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専門家
未曾有の超少子高齢化社会に向かってスタートを切った日本は、防災や地域復興、環境問題など多種多様の社会的課題に対応することが求められています。
これら複数の課題解決には自ら解決する「自助能力向上」だけでなく「相互扶助」すなわち横断的に連携の取れた組織づくりが重要です。
今回の記事では、組織横断的取組の一例として「部門間連携」を取り上げ、詳しく解説します。
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部門関連携とは
経営者
部門関連携とは読んで字のごとく、企業の部門間の連携のことを指します。
環境によっては組織連携とも呼ばれ、大企業、中小企業で「部門」の単位が変わることがあるため、明確な定義はありません。
部門間で連携することで、よりクリエイティブな発想が生まれることがあるため、積極的に部門間連携を行う企業もあります。
部門関連携がもたらすメリット
縦割りシステムのまま、各部門が独立して課題に取り組む風土が根強い日本では、部門間連携の必要性を感じていない人も少なくないようです。そのため、まずは部門間連携がもたらす大きなメリットを3つ紹介します。
- 社内の統率がとれ組織力が向上する
- 生産性が向上する
- 労働環境の向上や離職率が低下する
社内の統率がとれ組織力が向上する
部門間連携を行うことにより社内の統率がとれ、組織力が向上します。
部門の垣根を越えて課題に取り組むと、最大公約数的に各部門が同じ目標に向かって進みます。そのため、互いに信頼関係が構築され課題解決に向けたコミュニケーションが活発になります。
生産性が向上する
部門間連携を行うことにより、社内の組織力が相互的に協力になり、会社全体の生産性が向上する可能性があります。
コミュニケーションをとることで、相互の連携ミスが減るだけでなくミスを互いに補う「相互扶助の精神」が働くためです。
このことから、部門間連携連最大の特徴は「大きな成果」を得やすいのではなく、「大きな損失」を防ぎやすいことといえます。
また、様々な人とコミュニケーションをとることで、異なった思考を持つ人と関わる機会も増えます。
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部門間連携を活発化させることで、コミュニケーションの幅が広がるため労働環境の向上、離職率の低下にも繋がります。
物理的に相談できる相手や、問題点をフィードバックしてくれる人が増えるためです。
会社の離職率が低下することは、組織が掲げるビジョンを達成するのに非常に有用です。会社が掲げるビジョンの多くは、来月、来年、再来年といった眼前なものではなく、長期的なものがほとんどです。
「If you want to go fast, go alone. If you want to go far, go together. (早く行きたければ一人で進め、遠くまで行きたければ皆で進め)」というアフリカのことわざがあるように、会社のビジョンを達成するには「早く進むこと」よりも「遠くへ進むこと」への比重を大きくしなければなりません。
そのために、会社の離職率を減らすことは、ビジョン達成の第一歩といえるでしょう。
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一見、部門関連携にはデメリットが無いように見えますが、実は大きな落とし穴があります。
部門間連携は従来ではなかったものであるため、予期せぬ問題が発生することがあります。今回はその代表格、以下2つを解説します。
- 緊張感が無くなる可能性がある
- 責任感が散漫になる
緊張感が無くなる可能性がある
部門関連携のデメリットが、緊張感が無くなることです。コミュニケーションのとり方によっては、ただの仲良しグループになってしまう危険性があるため、コミュニケーションの距離感が重要です。
あくまで、業務効率化を図る一環として部門間連携があるため、緊張感が低下し効率が落ちるのであれば即座に撤廃を検討する必要があります。
そのため、しっかりと目標を定め、部門間連携がうまくいっているか否かを目標から逆算して判断できるようにしましょう。
責任感が散漫になる
緊張感が無くなるに付随して、各人の責任感が散漫になる可能性もあります。
