突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?
- 「NVIDIAって名前だけは聞いたことがあるけど、実際どんな会社なの?」
- 「トヨタがNVIDIAと提携したけど、どうしてGPUメーカーと提携するの?」
- 「NVIDIAはどうして1年前と比べて95%も株価が上昇したの?」
アメリカの半導体メーカーであるNVIDIA。
一般的にはパソコン用のGPUをつくっているメーカーというイメージがありますが、実は今はただのGPUメーカーではありません。
いまや、人工知能チップのシェアを支配し、自動運転システムの開発も手掛ける「半導体の覇者」ともいえる存在なのです。
本記事では、NVIDIAがどのような会社なのか、また何がすごいのかなどを解説していきます。
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NVIDIAの何がすごい?
NVIDIAの歴史や事業内容を紹介する前に、まずは「NVIDIAは何がどうすごいのか?」といった点を紹介していきます。
NVIDIAの凄さがわかる、わかりやすい事例は下記の4つが挙げられます。
- 株価が5年で15倍に
- 人工知能アルゴリズムの訓練関連の市場をほぼ100%支配する
- 半導体メーカー世界ランキングで7位
- アナリスト予測を上回り、何度も過去最高売上を更新している
それでは1つずつ解説していきます。
5年で15倍となった株価
NVIDIAの株価は5年で15倍にもなっています。
また、2021年の1年間だけで57%も上昇しており、2020年と比べると95%もの上昇を見せています。
さらに、半導体の需要が高騰したことを受けて一時期125%もの上昇を見せ、2021年に大きな期待を寄せられた一社となりました。
さらに、ブルームバーグのデータによると、ウォールストリートのアナリスト46人のうち、83%がNVIDIAの株を「買い」としており、13%は「中立」としています。
このように、NVIDIAは市場だけではなくアナリストからも大きな期待を寄せられているのです。
現在の水準での時価総額は732億ドル(およそ8兆3,000億円)となっており、米国証券取引所で取引されている企業のなかで、7番目に価値が高い企業となっています。
これはウォーレン・バフェットが会長兼CEOを務めるバークシャー・ハサウェイや、台湾の半導体製造装置メーカーである「台湾積体電路制造(TSMC)」を抑えての順位です。
(参考:2022年の幕開けとともに買いたい、勝ち組ハイテク株3選丨Investing.com)
人工知能アルゴリズムの訓練関連の市場をほぼ100%支配する
アナリストであるカール・フロイント氏によると、人工知能アルゴリズムの訓練に関する市場のほぼ100%を、NVIDIAのGPUが占めていることがわかっています。
日本の理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、処理性能ランキングで1位になったことで、スーパーコンピューターランキングが話題になりましたよね。
このランキングの上位500台のスーパーコンピューターのうち、およそ7割がNVIDIAのGPUを使用しているのです。
実質、あらゆるスーパーコンピューターのパフォーマンスはNVIDIAによって支えられていると言っても過言ではありません。
半導体メーカー世界ランキングで7位
アメリカの調査会社IC Insightsによると、2021年の半導体売り上げランキングトップ10のなかで、NVIDIAは第7位にランクインしています。
また、もっとも成長率が高いのは65%増のAMDでしたが、NVIDIAもまた50%以上の成長率の達成が期待されています。
このランキングでは第1位にSamsung、第2位にはintel、第3位にはTSMCがランクインするなどそうそうたる企業が名を連ねていますが、実はこのなかで最も時価総額が高いのはNVIDIAなのです。
