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戦略人事が注目される理由とは?そのメリットや役割、経営戦略と違いのを解説

突然ですが、このようなことを感じてはいませんか?

  • 「戦略人事や攻めの人事ってどういう意味?」
  • 「環境の変化が激しいなかで企業が生き残る方法は?」
  • 「どうして今、戦略人事が注目されているの?」

戦略人事とは、企業戦略のために戦略的な人事や人材マネジメントを行うことを指しており、欧米では広く用いられてきましたが、近年では日本でも注目を集めています。

本記事では、戦略人事について基本的な知識から、近年注目されている理由や導入するメリット、活用している企業事例などを解説していきます。

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戦略人事とは?

戦略人事とは、経営戦略の実現に貢献する人事や、人的マネジメントの実施を指しています。正式には「戦略的人的資源管理」と言い、英語では「Strategic Human Resources Management」と呼ばれています。

戦略的人的資源管理は企業が所有する経営資源の「ヒト・モノ・カネ・情報」のうち、「ヒト」にフォーカスして管理していくことです。

つまり、「ヒト」という経営資源を用いてどのように価値を最大化させるのか、という点を考えるのです。

1990年代にディビット・ウルリッチというアメリカの経済学者が提唱したもので、日本ではあまり普及していませんが、欧米では広く実施されています。

戦略人事の定義とは

また、多くの企業では戦略人事を明確に定義しているわけではなく、各社の課題に合わせた最適な戦略人事が存在しています。

例えば、業績が良い会社であれば「業務形態や会社のあり方の将来的な変化を視野に含めた雇用や要員の確保・育成」というように、未来に向けたビジョンを掲げ、これを実現するための手段を戦略人事として定義しています。

しかし一方で、業績があまり良くない会社であれば、「事業活動を続けるために必要なもの」というように、あくまで企業の最優先課題は業績の向上であるため、これを実現するための手段として戦略人事を定義しているケースも少なくありません。

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戦略人事が求められる理由とは

先程も解説したように、戦略人事は日本ではまだ広く普及しているわけではありません。しかし、近年は日本でも戦略人事が注目され始めており、多くの企業が求めるようになりました。

その理由は、主にビジネス環境の変化が挙げられます。ビジネス環境の変化が激しくなかった時代は、主に経営層が経営戦略を立案することが多く、人事部門が介入することはあまりありませんでした。

しかし、現在は雇用形態の変化やDXの推進などさまざまな激しい変化が起こり、先を見通すことができない「VUCAの時代」となりました。

このような環境下で競争に勝ち続けるためには、変化に対応できる能力や経験がある人材を得ることが欠かせません。したがって、人材マネジメントを中心に据えた経営戦略が求められるようになっているのです。

人事が持つ役割の変化

また、従来の人事制度は大量に人材を確保し、年功序列制度や終身雇用によって年齢とともに自然とキャリアアップしていくものでした。これにより、従業員は安定と引き換えに会社に尽くす仕組みで回っていたのが、高度経済成長時代の人事です。

このような時代では、この仕組みをどれだけ効率的に運用していくかが人事部門の主な役割でした。しかし、環境が大きく変化した現代においては、その役割も変わりつつあります。

労働人口が減り続けるなかでは人材を大量に確保することが難しくなり、さらに、働き方や価値観の多様化も進み、従業員の転職が増えることで終身雇用を維持することも困難です。

したがって、経営戦略に合わせた戦略が人事にも求められるようになり、戦略人事が重要視されるようになったのです。

戦略人事と経営戦略との関係や人事戦略との違い

戦略人事は経営戦略の実現に寄与するものですが、両者はどのような関係にあるのでしょうか?

