「企業の業績向上のためには社員のモチベーションを上げなければならない」
とよくいわれていますが、果たしてこれは正しいのでしょうか。
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モチベーションは社長や上司が与えるものではない
「モチベーション」の意味は「動機づけ」です。したがって、「企業が社員のモチベーションを上げること」は、他者(企業)によって自分(社員)が動機づけされるということになります。
そもそも、他者の動機づけによって自分の成果が上がった経験がある人は、少ないのではないでしょうか。
例えば、上司から、「昇進したらこんなにいい時計が買えるから頑張れ」といわれたことが直接的な動機になることはあまりないでしょう。さらに、それが継続的な動機となり続けることも少ないでしょう。
それよりも、「いい成績を上げるようになってきた」と成長感を感じ始めた時に「もっと頑張って同期の誰よりも早く昇進しよう」などのモチベーションが自身の中で高まります。そして、自らの動機づけだからこそ、継続した努力がなされ、その結果、良い成果が得られる事につながるのです。
モチベーションは物事を継続していく中、成長していく過程で自己設定、自己発生するものです。決して他者から与えられるものではありません。さらに、動き出す前に、モチベーションを発生させる事ができるというのも誤解です。
では、上司は部下のモチベーションに何も関与できず、すべて部下任せなのかといえばそうではありません。上司にできることは部下を厳しく管理し、成長させることです。厳しく管理すると、モチベーションが低下するのでないか思われるかもしれませんが、そんな事はありません。むしろ、管理されていないと、成長を感じるために必要な「できない事」が曖昧になります。ここが曖昧になると「できない事ができた=成長」という認識も曖昧になるため、成長感をいつまでも感じる事ができず、正しいモチベーションが発生しないのです。
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モチベーションが「やる気」の意味でも同様
「モチベーション」は「動機づけ」の他に「やる気」という意味で使われることも少なくありません。
具体的には「みんなで仲よく仕事をしたほうがモチベーションが上がる」というようなケースです。このようなケースでは「気持ちよく仕事ができる」こと、言い換えると、「ストレスがなく働くことができる」ということでもあります。
しかし、「ストレスがない」ということは成長しないということでもあります。
成長には適度なストレスが必要となるのです。
部下が自ら成長しようとして新たな課題にチャレンジすれば、そこには失敗や挫折は付きものであり、うまくいかないストレスを感じながらも努力し、乗り越えていくことで部下は成長していくのです。
補足すると、組織内には無駄なストレスはあります。それは、人間関係のストレスです。意見や考え方の相違、誤解、錯覚によるストレスは、物事が進行せず、組織に無駄を発生させてしまいます。
このような事態を避けるためには、上司が業務上のルールをしっかり定め、その業務にかかわる全員が明確に認識することが重要です。
このように、上司が部下にモチベーションを与えようとしても、パフォーマンスを向上させることはなく、部下の成長を阻害することにつながります。モチベーションは与えられるものではなく、部下が成長していく過程で自ら設定するものです。
そのため、部下をしっかり管理し、部下の成長に責任を持ち、モチベーションを気にせず、必要なストレスをかけ続けることが大変重要であり、これこそが上司がやるべきことなのです。
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