突然ですが、このような疑問を感じてはいませんか?
- 「小規模事業者持続化補助金ってどんな制度?」
- 「どうすれば補助金をもらえるの?」
- 「補助金の対象者や対象となる経費は?」
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者の生産性向上や新型コロナウイルスの感染リスク低下を目的とした取り組みを支援する制度です。
本記事では、この制度に関する基本的な知識から、対象者、申請する手順や注意点を解説していきます。
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はじめに:補助金・助成金とは
小規模事業者持続化補助金について解説する前に、補助金・助成金に関して解説していきましょう。
まず、国から支給される補助金または助成金の種類は、どれくらい存在するかご存知でしょうか? 補助金や給付金、支援金など名前はいくつかありますが、日本ではおよそ3,000種類以上あるとされています。
自治体や財団法人が支給しているものを加えると、これ以上の数字となるでしょう。
おそらく、あなたが思っている以上に多かったと思います。 これほど多く支給されているものですが、そもそも「補助金」や「助成金」というのはどのようなお金を指しているのでしょうか?
一言でいうと、経済産業省が支給するお金は「補助金」と呼ばれ、厚生労働省が支給するお金は「助成金」と呼ばれる、と考えてください。
助成金の場合は必要な書類を提出し、提示された条件をクリアしているのであればもらうことができます。
対して補助金の場合は、条件をクリアするだけではもらうことができず、しっかりと綿密に策定された事業計画書などを用意することが求められ、採択されるために高いハードルを超えなければなりません。
したがって、助成金と比較して補助金は厳しい審査が必要になるため、あまり好まれず、積極的に利用されているとは言い難いでしょう。
ですが「小規模事業者持続化補助金」は補助金のなかでもハードルが低く、支給されやすいので、ぜひ本記事を読んで申請を検討してみてください。
小規模事業者持続化補助金とは?
「小規模事業者持続化補助金」とは、簡単に言うと「小規模事業者が事業の維持や継続をすることを目的として、最大で50万円の補助金が支給される制度」です。
ここでいう「小規模事業者」とは、従業員が少なく規模が小さい会社や個人事業主を指しています。
この制度には従来から存在していた「一般型」と、新型コロナウイルスの流行により新設された「低感染リスク型ビジネス枠」が存在します。
低感染リスク型ビジネス枠では、新型コロナの感染リスクを下げるために、業務の非対面化や対人接触の低減を目的とした取り組みに対して補助金が支給されます。
また、「最大で50万円の補助金が支給される」と解説しましたが、それは一般型の場合であり、低感染リスク型ビジネス枠においては最大で100万円が支給される仕組みです。
両者の違いや対象者などの詳細については後述していますが、申請者が1人で文書を提出すれば補助金がもらえるわけではありません。さまざまな条件を満たして審査に通る必要があるのです。
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小規模事業者持続化補助金の支給を受けるには、下記の3つの条件をクリアしている必要があります。
- 申請時に既に創業している
- 従業員数が5人から20人以下
- 商工会もしくは商工会議所に支援してもらう
それでは1つずつ解説していきます。
申請時に既に創業している
法人であれば申請する時に「登記簿謄本」を、個人事業主であれば「開業届」を提出しなければならないため、既に法人として会社を立ち上げている、個人事業主として開業届を提出している必要があります。
つまり、これから会社の立ち上げや個人事業主として活動する予定の人は対象外となります。
従業員数が5人から20人以下
対象者となるには、下記のような従業員数の制限があります。
業種 | 人数 |
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
よくある従業員の人数に関する疑問
「経営者は『常時使用する従業員の数』に入るのだろうか?」という疑問への答えは、「入りません」となります。つまり、経営者が1人で従業員が5人いる場合では「常時使用する従業員の数」は5人であるため申請ができます。
また、個人事業主の場合でも従業員の数には入りません。
「従業員がゼロ人だけど大丈夫?」という疑問への答えは「従業員がゼロでも問題ありません」となります。
「アルバイトやパートは従業員の数に入りますか?」という疑問への答えは、「原則的にはカウントされませんが、契約内容によってはカウントされることもあります」となります。
このように、自社が対象となるのか迷われるのであれば、一度商工会議所に聞いてみることをおすすめします。
商工会もしくは商工会議所に支援してもらう
申請の際は、最寄りの商工会もしくは商工会議所の相談員から支援や助言をしてもらいながら事業計画書をつくり、確認印をもらわなければなりません。
【活用事例】小規模事業者持続化補助金をどう使うか
それでは、実際に小規模事業者持続化補助金をもらうにはどのように活用する必要があり、逆にどのような使い方だと不採択になってしまうのでしょうか?
