変革が頭に入っていれば、その不安を最小限に抑えることも可能でしょう。

レヴィンの三段階組織変革プロセスを用いたとしても本来改革とは困難を伴うものです。過去の他企業の失敗を参考にしながら、失敗を恐れず、フレームワークを上手に利用しながら改革を進めていきたいものです。

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参照

[1]https://globis.jp/article/2215
[2]http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/thesis/d1/D1001790.pdf
[3]http://www.bizteria.net/hpo-c?p=ns&a=dt&id=1293_zKUo42
[4]http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/7-4/047.pdf
[5]https://bizhint.jp/keyword/12268
[6]https://about.yahoo.co.jp/info/company/history/
[7]http://www.u-hyogo.ac.jp/mba/pdf/SBR/7-4/047.pdf
[8]http://www.bizteria.net/hpo-c?p=ns&a=dt&id=1293_zKUo42

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