また、戦略人事と混同されがちな言葉に「人事戦略」がありますが、この2つはどのように異なるのでしょうか? ここではそれぞれの関係性や違いを見ていきましょう。

戦略人事と経営戦略の関係

経営には、下記の4つの要素が求められます。

  • 戦略
  • 戦術
  • 戦力
  • 環境

このうち、「戦力」と「環境」を担うのが人材であるため、どれだけ「戦略」と「戦術」がよくできていたとしても、それを実行することができる人材や環境が用意されていなければ、経営戦略に寄与することはできません。

つまり、この戦略と環境を整える役割をもつのが「戦略人事」となります。そのためには人事は経営を深く理解する必要があり、企業が目指すビジョンを実現するために、次にどのようなことが起こるのかを予測し、備えておくことが重要です。

したがって、戦略人事のない経営戦略は意味をなさず、戦略や戦術に対して無知な人事担当者には戦略人事はできません。企業の成長のためには両者の適切な関係が求められます。

戦略人事と人事戦略の違い

戦略人事と「人事戦略」は似ている言葉ですが、その意味は異なるため注意しましょう。

人事戦略とは、教育や採用などの人事に関する業務をどのように改善・改革するかを決めるものです。例えば、人手不足を補うため、もしくは優秀な人材の採用のために採用方法を変えたり、業務効率化のために外部委託をすることも人事戦略といえます。

とはいえ、人事戦略がうまく機能しなかった場合でも、事業目標の達成にダイレクトに影響を与えるわけではありません。

対して、「事業を新しく立ち上げるためにエンジニアが5人必要である」という場合は戦略人事となります。これは事業の成功と失敗を分ける可能性が高いため、戦略人事は事業に大きな影響をもたらします。

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戦略人事に求められる4つの役割や機能

戦略人事を提唱したディビット・ウルリッチ氏は、アメリカの「最も影響力のある経営思想家」トップ50人に入っています。そんなウルリッチ氏が、戦略人事に必要な機能として下記の4つを挙げています。

  • HRBP(戦略のパートナー)
  • CoE(センター・オブ・エクセレンス)
  • OD(組織開発)とTD(タレント開発)
  • OPs(オペレーション部門)

それでは1つずつ解説していきます。

HRBP(戦略のパートナー)

HRBPとは「Human Resource Business Partner」の頭文字をとった言葉で、人事のみならず事業領域にも精通し、人的資源の観点からビジネスをマネジメントしたり、経営層に対して事業目標を実現するためのアドバイスをすることを指しています。

CoE(センター・オブ・エクセレンス)

CoEとは、人材マネジメントに関するノウハウや知識、スキルに精通したプロフェッショナル集団が経営者や現場をコンサルティングする機能です。

OD(組織開発)とTD(タレント開発)

ODは「Organization Development」の頭文字をとった言葉で、組織開発を意味しています。これは、ビジョンの浸透や組織文化を醸成することにより、組織の方向性を適切にマネジメントする機能です。

TDは「Talent Development」の頭文字をとった言葉で、タレント開発を意味しています。これは、戦略を実現するために、人材の育成やマネジメントを通してさらなる活躍を期待することです。

OPs(オペレーション部門)

OPsは、CoEが定めた施策やソリューションを、実際に日々運用していく機能です。

具体的には下記のようなオペレーション実務を行います。

  • 給与計算
  • 福利厚生
  • 移動の手続き
  • 労務管理
  • 採用プロセスの決定
  • 人事システムの運用

このような実務を適切に、そして効率的に行う機能は必要不可欠です。

戦略人事のメリットや重要性

新型コロナウイルスの流行を始め、近年のビジネス環境は目まぐるしく変化しており、さまざまな要素が複雑に絡み合うことで先を見通すことができなくなっています。このような環境においては、企業が変化に柔軟に対応していかなければ存続は難しいでしょう。

つまり、企業が柔軟に変化していくには、変化に必要な施策を実行できる組織や人材が必要になります。

ところが、人材に関してはそう簡単に変えられるものではありません。従業員ひとりひとりの能力やスキルの向上や考え方に変化を起こすには長期的な取り組みが必要になり、人員構成の最適化もすぐにはできません。

したがって、これまでの人事では激しい変化に対して柔軟に対応することができず、経営のスピード感が損なわれることが多くありました。そこで、戦略人事を導入することにより、そのようなリスクを回避することが期待できます。

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戦略人事を実践するために求められること

効果的な戦略人事を実践するために求められるのが下記の3つです。

  • 現場との信頼関係
  • 戦略への理解
  • 成果を出すための能力

それでは1つずつ解説していきます。

現場との信頼関係

経営戦略に沿って戦略人事を実践していきますが、扱うのはモノではなくヒトであることを忘れてはいけません。つまり、ヒトの気持ちやモチベーションへの配慮を忘れず、現場との信頼関係を構築したうえで戦略的な人事を実施していく必要があります。

