近年、働き方改革が推進され、さまざまな働き方が注目されています。そのひとつが、嘱託社員です。
本記事では、嘱託社員の概要や類似する雇用形態との違い、雇用する企業側のメリットなどを解説していきます。
目次
嘱託とは?
「嘱託」とは人に仕事を頼み、任せることを言います。
「嘱託社員」は非正規雇用の一種ですが、法的に明確な定義はありません。一般的には「正社員が定年後も仕事を引き継ぎ、企業に所属する人」のことを指します。
特徴としては、
- 正規社員ではない
- 働く時間や日にちは選べない
- 有期雇用契約を結んでいる
という点が挙げられます。
嘱託社員と混同されがちな雇用形態との違いとは
嘱託社員と混同されがちな雇用形態として挙げられるのが、非正規雇用の「契約社員」ですが両者は下記の点において異なっています。
- 契約社員:一般的にフルタイムで働き、業務内容は正規社員とほぼ同様の場合が多い。
- 嘱託社員:フルタイムや短時間勤務、週3~4日の勤務などさまざまなケースがある。
一方で、「派遣社員」とは下記の点において異なっています。
- 派遣社員:派遣元の企業と労働契約を結ぶ。
- 嘱託社員:勤める企業と労働契約を結ぶ。
定年後に嘱託社員として再雇用されるケースも
少子高齢化が世界で最も進んでいる国の1つである日本は、将来的な労働力不足が課題となっています。
そんななか2021年4月1日に施行された「高年齢者雇用安定法の改正」によって、希望者に対して70歳までの雇用の機会を与えることが企業の努力義務とされました。これにより、定年後に嘱託社員として再雇用されるケースは今後増えていくでしょう。
嘱託社員として定年後再雇用される場合、下記の2つのケースが考えられます。
- 定年退職後に嘱託社員として再雇用される社員
- 定年を超えた年齢で有期雇用契約を結んで新規採用される社員
前者の場合は正社員のときと同じような仕事をすることもあれば、簡易的な業務となり給与が減額されることもあります。
嘱託社員の労働条件とは
嘱託契約には法的な定めがなく、労働条件についても法律で定義や基準が決まっているわけではありません。したがって、給与や賞与、退職金、福利厚生などについては企業によって異なりますが、賞与あり、退職金なしのケースが一般的なようです。
また、嘱託社員は時給制であるケースも多く、有給休暇についても正規社員と差があることも少なくありません。
嘱託社員の給与や待遇の注意点
嘱託社員に支払われる給与相場は、一般的に正社員のときに支払っていた金額よりも2割から5割ほど少ない額となるのが一般的です。
とはいえ理由もなく給与が減額されているわけではなく、労働時間の減少や業務内容が狭まることが影響しています。
ただし2021年4月に施行された同一労働同一賃金によって、業務内容が正規雇用労働者と同様であれば嘱託社員でも不当に待遇差をつけてはならないとされているため、企業は業務内容と給与が適切かどうかチェックしなければなりません。
嘱託社員の社会保険
嘱託社員は契約社員と同じように非正規雇用であるため、安定的な雇用形態とは言えません。しかし、労働基準法は正規雇用労働者にも非正規雇用労働者にも適用されるため、条件を満たしていれば原則として下記の各社会保険に加入できます。
- 健康保険:75歳までなら加入可能
- 介護保険:65歳の誕生日の前日までなら加入しなければならない
- 厚生年金保険:70歳の誕生日の前日までなら義務付けられている
- 雇用保険:64歳になった年の月までは被保険者となる
- 労災保険:年齢や労働条件と無関係に加入対象となる
嘱託社員を雇用するメリットとは
嘱託社員を雇用する企業側のメリットを見ていきましょう。
ベテラン人材の活用
嘱託社員を雇用するメリットの1つ目は、ベテラン人材を引き続き活用できる点です。
定年退職後に嘱託社員として再雇用するケースが多いため、育成にかかるコストを抑えつつ専門性の高い人材を確保できます。
また、ベテラン人材の存在は若手や中堅社員にとっても安心感があることや、若手の育成にも貢献するというメリットもあります。
人件費削減
2つ目のメリットは人件費削減につながることです。
嘱託社員は正規社員よりも労働時間が短く、職務範囲も狭まるため給与が少ない傾向があります。これにより、少ない人件費でベテラン人材に活躍してもらうことができます。
採用時のアピールポイントになる
3つ目のメリットは、採用時のアピールポイントになることです。
定年退職後も嘱託社員として働く社員が多ければ、若手や中堅社員に対して「長く勤められる企業であること」をアピールできます。
近年は人手不足が慢性化して採用にかかるコストも高くなり、自社に最適な人材を確保することの難易度が上がりつつあります。そのなかで求職者が自社に魅力を感じてもらうためにも、長く働ける企業であることをアピールできることは利点となるでしょう。
まとめ:嘱託社員をうまく活用しよう
嘱託社員は既に自社で雇用したことのある社員であるため、業務内容や自社理解が深いです。
したがって、業務を教えることなくすぐに即戦力として活用できるのは大きなメリットです。
ただし、会社経営者の中には一定数「働かないおじさん」がいることに悩みを抱えている方もいることでしょう。
実際、弊社識学が行った調査によると、働かないおじさんがいると答えた企業は49.2%と、多くの会社が頭を悩ましている問題だということがわかっています。
嘱託により、働かないおじさんの雇用が継続されれば、周りの社員のモチベーションの低下につながる恐れもあります。
それでは、働かないおじさんの発生を防ぐためにはどうすればいいのでしょうか。
解決策のひとつが、成果を給与で評価することです。
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