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グーグルの「マネジメント8習慣」とは?日本企業の課題解決にも応用する方法

経営者が、部長や課長の管理能力に疑問を感じたら、グーグルの「マネジメント8習慣」[1]が参考になるかもしれません。

複数の課を束ねている部長にも、課長たちのマネジメント力を高めるために、この8習慣を理解しておくことは有効でしょう。

  1. よいコーチになる
  2. 部下に権限を委譲する
  3. 部下の幸せを願う
  4. くよくよしない
  5. チームメンバーの声を聴く
  6. 部下のキャリアを支援する
  7. チームのビジョンを示す
  8. 自分のスキルを磨く

一見するとどれも管理職として当たり前のように感じるかもしれませんが、しかしここには「世界企業」ならではの極意が含まれているのです。

 

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グーグルはチームを徹底的に洗い出した

8つの習慣を詳細にみる前に、グーグルがなぜ8つの習慣を管理職たちに求めているのかを考察してみます。

 

8万5千人を「ピチャイ色」に染めるには

検索エンジン世界最大手の米グーグルには2018年10月現在、85,050人の従業員がいます[2]。もちろんこの約8万5千人の人たちは世界中に点在しているわけです。日本にもグーグル日本法人があり、この8万5千人の一部となっています。

従業員8万5千人の会社でも、従業員300人の会社でも、社長や最高経営責任者(CEO)の経営戦略を従業員たちに浸透させなければならないのは同じです。しかし当然のことながら、8万5千人のグーグル従業員に、サンダー・ピチャイCEO[3]の考えを理解させることは簡単なことではありません。

そこでグーグルは、管理職にピチャイ氏の考えを教え込むことにしたわけです。

 

よいチームの方法を他チームに落とし込むことはできなかった

では、ピチャイ氏が自分の考えを経営陣に伝え、それぞれの経営陣が自分が統括する本部長たちに考えを伝え、本部長たちが自分が統括する部長たちに考えを伝え、部長たちが課長たちに伝えれば、ピチャイ氏の考えは末端の社員にまで届くでしょうか。

答えはNOです。なぜならこのような伝言ゲームでは、必ず途中で「違う考え」が侵入してしまうからです。

 

そこでグーグルは、伝言ゲーム手法ではなく、よいチームを増やすことを考えました。

グーグルは会社が十分巨大化した2012年に「アリストテレス」という社内向けプロジェクトを立ち上げました[4]。このプロジェクトは、社内のうまくいっているチームとうまくいっていないチームを洗い出し、その違いを分析しようとしたのです。

プロジェクト・アリストテレスでは当初、次のように考えていました。

・うまくいっているチームの方法を、うまくいっていないチームに落とし込めば、すべてのチームがうまくいく

それでプロジェクトメンバーは社内のチームをくまなく観察しました。その観察項目は次のとおりです。

・社内のチームメンバーは社外でも親しくしているか
・チームメンバーどうしはどれくらいの頻度で食事を共にしているか
・チームメンバーの学歴のばらつきとそのチームのパフォーマンスに相関関係はあるか
・外向的なメンバーのほうがチームに貢献しているか
・それとも内向的なメンバーのほうがチーム貢献度が高いのか
・チームメンバーの趣味の共通性とそのチームのパフォーマンスに相関関係はあるか

 

これらの調査項目から、うまくいっているチームに共通した傾向がみつかれば、アリストテレス・プロジェクトは成功するはずでした。

ところがプロジェクトを進めていくうちに、ある事実を発見し、うまくいっているチームの方法を他のチームに移植することができないことが判明したのです。

 

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チームは個人と同じくらい個性的

プロジェクト・アリストテレスが導き出した結論は、「うまくいっているチームの方法をうまくいっていないチームに落とし込めば、すべてのチームがうまくいく」とは限らない、ということでした。

 

組織心理学や社会学の専門家も投入

しかしこれは、プロジェクトの失敗を意味しません。この手法が使えないことが判明するという、大発見だったのです。

プロジェクト・アリストテレスの優れた点は、このプロジェクトのメンバーに、分析が得意な統計専門家やエンジニアだけでなく、組織心理学や社会学の専門家も加えたことです。つまりグーグルは、「巨大企業ではビジネスが人の心理や社会的習性によって動く」という仮説を立ててから、プロジェクト・アリストテレスを始動させたのです。