ここでは、それぞれの事例を見ていきましょう。
活用事例・採択例
採択される事例には下記のようなものがあります。
- 新型コロナが落ち着いた後の販路拡大のために「海外観光客用の外国語表記メニュー」や「のぼり」をつくる
- ラーメン用の小麦製粉機が古くなっていたので新しくし、処理の安定化や業務効率化により、生産性を上げる
- 経理作業を効率化するために、経理システムを導入する
- オンラインで商品を売るためのシステム構築を外注する
採択されない事例
一方で、採択されない事例には下記のようなものがあるため、注意して申請しましょう。
- 冬になり職場が寒くなるので最新の暖房器具を購入する
- 使用しているPCやスマートフォンを最新のものに買い換える
- ラーメン屋がラーメンをつくるための小麦粉を購入する
このような事例は、基本的には採択されないため、申請する際は小規模事業者持続化補助金の制度概要や目的を十分理解することが求められます。
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それでは、まず小規模事業者持続化補助金の一般型について詳しく解説していきます。
まず初めに一般型の注意点として挙げられるのが、低感染リスク型ビジネス枠は商工会もしくは商工会議所との相談が必要ないのに対して、一般型では相談しなければならないことです。
一般型の対象者
一般型の対象者となるのは上記で確認したものと同様です。
対象となる事業
補助金の対象事業は、「販路開拓等を目的とした取り組みであること」と「業務効率化を目的とした取り組みであること」という2つの条件を満たしたものである必要があります。
また、下記3点に当てはまらない事業でなければなりません。
- 国から別の助成金や補助金が支給されている
- 1年以内に売り上げにつながらない事業
- 射幸心を煽る事業、公序良俗に反する事業
対象となる経費
対象となる経費は下記のものが挙げられます。
- 機械装置等費
- 広報費
- 展示会等出展費
- 旅費
- 開発費
- 資料購入費
- 雑役務費
- 借料
- 専門家謝金
- 専門家旅費
- 設備処分費
- 委託費
- 外注費
それでは、具体的な事例を見ていきましょう。
機械装置等費
- 商品を並べるための棚の購入
- 高齢者や家族連れのためのイスやベビーチェアの購入
広報費
- 販促用のチラシの作成や送付
- マスコミやインターネットなどの広告
展示会出展費
- 展示会や見本市への出展
- 新製品をつくるために必要な原材料調達の調査にかかる宿泊代や新幹線料金など
開発費
- 新たな商品やサービスを開発するための原材料の購入
- 新製品のデザインの外注
外注費
- 従業員の業務効率化を目的とした店舗改装
- お客が使うトイレの改装
また、専門家からの業務改善に関するアドバイスや指導などは専門家謝金に該当します。
小規模事業者持続化補助金【低感染リスク型ビジネス枠】
続いて、小規模事業者持続化補助金の【低感染リスク型ビジネス枠】について詳しく見ていきましょう。
こちらは、新型コロナウイルスの流行により小規模事業者がビジネスモデルをコロナ社会に対応させることを目的とした取り組みや、消毒液や換気設備の導入費用、業務の非対面化など感染リスクを目的とした取り組みを支援する制度です。
一般的に補助金の場合、補助金支給が決まる前の支払いに関しては補助対象にはなりませんが、この枠の場合は条件をクリアしていれば、2021年1月8日以降の支払いや経費も対象になる点が特徴となっています。
補助金の対象者
低感染リスク型ビジネス枠の対象者は一般型と同様に、小規模事業者です。
対象となる事業と経費
対象となる事業は、新型コロナウイルスの流行を前提としたビジネスやサービスの導入、感染リスクの低下を目的に業務の非対面化を推進させる取り組みを行う事業です。
補助率は3/4で、上限額は100万円となっています。
対象となる経費
補助の対象となる経費は下記のようになっています。
- 機械装置等費:ITツールや移動販売車両の購入など
- 広報費:新たな商品を宣伝する広告の作成と配布
- 展示会等出展費:展示会などの出展料
- 開発費:新たな製品やサービスの施策開発費など
- 資料購入費:該当事業についての図書など
- 雑役務費:該当事業に必要なバイトの雇用
- 借料:設備や危機のレンタル料
- 専門家謝金:専門家からのアドバイスや指導
- 設備処分費:新たなサービスを始めることを目的とした空間確保のための設備処分など
- 委託費:お店の改装など自社ではできないことの外注
- 外注費:委託費と同様
- 感染防止対策費
③展示会等出展費に関しては、インターネット上の展示会等に限定されているため注意しましょう。
また、⑫感染防止対策費の上限額は25万円となっており、補助金総額の1/4となっています。しかし、緊急事態措置により特別措置を適用する事業者の場合は、上限額が50万円となります。
小規模事業者持続化補助金はどのくらいの確率で採択されるのか?
