識学の知名度が高まっているからか、名刺交換などのご挨拶の際に「知っていますよ」と声をかけていただくことが増えてきました。私が入社した当初は怪しまれることも多かったですから、うれしい限りです。
しかし、同時に危機感も覚えています。
というのも、そこでお聞きする識学の話は、もちろんその方々にとっては正しい情報であり、「ある側面の識学」としては事実です。ただし、その事実は断片的なもので、いわゆる事実とは異なります。
識学は、日本発祥のフレームワークです。そしてそのショールームとして株式会社識学が存在し、日本だけでなく海外の企業にも導入実績を持ちます。
なぜ識学というフレームワークが業種や組織規模を問わず通用するのか。
識学のフレームワークやそのアウトプットの一部が識学のイメージとして発信していただける状態になったこのタイミングで、あらためて識学とは何かをご紹介したいと思います。
目次
【識学体験談】マネジメントに悩むなか識学に出会った
最初に、私自身の経験をお話しします。
かつて組織のマネジメントで壁にぶち当たり、迷いに迷っていた私は世界中のフレームワークについて本を読み、セミナーに参加し、試してきました。どれもしっくりくるものばかりで、一定の効果があったのも事実です。
しかし、どのフレームワークも最終的に「社員一人ひとりとリアルタイムで向き合う」ことが必要でした。
その部分だけは中間管理職に任せるとどうしても個人のカウンセリング能力に依存することになるため、社員とのコミュニケーションに膨大な時間を割くことになるという事態を繰り返していたのです。
しかも、その状態を「社員の声を直接聞くことで現場がよく見える」とか「意思決定が早くなった」などと無理やり自分に言い聞かせて肯定していました。
ですが、考えてみたのです。
このように部下とコミュニケーションをとり続ける状態は、断片的には正しい状態といえるでしょう。ですが、やっぱり正しくないのです。
例えばお酒。仕事の付き合いに必要だからお酒を飲みに行く、といった状態は断片的には決して悪いことではありません。酒は適量飲めば健康になる、という言葉あるように、断片的には「酒」を飲むのは正しいのです。ですが、冷静に考えてみると、酒を飲まなくても関係性が続く方がずっといいのです。
その時間をさらなる仕事に充てることができるかもしれません。家庭に費やす時間を増やせるかもしれません。
つまり、やっぱり正しくないのです。
私は、こうした迷いのなかで、「人から感情を排することはできないが、その事実を受け入れた上で個人の感情や解釈を排除したマネジメントが正しいのではないか」と考え始めていました。
感情があるから無駄なコミュニケーションが生じてしまうのだと考えたのです。
そのときに出会ったのが識学です。識学は、「人々の持つ可能性を最大化すること」を目的とし、組織マネジメントや人の意識を事実で分析するフレームワークでした。
識学とは「意識構造を事実で分析するフレームワーク」だった
組織マネジメントから感情を排除しなければならないといっても、人に感情がある限り、それは不可能です。そのため、まずは「意識」「感情」「気持ち」などを事実で分析する必要があります。
例えば「部下のやる気が出ないのは何なんですかね?」と上司の方に聞いてみると「わからない」「難しい」「○○だと思うが自身がない」と答えます。
ーーーその通りです。
これはやる気だけにとどまりません。
「好き」「嫌い」「なぜそう思ったのか」…わからないことの方が多いんです。
では「分からない」のはなぜか。
それは、見えないから。そして、皆違うからです。夫婦でも恋人でも親子でも、双子でも違います。そして、仮に「今分かった」としてもすぐに分からなくなります。変わるからです。あなたも朝起きたときと今とで変わっていないことは絶対にないでしょう。
つまり意識は、「見えない」「皆違う」「変わる」のです。そして、組織では複数の意識が集合し、一つの目的に向かっているのです。
フレームワーク「意識構造の五領域」
識学では、人が「認識」してから「行動」するまでの「意識構造」を五つの領域で定義しています。
「位置」「結果」「変化」「恐怖」「目標」の五領域です。
例えば、「水を飲む」という行動を例に取ると、下記の通りです。
位置:自分と水との位置関係を認識する必要があります。
結果:水を一口飲むとか水の入ったコップを手に取るといった結果を設定します。
変化:水を飲めば「おいしい」「冷たい」といった変化が発生しますし、そもそも変化を起こさないと水は飲めません。
恐怖:水は好んで飲んでいるわけではなく「死を回避する」「のどが渇くのを回避する」といった恐怖を消化するために飲んでいます。
目標:水を飲む先には飲んでから「喋る」「寝る」などの目標が設定されています。
…つまり、5つのフレームワークを通じて、すべて行動を言語化できるのが「識学」なのです。
五領域のずれ | 組織が傾き始める根源
人はこの五領域を通過して行動しており、誤った行動が発生したということはこの五領域の中で認識のずれ(誤解や錯覚)が生じているということです。
