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【納得】ツイッター社は「普通の会社の当たり前」とは全然違う

ツイッターは、隣の人からアメリカ大統領まで利用する世界的なSNSのひとつですが、どのIT企業、ネット企業とも似ていません。
例えば、この画面をみてください。


引用:https://about.twitter.com/ja/company.html

これはツイッター社の公式サイトにある、経営陣を紹介したページです。普通、このように並べると、ナンバー1CEOの名前は左上に置かれます。そしてナンバー2の名前は、その右に置かれます。
しかしツイッター社のCEOジャック・ドーシー氏は、6番目に置かれています。(※2021年11月29日、ジャック・ドーシーが、最高経営責任者(CEO)を退任


この並びが意味するのは、「フラットな会社である」です。
ツイッターの日本法人では、20代の若手社員が執行役員を下の名前に「さん」をつけて呼びます。

ツイッター社が当たり前に行っている、普通の会社の当たり前でないことを紹介します。それを知れば、長きにわたって赤字続きでありながら、ツイッターが重要な情報社会インフラであり続けている理由がわかるでしょう。(肩書は20199月時点のものです)

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ツイッターとツイッター社の基礎知識

ツイッターとツイッター社の基礎知識

まずは、ツイッターとツイッター社を概観しておきましょう。

「大量」情報社会で異色の「凝縮」情報

ツイッター社の本社はアメリカ・カリフォルニア州サンフランシスコにあります。現CEOのジャック・ドーシー氏ら4人が2006年にサービスを開始しました

ツイッターの最大の特徴は、140字しか投稿できないことでした。今では文字制限の上限が引き上げられましたが、それでも280字しか投稿できません。

情報社会では、少しでも多くの情報を送受信する競争が繰り広げられていますが、ツイッターは情報量をあえて絞っています。

ツイッターの出現で、凝縮された情報には、大量の情報と同じくらいの価値があることがわかりました。
アメリカ大統領のトランプ氏は、重要政策をツイッターで世界に告知することで知られています。彼は政府の広報機関も大手マスメディアも使いません。しかしそれがかえって彼の情報発信力を強化することになりました。
例えばトランプ氏が中国との貿易摩擦についてツイッターに投稿すると、日本の株価が簡単に変動します

ツイッターを使えば「何か言いたい」と思ったら、スマホでアプリを立ち上げて文字を入力するだけで世界に情報発信できます。
短い文章しか投稿できないので、長い原稿を用意する必要がありません。また、短い文章なので世界中の人が一瞬で理解できます。
これが凝縮された情報の威力であり、ツイッターの発明品です。

日本政府も広報手段に加えた

ただトランプ氏は極めてユニークな人なので、世界的な政治家のなかで彼だけがツイッターを使っているなら、アメリカ大統領とツイッターの出会いは偶然といえるでしょう。
しかし日本の首相も2018年に、ツイッター社CEOドーシー氏が来日した際に面談しています。首相が海外の一企業のトップと11で会うのは異例です。
そして首相は自身のツイッター・アカウントで、「ドーシーさんから、特製Tシャツをいただきました」と嬉々としてツイートしました。首相はさらに「これからもSNSを活用した情報発信をどんどん行っていきたいと思います」とまで書き込みました。
ツイッターが日本政府の広報手段のひとつに加わったわけです。

多様な価値観とさまざまなバックグラウンドを持つ社員を誇る

再びツイッター社の公式サイトを紹介します。
https://about.twitter.com/ja/company.html
上記の公式サイトのURLにアクセスすると、下の文字が現れます

公式サイトのトップページの最上段にある言葉は、その会社の最も重要な価値である考えられます。
ツイッター社が最も価値を置くのは社員の多様な価値観とさまざまなバックグラウンドです。製品でもサービスでも顧客でもなく、社員こそがツイッター社の最重要財産なのです。
ツイッター社のフラットな社風は「なんとなく」できたのではなく、経営陣が意図的に築き上げたといえます。

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ツイッター社はCEOジャック・ドーシーという人

ジャック・ドーシーという普通でない人

創業者であり現CEOのドーシー氏は、一度ツイッター社を追い出されています。そしてドーシー氏がCEOに就いたのは、2016年で3度目です。
2006年創業のツイッター社は、これまでにドーシー氏を含め5人がCEOに就きました。
同じく世界的なSNSであるフェイスブックでは、創業者のマーク・ザッカーバーグ氏がトップであり続けています。両社は対照的です。