(参考:半導体メーカー世界ランキング2021、売上高100億ドル超え企業は17社の見込み丨TECH+)
アナリスト予測を上回り、何度も過去最高売上を更新する
2018年、NVIDIAの売上高は前年度比で41%増の97億ドル(およそ1兆700億円)でした。
さらに、売上高97億ドルの56%はゲーミング事業で55億ドル(およそ6,000億円)にも達しており、NVIDIAにとってゲーミング事業は主力事業と言えるでしょう。
2021年2月に発表された2021会計年度第4四半期決算では、ゲーミング事業とデータセンター事業で過去最高を記録しています。
第4四半期の売上高は前年同期比61%増の50億ドル(およそ5,700億円)となり、アナリストの予想を上回りました。
通年では、売上高が前年同期比53%増の166億8,000万ドル(およそ1兆9,000億円)にも達しており、会社全体の売上高でも過去最高となっています。
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さらに、2021年11月に発表された第3四半期の決算でも、ゲーミング事業とデータセンター事業の売上高が再び過去最高を更新しています。
今回もアナリスト予測を上回り、売上高は前年同期比50%増の71億300万ドル(およそ8,100億円)と、大幅な増収増益でした。
ゲーミング事業とデータセンター事業でも、それぞれ42%増の32億2,000万ドルと55%増の29億4,000万ドルとなっており、合計で61億6,000万ドル(およそ7,000億円)です。このとき、データセンター事業は過去最高を更新しています。
(参考:NVIDIA、ゲームとデータセンターの両事業で売上高が過去最高に丨ZANet Japan)
(参考:NVIDIA、売上高・純利益ともに過去最高 ゲームとデータセンターが好調丨ITmedia NEWS)
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いかがでしょうか? あまり日本では耳にすることは多くはありませんが、NVIDIAは半導体業界のトップを走る世界的なプレイヤーの一社なのです。
ここでは、NVIDIAがどのような企業なのか簡単に見ていきましょう。
NVIDIAとはどんな企業なのか
NVIDIAとは正式には「NVIDIA Corporation(エヌビディアコーポレーション)」といい、アメリカのカルフォルニア州にある半導体メーカーです。なかでもGPUに特化している点が特徴といえます。
GPUとは、「Graphics Processing Unit」の略称であり、日本語では「画像処理装置」などと訳されます。3Dグラフィックスなどの画像描写を行う際に必要になる計算処理や、演算を行う半導体チップ(プロセッサ)がGPUです。
一方で、GPUと混同されがちなCPUは「Central Processing Unit」の略称で、日本語では「中央演算処理装置」といいます。CPUは「パソコンの頭脳」と呼ばれるように、あらゆる計算処理を行います。
しかし、GPUは「画像処理専門の頭脳」であり、膨大な演算を必要とする画像処理や画像認識を担っているのです
NVIDIAはファブレスメーカーとして成長した
また、NVIDIAの特徴としては「ファブレスメーカーであること」が挙げられます。
つまり、NVIDIAは自社で工場を持っておらず、全ての製造は外部の企業に委託しているのです。したがって、NVIDIAで行っているのは設計や研究開発だけとなっています。
このように経営する「ファブレス経営」をすることでNVIDIAは、
- 自社の得意分野に集中できる
- 市場の変化にスピーディかつフレキシブルに対応できる
- 設備投資の負担を軽くできる
といったメリットを享受できます。
NVIDIAが生産を委託しているのは、半導体受託生産で世界最大手のTSMCです。
NVIDIAはTSMCとタッグを組んだからこそ、今のような大きな成長を遂げられたといっても過言ではありません。
ファブレスメーカーとは?