戦略への理解

人事部門は人事に関する知識だけではなく、事業戦略や経営戦略に関しても精通していることが求められます。

戦略人事が行う業務には、

  • 経営層の理解者として適切な人材戦略の立案
  • 戦略に沿った人材育成の計画と実行
  • 社員の相談窓口

といったものがあるため、戦略人事がこれらを実践するには、

  • 事業部の取組
  • 会社のビジョン
  • 経営計画

などについて精通していなければなりません。

成果を出すための能力

人事部門に限らず、どのような仕事をするにしても成果を出す能力は必要不可欠です。

しかし、戦略人事の役割を果たすには。一般的な従業員よりも高いレベルで成果を出す能力を求められます。

成果を出すためには、下記の4つの力が求められるでしょう。

  • コミュニケーション能力
  • GRIT(やり抜く力)
  • リーダーシップ
  • 問題解決力

この4つ全てを完璧にこなすことは難しいですが、それでもできるだけバランス良くこれらのスキルを発揮できれば、より良い成果を出せるはずです。

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戦略人事の導入が難しい理由や実現する際の課題

ここまで見てきたように、これからの時代を企業が生き抜くためには、戦略人事を導入することが重要になります。しかし、日本企業に戦略人事が普及していない背景には、そう簡単に導入できない理由や課題があるからです。

経営から見た課題

戦略人事を実現するには、経営戦略と深く関わる必要があるので、経営層が明確かつ一貫性のある経営戦略を掲げなければ、人事部門は戦略を策定しようがありません。

さらに、人事部門が戦略人事の提案をした場合でも、経営層はその提案を承認する態勢が整っていないことが多いというのも課題のひとつとなっています。

人事から見た課題

経営層が明確な経営戦略を掲げたとしても、人事担当者に経営戦略を理解する能力や理解する姿勢がなければ、適切な戦略人事を策定できません。「攻めの人事」を実現するには、人事側への教育も必要です。

従業員からみた課題

戦略人事を導入することは会社の経営を本質的に変化させることにもつながるため、従業員一人ひとりのキャリアも変化することがあります。したがって、変化を嫌う保守的な従業員からは、戦略人事に反対する派閥が生じかねません。

【事例】戦略人事を活用している企業はどのような施策をしているのか

日本ではまだ広く普及しているわけではありませんが、それでも戦略人事を活用する企業が増えてきています。ここでは下記の3社の事例についてみていきましょう。

  • オムロン株式会社
  • 日清食品
  • 楽天株式会社

それでは1つずつ解説していきます。

オムロン株式会社

オムロン株式会社は世界各国でヘルスケアや社会システムに関する事業を行っています。オムロンは海外の生産拠点で問題となっていた離職率の増大や採用難に対して、人事主導で解決しようと試みています。そして実際に工場内に「オムロンスクール」という高等教育を提供することで、離職率を下げることに成功しました。

日清食品

2014年に日清食品では、最高人事責任者としてCHO(チーム・ヒューマンリソース・オフィサー)が着任した際に、「企業が目指すべきビジョン」や「企業戦略を実現するために求められる人材の定義」「必要な人材育成プログラム」など、戦略人事に関する課題が組み立てられています。

楽天株式会社

2016年、楽天株式会社は「グローバル・イノベーション・カンパニー」としてあり続けるという経営戦略を設定しました。これに沿って、この経営戦略を実現するために求められる人材として「イントラプレナー」を掲げています。ここで重要視していることは、ただ能力がある人材よりも、楽天の価値観と共鳴し、実践できる人材を育てるということです。

まとめ

ここまで、戦略人事について事例や求められる機能をみてきました。

戦略人事を適切に活用することで、変化が激しい現代のビジネス環境に柔軟に対応していくことができます。

経営そのものに大きく関わっていくものであり、従来の人事とはその役割も大きく異なります。しっかりと理解、準備をしたうえで取り入れられるようにしましょう。

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