私は金融機関に10年以上務めた後識学へ入社し、コンサルタントになりました。今回は、これまでの私の経験を踏まえ、M&A先を選ぶ際にチェックするとよいポイントについてご紹介します。
目次
買収先の見極め方
M&Aによって事業をさらに拡大させていきたい、成長スピードを上げていきたいと考える経営者は、買収先を選別する際に、下記の①~③に目を向けるようにしてください。
- 自社の強みが明確な会社
- 自走している会社
- 海外展開を想定できる会社
以下、①~③について詳しく説明していきます。
自社の強みが明確な会社
まずは①の自社の強みが明確な会社かどうかです。
日々経営者の方に、「貴社の強みは何ですか」という質問をすると、
- 生産力が高い
- 技術力がある
- 一気通貫して事業展開している
- スピード感を持った提供
といった回答をもらいます。私は、これだけではその会社の強みが何かよく分からないと感じてしまいます。これらの回答は、どんな会社にも当てはまるとさえ言えるのではないでしょうか。
競合他社が数多くいるなかで自社を選んでくれているユーザーがいるわけであり、その強みを経営者自身が理解できていないということです。自社の強みをさらに彫り下げられる経営者は、自社が選ばれる何かしらの経営資源を正確に理解しています。
例えば、「競合他社に比べ1分間の生産力が3倍かつ不良品率が0.001%で最も低い」とか、「競合他社が1回で作れる個数は10個だが、自社では30個作れる」など、自社の強みは第三者が聞いて「なるほど」と納得できるものである必要があります。
明確な強みのある会社は非常に魅力的です。そして、買い手側の強みと売り手側の強みが一緒になってシナジーが起きる会社は、M&A先の候補として検討しておくべきです。
自走している会社
次は、②自走している会社かどうかです。これは、明日から社長がいなくても売り上げや利益を叩き出すことができる会社を指します。
私の経験上、社長が先頭に立って業績を伸ばしている会社はM&Aの候補からは外した方がよいです。というのも、以下の可能性が考えられるからです。
- 売上の大半を社長に依存している
- 組織全体としてトップダウンで、社員一人ひとりが自分で考えて動かない組織である
- 管理職が育っていない
- 買収後、売り手の社長が退任したら、他のメンバーも続けて離職していくかもしれない
反対に、自走している組織には次のような特徴があります。
- 売上や利益のほとんどが社長以外で計上している
- 属人的なマネジメントではなく、仕組みで回っている
- 定性的な評価基準ではなく、定量的な評価基準を用いて結果を出している
もちろん、例外はありますが、大体において当てはまると考えられます。どちらが魅力的かは明らかですよね。
海外展開を想定できる会社
海外展開を想定できる会社もM&A先の候補に挙がります。どういう企業かというと、例えば下記のような会社です。
- 海外ECを保有している企業
- 海外展開できる商品、サービス、飲食企業など
- 海外の会社と繋がりが多数ある企業
- 貿易、物流網を持つ企業
日本国内ではなく、海外の市場にサービス展開できれば成長の可能性は計り知れません。労働者人口の減少、DX化、IT化が進む日本において、海外戦略は必須と言えるでしょう。
M&A戦略を明確に
M&Aをやると決めたら、自社のM&A戦略を明確に持つことが大切です。3年後、5年後、10年後のなりたい姿を明確にしましょう。そして、M&Aをどのように活用するのか、書き出してみてください。
とりわけ重要な点を挙げるとすれば、売り手側の事業を獲得することで新たなポートフォリオ戦略を描けるかどうかです。これは、M&Aを検討する上で非常に魅力的なオプションになります。
投資の世界において、一点賭けするよりもリスクを分散することの方が重要です。企業においても同じことが言えます。一つの事業だけではなく、複数の事業を保有していることがリスク分散になります。なぜならばすべての事業にはライフサイクルがあり、どんなにうまくいっている事業でも、いつかは必ず衰退期がやってくるからです。衰退期が来る前に利益を伸ばせる事業を複数保有することが、継続的な成長ができる会社の条件です。
例えば、識学社では、2018年頃までは組織マネジメントの売り上げが100%を占めていましたが、M&A事業やプロバスケットボールチームの経営を買収によって始めつつ、新規事業としてファンド事業と人材紹介事業を立ち上げています。今ではこれらが売り上げの約3割を占めるまでに成長しています。
当社では「経営者のためのM&Aトレーニング」をご提供しています。M&Aに関する課題や疑問がある方は、何なりとご相談ください。