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企業主導型保育所とは?設置するメリット・デメリットをわかりやすく解説

経営者

企業主導型保育所を導入するメリットってあるのかな?
福利厚生に繋がります!本記事で詳しく導入方法も説明します。

専門家

近年では「企業主導型保育所」を設置する企業が増えつつあります。

企業主導型保育所の設置により、従業員の就業時間や労働形態に沿った保育サービスを提供することが可能です。

本記事では、以下の点をわかりやすく解説していきたいと思います。

  • 企業主導型保育所の始まり・理由
  • 企業主導型保育所のメリット・デメリット
  • 導入に際して受け取れる助成金と条件

企業主導型保育所を活用することで、子供を持った女性の再就職などが見込まれます。

今後、女性に現場で活躍してもらいたいとお考えの経営者にはぴったりの記事ですので、ぜひご覧ください。

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企業主導型保育所とは?

企業主導型保育所は、企業が従業員向けに、事業所内もしくは周辺に設置する保育所です。

内閣府が事業主拠出年金などを財源にして運営している制度のひとつです。

参考:1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット | 内閣府

企業主導型保育所の始まり

企業主導型保育所は、会社に勤める従業員がより柔軟な働き方をできるように、平成26年に厚生労働省が導入した制度です。

企業は本制度を利用して、複数の企業が連携してサービスを提供できるようになり、許認可外施設でありながらも許認可と同程度の給付金を受け取れるようになりました。

その結果、企業主導型保育所を導入する企業が増え保育サービスを活用することで、従業員は、働き方や子育てのあり方をよりよく選択できるようになりました。

企業主導型保育所ができた理由

企業主導型保育所が推進された理由として「待機児童」という問題が背景にあります。

「保育所に入所させたくてもできない」という世帯が多く、現在でも重大な社会問題として扱われています。

厚生労働省によれば、令和2年10月の時点で、全国で実に27,814人の待機児童が存在するとのことです。

政府も問題解消に取り組んでいますが、未だ根本的な解決への見通しは立っていません。

その問題を少しでも解決するため、企業主導型保育所が開始されました。

経営者

以後、多くの企業が事業に賛同し、企業主導型保育所が普及し始めています。

[引用:厚生労働省]

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一般の保育所との違い

一般的な保育所と企業主導型保育所との間には、以下の違いがあります。

  • 一般的な保育所:市区町村によって認可される「認可保育所」である
  • 企業主導保育所:市区町村による認可を必要とせず、企業が運営について主導する

一般的な保育所の運営については、市区町村による認可を得る必要があります。

また利用者は、入所を希望する場合、市区町村に対して「保育認定」を受けなければいけません。そのうえで、市区町村が入所について判断する仕組みです。

また保育料については、利用者家庭の世帯収入から算出されます。

一方で企業主導型保育所では、保育認定を必要としません。入所については、各企業主導型保育所にて判断されます。

企業主導型保育所の特徴、メリット

企業主導型保育所の特徴とメリットとしては、以下が挙げられます。

  • 柔軟な対応ができる
  • 企業が共同で運営できる
  • 地域の子どもも条件次第で受け入れできる
  • 助成金を活用できる
  • 福利厚生としてアピールできる

それぞれについて詳しく解説します。

柔軟な対応ができる

一般の保育園と異なり、企業主導型保育所では、開所時間をある程度自由に設定できます。

また、利用者のニーズに沿って、以下の運営方法が取れます。

  • 夜間保育
  • 1日数時間程度の短時間保育
  • 休日のみの保育
  • 病児保育

企業が共同で運営できる

企業主導型保育所は、複数の企業が共同で運営・利用する方法も採用できます。

単独で運営する場合は、後述する「定員割れ」をはじめとするリスクが大きくなります。一方で共同運営であれば、より多くの子どもを受け入れられるようになり、入所者を確保することができます。

地域の子どもも条件次第で受け入れ可能

企業主導型保育所は、一般的には従業員の子どもを受け入れる施設です。

ただし企業主導型保育所でも、従業員でない地域の子どもを受け入れることが可能です。

企業主導型保育所には、定員について任意で「地域枠」を設定できます。地域枠が定員の50%以下の範囲内であれば、従業員ではない親を持つ地域の子どもを受け入れることが可能です。

