突然ですが、下記のような疑問を感じてはいませんか?
- 「SDGsって聞いたことはあるけど、どういう意味なの?」
- 「SDGsに取り組むメリットって何かあるの?」
- 「SDGsで変わる社会に対するリスクマネジメントはどうすればいい?」
近年、急速に「SDGs」という言葉を見聞きするようになりました。
実際、日本人においてはおよそ2人に1人が「聞いたことがある」と答えており、その認知度は日に日に増しています。
しかし、SDGsの正確な意味や取り組む意味、メリットなどを正確に理解している方はまだまだ少ないのではないでしょうか?
企業においても、リスクマネジメントや経営の観点からSDGsを適切に捉えておかなければ、ステークホルダーとの関係が悪化したり企業のイメージが低下してしまうかもしれません。
そこで、本記事ではSDGsに関する基本的な知識から、リスクマネジメントとしてSDGsに取り組むメリットなどを解説していきます。
(参考:【SDGs認知度調査 第7回報告】SDGs「聞いたことがある」約5割丨朝日新聞社)
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SDGsとは?
SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは「Sustainable Development Goals」の頭文字を取った言葉で、「持続可能な開発目標」を指しています。
2015年9月に国連で開かれたサミットで採択された国連加盟193カ国が、2016年から2030年の15年間で達成するために掲げられた国際社会共有の目標です。
発展途上国や先進国といった国の状態に関わらず、地球上のほとんどの国が採択した国際目標なので、「誰ひとり取り残さない(leave no one behind)」ということを誓っています。
SDGsの前身、「MDGs」とは
2000年に開かれた国連のサミットで採択された「ミレニアム開発目標」と呼ばれる「MDGs(Millennium Development Goals)」が、2015年に達成期限を迎えたため、これに代わる新しい国際社会共有の目標として採択されたのが、SDGsです。
MDGsは飢餓や貧困を無くすことや乳幼児死亡率の削減をはじめとする、下記の8つの目標を掲げていました。
- 目標1:極度の貧困と飢餓の撲滅
- 目標2:初等教育の完全普及の達成
- 目標3:ジェンダー平等推進と女性の地位向上
- 目標4:乳幼児死亡率の削減
- 目標5:妊産婦の健康の改善
- 目標6:HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止
- 目標7:環境の持続可能性確保
- 目標8:開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
(参考:ミレニアム開発目標(MDGs)丨外務省)
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SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や事例をわかりやすく解説!SDGsの「17の目標」
SDGsでは17項目の目標と、その目標を達成するための具体的な169のターゲットが掲げられており、さらにその下に232個のインジケーター(指標)があります。
SDGsの17の目標は下記の通りです。
- 貧困をなくそう
- 飢餓をゼロに
- すべての人に健康と福祉を
- 質の高い教育をみんなに
- ジェンダー平等を実現しよう
- 安全な水とトイレを世界中に
- エネルギーをみんなに そしてクリーンに
- 働きがいも経済成長も
- 産業と技術革新の基盤をつくろう
- 人や国の不平等をなくそう
- 住み続けられるまちづくりを
- つくる責任つかう責任
- 気候変動に具体的な対策を
- 海の豊かさを守ろう
- 陸の豊かさも守ろう
- 平和と公正をすべての人に
- パートナーシップで目標を達成しよう
このなかで目標1~6は「貧困」や「飢餓」、「ジェンダー」など社会に関する目標で、目標7から12が「雇用」や「経済成長」など経済に関する目標です。
そして目標13から15が「気候変動問題」や「持続可能性」など環境に関する目標、目標16と17はSDGsの目標を達成するためのガバナンス強化や投資促進に関する目標となっています。
「SDGs」・「CSR」・「ESG」の違いは?
