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【機動戦士ガンダム】中間管理職「シャア」に学ぶしたたかなチームマネジメント

アニメ『機動戦士ガンダム』の放送から30年以上が経った今でも、理想の上司ランキングで上位にランクインするキャラクター、「シャア・アズナブル」。

彼が人々を惹きつける理由は、カリスマ性だけでなく、部下や上司でさえも思い通りに動かす「したたか」な交渉術を持っていたからです。

「したたか」とは「強くしっかりしているさま」「なかなか相手に屈しないさま」などの意味の言葉です。

菅義偉元首相の生い立ちを描いた本のタイトルが『したたか』だったことを踏まえると、「したたか」であることはリーダーに必要な素養なのかもしれません。

本記事では、『機動戦士ガンダム』の「シャア・アズナブル」について、チームマネジメントの視点から掘り下げ解説をしていきます。

参考:したたか 総理大臣・菅義偉の野望と人生 | AMAZON

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機動戦士ガンダムとは

※本記事はネタバレを含みます。

『機動戦士ガンダム』は、日本サンライズによって制作され、1979年に放送されたロボットアニメです。

ガンダムシリーズの第一弾であり、バンダイが関わるようになった他シリーズと区別するため、「ファースト(ガンダム)」や「初代ガンダム」と呼ばれることもあります。

その後、『機動戦士Ζガンダム』、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』とガンダムシリーズは続いていきますが、単純なロボットのアクションだけでなく、人間ドラマを中心に描かれているのが特徴です。

機動戦士ガンダムが放送打ち切りになった理由

今でこそ人気のガンダムシリーズですが、初代ガンダムは打ち切りによって当初の予定よりも早く放送が終わったのをご存じでしょうか?

今の時代のアニメは、「1クールが3ヶ月」と期間が決まっていますが、昭和の中頃は明確な決まりがなく、作品ごとに期間が違っていました。

『機動戦士ガンダム』はもともと「全52話」の放送予定だったのですが、実際には43話で打ち切りとなってしまいました。その理由は、視聴率の低さです。

ガンダムは登場人物たちの人間模様を丁寧に描いた作品です。そのため、 1970年代の他のアニメ、例えば 『タイムボカンシリーズ』や『ゲッターロボ』、『マジンガーZ』などと比較するとストーリーがわかりづらかったのです。

アニメの主な視聴者層だった子供たちが求めていた、爽快感溢れる勧善懲悪な話ではなかったため、思うように視聴率が伸びなかったという背景があります。

事実、平均視聴率は5.3%と低迷。

残念ながら当初期待していた視聴率が取れなかったため、メインスポンサーである「クローバー」は、『機動戦士ガンダム』のアニメ放送の打ち切りを決断したのです。

機動戦士ガンダムが今でも愛される訳

ガンダムは簡単な勧善懲悪の話ではありません。低年層向けというよりは、高年層向けのアニメです。

難しい内容であるため子供からは理解されませんでしたが、当時の大学生たちの心を掴んでいました。

その理由はリアルな人間模様だと考えられています。

例えば、ガンダムの主人公「アムロ」はずっと部屋に籠っていたネガティブで後ろ向きな主人公。よくある正義感に溢れた主人公ではありません。

さらに、ガンダムに登場してからも上官の陰口を叩く、指導に対して顔を背ける、同僚からのアドバイスに対しても小言を言う。いうなれば、アムロはガンダムに乗って敵を倒すのが好きな主人公ではないのです。

子供たちにとって不評な物語だというのは納得がいきますよね。しかし、大人にはどう映ったでしょうか。

ガンダムに乗れたからという理由で無理やり軍に入れられ、戦わさせられる。アムロのような言動をとるのも仕方がないと思いませんか。

このように、ガンダムはリアリティ溢れる物語なのです。

アムロにも正義があます。それは、敵対するジオン軍のシャアも同じです。シャアにはシャアの正義があるのです。こうした、一口に善悪を判断できず、見る人に考えさせる物語が大人にウケたのは納得がいくことでしょう。

実は、当時のガンダムを支持していた大学生たちの間で、アニメ終了後に非常に流行ったものがあります。それはガンプラです。

ガンプラは「ガンダムのプラモデル」のことですが、日本で再度ガンダムが注目されることになったのは、ガンプラの販売が理由だと言われています。

アニメが終わった1980年に、「1/144ガンダム」が発売されました。以後、ガンプラは説明書を読みながら中高生でも作れるといった親しみやすさや、オリジナルで作成ができるカスタマイズ性から人気を博しました。

このガンプラの人気によって、テレビアニメが再び注目されるようになりました。

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シャア・アズナブルとは

誕生日11月17日
血液型AB型
出身地ジオン共和国
身長175cm(一年戦争時)
体重65キログラム(『Ζガンダム』時)
CV池田秀一

シャア・アズナブルは池田秀一が声優を演じた、『機動戦士ガンダム』及びその関連作品に登場するキャラクターです。

ジオン軍の指揮官であり、エースパイロットでもあるシャアは、「赤い彗星」という異名を持ち、もうひとりの主役と言わんばかりの存在感を放っています。

シャアは今でも人気のキャラクターですが、その人気ぶりは極めて高いパイロットとしての素質があるからという理由だけではありません。クールに人々の心を掴むカリスマ性が高く評価されているのです。