企業がマネジメントや企業統治を検討するとき、この考え方は参考になるでしょう。

 

さて、ではなぜ「うまくいっているチームの方法をうまくいっていないチームに落とし込めば、すべてのチームがうまくいく」とは限らない、のでしょうか。

それは、社内のチームは個人と同じくらい個性的に動くからです。

例えば成績優秀なA君の勉強方法をB君に真似させても、B君の成績が思うように上がらないのと同じです。

 

チームの性質は真逆なのにどちらも好成績

プロジェクト・アリストテレスのメンバーは、業績が好調のチームに共通するパターンをみつけることができませんでした。

例えば、同じ程度に生産性が高いAチームとBチームを分析したところ、Aチームのメンバーは社外でも付き合う友達感覚だったのに対し、Bチームのメンバーは会議以外ではほとんどコミュニケーションを取らないことがわかったのです。

 

また、やはり同程度に実績を上げているCチームとDチームのリーダーを分析したところ、Cリーダーはトップダウン形式の強いリーダーシップを発揮し、チームメンバーを仕事の優劣によって階層づけしていたのに対し、Dリーダーはフラットな人間関係をチーム内に構築していました[4]。

チームの成功の仕方は、チームそれぞれだったのです。

 

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グーグルが求めるマネージャー像とは

グーグルは、伝言ゲーム方式でもなく、よいチームを見本にする方式でもなく、どのようにして8万5千人をまとめあげているのでしょうか。

それが、価値観の共有だったのです。「グーグルの価値観」を具現化したものが、冒頭で紹介した8習慣というわけです。

これは、中小企業でも活用できます。

 

中小企業にグーグル8習慣を落としこんでみる【事例検討】

日本の中小企業などが、グーグルのマネジメント8習慣を活用して自社の管理職たちのマネジメント力を向上させるには、具体的にどのようなアクションを起こしたらいいのでしょうか。

マネジメントに失敗した中小企業の事例を紹介しつつ、筆者の私見を交えながら考察していきます。

 

エクセル管理でチームを引っ張ろうとしたリーダーの失敗

A氏(30歳)は27歳のときに、自分を含む4人のチームのリーダーに抜擢されました。A氏はこれまで、上司のルーズなスケジュール管理に嫌気を差していました。A氏が不満だったのは、指示と決定が遅い、全スタッフの業務量を把握できていない、全体的に無駄な動きが多く全スタッフの残業時間が長い、といったことでした。

 

そこでA氏はチームが発足してすぐに、自分を含む4人の業務の進捗状況をエクセルで管理することにしました。さらにそのエクセルをクラウドに保存し、3人のスタッフも閲覧できるようにしました。

A氏は自分のことを「心配性」であると自認しています。それでスタッフの仕事がエクセルの通りに進んでいないと、その都度注意していました。

そしてA氏は、スタッフがストレスを溜めないように、もしエクセルの進捗表のとおりに仕事を進めることができなかったら進捗表を修正する、と伝えていました。進捗表のスピードを落とすこともやぶさかでない、という態度を示したのです。

A氏はスタッフを「だから進捗表のとおりに仕事を進めてほしい」と叱咤激励しました。

 

A氏のチームは実績を残すことができました。それでチームは解散し、A氏は元の職場に戻りました。

ところが次の人事異動のとき、A氏の同期社員は昇進したのに、A氏は昇進できませんでした。A氏は自分の上司を飛び越して人事課長に面談を申し込み、なぜチームを率いて実績を残すことができた自分の昇進が遅れたのか、問い合わせました。

人事課長は「会社としては君(A氏)をすぐには管理職にすることはできないと判断した」と答えました。

A氏のリーダーへの抜擢は、いわば「管理職試験」でした。A氏はそれに落第したのです。A氏は何がいけなかったのでしょうか。そしてA氏はグーグルの管理職8習慣をどのように活用したらいいのでしょうか。

 

8つをバランスよく身につける必要がある。1つ突出しても効果はない

A氏のミスは、もちろん全メンバーをエクセルの進捗表で管理したことでした。A氏はスタッフに、「進捗表のスピードを落としてもよい」と伝えていますが、その一方で「だから進捗表のスピードを守れ」と命令しているのです。

これはグーグル8習慣にある「チームメンバーの声を聴く」に該当しています。また、効率的に仕事を進めて残業を減らし、さらに実績を上げる道筋を示しているので「部下の幸せを願っている」ともいえます。