SDGsを語る際によく出てきて混同されがちな言葉として「CSR」と「ESG」があります。
それぞれの意味を簡単に見ていきましょう。
CSRとは
CSRとは「Corporate Social Responsibility」の略であり「企業の社会的責任」と訳されます。
簡単に言うと、CSRとはステークホルダーからの信頼を得るために企業が行う慈善活動です。
SDGsはビジネスによって社会や環境の問題を解決することを目指していますが、CSRはあくまでも慈善事業であり、ボランティアのようなものです。
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【批判される】SDGsウォッシュとは?見せかけのサスティナブルにしないための対策や事例ESGとは
ESGとは、下記の3つの単語の頭文字から作られた言葉です。
- Environment(環境)
- Social(社会)
- Governance(ガバナンス)
環境(E)は地球温暖化対策などを、社会(S)はサプライチェーンやジェンダーの平等などの問題を指しており、そしてガバナンス(G)は法令順守などを意味しています。
こういった問題に積極的に取り組んでいる企業を高く評価し、投資をする「ESG投資」が近年では注目されており、SDGsはCSRやESG投資とは切っても切り離せない関係なのです。
企業がSDGsへの取り組みに注目する理由
現在、4社に1社はSDGsに積極的に取り組んでいるとされていますが、なぜこれほどまでにSDGsは注目を集めているのでしょうか? その背景には下記の3つのポイントがあります。
- 環境・社会問題への取り組み
- 新たなビジネスチャンス
- 企業価値の向上
それでは1つずつ解説していきます。
環境・社会問題への取り組み
従来であれば、企業は純粋に利益の追求だけをしていることが許されていましたが、1990年代以降は、企業が活動する際は公害や地球温暖化などの環境・社会問題に対しても配慮しなければならなくなりました。
その傾向は年々加速しており、現代ではCSRという言葉が広く用いられるようになっています。企業は事業を展開するにあたってそれに伴う社会的責任として、環境やステークホルダーに対して配慮することが求められるようになっているのです。
新たなビジネスチャンスとなる
SDGsへの取り組みは、新たなビジネスチャンスでもあるというのが、現在注目されている理由の1つです。
SDGsに取り組むことで新規市場の開拓につながり、「ビジネスと持続可能開発委員会」によれば、2030年までに12兆ドルもの市場機会が創出されると言われています。
さらに、デロイトトーマツが「SDGsビジネス」について2017年時点での世界全体での市場規模を目標ごとに試算した結果、小さいもので70兆円、最大800兆円にものぼることがわかりました。
このように「SDGsビジネス」は、一般的な「◯◯製品・サービス」といった市場規模と同様の大きさがあり、このことは認識しておくべきでしょう。
企業価値の向上
近年、SDGsに限らず環境問題や社会問題に取り組んでいる企業は、長期的に企業価値を向上できるという評価がされやすくなっています。
近年では、環境や社会、企業統治に積極的に取り組む企業に投資をする「ESG投資」が注目を集めているため、SDGsに取り組むことで企業価値の向上につなげられるでしょう。
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SDGsに取り組むことで期待できるメリットには下記のようなものがあります。
- ステークホルダーとの関係強化
- 優秀な人材の確保
- 資金調達が有利になる
それでは1つずつ解説していきます。
ステークホルダーとの関係強化
SDGsに取り組むことで企業と何らかの利害関係にある「ステークホルダー」との関係性を強化・改善できます。ESG投資への注目が集まっている昨今においては、SDGsへの取り組みは株主や顧客からの評価を上げることができるのです。
この結果、企業価値の最大化にもつながるうえに、潜在的なリスクを抑えることにもつながります。
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SDGsへの取り組みは人材確保にもつながります。
株式会社ベイニッチが2021年に行った調査によると、就活生のおよそ70%がSDGsについて認知していることがわかりました。
「就職先企業を選ぶうえで重視した点はなんですか?」という質問に対して、最も多かったのが「職場の雰囲気の良さ」でおよそ67%、その次に「給与・待遇の良さ」でおよそ64%、「SDGsに対する姿勢や取り組み」は17.3%でした。
この項目は2020年は6.4%だったため、1年で2倍以上にも増えているのです。
昨今のSDGsへの注目の高まりから考えると、この数は今後も伸びていくことが予想されます。SDGsに取り組んでいない企業は就職先企業として選ばれなくなる可能性も高いでしょう。