ジオン軍におけるシャア・アズナブルの役割

シャアはガンダムにおいて上司でもあり部下でもある管理職の役割を負っていました。

多くの部下を持つ一方、宇宙攻撃軍の一部隊を率いるドズル・ザビ中将の部下でもあるシャアは、時には部下を指導し、時には上司を説得しなければならない人物でもあったのです。

ただし、はじめからシャアが優秀な上司だったわけではありません。

  • 結果さえ出せばいいと考え部下を失ってしまった過去
  • 独断によりモビルスーツを失ってしまったこと

こうしたミスをシャアは幾度となく起こしてきました。

しかし、シャアの有能な点は、自らの失敗をカバーすることができるしたたかさにあります。

サイドストーリーとして捉えるには壮大すぎるかもしれませんが、このように、マネジメントの視点からシャアを見てみると面白いかもしれません。

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シャア・アズナブルの壮絶な生い立ちとは

シャアの本名はキャスバル・レム・ダイクンです。

父親はジオン共和国創始者であるジオン・ズム・ダイクンで、母親はアストライア・トア・ダイクンです。偉大な父親を持つシャアですが、父親の死により波瀾の運命を辿ることになります。

ここからは、シャアの過去について解説します。

迫害された幼少期

キャスバル(シャア)が9歳となる宇宙世紀0068年、父親が演説中に急逝してしまいます。記録上は病死となっていますが、ザビ家の「デギン・ソド・ザビ」らによる暗殺とも言われています。

父親の死後は、ザビ家によって迫害を受けることになり、キャスバルと妹のアルテイシア(セイラ・マス)は地球への逃避を余儀なくされました。

この際、キャスバルは名前をエドワウ・マスに、アルテイシアはセイラ・マスへと名前を変えています。

そしてキャスバルに復讐の炎を燃え上がらせたのは、キャスバルの母アストライア・トア・ダイクンの死です。父ダイクンの死後、幽閉の身となるアストライアはキャスバルたちとの再会を果たすことはなく病死してしまうのです。

この出来事は妹のアルテイシアを深く傷つけ、妹思いのキャスバルにとってザビ家への復讐の意思を強めるきっかけとなりました。

なお、シャアのしたたかさはこの頃から発揮され始めています。

本物のシャア・アズナブルと入れ替わる

地球へと逃れ、テキサスコロニーに移住した際、キャスバルは自身と瓜二つのシャア・アズナブルという人物と出会い、友人となります。

両者はさながら見分けがつかないほど酷似しており、違うところといえば、瞳の色と性格くらいでした。

キャスバルの友人であるシャア・アズナブルはジオン士官学校に入学が決まっていました。

ザビ家への復讐にはジオン士官学校に入るのが手っ取り早いと考えたキャスバルは、タイミングを見計らい、入れ替わりの提案をします。

提案が受け入れられ、空港のトイレで入れ替わったキャスバルは、シャアとしてそのままジオン士官学校へ入校。

そして本物のシャアはキャスバルと間違われ、キャスバルを危険視していたザビ家の刺客に暗殺されてしまいます。

なお、キャスバルはこうなることを予見していたため、「キャスバル」という存在が死んだとザビ家に思わせつつ本物のシャアを排除するという、実に巧妙な手口で入れ替わりを果たしたわけです。

シャアことキャスバルの行動は「正義」とは言えませんが、目標を達成するために邪魔なものを容赦なく排除する姿勢は、まさにしたたかです。

復讐のため宇宙攻撃軍に入隊

ジオン士官学校を卒業したシャアは、ザビ家への復讐を胸に宇宙攻撃軍に入隊し、その後はエースパイロットとして活躍します。

愛機である初期量産型ザクIIを赤色に塗り替え、たったひとりで5隻もの敵艦を鎮める働きをします(ルウム戦役)。以降、シャアは「赤い彗星」と呼ばれるようになり、出世を続けていきます。

「赤い彗星」という名は、地球連邦軍の一兵士にまで轟き、シャアは世界中で恐れられる存在となりました。

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シャア・アズナブルに学ぶしたたかなマネジメント術とは?