辛口な雑誌で知られるGQによると、ツイッター社は「敵国の王を討ち取った男たちが、王の首級の手柄を独り占めにしようと仲間を罠にかけ、蹴落としあう、というような内紛を続けてきた」会社です
なぜ内紛が絶えないのかというと、ドーシー氏には、ザッカーバーグ氏のような「カリスマも人徳もない」(GQ)からです。

ドーシー氏は1994年にダウンタウンで生まれ、少年のころは髪を青く染め、タトゥーを入れピアスをつけパンク音楽を愛していました。
ドーシー氏はプログラマーの道に進み、天才的なひらめきをツイッターという形に具現化することに成功しました。
ところが、ツイッターのサーバーがダウンする事態に見舞われたとき、ドーシー氏はヨガのレッスンを受けていました。
こうした奇行が社員や投資家の反発を買い、ドーシー氏は自分がつくった会社を追い出されました。

ではなぜドーシー氏が2016年にツイッター社に呼び戻されたのかというと、そのころ同社が危機的状況にあったからです。
ユーザーの数が伸び悩み、株価は低迷を続けていました。フェイスブックはニュース媒体としての新たな価値を身につけ、ビジュアル面ではインスタグラムが優位になりました。ツイッターはSNSランキングで2位になったことがありましたが、このころには9位にまで落ちていました。

ツイッター社の経営陣は低迷している理由を考え、ひとつの答えにたどりつきました。それは「クールではない」でした。
そして、超クールなドーシー氏に白羽の矢を立てたわけです。

ドーシー氏は見事にその期待に応えました。ツイッター社は創業以来赤字が続いていましたが、2017年にドーシーCEOのもと、黒字に転換しました。ツイッター社の経営については後段で解説します。

2016年にCEOに返り咲いたとき、ドーシー氏は雑誌GQの取材に対し「人が毎朝起きて最初にすることが、Twitterのチェックになるようにしたいんだ。ほら、天気予報は誰もが朝イチに見るだろ。それと同じだけのポテンシャルがツイッターにはある」と答えています
ドーシー氏のこの「予言」は的中します。
20197月、日本の外相が「最近はツイートひとつで外交が動く時代になった。私も朝起きるとトランプ米大統領が夜の間にツイートしていないか確認しないと始まらない」と述べて話題になりました

ドーシー氏の奇行について、最後にもうひとつだけ紹介します。ドーシー氏はツイッター社から給料も報酬ももらっていません

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ツイッター社の社風は「フラット」

社風は「フラット」

ある就活支援企業が、ツイッター社の日本法人、ツイッタージャパン株式会社を取材しました[9]
上級執行役員 広告事業本部長兼、日本・東アジア事業開発本部長の味澤将宏(あじさわ・まさひろ)氏[10]と、3人の20代社員にインタビューしました。
そのなかで味澤氏は、ツイッター社には、社内ヒエラルキーをつくらない企業文化があると指摘しています。それは本当のようで、20代の社員は味澤氏のことを「まささん」と呼んでいます。

ツイッタージャパンの社風は、単なるアメリカナイズでも、単なるアメリカ文化の輸入でもありません。このフラットさは、ツイッター社の思想です。

ツイッターの本社は年に2度、世界のツイッター・オフィスから100人ほどの社員を集め2日間にわたる「大本音大会」を開きます
参加者は、役職、年齢、国籍を問わず、正直な思いを全員の前で表明します。ツイッタージャパンの代表取締役の笹本裕氏もそれに参加したことがあり、「それみんなの前で聞いちゃって大丈夫?」という発言が飛び交い、冷や冷やしたそうです。
ツイッター社には「信頼を築くために、恐れずコミュニケーションをとる」という考え方があります。こうした建前を掲げる会社は少なくありませんが、それを実践できている企業は多くありません。ツイッター社は実践できている会社です。

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ツイッター社は驚くほど「儲け体質」ではない

ツイッター社は驚くほど「儲け体質」ではない

ツイッター社は2013年に上場を果たしましたが、黒字化したのは20171012月期のことです。そのときの純利益は99億円でした。
フェイスブックの20181012月期の純利益が7,500億円ですので、ツイッター社がいかに「儲けられない体質」か、わかると思います

日本人にとって、ツイッターもフェイスブックも知名度はそれほど変わらないでしょう。そして世界では、「トランプ効果」もあって、今はツイッターのほうが知名度が上かもしれません。
それでもツイッターとフェイスブックの利益に76倍(=7,500億円÷99億円)もの差があるのは、広告収入の差です。ツイッターもフェイスブックもユーザーは無料で利用できるので、収入はほぼ広告だけと考えていいでしょう。
ではなぜ両者にこれだけの広告収入の差が出るのでしょうか。