ここからは、組織マネジメントにおいて、各領域で起きるずれについて解説します。
位置のずれ
例えば、会社の外で会社の悪口を言う社員は位置がずれています。
会社を船に例えると、自分の乗っている船を沈めようとしている状態です。「船に乗っている」という自分の位置が正しく認識できていません。
あるいは、部下と仲良くなってしまい管理ができないリーダーは、船に乗っていることは認識できていますが、役割(船の中でどこに位置しているか)を正しく認識できていない人です。
このような状態では正しい行動ができず、組織の可能性が最大化されることはないでしょう。
組織の構成員には、自分が組織の一員であるということ、そして組織内での役割は何かを正しく認識させる必要があります。
結果のずれ
指示や依頼をする際、期限設定をしなかったり、したとしても「なるべく早く」という曖昧なものだったりすると、指示をした側とされた側で期限に対する認識がずれます。また、「提出する」「やり遂げる」など「完了した状態」が定義されていなければ、期限が決まっていたとしても結果がずれます。
両方定義してもまだ不十分です。指示を受けた側が分かっていないのにそのままやらせたり、期限前に示唆や指摘をしたりすると、部下の思考停止や感情的な反発を招き、「言われた通りやっただけ」になってしまいます。
このような結果設定のずれは組織に大きな遅れをもたらし、機会や利益を失うことになりかねません。会議や会話はずれない「約束」で終わり、期限時に次の約束をする必要があります。
変化のずれ
「私はこのままでいいんです。変わりたくありません」という発言を聞いたことがあるリーダーは多いでしょう。そういった発言をする人も、新しいスマートフォンが出れば機種変更するなど流行に反応するでしょうし、気候に合わせて服装を変えることもあります。
つまり、特定の変化をただ嫌がっているだけなのです。
納得しないと動かない部下や、納得させないと部下が動いてくれないと思っている上司も変化に対する事実認識がずれています。「納得」は「行動」の後にしか起こりません。やってみなければ分からないのです。
このようなずれも組織の大きな遅れを発生させます。それどころか、新しいことに着手すらできない組織になってしまい、環境変化に対応できず存続が危ぶまれる恐れもあるのです。
求めた結果が出なければ、変化をしなければならないのです。
恐怖のずれ
恐怖すべきことに恐怖せず、恐怖する必要のないことに恐怖する状態です。
経営層は「組織が存続できなくなること」に対する恐怖を回避するために、社員に「変化」や「全力で行動すること」を求めます。
しかし、社員は「いつもと違うことをする」「仲が悪くなる」など、不必要な恐怖を抱いていませんでしょうか。
恐怖がずれていると、組織を存続するための行動を嫌がったり、継続しなかったりといった状態を招きます。まさに恐怖です。
「組織が存続できなくなる」と経営者が恐怖していれば、社員は「糧を得られなくなる」と、恐怖が連動していなければなりません。
目標のずれ
よく「入社前に思っていたのと違いました」という理由で離職する新入社員がいます。
会社が船だとすると、その社員は「間違えて乗ってしまった」状態です。船を選ぶ側は自分が行きたい場所に向かっている船なのかを正しく認識し、船は行き先を示すのはもちろん、「乗ったら何をして、どう成長していくのか」を伝える必要があります。
乗る船を間違えたことによる悲しい離職は、雇う側も雇われる側も大きな損失です。
識学に対するイメージの正体 | 識学はやばいのではなく「事実」のフレームワーク
上記の五領域について、人がどのような思考の癖を持ち、具体的にどのようなずれが発生するのか、そしてそのずれを修正するにはどのような環境設定が必要か、識学では100を超えるフレームワークを用いてお伝えしています。
そしてそのフレームワークに基づいて、組織に必要な仕組みをつくり、見直していくことでアウトプットしています。
つまり、その組織で「今やっている」もしくは「今はないが必要」な仕組みを事実のフレームワークに基づいてつくっているので、「皆違って、常に変わり続ける」のです。
冒頭、皆さまから頂く識学のイメージが断片的であるとお伝えしたのはそのためです。
識学のインプットの一部やアウトプットの一例についての情報は事実ではありますが、「特定の組織に必要な現時点での仕組み」であり、フレームワークの一部への個人の感想だということです。全体像は異なりますし、組織ごとに変わります。
船が進む先を決めるのは経営者で、社員は乗客ではなく乗組員です。
そして、その船が進んでいくためには、経営者の想いを社員が迷わないような形(仕組み)に落とし込んでいく必要があります。その形は、あなたの会社だけのものでなくてはならないのです。
組織課題を事実で分析し解決に導くフレームワークが知りたい、そして知るだけではなく、自分の組織に必要な仕組みを認識にずれが発生せず正しく運用される状態でつくり、変化に対応して見直していきたいという方は、すぐにお問い合わせください。