シャアはいちプレイヤーであると同時に、チームのマネジメントを受け持つマネージャーとしての役割を負っていました。

シャアが中間管理職として任務を達成し、成果を上げることができたのは上司と部下の間に挟まれながら、双方との関係を良好にするしたたかさがあったからです。

そして、シャアの強さはマネジメントのみならず、物事を大局的に見る力にもあります。

ここからは、そんなシャアのマネジメント術を解説します。

戦う前の準備を怠らない

「戦いとはいつも2手3手先を考えて行うものだ」

これは神出鬼没な戦術で、ホワイトベース(※)のクルー達を苦しめたシャアのセリフとして有名です。シャアは戦う前にはいつも周到な準備をしていました。

戦局がどのように動いても対処できるようなしなやかなマネジメント術を心得ていたのです。

上司が部下を動かすためには、常に先を読んで部下の配置を変える必要があります。その際、適切な指示を出すためには、判断力だけでなく、先を読む力が必要です。

そしてこの先読みの力はリスクマネジメントにも関係があります。

企業経営においては、起こりうる問題を前もって把握しておき、リスクを最小限に抑えるマネジメントが必要です。

事前に起こりうるリスクを全て把握した上で戦いに挑むシャアの姿勢は、マネジメント層にも参考になるでしょう。

※ホワイトベースとは、ガンダム世界における空母のこと。

部下のやる気を高める言葉

「戦闘時間は2分とないはずだが、諸君らであればこの作戦を成し遂げられるだろう。期待する」

上記は部下を鼓舞するシャアの言葉ですが、ここでのポイントは「諸君らであれば」という限定的な表現です。実はこの言葉は、かの有名なパナソニックの創設者「松下幸之助」を彷彿とさせます。

経営の神様とも称される松下幸之助。

松下幸之助が手がける松下電器が初めてアイロンの開発をはじめたころ、金属加工の経験しかなく、電熱は無知だった若い技術者にその開発を託しました。

若い技術者はその申し出を断るわけなのですが、松下幸之助は「君ならできる」という一言を残し開発を続けさせたそうです。

結果としてアイロンの開発は成功。部下に任せることで部下の自信、やる気を高めて目標を達成させた話として今なお語り継がれています。

ここからわかるのは、部下のやる気を高めるためには、他の誰でもない、唯一無二の存在だと伝え、任せることが大切だということです。

シャアはこうした心理を理解した上で、部下の育成もしたたかに行っていたことが窺えます。

上司を思い通りに動かす「したたかな」交渉術

シャアが中間管理職として優れていた点は、部下のみならず上司までをもしたたかに扱っていた点にあります。

シャアは部下をアムロのいる宇宙コロニー「サイド7」に偵察隊として派遣しますが、戦果を上げることに焦った部下が自己判断でサイド7を攻撃。この戦いで3機あったザクのうち2機を失ってしまいます。

部下を管理しなければならない中間管理職として、部下をマネジメントできなかったことは大きな失態です。シャアはこの報告を上司である「ドズル」にするのですが、その報告が秀逸でした。

第一声から怒りをあらわにするドズルに対し、シャアは一言「連邦軍のV作戦をキャッチしたのです、ドズル中将」と伝えます。

その後ドズルの「よくやった」という発言にシャアはすぐさま「しかしザクを3機失いました」と返します。

そして「3機のうちの2機は敵軍にやられました」と続けるシャア。

この際、ドズルの意識は「敵軍を発見したが、強かった」という方向に向けられており、ドズルはシャアが失敗したとは考えなくなっています。

この後シャアが「帰還途中でありましたので、ミサイル、弾薬がすべて底をつき」と言えば、ドズルは「補給が欲しいのだな?」と答える。

シャアは自身の失敗を完全にプラス方向に転換し、補給まで成し遂げています。

シャアには、任務の達成のために、上司への「報・連・相」までをしたたかに成し遂げる力がありました。

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シャア・アズナブルから学ぶ中間管理職のあり方

中間管理職として活躍したシャアから私たちが学ぶことができるのは以下3点です。

  • リスクマネジメントスキル
  • 相手を納得させる実力と話術
  • 上司の役割の理解

中間管理職として事前に発生するリスクを見抜いておくリスクマネジメントスキルに長けているのがシャアでした。

また、部下に対してはやる気を引き上げたり、時には背中を見せることで部下を安心させたりする。

部下の失敗を自分事として捉え、上司へ報告する姿勢からは、今の中間管理職も学べることは多いでしょう。

そしてシャアの最大の強みは、上司としての役割を理解していたことにあります。

シャア自身、上官としての権威に興味があるのではなく、役職などはあくまでも自身の目的を達成するための器でしかなかったのです。

だからこそ、職務を全うすることができたのです。

まとめ | シャア・アズナブルはしたたかにチームを取りまとめる中間管理職

強烈なカリスマ性を持ち、部下からは慕われ、上司からも信頼されていたシャア。シャアは間違いなく有能な中間管理職でした。

中間管理職は辛い仕事です。上司と部下の板挟みとなって対応しなければならないため、ストレスは溜まり、中には鬱病になってしまうほどの精神的な負担を感じる方もいます。

目標数値に追われ、働く時間は増え、しかし残業時間は付与されない…。

シャアはこうした悩みを抱える中間管理職のストレス軽減にも繋がる、したたかな心構えを教えてくれます。

シャアも決して完璧な人間ではなく、失敗をしていました。

それでもシャアが活躍できたのは、上司という「役割」を感情的に考えるのではなく、組織を存続させるための機能として考えていたからでしょう。

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