それは、ツイッターは短時間しか使われないからです。ツイッターの投稿文は最大280字と少ないので、すぐに読み終わってしまいます。ある調査によれば、ツイッター・ユーザーの1日の平均利用時間は1分です。1日平均40分というSNSもあるなかで、ツイッターの利用時間の短さは異常です
これでは広告主(広告を出す企業)は、「ツイッターに広告を掲載しても、ユーザーにじっくり見てもらえない」と考えます。それで広告出稿が減り、広告収入が伸びないのです。

しかしツイッター社には「これでよい」とする考えがあるようです。もちろんツイッター社も「儲けたい」と考えていて、広告効果を高める取り組みをしています
ところが短文には強いこだわりがあって、わずか280字に増やすだけでも社内で侃侃諤諤の議論が展開されました


ツイッター社には、短い言葉にこそクリエイティブ性が宿るという考え方があります。

575にこだわる俳句と同じ思想でしょう。ただ、俳人は小説家よりかなりマイナーな存在です。それは俳句で発信できる情報量が極端に少ないからです。17字しか使えないのに、季語を入れなければならないので伝えたいことはミニマムです。
また芸術性においても、小説の方が「メジャー」であるかも知れません。日本人のノーベル文学賞受賞者は2人いて、両人とも小説家です。
しかし俳句には独特のクリエイティブ性が宿っているので、決して廃れることはありません。

繰り返しますが、株式を上場している以上、ツイッター社には利益を追求する義務があり、一生懸命広告収入を上げようとしています。
しかしツイッター社は「武士は食わねど高楊枝」の精神で短文にこだわりました。それで世界のリーダーやセレブや市井の人々から愛用されるツールになりました。
利益よりもツイッターの価値を重視することが、ツイッター社にとって重要なことなのです。

ツイッタージャパンの代表取締役、笹本氏は、ツイッター本社の「大本音大会」に参加して、次のように感じました。
「本音で話すうちに議論が熱を帯びすぎてしまうこともあります。でも、それぞれが本当に自社のサービスが好きで、強い思いを持っているからこその熱だということは、議論をしている本人たちにも、周囲にいるメンバーにもありありと伝わってきました」

経営者と社員が「本当に本物の本音」で語り合えるは、儲け体質でない企業文化と無関係ではないでしょう。

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短い文章にこだわったことで、ツイッターには他のSNSにない特性を持つことに成功しました。それは「人の想い」が多く集まる特性です
もちろん、ブログにもフェイスブックにも人の想いが詰まっています。しかしそこに書かれてある文章には重要でないことも含まれています。なぜなら文字数に制限がないので、文章が冗長になるからです。冗長な文章には、重要でない内容が入り込む隙が生まれてしまいます。

人は、言葉を制限されると最も大切なことを言おうとします。
例えば同じシチュエーションにある2人がいて、片方が「苦しいけど嬉しい」と言い、他方が「嬉しいけど苦しい」と発言したとします。
この2人に3文字の発言しか許さなければ、「嬉しい」と「苦しい」になるでしょう。言葉を削っていくと、本音しか残らなくなります。

つまりツイッターは、どのSNSよりも本当の本音が集まりやすくなっているのです。
ツイッターの閲覧者、つまりツイッター情報の受け手も、それを知っています。ツイッターによって、研ぎ澄まされた本音だけを読む体験をしたユーザーは、ツイッターを閲覧せずにはいられなくなります。

人の想いだけではありません。
例えば、台風や地震などの自然災害情報の発信は、ツイッターがどのメディアよりも速く、どのメディアよりもリアルであることを、多くの人が知るようになりました。
ただでさえSNSはテレビや新聞より速く情報を拡散できるのに、ツイッターはそのスピードを短文化によってさらに高めたわけです。
ツイッター社の経営者と社員は、独特の社風でツイッターの価値を守り、「独特で唯一無二の情報インフラ」を築き上げたのです。

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ユーチューブは元は独立した会社でした。しかしグーグルに買収されました。昨今のユーチューバー・ブームをみると、それでよかったのだろうと思います。


IT業界、ネット業界では、新進気鋭の起業家やアイデアパーソンが画期的なサービスを考案し、それを大手企業が買収して成長させるというルートがあります。


しかしツイッター社もCEOのドーシー氏も、そのルートをかたくなに拒否しています。ツイッター社はこれまで身売りせずにやってきました


ここにも「儲け主義」とは無縁の企業運営がみられます。ツイッター社員はそこに居心地のよさを感じているようです

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