カフェテリアプランとは、従業員に補助金を支給し、豊富なメニューの中から福利厚生を能動的に従業員が選ぶ仕組みのことです。近年は働き方が多様化するとともに、福利厚生へのニーズも多様化しました。そうした多様化したニーズに応えられる仕組みがカフェテリアプランです。
カフェテリアプランを導入すると従業員満足度が向上し、福利厚生が充実している企業として企業イメージがアップします。さらに、ワークライフバランスや健康経営の促進により、生産性の向上が可能です。
本記事では、福利厚生にかかる予算の見える化もできるなど、メリットが多いカフェテリアプランの魅力について解説します。
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目次
カフェテリアプランとは
カフェテリアプランとは、従業員に一定の補助金をポイントで支給して、従業員はそのポイントの範囲内で福利厚生メニューを選択したり、利用したりできる仕組みのことです。従業員は決められた福利厚生を享受するのではなく、自分に必要な福利厚生メニューを自発的に選べます。
ちなみに、カフェテリアプランの名前は、好きな飲み物や食べ物を注文できるカフェテリアが由来です。
カフェテリアプランの歴史
カフェテリアプランは1970年代にアメリカで生まれた仕組みです。近年はより幅広い意味を含んだ「フレキシブル・ベネフィット・プラン」とも呼ばれています。医療コストの上昇と従業員ニーズの多様化を受けて、1970年代に、一部のアメリカ企業では福利厚生のフレックス制をはじめました。
日本では1991年に設置された、企業厚生研究会やカフェテリアプラン研究会をきっかけに注目されています。1995年には、日本初のカフェテリアプランがベネッセコーポレーションによって導入されました。
カフェテリアプランとパッケージサービスの違い
福利厚生サービスは様々な種類がありますが、カフェテリアプランとよく間違えられるのがパッケージサービスです。カフェテリアプランは、企業に付与されたポイントを使用して、自分の好きな福利厚生メニューを選べる選択型の仕組みです。
一方、パッケージプランは企業側が低額で従業員1人あたりの費用を払い、従業員はパッケージ化されているサービスを自由に利用できる定額制の総合的な仕組みです。パッケージ化されているので、企業独自のサービスはメニューに入れられません。
カフェテリアプランの平均付与ポイントや単価設定
カフェテリアプランは、企業が従業員に対して補助金をポイントで付与します。1人あたりの年間補助金額は平均6万5,277円です。1ポイントの単価は100円に設定している企業が25.7%、1円に設定している企業が22.9%となっています。「優遇単価制度」を採用している企業は42.9%でした。
優遇単価制度とは、選択する福利厚生メニューによってポイント単価が変動する仕組みです。どのようなメニューで単価を優遇するかは企業が決定でき、特定のメニューの利用促進につなげられるので、優遇単価方式を採用する企業が増加しています。
カフェテリアプランの代表的なメニュー
企業には幅広い年齢層やさまざまな家族構成の従業員が所属しているため、従来の福利厚生サービスでは平等性が確保できません。たとえば、育児補助サービスは独身や子供のいない従業員にとって必要のない福利厚生です。
そこで、カフェテリアプランでは企業がさまざまなメニューを用意して、その中から従業員に選択してもらいます。多彩なメニューの中から各自が好きなメニューを選べるので、従業員の多種多様なニーズに応えることができます。このような福利厚生のニーズの多様化は、カフェテリアプランが普及している要因の1つです。
カフェテリアプランで提供されるメニューは企業によって異なり、下記のようなメニューが用意されています。
育児・介護・ライフケア
- 育児費用補助
- 育児用品補助
- 介護サービス利用補助
- 介護施設利用補助
- 介護用品補助
健康増進・医療
- 人間ドック費用補助
- 歯科治療費用補助
- 予防接種補助
- メンタルヘルス利用補助
- 医療費補助
- スポーツクラブ利用補助
自己啓発
- クラブ活動支援
- 資格取得補助
- 各種スクール補助
- IT機器購入費補助
レジャー
- 旅行費用補助
- 宿泊費用補助