補助金に申請しても採択されなければ意味がありません。それでは、持続化補助金はどの程度の確率で採択されるのでしょうか? 採択率は申請をするかどうかの判断材料にもなるため、過去のデータを確認していきましょう。
【一般型】の採択率
過去の【一般型】の採択率は下記のようになっています。
- 1回目:90%
- 2回目:65%
- 3回目:33%
- 4回目:44%
- 5回目:54%
1回目の採択率は90%と非常に高くなっていますが、これは初回であったため申請数が少なかったことが要因です。とはいえ、見て分かる通り2回目以降は制度が広く知られるようになり申請数が増えて、結果的に3回目にして33%にまで落ちてしまいました。
しかし、採択された件数だけを見てみると3回目が最も採択数が多く、1万2,664件にものぼっています。また、申請者数も最も多く37,302件もありました。
その後の傾向を見てみると4回目、5回目と採択率が上がっていますが、これは申請数が減っていることが関係しています。おそらく、3回目の採択率を知って申請する前に諦める人が増えたことが原因でしょう。
したがって、これから申請するのであれば、他の人が諦めて申請数が落ち込むほど自身が採択される可能性が上がるということです。
【低感染リスク型ビジネス枠】の採択率
続いて、低感染リスク型ビジネス枠の採択率を見ていきましょう。
- 1回目:45%
- 2回目:53%
- 3回目:62%
こちらは、補助金額が一般型よりも大きいため、今後も申請数が増えていくと考えられます。今後も募集はされるため、そのときに備えて早めに準備を整えておくのがよいでしょう。
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申請する際の手順や手続きの流れに関しては、日本商工会議所の持続化補助金に関するサイトで下記のように紹介されているため、しっかりと確認しておきましょう。
(引用:小規模事業者持続化補助金│日本商工会議所)
ここでは、申請の際に注意するべき下記の3つのポイントについて見ていきます。
- 商工会議所に書類を作成してもらう必要がある
- 支給が決まる前の経費
- データを保存できるものの用意
それでは1つずつ解説していきます。
商工会議所に書類を作成してもらう必要がある
この制度を利用する際には、上記の図の②にあるように、事業計画書や補助事業計画書を商工会議所に確認してもらうと同時に、商工会議所に事業支援計画書等の作成と交付を依頼しなければなりません。
したがって、期日に間に合うように準備を整えていく必要があります。
支給が決まる前の経費
補助金の支給が決まる前に、設備の導入や外注をしてしまうと、対象外となってしまうため注意しましょう。申請にかかる時間や申請してから補助金が交付されるまでの時間なども加味し、計画的に行う必要があります。
データを保存できるものの用意
申請の際には、USBメモリなどをあらかじめ用意しておく必要があります。
なぜなら、商工会議所に書類を出すときに、同じデータをUSBメモリ等に保存してデータ形式でも提出しなければならないからです。
まとめ
ここまで、小規模事業者持続化補助金について解説しました。事業の維持・継続をするにあたって非常に役立つ制度です。
とくに、昨今の新型コロナウイルスの流行により、大きなあおりを受けている小規模事業者にとって、コロナ禍のなかで営業・運営していくにあたって必要な変化や工夫を実施するには、こういった補助金は大きな役割を果たすでしょう。
あまたある補助金の中でも比較的申請が通りやすいものでもあるので、内容をしっかり理解し、計画的に利用してください。
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