ファブレスメーカーとは、生産や製造を行う施設・工場を自社で持たない企業のことで、製品の製造はすべて他社に任せてしまいます。
ファブレス「ファブ」とは「fabrication facility」のことであり、これは「生産を行う工場などの施設」のことです。
つまり、このファブに「切り分ける、少ない」という意味の「Less」を付け加えて、「施設・工場を持たない」という意味を表現しています。
アメリカのAppleや、日本のユニクロなどがファブレスメーカーとして有名です。
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NVIDIAといえば近年は、自動運転システムの開発や人工知能研究を支える学習用チップを提供する企業として認知されるようにもなってきました。
しかし、NVIDIAの屋台骨を支えているのはこのどちらでもなく、ゲーミング事業です。具体的に言うと、e-Sportsのプレイヤー・ゲーマーが使うゲーミングPCに用いられる「GeForce」というGPUの販売です。
実際、2018年にはNVIDIAは利益率60%を超えており、これは半導体メーカーとして有名なintelと同じ水準でもあります。
e-Sportsの流行が追い風に
そんなNVIDIAのゲーミング事業の追い風となっているのが、e-Sportsの世界的な流行です。
e-Sportsはコンマ1秒を競う世界であり、有利に立つためにも少しでも処理能力が高いグラフィックボードが求められています。
そんなe-Sportsの世界に憧れる新規プレイヤーもまた、トッププレイヤーが使用しているものと同じグラフィックボードを使用するため、結果的にNVIDIAのゲーミング事業は伸びていきました。
ゲーミング事業で培った技術が人工知能研究で活用される
ゲーミング事業で成長させた高性能なGPUは、人工知能研究やディープラーニング研究、また自動運転システムの開発で活かされるようになります。
ディープラーニング(深層学習)とは、音声や画像、テキストなどの膨大なデータを高速でコンピューターに学習させて、その意味を把握させる機械学習の手法の一つです。
GPUを使うことで、通常であればおよそ1年かかるディープラーニングの処理が1ヶ月程度に短縮することが可能になり、開発効率を飛躍的にあげることができます。
したがって、いまや人工知能開発やディープラーニング研究においては、GPUは必要不可欠な存在となっているのです。
ディープラーニング研究の先にある自動運転システム
2017年5月、トヨタ自動車とNVIDIAは提携を発表しました。
NVIDIAのことを「ゲーミング事業で儲かっているGPUメーカー」としてしか認識していなかった多くの人にとって、「なぜトヨタと提携するのか?」と疑問を感じたかもしれません。
しかし、実はトヨタだけではなく、フォード、ボルボ、メルセデス・ベンツ、アウディ、テスラといった世界の錚々たる自動車メーカーとも、すでに自動運転システムの分野で提携済みなのです。
なぜなら、NVIDIAのディープラーニング研究の延長線上には、自動運転システムの開発があるからです。自動車の運転とは人間が行っても複雑な行為であり、視覚や聴覚などをフル活用しなければならず、高度な状況判断能力が求められます。
したがって、単なる画像認識や空間処理を行うだけのシステムでは、自動運転の実現は困難なのです。
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自動運転には非常に高度な処理や分析が求められますが、それを可能とするのがNVIDIAのGPUです。
NVIDIAはもともと3Dゲームの分野で求められる高速なグラフィック処理を可能にする高性能なGPUを開発していたため、その高度な計算処理能力にディープラーニングの研究者が目をつけて利用し始めたのです。
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ここまで見てきたように、NVIDIAはまさに破竹の勢いで成長を見せる企業であり、この勢いは今後も収まる様子はみられません。
しかし、そんなNVIDIAにもリスクはあります。それは、業界最大手のintelが大きな障壁となるリスクです。intelにはこれまで培ってきた技術力はもちろん、膨大な資金力も兼ね備えており、また、技術開発にも注力しています。
さらに、NVIDIAは工場を持たないファブレスメーカーであり、製造はTSMCに依存しています。
TSMCは台湾の企業であるため、中国との政治的リスクや地政学的リスクによって製造が困難になるかもしれません。
一方でintelはファブレスメーカーではなく、自社で製造能力を有しているためその点では有利に立つことができます。
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ここまでNVIDIAの基本的な知識から、強さの秘密を見てきました。
NVIDIAはゲーミング事業をはじめ、人工知能研究や自動運転システムの開発にも力を入れています。
GoogleやAppleも自動運転システムの開発に着手しているように、今後は自動車メーカーだけではなく、IT企業が自動車を売る時代が来るかもしれません。
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