- 映画鑑賞補助
- ゴルフ施設利用補助
- レジャー施設利用補助
- リラクゼーション施設の利用補助
会社生活
- 食券購入補助
- 昼食補助
- 社内クラブ活動支援
- 自社製品購入補助
- ボランティア活動補助
財産形成
- 生命保険料補助
- 損害保険料補助
- 持株会補助
- FP情報関連セミナー費用補助
- FP相談費用補助
住宅
- 家賃補助
- 寮
- 社宅使用料補助
- 住宅ローン補助
- 引っ越し費用補助
カフェテリアプランのメリット・デメリット
カフェテリアプランのメリットとデメリットについて紹介します。
カフェテリアプランのメリット
カフェテリアプランの代表的なメリットは下記の7つです。
- 福利厚生費の変動リスクがなく、総額が明確
- 従業員への公平性を担保して不公平感を抑制
- 能動的な福利厚生で従業員の満足感が増す
- 独自の福利厚生を設計して企業のメッセージを伝える
- 働き方や福利厚生の多様なニーズに対応
- 企業のイメージアップにつながる
- アウトソーシングによる業務効率化
従業員満足度が高くなれば生産性が向上し、業績向上にも寄与するため、上記のメリットの中でも従業員満足度が高くなることはとても重要なポイントです。さらに、福利厚生が充実しているというイメージは求職者へのアピールにもなります。
それでは1つずつ解説していきます。
福利厚生費の変動リスクがなく、総額が明確
カフェテリアプランは、従業員1人あたりに一定のポイントを付与する仕組みです。したがって、「従業員数×年間付与ポイント」という計算で年間の予算が導き出せるので、必要となるコストが明確になります。また、従業員の利用状況によって、福利厚生費が予算上限を上回るような変動リスクがありません。
これにより、予算変動リスクに備えた対策や労力も不要で、福利厚生を効率的に運用することができます。
従業員への公平性を担保して不公平感を抑制
福利厚生を充実させることが、福利厚生のニーズを満たすことにつながるかどうかは議論の余地があります。ニーズが多様化している現代においては、用意している福利厚生メニューを利用する従業員と利用しない従業員が出てきます。これにより利用しない従業員が不公平を感じ、満足度の低下につながるかもしれません。
従業員の属性や、ライフスタイルに合わせてカスタマイズしたカフェテリアプランであれば、多様なニーズに対応できるため、不公平感を減少させられます。さらに、カフェテリアプランであれば、利用状況を参考にメニューの見直しを図ることも可能で、柔軟に従業員のニーズに対応できます。
能動的な福利厚生で従業員の満足感が増す
従来の福利厚生は企業が従業員に与えるもので、福利厚生を与えられた従業員は受動的に福利厚生の恩恵に浴していました。しかし、カフェテリアプランなら自分でポイントを利用して、能動的にメニューの選択が可能です。その結果、従業員の自主性が尊重されるとともに、ニーズを満たす選択ができるので従業員の満足度が高まります。
従業員満足度が高い企業は生産性が上がりやすく、顧客対応へのモチベーションが高い傾向にあるため、近年は重視する企業が増えています。したがって、カフェテリアプランで従業員満足度を高めることは、自社の生産性向上や業績アップへの寄与を意味するのです。
独自の福利厚生を設計して企業のメッセージを伝える
カフェテリアプランは企業理念や従業員のニーズに合わせて、福利厚生をその企業独自に設計していく仕組みです。これにより、制度にライフワークバランスや女性の社会進出などの企業メッセージを込めやすくなります。
従業員に付与されたポイントは使わなければ消滅してしまうため、従業員は必ず自社の福利厚生を利用するようになります。その結果、福利厚生を通して企業メッセージが従業員に浸透しやすくなるのです。
働き方や福利厚生の多様なニーズに対応
カフェテリアプランは企業が独自にメニューを設計し、従業員が能動的にメニューを利用するため、多様なニーズに応えられます。
ダイバーシティ化が進むことで多様な働き方が求められており、企業では育児と仕事の両立やライフワークバランスの重視など、働き方の多様化が広がっています。そして、働き方の多様化は福利厚生のニーズの多様化につながるため、企業が与えるだけの福利厚生ではニーズに対応しきれません。
