ビジネスシーンでよく活用される「マネジメントサイクル」。マネジメントサイクルとは、企業の目標達成を目的とした管理システムのことです。さまざまなプロセスを効果的に介すことで、組織の継続的な成長が見込めるのです。
本記事では、マネジメントサイクルが重要な理由や、有名企業が実践している実際の成功事例、マネジメントサイクルを活用する際に注意すべきポイントを解説します。
マネジメントサイクルの活用は、企業規模・業種を問わず、どのような組織でも役立ちます。組織のさらなる成長やプロジェクトの達成に向けて、ぜひ参考にしてください。
目次
マネジメントサイクルとは?
マネジメントサイクルとは、企業が設定した目標達成に向けて、業務を効率よく進めるための管理システムを指します。目標達成に向けて行動を評価し、次の仕事に活かすための業務の改善策を検討する際に主に使われます。
マネジメントサイクルは検討して終わりではなく、継続的に次の改善につなげることが重要です。マネジメントサイクルを繰り返すことは、製品やサービスの質の向上や、従業員のモチベーションにもつながります。
マネジメントサイクルのメリット・重要性
マネジメントサイクルの主な重要性・メリットを、2つ紹介します。
目標や改善点が明確になる
マネジメントサイクルでは、企業のリソースから限られた時間内で、目標を達成する必要があります。そのため、なるべく最短のルートで最適なアクションを実行することが重要です。
計画の段階で目標を設定することで、目標と現状のギャップを認識し、次の改善点を見つけられます。こういったサイクルを重ねることで、より高い精度のアクションが定着するし、最短での目標達成につながるのです。
人材の流出防止につながる
マネジメントサイクルは、人材の流出防止も見込めます。目標や改善点が明確化されると、製品やサービスの価値観の向上だけでなく、従業員の生産性の向上も期待できるでしょう。
自分のアクションがもたらす結果を直接的に実感することは、従業員のモチベーションアップにつながります。短いスパンでマネジメントサイクルが回ることもあり、その場合はさらに成果を実感しやすくなります。従業員のモチベーション低下は、人材流出の原因になりかねません。マネジメントサイクルがうまく回ることは、結果として人材の流出防止を防ぎ、企業全体によい影響をもたらします。
マネジメントサイクルの歴史
マネジメントサイクルの起源は、1870年〜1890年のアメリカの鉄道経営にあるといわれています。当時、アメリカ全土で鉄道ネットワークが開通し、大陸を横断するルートが拡大しました。同時に、農産物や工業製品の輸送も活発になります。
需要が増えたことで複数の鉄道会社の競争が激しくなり、鉄道労働者の賃金が10%削減されるという事態も発生しました。結果、労働組合は約45日間にも及ぶ、大規模なストライキを始めました。
ストライキによる鉄道運行妨害への解決策として、定められた作業目的を達成できた労働者に賃金を上乗せする、能力給制度が採用されます。さまざまな施策や改善策を打ち出すことで、結果として、鉄道建設の生産性は向上しました。
そして鉄道関連事業者だけでなく、多くの企業が上記の手法を導入し、さまざまなサイクルへと発展していったのです。以上の一連の流れがマネジメントサイクルの起源とされ、今でも多くの企業で活用され続けています。
代表的なマネジメントサイクル
代表的なマネジメントサイクルには、PDCAサイクルやOODAループが挙げられますが、ほかにもさまざまな種類のサイクルが存在することをご存知でしょうか。それぞれの特徴を紹介します。
PDCAサイクル
PDCAサイクルとは、「Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)」のステップから成り立つマネジメントサイクルです。短期間でサイクルを回すのが特徴のPDCAサイクルは、主に業務効率化を目的に使われ、計画から改善までの工程を円滑に進めるのに役立ちます。
ただし、4つのサイクルを守ったとしても、非現実な計画を立てると目標達成は叶いません。現状を十分把握したうえで、計画を立てましょう。
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OODAループ
