M&A(Mergers and Acquisitions)は、企業の「合併」や「買収」を指します。具体的には、企業が他社の株式を取得する「株式買収」や、一部の事業を売却する「事業売却」、企業の合併によって新たな会社を設立する「合併」など、さまざまなM&Aの手法があります。
近年、M&Aが注目を集めるようになってきました。
本記事ではその背景や、売り手と買い手の双方がM&Aで成功するために必要なことを解説します。
目次
2025年問題とは
皆さんは、「2025年問題」をご存知でしょうか。これは、日本の労働人口が約3000万人から約2400万人に減少するという問題であり、日本の社会・経済に大きな影響を与えると懸念されているのです。
M&Aは、2025年問題に対する企業の対応策の一つとして期待されています。
なぜなら、M&Aによって企業が業界や事業領域を拡大し、シナジー効果を生み出すことができるからです。また、M&Aによって人材の獲得や技術力の強化が可能となり、企業の成長が促進されるというメリットもあります。
経済産業省は2020年3月、年間のM&A成約件数を6万件にするという目標を掲げました。
それ以前の年間成約件数は4000件程度とのことですから、非常に高い目標ではあるものの、企業の成長促進でのM&Aや事業承継、事業継続するためのM&Aが当たり前の時代になっていくのは間違いありません。
M&Aの実行に欠かせない五つの要素
ここからは、M&Aを実行していく上で重要なポイントをご紹介します。以下の五つです。
・M&Aの目的と戦略
・調査と分析
・企業価値の評価
・適切なファイナンス
・スムーズな統合計画
それぞれ簡単に説明していきます。
M&Aの目的と戦略
M&Aの実行には、明確な目的と戦略が必要です。目的は、企業がM&Aを行う理由であり、その戦略は、M&Aを通じて企業が達成しようとする目標や計画です。M&Aの目的と戦略が明確でない場合、M&Aの成功は望めません。
調査と分析
M&Aを実行する前に、譲渡企業と譲受企業の両方が互いを十分に調査し、分析する必要があります。この過程で、企業の業績、財務状況、リスク、法的問題、文化的違いなどを評価することが必要です。
企業価値の評価
譲渡企業が自らをフラットに評価しなければなりません。この過程で、企業の資産、負債、収益性、市場シェアなどを評価し、妥当な価格を決定する必要があります。
適切なファイナンス
M&Aを実行する際には、適切なファイナンスが必要です。これは、M&Aの資金調達方法やファイナンシャル・アドバイザー(FA)の選択に関わります。M&Aによって企業が引き受ける債務や資本コストにも十分に注意しましょう。
スムーズな統合計画
M&Aが完了した後、企業の統合計画を策定し、スムーズな統合を実現する必要があります。統合計画には、組織文化の統合、従業員の適切な配置、プロセスの合理化などが含まれます。これにより、M&Aが成功し、企業価値が最大化されます。
M&A仲介会社を利用する上での注意点
M&Aが身近になった理由の一つにM&A支援業者の増加があります。現在M&Aの支援業者数(M&A仲介、FA、プラットフォーム仲介等)は年々数十社単位で増えているとも言われているのです。
M&A仲介の増加に伴い、M&Aをやったことがない経営者も仲介会社やプラットフォームを利用してM&Aを実行するケースが出てきました。
数十年前までは、M&Aは大企業にしかできない規模拡大の手段でしたが、今では中小企業同士でのM&Aや小規模な価格(数百万円程)でのM&Aも増加傾向にあります。
また、半年~1年かけて実行していたM&Aも、M&A支援業者を活用することで3カ月以内で成立したと言われるくらい簡易かつスピーディーに行われているケースが増えてきています。
しかし、会社を売るにせよ買うにせよ、M&A支援業者に丸投げではいけません。ここからは、もっとも身近なM&A支援業者である、仲介会社を頼る際の問題点について、考えてみましょう。
利益重視の姿勢
仲介会社はビジネスモデル上、M&Aの「成功」よりも「成立」にバイアスがかかります。成立することで成功報酬を得るため、成立させることが最大の目的となってしまうのです。そのため、譲受企業や譲渡企業は、自社が成功するためにM&Aの知識を身に付け情報収集を実施し、最後は自己責任で意思決定をしなければいけません。
評価方法の理解不足
仲介会社は、M&Aに必要な資料や情報を提供することができますが、評価方法が適切でない場合、買収対象企業の評価が過大・過小評価される可能性があります。
当事者である譲渡企業、譲受企業の経営者側に、企業評価の知識や理解不足があると、高値づかみや割安での売却をする可能性があるのです。
情報の秘匿性
M&Aは機密性が高い取引の一つであり、関わる人数が増えれば情報漏洩のリスクがあるため、仲介会社が情報の取り扱いに適切な注意を払わないと、当事者同士の信頼関係にひびが入ることになりかねません。
利益相反の関係性
仲介会社は譲受企業と譲渡企業の双方代理であり、利益相反の関係性にあります。双方がクライアントであるにも関わらず、双方のアドバイスや交渉をするという立場です。M&A仲介という立場ではありますが、敵ではないが味方でもないという立ち位置になります。
終わりに
M&Aによって複数の事業を保有することはリスク分散になります。なぜならば全ての事業にはライフサイクルがあり、どんなにうまくいっている事業でもいつかは必ず衰退期がやってくるからです。
衰退期が来る前に利益を伸ばせる事業を複数保有することが、継続的な成長ができる会社の条件と言えるでしょう。
識学社でも、2018年頃までは組織マネジメントの売り上げが100%を占めていましたが、M&A会社やプロバスケットボールチームの会社を買収し、新規事業としてファンド事業と人材紹介、キャリア事業なども立ち上がっています。
自社の強みを生かせるポートフォリオを獲得し、企業価値の向上を目指しています。皆さんもM&Aを一つの手段として捉え、さらに手段から戦略・戦術へと移行できれば新たな企業価値の向上への近道になるはずです。
当社では「経営者のためのM&Aトレーニング」をご提供しています。M&Aに関する課題や疑問がある方は、何なりとご相談ください。