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ソニーのEV参入はどうなる?EV市場参入の戦略や意義、ソニー製EVの強みを解説

突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?

  • 「ソニーがEV事業に参入する理由は?」
  • 「自動車メーカーじゃないソニーがどうしてEV事業?」
  • 「ソニーはEV事業でどのような戦略を考えているの?」

今や自動車業界では空前の電気自動車(EV)ブーム。特にヨーロッパやアメリカでは「日本車つぶし」と言われるほど、ガソリン車やディーゼル車など内燃機関車に対する規制が強まり、EVに切り替える動きが加速しています。

これまで日本の自動車メーカーが得意としてきた内燃機関車が禁止されるとなると、日本にとっては大きな痛手となるでしょう。

そんななか、EV市場に参入したのがソニーです。

本記事ではソニーがEV市場に参入する目的や意味、戦略などを解説していきます。

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EV事業への参入を宣言したソニー

ソニーは2022年が明けてすぐにEV事業への参入を宣言しました。

その会場となったのは、2022年1月5日から7日の間にアメリカのラスベガスで開かれた、世界最大級のエレクトロニクス関連展示会「CES 2022」です。

前回の「CES 2021」は新型コロナウイルスの感染拡大によって初めてのオンライン開催となり、今回こそリアルでの開催が予定されてたのですがオミクロン株の感染が急速に拡大したため、急遽出展を中止する企業が数多く出てしまいました。

日本企業でも多くの企業が出展を取りやめていましたが、そのなかで唯一リアルでの出展をやめなかった企業が、ソニーグループです。

日本企業からはホンダやトヨタ、日産などが出展する予定でしたが軒並み出展を取りやめたため、さらにソニーの存在が際立った結果となりました。

新会社ソニーモビリティの設立とEV市場への参入を表明

「CES 2022」でソニーは、新たな事業会社である「ソニーモビリティ株式会社」を2022年春に設立し、EVの市場投入を本格的に検討していくと表明しました。

また、ソニーは2020年のCESでEVコンセプトカーの「VISION-S」を公開しましたが、この時はEVを開発する目的として、「ソニーが展開するイメージセンサーの改良のため、車両を試作してテストする必要がある」とし、自動車事業への参入はしないと明かしていました。

しかし、その2年後の「CES 2022」では、ソニーモビリティ株式会社を設立して「EV市場への参入を本格的に検討」することを公表。第2のEVコンセプトカー「VISION-S 02」をお披露目しています。

このように、ソニーのEV市場への参入はかなり本気であることが伺えますが、なぜ、ソニーはこの時期になって強豪だらけのEV市場に参入するのでしょうか? そして勝算はあるのでしょうか?

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ソニーのEVはEV市場を変革するか?

ソニーがEV市場への参入を本格的に検討し、さらにその市販化が発表されたことを受けて「ソニーによってEV市場が変革するのではないか」と言われています。

なぜ、ソニーのEVがEV市場に変革をもたらすのでしょうか?

その理由は、ソニーは自社でEVの生産を行わない「ファブレス」体制をとるためです。ファブレスとは「工場を持たない」という意味で、一般的に製造業であれば自社工場を持って自社で製造しますが、ファブレスでは製品を製造するための工場を持ちません。

したがって製造は他社に委託して、自社は設計やデザインだけを行うことになります。

では、EV市場においてファブレスを採用するということは、どのような意味があるのでしょうか?

EV市場におけるファブレス

EV市場は世界的に拡大しており、調査会社の富士経済は、2035年にEVの世界市場は、2020年の11倍にあたる2418万台に拡大すると予測しています。

そして、この波に乗ろうと毎年のように数々のEVベンチャーが誕生していますが、実際に波に乗れるのはごくごく僅かです。なぜなら、EVの製造には莫大な資金が必要になるからです。

さらに、EVを製造できたとしてもその電気自動車を市場に出すには、耐久性や安全性を確かめる数々の厳しいテストに合格しなければなりません。

しかしファブレスを採用することで、すでに確立されている技術を用いて自動車の基盤を製造することができ、市場に出すまでのプロセスを飛躍的に短縮できるのです。

世界的にもファブレス化が進む

世界に目を向けてみても、EVや自動運転分野においてファブレス化を進める動きが加速しています。

例えば、BMWなどの車のデザイナーをしていたヘンリック・フィスカー氏が興した企業である、「フィスカー社」もソニーと同じようにファブレスを採用しています。

フィスカー社は、アメリカで自社工場を持たずに製品を提供するEVメーカーとして初めての企業です。このためフィスカー社は「EVのビジネスモデルを変えた、EV界のApple」と高く評価されています。

さらに、フィスカー社だけではなく、スマートフォンメーカーとして有名な中国のXiaomi(シャオミ)もEV分野への参入を表明しました。そして当然、Xiaomiも自社で工場を持たないファブレスで進めると考えられています。

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ソニーがファブレスを採用した理由

ソニーやフィフスカー社は「マグナ・インターナショナル(マグナ)」に生産を委託しています。

マグナは完成車メーカーのために組み立てを請け負う世界最大の受託製造会社で、大手部品サプライヤーでもあり、一般の人にとっては馴染みのない企業でありながら、世界最大級の自動車関連会社です。

今後、EVは自社で製造するよりも、マグナのような製造に特化した専門的な企業に製造を発注して、デザインやシステムだけを自動車メーカーが行うという動きが加速していくことが予想されています。

ソニーの技術を生かしたオリジナリティがあるEVを目指す

マグナは「Power of Magna」と呼ばれるプラットフォーム(車体基盤)を建造し、モーターと車体基盤、バッテリーを組み合わせた「スケートボード」を造っています。

