後継者不在の中小企業にとって、M&Aは事業承継の重要な手法の一つと言えるでしょう。
今後、日本ではM&Aが増えていくはずです。
本記事では、買い手、売り手双方がM&Aの相談相手を探す際の注意点についてご説明します。
目次
仲介会社はもう一人の交渉相手
会社を買うにせよ売るにせよ、相談相手の候補として最初に挙がるのはM&Aの仲介会社です。
では、皆さんに質問です。仲介会社は下記のどのサポートをしてくれるでしょうか。
①交渉の代理
②アドバイザーの役割
③案件の紹介
私はこの質問を3年前にされたとき「全て当てはまる」と回答しました。
識学に入社する以前に勤めていた金融機関では、さまざまなM&A案件を担当するなかで①~③の全てをサポートしてくれると思っていたのです。
しかし、実際は③のみと言えます。
なぜでしょうか。仲介会社の役割を考えてみましょう。
仲介会社にとって、売り手と買い手の双方がお客さまです。
つまり、どちらか片方に肩入れすると、もう片方が損をしてしまいます。
双方代理の立ち位置なため、M&A成立時には、成功報酬と言われる手数料も両手です。
これは、たとえるなら裁判において原告の検察と被告の弁護士を同じ人物が担当し、双方から報酬をもらっているようなものなのです。
もちろん、実際の裁判でこんなことはあり得ませんが。
仲介会社が「御社のため」と言っているとしても、どちらかのためのアドバイスはできない立ち位置にいることを認識しなければいけないでしょう。
仲介会社にM&Aに関する相談をする際は、「もう一人の交渉相手」と思って臨んだ方がよいです。
もちろん、仲介会社に頼むメリットもあります。
仲介会社は豊富なネットワークや情報がありますから、比較的早く相手(買い手・売り手)を見つけられるでしょう。
多額の手数料を払ってでもできるだけ早くM&Aを成立させたいのであれば、仲介会社に頼むのはお勧めです。
クライアントの側に立って交渉をしてくれるFA ただし注意点も
では、FA(フィナンシャルアドバイザー)は、先の①~③のどれを手助けしてくれるでしょうか。
答えは①~③全てです。
仲介会社と違い、クライアントの片側に立ち、利益の最大化を図るべく交渉をしてくれる存在がFAです。
FAは、企業価値の算定やスキームの提案など、豊富な専門性を持っています。
ただし、最後は成功よりも成立にバイアスがかかってしまうというデメリットがあります。これは、これは仲介会社も同じです。
どういうことか。FAも仲介会社も、M&Aが成立してはじめて高額な成功報酬を得ることができます。
皆さんがM&Aのプロセスの途中で、「このまま進めるべきか、やめるべきか」を悩んでいるときに、担当者から「この案件はもうやめた方がよいですよ」とはなかなか言ってもらえません。
M&Aが成立しなければ担当者は報酬を得ることができず、ただ働きに終わってしまうからです。
FAや仲介会社を否定しているわけではありません。M&Aは情報弱者が負けると言われています。
知っているか、知らないかの世界です。
その他、普段から付き合いのある税理士や金融機関にもM&Aの相談はできるでしょう。
日頃から経営の相談や業績についてコミュニケーションが図れていれば、相談しやすい相手のはずです。
ただ、最近の税理士事務所、会計事務所、金融機関では、M&A仲介の役割をしている会社もありますので、彼らの立ち位置や役割は十分に理解した上でお付き合いしていく必要性あります。
M&Aのリテラシーを高めよう
M&Aの支援会社は年々増加しています。ただ、自社にとって一番よい相談相手が誰なのかが見つけにくい、分かりにくいかもしれません。
M&A後に「こんなはずじゃなかった」とならないように、まずは、経営者自身でM&Aに関するリテラシーを高めることが重要です。
M&Aについての正しい情報やスキルを習得することが、結果的に自分にとってのよき相談相手を見つけることに結び付きます。
買い手先や売り手先が見つかってからではなく、見つかる前に「今から何をやらなければいけないのか」を考えること。それがM&A戦略の第一歩です。
現在当社ではM&A戦略や組織運営の手法も含めて「経営者のためのM&Aトレーニング」をご提供しています。
ぜひ皆さんのM&Aに関する課題解決に向けて、私にできることがあれば何なりと申し付けください。