(参考:22卒就活生の約7割が、SDGsについて認知 企業選びにも影響し「将来性の指標になる」の声丨PRTIMES)
(参考:SDGsを認知している就活生は約7割。「目標への取り組み姿勢」は就職先を選定する判断軸に丨人事ポータルサイト HRpro)
資金調達が有利になる
世界持続的投資連合によると、2020年の世界におけるESG投資額が35.3兆ドル(約3,900兆円)だったことがわかっています。
この数字は2018年に比べて15%増えており、気候変動や人権問題に対する関心が高まったことを受けて、ESG投資が加速したとされています。
このように、ESG投資が世界的に浸透しつつあるなかで、SDGsに取り組んでいる企業はESG投資を通じて資金調達をしやすくなるでしょう。
(参考:世界のESG投資額35兆ドル 2年で15%増丨日本経済新聞)
リスクマネジメントの観点からみたSDGs
SDGsに取り組むことは、今後の企業活動において避けては通れないことだと言えます。
上記で見てきたように、SDGsへの取り組みにはさまざまなメリットがありますが、リスクマネジメントの観点から、SDGsをどう捉え、実践していくかも非常に重要です。
なぜなら、リスクマネジメントの本質は、社内外を問わず環境の変化に対して迅速に対応し、自社の目標達成の機会や損失が生じる可能性を察知し、適切に対策をとることにあるからです。
世界的に推し進められるSDGsの波に抵抗することは無謀であると言えます。
したがってここで重要になるのは、「SDGsへの取り組みが進むことによって生じる、自社への影響やリスク、またはどのようなチャンスを得られるのか?」を考えることです。
「イメージアップのPR材料」と捉えていませんか?
もし、自社がSDGsへの取り組みのことを単なる「企業価値を上げる行為」や「イメージアップのPR」と捉えているのであれば、それは将来的に生じるかもしれない大きなリスクやチャンスを見逃している可能性が高いといえます。
実際、SDGsに取り組んでいると言いながらSDGs、経営企画、リスクマネジメントの管轄がバラバラのままで、それぞれが自由に意思決定をしており、組織がSDGsをリスクマネジメントとして捉えていないケースが少なくありません。
このように、SDGsに対して企業が一丸となって取り組まず、傍観者であり続けるのは企業にとってリスクとなります。
リスクマネジメントの観点からSDGsを考えて、SDGsによって生じる環境の変化を把握して経営戦略に落とし込んでいくことが、長期的な企業価値の最大化につながるのです。
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SDGs時代とも言える現代、そしてこれからの時代においては、企業のリスクマネジメントは従来のままでは対応しきれない変化が生じることが予想されます。
したがって、今後のリスクマネジメントは下記の3つの観点からリスクマネジメントを進めていくことが重要です。
- 事業ポートフォリオの構築・管理
- 環境変化によって生じるリスクの把握
- 変化に対する柔軟性の獲得
それでは1つずつ解説していきます。
事業ポートフォリオの構築・管理
SDGsによって変化する時代においては、「適切なリスクテイク」による企業価値の最大化を目指すことが重要です。
リスクとリターンの最適化を行い、リスクをただ避けたり回避することなく、リスクをとったうえでリターンを狙うのに必要な事業ポートフォリオの構築・管理が求められます。
環境変化によって生じるリスクの把握
続いて、SDGsによって生じるリスクの把握です。このような、現在は存在・認識していないが、環境の変化によって生じたり変化するリスクである「エマージングリスク」の把握と管理が重要になります。
昨今では、企業におけるエマージングリスクのほとんどが、SDGsやESGに関するリスクであるため、これらのリスクをいかに把握して管理するかが多くの企業にとって課題となっています。
変化に対する柔軟性の獲得
そして、もし予想外の変化が起こったとしても、大きなダメージにならないような「変化に対する柔軟性」を獲得することも重要です。これは、「企業のレジリエンスを強化すること」とも言い換えられます。
先行きが見通せない「VUCAの時代」においては、何が起こるか誰も予想ができないため、何が起こっても可能な限り事業を続けられるような体制にしておくことが、企業にとって重要なリスクマネジメントとなるでしょう。
まとめ
ここまで、SDGsの意味から混同されやすい用語との関係性と注目の理由、そして企業経営との関わりまでを解説しました。国連で採択されたSDGsの目標達成には、政府の取り組みだけでなく、企業や個人としての努力もかかせません。
また、SDGsを組み込んだ企業経営は資金調達やリスクマネジメントといった経営面でも大きな意味合いを持ちます。正しく理解した上で、自社がどのような面でどのような形で実践していくべきか、考えていきましょう。
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