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会社とは「システム」である 生産性向上を図るアプローチとは

あらゆるものを「システム」として捉え、分析するアプローチを「システム思考」と呼びます。このシステム思考を分かりやすく解説している書籍が、『世界はシステムで動く いま起きていることの本質をつかむ考え方』です。組織の生産性をどうやって高めればよいかについて、識学の教えとも共通する部分があります。

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そもそもシステムとは


まず、システムとは何を指すのか確認しておきましょう。本書はシステムを、「何かを達成するように一貫性を持って組織されている、相互につながっている一連の構成要素」と定義しています。人間の体、バスケットボールチーム、省庁、大学や高校、企業、一国の経済、地球などなど、システムと呼べるものは数え切れません。

本書は、システムが「要素」「つながり」「目的」の3種類からなると解説しています。例えば、大学であれば、要素に該当するものは建物や学生、教授、管理者、コンピュータといった物体に加えて、学校への誇りや学業面での才能のような形のないものも含むと述べています。つながりは、入学者選考の基準や学位取得の必要要件、試験と成績評価、予算とお金の流れといったルールを意味し、目的は知識を発見・維持し、次の世代へ伝えていくことだと説明しています。

経営者の持つルールを決定する力


このシステム思考を用いると、企業とは何かという問いにもシンプルに答えを出すことができます。すなわち、組織を作ることで達成したい目的のために、つながり(ルール)を活用して、要素を無駄なく使うためのシステムが企業だと言えるでしょう。

では、企業において、目的はいかに設定すべきでしょうか。ここでのポイントは「社会性」と「時間軸」です。

社会性とは、いかに多くの人から支持を得られるかという意味に置き換えられます。つまり、目的の実現によって幸せを感じる人や何らかの苦痛が和らぐ人が増えることを追求すべき、ということです。

その社会性に時間軸の概念も加えることが大切です。本書には、意思決定をする際に時間軸をなるべく伸ばす(例えば7世代後への影響を考える)必要があると記されています。そうすることで企業の生き残れる確率が高まるからです。

上記の条件を満たす目的を設定できたら、次はつながり(ルール)をどうするかが問題です。従業員、オフィス、商品、予算といった要素をどれだけ無駄なく目的を叶えるために使用できるか。これは経営者のルール設定にかかっているのです。

ルールには、就業規則のようなものに加えて、組織図や評価制度、上司と部下の関わり方や報告書のフォーマットの統一、週次会議の日時を決定するといったものまで含まれます。ルールの有無やその中身によって、従業員の行動は大きく変わってきます。それゆえ、本書には、「ルールを支配する力が、本当の力なのです」と明記されています。

システム思考と誤解錯覚の関係性


識学では、多くの経営者が目的やルール設定をする際に、上記のようなシステムの本質を理解できずに真逆の結果を導く意思決定をしていると指摘することがよくあります。システム思考の欠如による誤解や錯覚は、大抵の場合、組織体制をヒエラルキー以外の型(フラット型や最近流行のティール型など)で構築しようとすることに起因します。裏を返せば、組織の体制がフラット型やティール型であれば、まずはヒエラルキー型の組織を目指しましょう。

本書も、ヒエラルキーだけが「ありとあらゆる可能な複雑な形態の中でも、発展する時間を有してきた型であると言えます。シンプルなシステムから進化して複雑なシステムが生まれるのは、安定した中間的な形態があるときだけであり、結果として生まれる複雑な形態は必然的にヒエラルキーのあるものになります」と説いています。

ただし、人間の本能的欲求を原因とする誤解や錯覚も存在します。例えば、存在意義を獲得したいという欲求です。この欲求は生存本能の次に強いものとも言われていて、上司が部下をマネジメントしていくなかで、「嫌われたくない」という感情を持つことや、経営者が中間機能であるマネージャーを飛ばして末端のメンバーに関わろうとしてしまうことの原因になっています。

書籍にもあるように、時間軸を未来においた意思決定こそが、この誤解や錯覚を最小化させるための答えとなります。フラット型にこだわって経営者がメンバー全員のマネジメントを行うことは、未来の企業の目的に向けた近道なのでしょうか。部下へのマネジメントの際に刹那的な存在意義を獲得したいがために不足を指摘しないことは、その部下の未来の成長へつながるのでしょうか。

少し難しい表現もありますが、企業というシステムの本質をシンプルに理解するにはおすすめの一冊です。

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