「留職」とは、従業員が職場を離れて新興国など海外で一定期間、働くことです。
これによりグローバル感覚を身につけられるため、近年注目されています。
いくつものメリットがある一方で、まだ日本ではあまり浸透していないので、導入を迷う担当者も少なくありません。
そこで本記事では留職について、
- 概要や目的
- 留学との違い
- メリット
- 注意点
などを解説していきます。
目次
留職とは
留職とは、「留学」をもとにつくられた言葉で、従業員が勤めている会社を一度離れて、一定期間、新興国を中心とした海外で働くことを指しています。
現地のNPOやNGOに所属して、本業のスキルを活用して現地の人々と社会課題を解決するプログラムが注目を集めています。
人づてや書籍、テレビなどで現地の情報を仕入れたとしても、そこにはリアリティがないため、課題を自分ごととして捉えることはできません。
しかし、留職では現地社会に溶け込んで活動するため、現地の課題や社会問題を目の当たりにすることになるのです。
したがって、課題の根本的な原因や現地のニーズを肌で感じ取り、深く理解できるため多くのことを学ぶことができます。
留職の目的とは
留職の主な目的はグローバル感覚を養うことにあります。
しかし、これだけではなく新興国が抱える課題を解決して貢献することや、新興国の市場開拓なども目的の1つです。
日本にいながら海外支社や海外企業とやり取りをしていても、本当にビジネスに役立つ国際感覚を習得するのは難しいでしょう。
また、市場を開拓するにも現地に赴いて肌感覚で理解する必要があります。
留学と留職の違いとは
留職のもとになった「留学」とはどのように異なるのでしょうか?
留学とは、海外で生活して何らかの専門知識を学ぶことを指しています。
例えば英語や音楽、スポーツや料理などがあり、人によってそれぞれです。
留学する期間も人によって異なり、3か月以内の「短期留学」、それ以上の「長期留学」のケースもあります。
一方で留職とは、学ぶという点では共通していますが、すでにもっているスキルを活かして社会貢献を果たす点で留学と異なると言えるでしょう。
留職が普及した背景とは
近年、留職制度を導入する企業が増えてきているようです。
その背景には下記のような要因があります。
日本企業の海外進出の推進
まず1つ目の要因は、日本企業の海外進出・グローバル化の推進です。
なかでも海外進出先として注目されているのが、これから世界経済の中心になると考えられる新興国です。
また同じ発想で、国内のベンチャー企業に大手企業が自社の従業員を派遣する「ベンチャー留職」も注目されています。
送り出された従業員は、大手企業で長年培われたスキルや技術でベンチャー企業に貢献しながら、ベンチャー企業で「ベンチャースピリット」を学び、自社に持ち帰ります。
少子高齢化に伴う労働人口減少
2つ目の要因は、少子高齢化に伴う労働人口の減少です。
今後、日本は少子高齢化が進み、国内市場は縮小する懸念が持たれています。
そのなかで、日本企業は海外進出によって新たな市場を探す必要がでてきました。
そして、海外進出先として注目されているのが、これから市場が拡大することが予測されている新興国です。
新興国に留職することで、今まで培ったスキルで社会貢献をしながら、市場開拓に向けて人材育成をすることが求められているのです。
パナソニックによる成功
3つ目の要因は、パナソニックによる成功事例です。
2012年、パナソニックは技術系の従業員をベトナムに留職させて成功させました。
この日本企業における初めての留職の導入事例が話題を呼び、各企業に広まったのです。
例えば、テルモや日立製作所、NECなどの大手企業なども留職を導入しています。
さらに、パナソニックの留職を共に成功させた新興企業も注目を集めました。
留職によるメリットとは
ここからは、企業にとっても従業員にとっても期待できる、留職のメリットを解説していきます。
リーダー人材の育成
1つ目のメリットは、リーダー人材の育成につながることです。
新興国では日本国内では考えられないような社会的な課題が山積しています。
そのような課題を解決するには、これまでと異なる方法や考え方を実践しなければなりません。
その際に思考力や課題解決力が鍛えられ、リーダーシップの向上につながります。
さらに、言葉や文化が異なる現地の人たちとのやり取りを通して、コミュニケーション能力の向上にもつながるでしょう。
組織の活性化
2つ目のメリットは、組織の活性化です。
留職によってさまざまな価値観や課題に触れて視野が広がり、成長した従業員が自社に戻ってくることは、自社で働く他の従業員に対する大きな刺激になります。
リーダーシップや課題解決力、本物のグローバル感覚を身に着けた従業員の言葉や仕事からは説得力が生まれ、これに影響されることで自社が抱える課題の解決に挑戦するきっかけとなるでしょう。
まとめ:留職はただすればいいということではない
留職は、人によっては人生経験としても、リーダーシップの発見という意味でも役立つ制度です。
その一方で、培われる能力は抽象的な能力です。
必ずしも、自社にとって有益な能力を会得して帰ってくるとは限りません。
留職を進める際は、自社にとって必要な人材を見つめ直し、目的を明確にしたうえで社員を送り出す必要性があります。