 

しかしA氏は「部下に権限を委譲」しているわけでもありませんし、スケジュールのスピードは示していますが、「チームのビジョン」は示していません。また「よいコーチ」には遠く及びません。

このように、グーグル8習慣は1つだけ採用すればよいわけではないのです。8習慣すべてをバランスよく兼ね備えていないと、いびつな管理職になってしまうのです。

では、A氏が次に管理業務を任されたら、何をしなければならないのでしょうか。

 

フィードバックと経営者マインド

「よいコーチ」は、自分のスタッフたちに建設的なフィードバックをします。つまりA氏は、進捗表とおりに進んでいないスタッフがいたら、進捗表とおりに仕事を進める術(すべ)を示してあげなければならなかったのです。

例えばA氏がスタッフと一緒に仕事をして、見本をみせてあげてもよかったのです。

 

A氏は、エクセルの進捗表をクラウド管理することでスタッフたちにチームのビジョンを示したつもりかもしれませんが、それでは足りません。

チームリーダーのA氏は、今回わざわざプロジェクトチームが結成された意義をスタッフに説き、このプロジェクトが、社長が示している経営戦略のどこの位置づけられるのかを教えなければならなかったのです。

もしかしたらA氏自身、チームのビジョンを理解していなかったのかもしれません。

 

業務内容(やること)を知ることと、ビジョン(目標、目的)を把握することは別物といってよく、ビジョンを把握することは管理職の最初の仕事といえるでしょう。

ビジョンの把握とは、会社の経営戦略を完全に理解することでもあるので、経営者マインドを持つことにほかなりません。管理職の職位が上がるほど、管理職が持つ経営者マインドは、社長の経営者マインドと同化していかなければならないのです。

 

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まとめ~ひとつのチームをみれば中小企業

従業員8万5千人のグーグルの8習慣を日本の中小企業が真似ても意味がない、と考える必要はないでしょう。グーグルを複数のチームが集まった会社とみなせば、1つのチームは中小企業と同規模になります。

 

グーグルの日本法人の仕事は、「エンジニアリング」や「セールス」など9種類あります[5]。

そして「エンジニアリング」にはさらに、「ソフトウェアエンジニア」「テクニカルプログラムマネージャー」「プロダクトマネージャー」など20種類もあるのです[6]。

グーグルを中小企業の集合体のようなものと考えれば、グーグル管理職8習慣は、日本の中小企業の見本になるはずです。

 

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参照

[1]グーグルが掲げる「最高の上司」の8つの条件(Forbes)https://forbesjapan.com/articles/detail/23397?n=1&e=17327
[2]Google、従業員数(グーグル)https://www.google.com/search?newwindow=1&client=firefox-b&q=google+%E5%BE%93%E6%A5%AD%E5%93%A1%E6%95%B0&stick=H4sIAAAAAAAAAONgFuLUz9U3MDFNNk9SQjC1-Jzzc3Pz84IzU1LLEyuLFzHqZJRb6Sfn5-SkJpdk5ufp5xelJ-ZlViWCOMVWefkK-WkKqbkFOfmVqanFAD4V_Z1XAAAA&sa=X&ved=2ahUKEwjAydeYrvjdAhWKzbwKHZaCCc0QMSgAMAN6BAgIEAs&biw=1026&bih=654
[3]Google、CEO(グーグル)https://www.google.com/search?newwindow=1&client=firefox-b&ei=IufAW7DBEIzn-Abx8oRI&q=Google%E3%80%80CEO&oq=Google%E3%80%80CEO&gs_l=psy-ab.3..0i131k1j0l5j0i4i30k1l2.20906.22785.0.23392.5.5.0.0.0.0.144.606.0j5.5.0….0…1c.1j4.64.psy-ab..0.5.601…0i67k1j0i131i67k1j0i4k1.0.o4syen9W_-o
[4]共通するパターンが見つからない(現代ビジネス)https://gendai.ismedia.jp/articles/-/48137?page=2
[5]職務内容、Googleで一緒に働いてみませんか?(グーグル)https://careers.google.com/intl/ja_jp/teams/
[6]エンジニアリング、テクノロジーの職種(グーグル)https://careers.google.com/intl/ja_jp/teams/engineering-technology/

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