専門家
経営者
世の中には「エバンジェリスト」という珍しい職種が存在しています。
普通に生活しているとあまり聞き馴染みのない職種ですが、エバンジェリストはビジネス社会において欠かせない人材です。
この記事では
- エバンジェリストとはどのような人なのか
- なぜ必要とされているのか
を詳しく解説していきます。
<<あわせて読みたい>>
加速する「IT人材」争奪戦 自社にあった人材調達のために欠かせないこととは目次
エバンジェリストとは?
専門家
ここからは、その意味となぜ今必要とされているのかをわかりやすく解説します。
エバンジェリストの意味
エバンジェリストは英語で「evangelist」と表記され、単語そのものは「伝道師」という意味を持ちます。
現代においては主に「ITに関する深い知識をわかりやすく啓蒙する人」の意味で使われています。
また、ITに関するエバンジェリストだけでなく、SNS上には金融エバンジェリストや公務員エバンジェリストと名乗る人もおり、「特定の物に精通しており、多角的なアドバイスができる人」を指す言葉として使われていることがわかります。
エバンジェリストはいつビジネスで使われるようになったのか
エバンジェリストという言葉がビジネスで使われるようになったのは、アップルが始まりです。
アップルが積極的に宣伝活動をしていた1984年頃には、まだまだパソコンの必要性が認知されていませんでした。
アップルがパソコンの実用性や他社との優位性を宣伝するために、エバンジェリストというポストを作りました。
専門家
エバンジェリストはなぜ必要とされているのか
現在、エバンジェリストは非常に重要なポストとして認知され始めています。ITの進歩は私たちが予想するよりもはるかに早く、常に変わっていく情報を分かりやすくまとめる人材が必要だからです。
時代の変化によって、このような職種が生まれたことは必然的なことだといえます。
また、ITという難解なジャンルについて深く探求し続けることで、新たなビジネスチャンスを作ることもエバンジェリストのミッションの1つです。
<<あわせて読みたい>>
Withコロナ時代のマーケティング 鍵はデフレーミングと事業の再定義エバンジェリストの仕事内容
経営者
エバンジェリストは主に啓蒙を活動基盤としており、さまざまな場所で啓発を行います。以下が実際の活動です。
- プレゼンテーションや講演
- 個別対応でのデモンストレーション
- 社内での啓蒙運動
それぞれの活動について詳しく解説します。
プレゼンテーションや講演
プレゼンテーションや講演は、エバンジェリストが行う活動のなかでも、大きな割合を占めています。講演などを通して、自社の製品やサービスを宣伝することが目的です。
有名な人の場合は年に200回近くの講演を行うため、日々情報のアップデートをしていく必要があります。
大きなイベントで講演することもあるため、ITに精通していない人にも理解できるプレゼンテーション力が必要です。ITに関する専門的な知識だけではなく、不特定多数の人を引き付ける話術も重要視されます。
経営者
個別対応でのデモンストレーション
エバンジェリストは、ときには個別でのデモンストレーションも行います。
実際に会社のサービスを使っている顧客や、これから導入しようとしている会社に赴き、知識を使って課題を解決することがミッションとなります。
個別でのデモンストレーションの場合、相手の会社に合った資料作成や進行が重要であるため、顧客の問題点や情報をしっかり把握していることが大切です。
専門家
社内での啓蒙運動
社内でITの知見を広めることもエバンジェリストにとって重要な仕事です。社内での啓蒙活動では、自社の商品に対する深い知識や最新の技術など、さまざまなことをアナウンスします。
自社の社員教育を通してサービス向上を図ることも、エバンジェリストに求められる業務の1つです。
<<あわせて読みたい>>
ITや技術革新がなくとも、「イノベーション」を起こすことは可能。【ドラッカーのイノベーションと起業家精神】エバンジェリストと誤解しやすい言葉
専門家
エバンジェリストという職業は世の中に浸透してきていますが、日本においてはまだまだ普及が進んでいないため、他の職業と混同されがちです。
他の職業とエバンジェリストがどのように違うのか、具体的に説明します。
営業
エバンジェリストと営業は、自身の持っている情報を使って相手にメリットを生み出すという点は同じです。