OODAループとは、「Observe(観察)・Orient(方向づけ)・Decide(意思決定)・Act(行動)」の4ステップから成り立つマネジメントサイクルです。観察を重視するOODAループは、主に事前の計画がないときの意思決定に役立ちます。
つまり、新規事業の立ち上げや新部門の設立など、新しいアクションに対しての改善策を導きます。企業や組織における意思決定の役割を担う経営層を巻き込み、OODAループを取り入れることが重要です。
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CAPDサイクル
CAPDサイクルとは、「Check(評価)・Action(改善)・Plan(計画)・Do(実行)」のステップから成り立つマネジメントサイクルのこと。代表的なマネジメントサイクルである、PDCAの順番を入れ替えたものです。
CAPDサイクルでは、先に評価をしたうえで改善。計画・実行に移します。現状を知らないまま計画を立てるのは困難に感じるかもしれませんが、CAPDサイクルではあらかじめ分析することにより、計画を立てやすくするのがポイントです。事前の評価や分析が、後にくる計画・実行に大きく影響するのです。そのため、より精密な評価・分析が重要視されます。
PDRサイクル
PDRサイクルとは、「Prep(準備)・Do(実行)・Review(見直し)」のステップから成り立つマネジメントサイクルのことです。ほかのマネジメントサイクルと比べ、簡略化された過程でサイクルを回すため、スピード感に特化していることが特徴です。
シンプルで取り組みやすい点がメリットですが、3つのステップを混合して使ってしまうケースも散見されます。入念に一つひとつのステップを、段階的に踏むことが重要です。
マネジメントサイクルのポイント・注意点
マネジメントサイクルをうまく回すために、意識すべき点を紹介します。以下に記述したポイントは、さまざまなサイクルで活用できます。早速、実践してみてください。
目標を明確にする
第一に、目標を具体的に定めることが重要です。その際に注意すべきは、抽象的すぎる目標を立てないことです。
例えば、チーム全員で取りかかっても8時間はかかる案件を、翌日に3件完了させるよう指示された場合、どう思われるでしょうか。スタート地点から到達不可能な目標を設定しても、モチベーションは上がりません。
また、具体的な数字がわからないまま、タスクを実行するのも非効率です。目標が非現実的、または曖昧な場合、その後の計画や改善に影響を及ぼしかねません。誰が、いつまでに、何をすべきかを逆算し細分化できる目標設定をすることで、サイクルは回りやすくなります。
プロセスを記録する
計画から実行に至るまでの過程や、過程で生じた課題を詳細に記録することも重要です。成果や結果を可視化することで、記録したデータ・数字をもとに、評価や改善が行いやすくなります。
データの蓄積がない状態で問題が起きた場合に、すぐに問題を解決しようと行動に移すと、今後の改善に活かしづらくなるでしょう。問題が発生した理由を検証して、乗り越えた方法や具体的な行動の過程を記録することで、ノウハウが蓄積されます。結果として、次の計画に役立ち、サイクルの精度が上がるのです。
客観的・定量的に評価する
成功・失敗要因の深堀りは、評価において重要な役割のひとつです。計画通りに目標が達成できたか、目標達成に貢献した行動は何かを考えましょう。達成に不安がある場合は、一度立ち止まって一連の行動や原因を洗い出します。
原因を探る際に意識する点は、事実をもとに客観的かつ定量的に評価することです。もちろん、自分の意見をもつことは大事ですが、あくまで問題に対する原因を客観的に突き止めることに重きを置きましょう。
改善し、継続的にサイクルを回す
客観的、定量的に評価したあとは、計画の改善を行います。一度だけで目標を達成できるとは限らず、評価内容をもとに改善策を検討することが求められます。うまくいかなかったことに対して改善し、次の計画につなげるプロセスが大切です。
マネジメントサイクルでは、継続してサイクルを回すことが成功への近道です。停滞しないよう、次の行動に向けた改善策を見つけましょう。
タイムマネジメントを行う