このスケートボードに自動車メーカーが設計した独自のシステムやボディを組み合わせることで、スムーズにEVを製造することが可能です。

さらに、スケートボードは自動車メーカーと協力することで、独自のシステムやパワー、サイズに変更することができます。実際に、フィスカーのCESブースではマグナとフィスカーのスケートボードが展示されています。

マグナのスケートボードのように柔軟性・信頼性が高いEVのベースと、ソニーが持っている独自の技術を組み合わせることで、オリジナリティのあるEVを造ることが可能になるのです。

つまり、EVは内燃機関などのハードで勝負するのではなく、システムなどのソフトで勝負することが重要になるため、同じプラットフォームを使用してどれだけの差別化を図れるのかがカギを握ります。

ファブレスによって時間もコストも圧縮できる

ソニーがファブレスを採用した理由はこれだけではありません。

製造部門を自前で用意するとなると大規模な投資が必要となりますが、これを全てアウトソーシングすることで、製品化までの時間やコストを大幅に圧縮することができます。

従来の自動車産業においては、パワートレインと呼ばれる自動車の駆動部を自社で製造しないという戦略は、ほとんどありえませんでした。しかし、EVとなると話は別です。なぜなら、EVにとって重要な部品はモーターとバッテリーだからです。

これにより、マグナが提供するスケートボードのようなプラットフォームを活用することで、多くの企業がEV市場に参入できるようになりました。

ソニーモビリティ株式会社がEV市場で成功すれば、今後はよりEV市場でファブレスを採用するメーカーが増え、EV業界はさらに「ハード」と「ソフト」に分かれることが考えられます。

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ソニーのEVが持つ3つの強みとは

2022年の「CES2022」で発表されたソニーオリジナルのEVコンセプトカー「VISION-S 02」。プロトタイプとは言えハリボテのようなものではなく、実際に走行できる自動車です。

ここでは、そんなソニーオリジナルのRVが持つ3つの強みについて見ていきましょう。

  • 安全性
  • 適応性
  • エンターテインメント

それでは1つずつ解説していきます。

安全性

ソニー製EVの強み1つ目は「安全性」です。

「自動車メーカーでもないソニーの車が安全ってどういうこと?」と感じる方もいるかもしれません。

しかしソニー製EVには、ソニーが得意とする「CMOSイメージセンサー(デジタルカメラやスキャナーの撮像素子として利用されているセンサー)」や「LiDAR(ライダー/離れた場所にある物の形や距離をレーザー光で測定するセンサー技術)」などがいくつも搭載されています。

そして、欧州では自動運転レベル2+(プラス)の機能検証も実施されているのです。

自動運転レベル2+とは?

自動運転技術はレベル1からレベル5まで分けられており、「レベル2+」とは「部分運転自動化」のレベル2と「条件付き運転自動化」のレベル3の間を指します。

具体例を挙げると、渋滞した場合においてステアリングから手を離してのACC(※)走行ができるもので、現時点における量産車としてはトップクラスの運転支援機能です。

※「ACC」とは自動的に加減速し、先行車と適切な車間距離を保ちながら追従走行して、ドライバーの運転負荷を軽減するシステムです。

適応性

ソニー製EVが持つ2つ目の強みは「適応性」です。

ソニー製EVはToF方式距離画像センサーを用いて、車に乗っている人に対するモニタリング機能を強化しています。

ToF方式距離画像センサーとは3D画像センサーと呼ばれるもので、XY方向だけではなくZ方向の情報も取得して「3次元空間としてのセンシング」を可能にします。

そして、3次元空間として情報を取得することで、ドライバー認証やジェスチャーによるコントロールなどができるようになるのです。

さらに、5G通信を用いて自動車とクラウドを連携させて、外から車をリモートで操作することができる技術の開発も進められています。

エンターテインメント

そして、最もソニーが得意とする強味が「エンターテインメント」です。

ソニーが持つハイレベルな音響技術を用いて、立体的な音場を実現する「360リアル・オーディオ」を搭載しているだけではなく、映像配信サービスも提供しています。

これだけではなく、自宅にゲーム機の「プレイステーション」があれば、リモート接続を可能にする技術も開発しているのです。

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ソニーのEV本格参入はまだ先か

ここまでソニーのEV市場への参入が持つ意義や強みをみてきましたが、実はまだソニーは本格参入すると決めたわけではありません。

「CES2022」で公表したことはあくまでも「EV市場への参入を本格的に検討する」ということであり、参入するとは公言していません。

しかし、これだけでも非常に大きな話題性があり各所でニュースとなったため、「ソニーがEV市場に本格参入する」という言葉だけが独り歩きしている状態です。

決算説明会で改めて説明

VISION-Sの市場投入は、検討することを発表したまでで、EV(電気自動車)市場への参入を決定したわけではない

ソニーの十時裕樹CFOは2022年2月2日に開かれた決戦説明会で、1月に「CES2022」で公表したことについて改めて説明しました。

また、「CES2022」では2022年春に設立するとした新会社「ソニーモビリティ株式会社」についても、具体的な設立時期は決まっていないとしています。

まとめ

ここまでソニーのEV事業への参入や、ソニー製EVについて見てきました。

EV市場が急速に拡大して自動車メーカーがしのぎを削るなか、殴り込みをかけるかと思われたソニー。

ソニー製EV「VISION-S」もお披露目して、その本気度は高いと考えられていましたが、その姿勢は意外と慎重なようです。

実際、十時裕樹CFOは「この分野に大きな資本を投下することは考えていない。バッテリーを開発するとか、車両自体を製造設備をもって造るとかは考えていない」と発言しています。

しかし、それでもソニー製EVが街を走る姿を見るのが今から楽しみでなりません。

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