しかし、一般的に営業職はサービスや商品をお客様に「売る」ことを目的としていますが、エバンジェリストはあくまでも「啓蒙活動」を主軸としています。
また、エバンジェリストの主な相手は不特定多数の人々になるため、営業と比べると、より多くの人々と接することになります。
広報
エバンジェリストと広報の仕事内容には共通点が多く、どちらも情報を伝えるという点は同じです。
大きな違いは、伝える手段と目的にあります。広報は自社の情報を外部に公表することで、会社と外部との架け橋を作ります。
エバンジェリストは、自分自身が深く理解しているITの情報を啓発することにより、世の中のリテラシーを高めることが目的です。
インフルエンサー
インフルエンサーとは、自身の影響力を使って商品を紹介する人のことを指します。エバンジェリストとの違いは専門性の高さです。
インフルエンサーはさまざまな商品を自身のSNSを使って宣伝しますが、知識の啓発活動までは行いません。
エバンジェリストは商品やサービスに関する知識だけでなく、商品を形作っているITの深い知識も必要です。影響力はどちらも必要ですが、エバンジェリストの場合は、より専門的な知識と権威性を求められます。
経営者
<<あわせて読みたい>>
D2Cとは?メーカーが直接市場に参入するメリット・デメリットを分かりやすく解説!エバンジェリストを取り入れるメリット
経営者
エバンジェリストを会社に取り入れることで、さまざまなメリットを得られます。
主なメリットは以下の3つです。
- 社内でのITリテラシーが高まる
- 企業・商品認知度が高まる
- 他の社員の成長につながる
それぞれ、具体的にどのようなメリットなのか詳しく解説します。
社内でのITリテラシーが高まる
エバンジェリストのポストを会社内に作ることで、会社全体のITリテラシーが高まります。なぜなら、開発されている商品の根幹であるIT技術を教えることで、商品だけではなくITに関しての知見もより深められるからです。
どのような経緯や過程で商品が開発されていくのか知ることによって、商品への愛着がわき、顧客からの質問への対応の質も向上します。
したがって、社内で積極的にインナーマーケティングを行うことは、会社を成長させるうえで非常に重要な要素です。
企業・商品認知度が高まる
エバンジェリストを社内に招き入れることで、自社のことや商品の認知度を高められます。
社内に情報を発信するインナーマーケティングを通して、自社が扱っている商品の情報を社員に啓発できるからです。
また、エバンジェリストは社外での講演も積極的に行うため、企業認知度や商品が直接的に外部へ広がるメリットもあります。
専門家
他の社員の成長につながる
専門性が高いエバンジェリストからのインナーマーケティングにより、ITや商品に対する認知度を大幅に上げることができます。
また、エバンジェリストという職種は権威性が高いため、エバンジェリストを社内へ招き入れることで、社員の会社に対する信頼度向上にもつながります。
専門性と権威性が高いエバンジェリストからのアドバイスを日常的に受けられれば、社員は大きく成長できます。なぜなら、良質なアドバイスを日々受けることで、教養を育むだけではなく、仕事へのモチベーションアップにもつながるからです。
<<あわせて読みたい>>
「人脈作り」のコツとは?人脈作りが上手くなりたい人は、幼稚園児の友達作りに学んでみよう日本の代表的なエバンジェリスト
日本では、まだエバンジェリストという職種は一般的とは言い難いですが、既に日本人でもエバンジェリストとして働いている人はいます。
日本で著名なエバンジェリストは以下の4人です。
- 西脇資哲
- 野水克也
- 玉川憲
- 中山五輪男
それぞれどのような人物なのか順番に解説していきます。
西脇資哲氏
西脇資哲氏は、日本マイクロソフトのエバンジェリストです。2009年にマイクロソフトに入社したあと、日本で唯一のマイクロソフト全商品を扱うエバンジェリストになりました。
その後、業績が評価され、2014年から業務執行役員を勤めています。
西脇氏が評価された理由は、商品やサービスだけの知識だけでなく、プレゼンテーション力の高さにあります。
自社の製品に愛着と自信を持ち、常に顧客の視点に立ってプレゼンテーションを行うため、相手を動かす講演を得意としています。
野水克也氏
野水克也氏は、ソフトウェア開発会社であるサイボウズのエバンジェリストです。サイボウズではマーケティング部長やクラウド販売責任者など、多くの役割をこなしてきました。