助成金を活用できる

企業主導型保育所は、開設・運用に際し助成金を受け取ることが可能です。

具体的には、以下の名目に対して助成金が支給されます。

  • 設備費
  • 運営費
  • 施設利用給費
  • その他サービス向上・環境改善取組に対する費用

助成金を利用することで、企業は運営コストをおさえることができます。

運営コストが下がることで、利用者に対して低料金の保育サービスを提供しやすくなります。

助成金の金額は、地域や保育士比率、定員に基づいて算出されます。

福利厚生としてアピールできる

企業主導型保育所が設置されている企業では、従業員は以下のようなメリットを受けることができます。

  • 勤務時間に沿った短時間保育や夜間保育を活用できる
  • 事業所内部、もしくはその近辺に設置されていた場合、送迎などの負担がかからない
  • 保育料が安い

上記のメリットよって、より柔軟に子育てと仕事を両立することができます

従業員が認可保育所を利用している場合、開所時間などの都合で、時短で勤務しなければならず、送迎の負担に従業員が悩まされることがあります。

そうした背景を考えれば、企業主導型保育所を設置していることは、福利厚生としてアピールできるといえるでしょう。

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企業主導型保育所のデメリット

企業主導型保育所には、以下のようなデメリットもあります。

  • 定員割れのリスクがある
  • 全ての事業所に保育所を開くのが難しく、不公平感が生じる 
  • 開業時にコストがかかる

各デメリットについては、以下で詳しく解説します。

定員割れのリスクがある

企業主導型保育所の運営では、利用者を確保し採算を取る必要があります。

しかし、企業主導型保育所の場合「定員割れ」というリスクがついて回ります。

定員割れの原因としては、以下が挙げられます。

  • 社内におけるニーズ調査不足
  • 待機児童問題がさほど深刻ではないエリアでの設置
  • その他保育所との競合

利用者を集められず深刻な定員割れを起こし、企業主導型保育所の運営撤退するケースも少なくありません。

また「企業が定員割れを避けるため、利用者数を水増しする」という不正も時には見られます。

経営者

定員割れを回避するためには、従業員や周辺地域の需要を把握しておくことが重要ですね。

参考:企業型保育所の不正 ずさん審査放置したツケ | 毎日新聞

全ての事業所で保育所を開くのが難しく、不公平感が生じる 

企業主導型保育所が原因で不公平感が生まれることもあります。

例えば、全国的に支店があるものの、企業主導型保育所がある地域にしかない場合、従業員が不公平感を感じる恐れがあります。

事実、全国の従業員に企業主導型保育所のサービスを提供するのは困難です。そのため、サービスを享受できる人とそうでない人に別れてしまい、従業員間での不公平感につながるケースも少なくありません。

コストがかかる

企業主導型保育所には、さまざまな運営コストがかかります。特に、開業時点で大きなコストがかかるのは大きな課題です。

企業主導型保育所の施設整備費には、補助対象となる工事費用のうち4分の3が助成されます。しかし、助成金が給付されるのは、施設完成後です。

したがって、事前に資金を用意できない企業が企業主導型保育所を導入しづらい現実があると押さえておきましょう。

企業主導型保育所導入までの流れ 

企業主導型保育所を導入するまでの流れは以下の通りです。

  1. ニーズの把握
  2. 設置方式を決定
  3. 運営方式を策定
  4. 設置場所の決定
  5. 申請手続き

それぞれの段階について、ひとつずつ解説していきます。

1.ニーズの把握

企業主導型保育所を導入する場合ニーズの把握から始めます。保育所への社員のニーズを把握し、従業員がどのような保育サービスを求めているのか調査します。

具体的に以下の点について調査するとよいでしょう。

  • 対象年齢
  • 開所日
  • 開所時間
  • 設備
  • 自社外からのニーズ

正しくニーズを理解しなければ、将来的に定員割れなどの問題を抱える原因となります。

2.設置方式を決定

次に、企業主導型保育所の設置方式を決定します。

  • 複数企業で共同利用するか
  • 共同設置する場合、運営組織を立ち上げるか
  • 地域枠を設定するか

自社の社員で企業主導型保育所を活用したい人が多いのであれば、上記を勘案する必要はありませんが、人数がそこまで多くないのであれば、上記の選択肢も検討する必要があります。

3.運営方式を検討

続いて、企業主導型保育所の運営方式を策定します。

運営方式については「自社運営方式」か「外部委託方式」の、いずれかの選択肢があります。

自社運営方式の場合は、コンサルフィーや委託料は必要ありませんので、会社から出ていく費用は小さくなりますが、保育士の確保、あるい運営方式の検討などの自社で行うタスクが増えるデメリットもあります。