互いのミスを補うことは大事ですが、与えられた業務に対して責任感を持たず、人に助けてもらうことが前提で仕事を進めてしまう人もいます。
専門家
部門間連携が成功しない原因
部門間連携を行っているにもかかわらず、業務効率化が図れずミスが多い現場には何が足りないのでしょうか。
その理由は、部門間のコミュニケーションが上手く行ってないケースが大宗を占めます。
そこで、以下、部門間コミュニケーションが成功していない原因について解説します。
お互いの理解が足りていない
会社での業務やミスへの対応、スケジュール変動などは各部門によって異なります。
このような柔軟な対応が求められる動的環境下では、互いの誤解を誘発する恐れがあります。
所属する部門のやり方に慣れてしまうと、他部門の仕事の進め方が目につくこともあり、コミュニケーションが捗らない可能性があります。
それでは部門間連携が意味を成さなくなり、形骸化したものとなってしまいます。
したがって、部門間連携による業務効率化は、各部門の相互理解を基盤とした上で効力が発揮されることを肝に銘じておきましょう。
部門間を連携させる人材の不在
部門間連携を行うには、部門を束ねる管理職が積極的に連携を取る必要があります。
全管理職が積極的にコミュニケーションをとる人材である必要はありませんが、部門間連携を統率する部下が全くいない場合、部門間連携が失敗する可能性が高いです。
また、積極的にコミュニケーションをとる人材は管理職でなくとも問題ありません。
管理職の方が連携の調整や、部門をまとめやすい立場にありますが、コミュニケーションが上手な人や社内に知り合いが多い人などは、そうした人物に部門間連携のハブ機能を担わせるのもひとつの対策です。
部門間の連携を妨げる規則や風土がある
研究・商品開発や顧客情報などの機密性が高い情報漏えいは、会社に大きな損害や支障をもたらします。
こうした機会損失を未然に防ぐために、部門間のコミュニケーションを控えるケースがあります。こうした機密性の高い風土、あるいは硬直的な縦割り型組織では、部門間連携を行うことは難しいでしょう。
変化が激しい流動的な時代には、組織づくりも柔軟に対応していく必要があるので、こうした規則や制度を見直す良い機会になるかもしれません。
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「ニート」の会社に組織マネジメントは通用するのか?部門間連携を促進させる施策
部門間連携の重要性や注意点などが分かったところで、具体的にどのように部門間のコミュニケーションを行っていけばよいのでしょうか。
以下、部門間コミュニケーションを促進させる6つの施策について解説していきます。
部門間連携施策1:社内コミュニケーションの機会を設ける
コミュニケーションの機会を強制的に設け、社員との交流を図る方法があります。
飲み会やバーベキューなど、仕事とは一線を画す環境で交流を行うことで、会社では見せない意外な一面や趣味を知ることができ、親しみをもって相互理解できます。
専門家
部門間連携施策2:オンライン会議を利用して顔を見ながらコミュニケーションをとる
社内の意思疎通が文章だけだと、味気ないコミュニケーションになります。
文章で伝わる感情と実際の感情が必ずしも一致するわけではないので、時にはオンラインで顔を見ながら会話することも重要です。
また、遠隔地にいてもオンライン上で顔を見合わせることができるため、勤務地が違う社員ともコミュニケーションをとってみてもいいでしょう。
実際、文章よりも対面で業務連絡した方が意図を汲み取ってもらいやすいケースもあります。
定期的にオンラインでコミュニケーションをとるようにし、連携をはかっていきましょう。
部門間連携施策3:リラックススペースや社員食堂などの整備
社員にとって、リラックススペースや社員食堂は憩いの場になります。普段の業務と離れた場所では会話が弾みやすく、コミュニケーションが活性化します。
そのため、社員がくつろげる空間の整備は、社内コミュニケーションを促進させる重要な施策といえるでしょう。
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部門間連携施策4:ビジネスチャットの導入
対面や形式的な文章だけでなくビジネスチャットを活用し、コミュニケーションをとる方法もひとつです。