野水氏は主にloTの導入促進や企業間のクラウド活用推進などを担当し、豊富な経験と取材力を生かしたプレゼンテーションは多くの人を惹きつける力を持っています。
野水氏は、サイボウズがまだ勤務体制を整えていない頃から勤続している数少ない人物の1人です。ブラックな体制で働いた経験を生かして、働き方改革などの講演もおこなっています。
玉川憲氏
玉川憲氏は元々、日本IBM基礎研究所でウェアラブルコンピュータの研究開発をしていました。2010年にアマゾンデータサービスジャパンにエバンジェリストとして入社後、AWSクラウド事業立ち上げチームの1人として活躍しました。
現在は株式会社ソラコムの代表取締役を勤めており、IoTプラットフォームの開発に備わっています。
「世界中の人とモノがつながるグローバルなプラットフォームをつくる」という事業目標を掲げ、エバンジェリストだけではなく経営者としても躍進しています。
中山五輪男氏
中山五輪男氏は、富士通のエバンジェリストです。中山氏は法政大学工学部卒業後、複数のITベンチャーに勤めていました。その後、2001年にエバンジェリストとしてソフトバンクに入社し、頭角を現します。
2017年には、富士通の常務理事首席エバンジェリストに就任し、スマートデバイスやAIなど、数多くの分野に関しての講演をおこなってきました。講演は年に300回以上開かれ、書籍の執筆やテレビ番組の出演も精力的におこなっています。
また、30以上の大学で特別講師も勤めており、マルチな場面で活躍しています。
<<あわせて読みたい>>
識学の導入でボラティリティの低い芸能ビジネスを目指して|株式会社ティーンスピリット 代表取締役社長 宮地 俊充 氏エバンジェリストに関するQ&A
エバンジェリストという職種は日本でも認知が高まってきていますが、他の言葉との関連性や実際のなり方などはよくわかっていないという人が多いです。
多くの人がエバンジェリストについて思い浮かべる質問を取り上げて、1つずつ解説していきます。
専門家
アニメのエヴァンゲリオンとエバンジェリストには関連があるのでしょうか
アニメのエヴァンゲリオンとエバンジェリストには、直接的な関連はありません。両方ともラテン語を起源としているため、言葉は似ていますが意味が異なります。
エヴァンゲリオンは日本語で「福音」という意味であり、噛み砕いて言えば「良い知らせ」ということになります。一方で、エバンジェリストは「福音を人々に伝える伝道者」という意味です。
エバンジェリストとキリスト教には関連がありますか
エバンジェリストとは、元々キリスト教における伝道者を指す言葉です。
ドイツの神学者であるルターが、腐敗したカトリック教会に対して「キリストの教えをもう1度深く見直すべきではないか」と説きました。当時のルターが自分のことをエバンジェリストと名乗ったことから、エバンジェリストという言葉が「キリストの教えを伝える人」の意味で浸透していきました。
どうしたらエバンジェリストになれますか?
エバンジェリストになるためには、エンジニアやITコンサルタントを経て、キャリアチェンジすることが一般的です。
エンジニアもITコンサルタントも、深いITの教養とプロジェクトを円滑に進めるためのコミュニケーション能力を求められます。
エンジニアかITコンサルタントとして大きな結果を残せるようになれば、エバンジェリストへの道が開けてきます。
資格はあるんですか?
エバンジェリストになるために必要な公的資格は特にありません。エンジニアやITコンサルタントとしての実績があれば、キャリアチェンジできます。
なかには、株式会社ARKがおこなっている「AIエバンジェリスト養成講座」や講座を卒業後に与えられる「AIエバンジェリスト資格」というものもあります。
より権威性を高めたい場合は、講座を受けて資格を取得することをおすすめします。
<<あわせて読みたい>>
リカレント教育とは?定義やおすすめの補助金を簡単に紹介!生涯学習との違いも解説!エバンジェリストを企業戦略に上手に取り入れよう
エバンジェリストは企業を成長させるうえで、とても重要な職種です。今後、ITの技術が促進していくことにより、AIやIoTの導入が当たり前になっていきます。
時代に取り残されないためにも、ITに特化したエバンジェリストを社内に招き入れ、日々進化を続けるITの知見を深めていきましょう。
<<あわせて読みたい>>
プロジェクトマネジメントとは?成功の秘訣を紹介!