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名選手は名監督になれるのか? 高橋由伸さんとの対談で感じたこと

よく「名選手は名監督になれない」と言われます。

選手と監督では当然やるべきことが違います。大切にすべきことが違います。よって、名選手だったからといってそのまま名監督になれるわけではない、という意味の言葉です。

私は組織マネジメントのコンサルティングをやっています。あらゆる組織を見てきましたが、名プレーヤーであっても名マネージャーにはなれるはずだという確信があります。

うまくいかないとすれば、それは組織運営の仕組みがわかっていないから。そこをしっかりと理解できれば、ビジネスでもスポーツでもうまくいく。

名選手であっても名監督になれると考えています。

ただ本当にそうなのか? その確信を深めたいと思っていました。

そんななか「名選手だったけれど、監督になってから苦労された方はどなただろう?」と考えていたときに、巨人軍の監督だった高橋由伸さんが思い浮かんだのです。

打診させていただいたところご快諾いただき、約2時間にわたって対談をさせていただくことになりました。組織運営という観点から、いろいろと興味深いお話を伺うことができました。

選手の気持ちがわかるリーダーは「いいリーダー」なのか?

説明はいまさら不要だと思いますが、高橋由伸さんは巨人の主力選手として活躍した直後、2016年から3年間監督を務められました。

やはりいきなり「プレーヤー」から「マネージャー」になったことで苦悩する場面も多かったようです。

私は「組織運営ではプレーヤーとマネージャーは距離をとるべきだ」と教えています。

会社に置き換えるなら、プレーヤーは「部下」、マネージャーは「上司」という位置づけになります。会社組織で上司と部下が距離をとるように、スポーツの世界でもマネージャーとプレーヤーはにきちんと距離をとるべきだと考えます。

マネージャーとプレーヤーが「なあなあ」の関係になってしまうと組織における「位置関係」がおかしくなり、指示系統がうまく機能しなくなってしまうからです。

高橋さんが苦労されていたのも、やはり「選手との距離感」の部分でした。選手からそのまま監督になったので選手の気持ちがわかりすぎてしまう。よって選手との距離をうまく取れなかったようです。

対談のなかで、高橋さんはこう仰っていました。

“つい2〜3ヶ月前まで同じロッカーにいたので、それぞれが愚痴を言っているのがわかっているんです。「今ごろこう思っているだろうな」「こう言っているだろうな」と思ってしまう。”

“当たり前ですが、誰からも好かれる、全員にとっていい監督になれるなんて思っていませんでした。でもやっぱり、どうしても「こう思っているだろうな」「ああ思っているだろうな」というのが、どこか頭の片隅にあったのは事実だと思うんです。”

お話を伺って思ったのは、やっぱり「距離が近すぎるのではないか」ということでした。そして「自分が決めていい範囲がどこまでなのか」をハッキリさせられていない印象を受けました。

選手の気持ちがわかってしまうがゆえの難しさ。

やはりリーダーとメンバーの距離が近いと強いチームは作りにくいということなのかもしれません。

選手やコーチに遠慮してはいけない

私が気になっていたのは「コーチ」との関係です。

コーチというのは、会社で言えば中間管理職のような存在です。コーチにもきちんと「権限と責任」を移譲しなければ、組織としてはうまくまわっていきません。

高橋さんは「監督と選手の関係」「監督とコーチの関係」に気をつけながらも、どうしても曖昧な部分が生まれてしまっていたようでした。

“野手に関しては、コーチに任せている中でも、僕なりの考えや「こうしたほうがいいんじゃないか」ということは伝えていました。まずコーチを呼んで「ちょっとここが気になる。こうしたいから直接やっていいか? 横にいて聞いてくれ」と。”

“(そこは)「上司が2人いる状態」になっていたかもしれません。ただ、上司どうしの意思疎通ははかるようにしていました。「こういう指導をしてる」「こういうやり方をした」というのは、コーチともある程度共通して持つようにしました。でも、それがよかったのかはわかりません。”

監督が選手に直接指導する場面もあったようです。

高橋さんは野手としてのトッププレーヤーですから、指導することは悪いわけではありません。ただ組織を優先するのであれば、できればコーチを通じて指導するのがよかったかもしれません。

また、コーチや選手に本来は意思を持たせてはいけないところで持たせてしまっているところもあったようです。下の立場の人たちに気を使いすぎて「決める」という機能が一部停滞してしまっている印象を受けました。

「もっとなにかできたのではないか」

対談の後半に、高橋さんはこう仰っていました。

“これはいちばんの言い訳になってしまうのですが、やっぱり僕の年齢や、実績のなさゆえに、なにかものごとを動かすたびにまわりが動揺したり、反発したりしてしまったというのはありましたね。

僕の経験不足ゆえの部分があった。「もっとなにかできたのではないか」というのは、現場を離れて3年目になるいまも、ずっと頭にありますね。”

野球とビジネスを安易に比べるのは違うかもしれませんが、私も前職のときにいきなり「プレイヤー」から「マネージャー」になりました。

当時は部下と一緒に会社の愚痴を言ったりもしていました。「リーダーは現場に近いほうがいい」とすら思っていました。よって部下も育っていかないし、リーダーとしての及第点には至っていなかったと思います。

しかしその後、組織を動かす「仕組み」をきちんと理解したことで、強い組織をつくれるようになりました。いまではマネジメントで悩むことはまったくありません。

名選手は名監督になれるのか?

ビジネスの世界では「なれる」というのが私の答えです。しかし「巨人軍の監督」という特殊な立場では、なかなか方程式どおりというわけにはいかなかったようです。

若干40歳で監督に指名された高橋さん。彼の目には何が映っていたのでしょうか?

対談記事はコチラ

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