たとえ素晴らしい計画を立てても、タイムマネジメントがずさんであれば意味がありません。いつまでに業務を完了させるか、目標達成までにどのくらいの期間を要するか、十分にタイムマネジメントを行いましょう。チームで連携する場合は、周りのメンバーの状況把握も必要です。
タイムマネジメントをする際は、まず抱えているすべてのタスクを洗い出します。そして、各タスクに取り組むうえで、どのくらいの時間が必要かを検討しましょう。その際、不必要なタスクがあれば、切り捨てることで時間のロスを回避します。洗い出したタスクに優先順位をつけ、優先業務から進めていきましょう。
マネジメントサイクルの成功事例
マネジメントサイクルを見直したことで、成果につながった会社の事例を紹介します。
株式会社ファインドスター
起業家・ベンチャー企業の成長を目的としたプラットフォームを創る、株式会社ファインドスターが、PDCAサイクルの回転率を上げることに成功した事例です。
同社は経営層と直下の責任者が識学を学ぶことで、識学が上層部の共通言語となりました。議論は識学とフレームワークを活用することで、認識のズレを最小限に抑え、意味のないやりとりを一切排除することに成功。議論自体は以前の1/4にまで圧縮できました。
会議は結果の確認と、そのうえで成長するための具体的なアクションを話し合う、端的で濃密な内容となり結果として、短スパンでのPDCAのサイクルをより多く回転させることに成功。組織自体もよりアクティブな運営ができるようになりました。
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識学の導入で、我流の経営から抜け出すための「型」を手に入れた。|株式会社ファインドスター 代表取締役CEO 渡邊 敦彦 氏
株式会社NEXT ONE
株式会社NEXTONEは、代理店として豊富な営業ノウハウをもち、習熟した営業のプロフェッショナル集団として注目されている企業です。順調に事業を拡大している秘訣のひとつは、PDCAの回し方にあります。
役員になったら給料を上げる仕組みを廃止し、半年に1回「目標の利益を達成できたかどうか」だけを五段階評価する体制に切り替えました。そうすることで、「経営層が求めているもの(利益の拡大)」と「部下が各々判断する経営層が求めるもの」の認識のギャップを埋め、部下が明確な目標設定に向かって自発的に考えるようになりました。部下が自発的にPDCAを回せる評価を導入したことで、過去最大の利益を生み出すことに成功したのです。
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ソフトバンク株式会社
携帯電話などの無線通信サービスを提供するソフトバンクでは、独自の超高速PDCAを取り入れています。以下、採用されている8つのステップです。
- 新商品の「1ヵ月の販売目標」を決める
- 「1ヵ月の販売目標」から逆算して、「1日の販売目標」を立てる
- 新商品のリストを作り、1ヵ月と1日ごとの販売計画を立てる(PLAN)
- リストに挙がったすべての商品を同時に販売する(DO)
- 毎日、「1日の目標」を達成できたか検証する(CHECK)
- 検証をもとに、商品の並べ方、見せ方などを毎日改善する(ACTION)
- 1ヵ月後、どれが「1ヵ月の販売目標」を達成できる商品かを数字で検証する
- 「1ヵ月の販売目標」を達成できる商品に絞って販売する
目標設定が1日、1ヵ月単位であること。さらには、目標に向かってすべての商品で検証できる点が魅力です。毎日の改善があるからこそ、早い成長が期待できます。
参考:「孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA―――終わらない仕事がすっきり片づく超スピード仕事術(61ページ)」
まとめ
マネジメントサイクルの意味、サイクルを回す際のポイント、事例などを紹介しました。仕事に追われていると、ついタスクを完了させることだけに意識が移りがちです。しかし、マネジメントサイクルを回すことに意識を変えると、成果を実感しやすくなります。
マネジメントサイクルにおいて重要なのは、継続して結果を出し続けること。「計画・実行・評価・改善」のそれぞれのステップに入念に取り組み、目標達成を目指しましょう。