外部委託方式の場合、委託コストはかかりますが、すでに運営についてノウハウを有する業者へ委託することが可能です。

自社にノウハウがない場合、外部委託した方が、安心して企業主導型保育所を運営できます。

4.設置場所の決定

続いて、企業主導型保育所の設置場所を決定します。設置場所としては、以下が考えられます。

  • 自社建物内
  • 自社敷地内
  • 従業員の通勤経路
  • 従業員居住地周辺
  • 共同設置に関係する企業の中間点

設置場所についても、従業員のニーズや自社の状況などを鑑み、慎重に検討する必要があります。

助成金支給の要件については、建物構造や面積について、細かく指定されています。したがって、設置時点で要件を問題なく満たすか確認するようにしましょう。

5.申請手続き

続いて「児童育成協会」に対し、企業主導型保育所の開設を申請します。

この際、整備費や運営費、それぞれの助成要項を洗い出し、助成金の支給対象であることを確認します。

経営者

その後指定の用紙に申請内容を記載します。

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制度を利用している企業一覧 

企業主導型保育所、およびその制度を利用している企業一覧は、企業主導型保育事業ポータルで確認できます。

企業主導型保育所を設置している企業には以下が挙げられます。

  • ANAグループ(航空):OHANAほいくえん はねだ
  • トヨタ自動車(自動車):とよたキッズステーション
  • ソフトバンク株式会社(通信):キンダーバウム
  • ちふれホールディングス化粧品):ちふれあい幼稚園
  • 横浜銀行(銀行):はまぎんキッズパーク

上記の通り、業種にかかわらず、企業主導型保育所は幅広く設置されています。

参考:企業主導型保育施設一覧(定員充足状況含む)(令和2年7月初日現在)について | 企業主導型保育事業

企業主導型保育所導入の助成金

企業主導型保育所の導入については、内閣府による助成金制度が用意されています。

その条件と助成金の仕組みは以下のとおりです。

条件 

企業主導型保育所導入の助成金支給については、以下のような項目で条件が定められています。

利用定員 従業員枠・地域枠に区分する

地域枠は定員50%以下

幼児・児童に対する

職員配置数

乳児:おおむね3人に対して1人

満1歳以上〜満3歳未満の幼児:おおむね6人に対して1人

満3歳以上〜満4歳未満の児童:おおむね20人につき1人

満4歳以上の児童:おおむね30人につき1人

職員資格 保育従事者のうち過半数以上が保育士資格を有している

助成金 

企業主導型保育事業における助成金の種別と算出方法は、細かく分類されています。

助成金種別 算出方法
運営費 地域・定員・年齢・開所時間・保育士比率における基準額に基づいて算出
整備費 人口密度・定員における基準額に基づいて基本単価を算出。「実際に工事費用の4分の3」と比較し、低い方の金額を助成する
施設利用給付費 幼児・児童年齢区分ごとの無償化対象児童数合計を基準額として算出

各助成金における金額の一例は以下のとおりです。

運営費の例

ポータルでは以下の事例が解説されています。

※東京都特別区で定員20名の場合(乳児5人、1歳児5人、2歳児5人、3歳児5人、保育士比率100%、1日11時間開所、週7日未満開所、中小企業事業主が設置する事業所の場合)

子どもの年齢 助成金額(月額)
乳児 261,260円×5人=1,306,300円
1歳 155,290円×5人=776,450円
2歳 155,290円×5人=776,450円
3歳 106,410円×5人=532,050円
利用者負担相当額 △688,500円
年度合計 32,433,000円

整備費

基本単価(20名) 83,600,000円
地域交流・一時預かりスペースの加算 2,730,000円
病児保育スペース加算 21,700,000円
設計料加算 4,180,000円
合計 112,210,000円

施設利用給付費

年齢区分 利用者負担相当額
0歳児 37,100円
1〜2歳児 37,100円
3歳児 26,600円
4歳以上 23,100円

利用者負担相当額に基づき、無償化対象児童数に応じた金額が、助成額となります。

その他、企業主導型保事業においてはさまざまな「加算」が設定されています。

  • 延長保育加算
  • 夜間保育加算
  • 貸借料加算
  • 預かりサービス加算
  • 連携推進加算など

上記によって、助成金の算出金額は変化するのでしっかりと確認しておきましょう。

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企業主導型保育所導入事例:トヨタ自動車

企業主導型保育所には、さまざまな導入事例があります。

一例としてトヨタ自動車では、「ダイバーシティの推進」を目指して、企業主導型保育所を設置しています。

「ぶぅぶフォレスト」という保育所で、従業員の仕事と育児両立をサポートするために、約320名を受け入れられる保育所となっています。

また早朝・宿泊保育やバス送迎などのサービスも用意し、従業員のニーズに的確に応えています。年度途中での入所も認めており、従業員がより柔軟な働き方と子育てを実現できるように配慮されています。

参考:トヨタ自動車、事業所内託児施設「ぶぅぶフォレスト」をオープン |トヨタ自動車

まとめ

企業主導保育所は、従業員と自社にとって大きなメリットとなります。そして、従業員は企業主導型保育所によって、より柔軟な保育サービスを受けることができます。

ダイバーシティーが進む中で、企業の従業員への福利厚生はアップデートされています。

人口減による社員の採用難は続きます。今後はより一層採用した社員の結婚後も、社員を自社で働き続けてもらう制度を導入することは必須です。

一度会社に勤めた社員がその後も自社で働きやすくするためにも、企業主導保育所の導入を検討してみませんか?

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