ビジネスメールによるコミュニケーションは、文章に体温を感じる機会は少ないですが、ビジネスチャットは、重さを感じない会話のやりとりや、絵文字を使いフランクにコミュニケーションがとることができます。
また、ビジネスメールよりも短時間で送ることができるので、業務の忙しい合間にも連絡ができ、効率化が図れます。
部門間連携施策5:ビジョンの共有を図る
会社の統率を図るためには、会社のビジョンを全社員に共有しておく必要があります。全社員にビジョンを共有させるためには、以下の方法があります。
- 全社員集会を定期的に行いビジョンの周知を徹底する
- 目標指標のプロセスを具体的に思案し意見交換をする
ビジョンの共有の際に注意すべき点は、一方通行の発信にならないようにすることです。
そのため社員からのボトムアップの意見も聞けるような仕組みづくりをしましょう。
部門間連携施策6:フリーアドレス制度を利用する
フリーアドレス制度を導入することも、社内コミュニケーションを促進させる方法として有効です。
フリーアドレス制度とは、社内に固定席を設けずに各人が好きな席で仕事をする制度です。一般的に役職員は社員の様子を一目で確認できるように座席配置されています。
一見、合理的なようにも思えますが、固定された座席では限定されたコミュニケーションになることがデメリットになります。
同じオフィスに居るのに、なかなか交流が図れない社員も出てくるため、コミュニケーションを促進させたいのであればフリーアドレス制度を導入してもよいでしょう。
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経営者のリモートワークの悩みは「コミュニケーション」と「評価制度」識学が経営者の課題調査結果を公表部門間連携ツールを活用した成功事例
次に、実際に部門間連携の施策やツールを活用して成功した事例を紹介します。
北海道テレビ放送株式会社
北海道テレビはビジネスチャットツールであるChatworkを活用し、スピーディーな情報共有を実現し、社内イベントを増やすことに成功しました。
当時、北海道テレビでChatworkを活用していたのは僅か3人でした。
そこから、周りの社員を巻き込み、次第に社内のメイン連絡ツールとして採用されました。従来の連絡ツールは電話とメールが主で、1:1のやり取りから大人数への情報共有を図るのに手間がかかります。
しかし、Chatworkを導入することで、写真や記録などの共有もすぐできるようになり、課題が改善されました。
株式会社ぐいっと
以前はチャット系ツールを活用して情報共有等を行っていましたが、後に確認したい情報が流れてしまう課題がありました。
そこで、NotePMを活用しこれまで課題であった「情報のストック」ができるようになり、社員教育にかける時間が短縮しました。
※NotePMは、社内版のウィキペディアのようなもので、強力な検索機能を有しています。エクセルやPDFデータの中身も検索可能です。
Target Corporation
アメリカに本社をおくTargetは、これまで使用していたコラボレーションプラットフォームをslackに切り替え、情報共有が簡便にできるようになり、エンジニアはイノベーション実現というタスクに時間を割くことができました。
まとめ
部門間連携は、単に部門同士で連携をとることではなく、しっかりとした信頼関係を築かなければその効力は発揮しません。
本記事では、部門間連携のメリットやデメリット、具体的な施策、成功事例等について解説しましたが、記事で取り上げた以外にも多くのメリットや施策等が存在します。
高度経済成長後、各会社が求めているのは和衷協同の組織づくりです。どの会社も採用HPには「コミュニケーションが取れる人」あるいは、それに類似した人材の募集が記載されています。
しかし、コミュニケーションが取れる人を集めても、その能力を発揮できない環境下であれば、いくら集めても凡庸な社員の一人として成り下がります。
そのため、コミュニケーションが発揮できる土俵づくりを会社側が行っていく必要があります。本記事は、その土俵づくりの方法として「部門間連携」を解説したので、ぜひ参考にしてみてください。
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失礼ながら、そんなリモートワークでは成果は出ません。