企業のイメージアップにつながる
多彩なメニューを取りそろえたカフェテリアプランを導入すれば、福利厚生の充実度をアピールすることが可能です。福利厚生が充実していることは安定した経営基盤の証明になり、企業の信頼性の向上につながります。
求職者の8割以上が企業の福利厚生を重視していると答えているように、福利厚生の注目度は社会的に高まっているのです。福利厚生が充実している会社は求職者から見て「待遇のいい会社」に映るため、福利厚生を充実させることで、人材の発掘や募集においてプラスの効果が期待できます。
アウトソーシングによる業務効率化
カフェテリアプランの導入には、アウトソーシングが利用できます。カフェテリアプランのサービス提供会社では、多くのメニューや企業の要望や予算に合わせて選べるパッケージが用意されており、導入から運用までサービス提供会社がしっかりサポートしてくれます。
カフェテリアプランのデメリット
カフェテリアプランのデメリットは下記の3つです。
- 自社運用では手間とコストがかかる
- 単年度精算方式は従業員の不満につながることも
- 課税と非課税のメニューが混在
デメリットも把握して導入を検討するようにしましょう。
自社運用では手間とコストがかかる
企業がカフェテリアプランを運営するには手間とコストがかかります。
ポイント管理システムの構築や導入に加え、管理するための人手やコストも必要です。時間が経てば従業員のニーズも変化する可能性もあり、そのような変化に対応して柔軟にシステムを変えていかなければなりません。
しかし、これは自社でカフェテリアプランを構築する場合で、アウトソーシングを利用すればこれらの手間を省くことができます。
単年度精算方式は従業員の不満につながることも
カフェテリアプランは企業が従業員にポイントを付与し、そのポイントを利用して福利厚生を従業員が利用します。その際、ポイントの精算方式は「単年度精算方式」を利用している企業が7割です。
単年度精算方式とは、未消化のポイントを翌年度に繰り越しできない方式のことで、ポイント管理が簡単になるため、多くの企業が採用しています。
しかし、ポイントが未消化のまま期限切れになる点は従業員にとって不便なため、単年度精算方式は従業員の不満につながりかねません。
課税と非課税のメニューが混在
カフェテリアプランを導入するときに注意しなければならないのが課税・非課税問題です。カフェテリアプランで設定できるメニューには課税対象になるものと、非課税扱いになるものが混在しているので、内容に応じて課税・非課税を判断しなければなりません。
カフェテリアプランの課税・非課税のポイント
カフェテリアプランのメニューには課税・非課税が混在しています。
この課税・非課税が決まるポイントが下記の3つです。
- 利用内容によって判断される
- 地位や役職で付与するポイントが変化する場合は課税
- 換金性のあるメニュー(金券やギフト券、映画チケットなどの購入補助)は課税対象
費用補助は課税対象となることが多いですが、健康診断や医療費補助の場合は非課税となるケースもあります。カフェテリアプランをアウトソーシングで導入するなら、メニューの課税・非課税についてしっかりと説明を受けましょう。
カフェテリアプランの導入企業の割合
経団連の資料によれば、2018年のカフェテリアプラン導入企業は16.6%でした。カフェテリアプランは、従業員規模が大きい方がスケールメリットがあるため、導入企業の84.6%が従業員1000人以上です。
一般的には大企業の方がカフェテリアプランを導入しやすいと言えますが、大企業のみが導入しているわけではありません。実際に、500人未満の導入企業も8.7%存在しています。また、カフェテリアプランを導入している企業は年々増加しており、働き方の多様化が進む今後は一層、導入する企業が増えていくことでしょう。
カフェテリアプランをアウトソーシングするメリット
カフェテリアプランを導入する企業が増えていますが、同時にアウトソーシングする企業も増え続けています。アウトソーシングすることのメリットは下記の3つです。
- 煩雑な手間を削減できる
- 企業ごとの課題の分析や適切なメニューの導入が相談できる
- 制度設計や構築を任せられる
自社でカフェテリアプランを運営する場合、ポイント管理システムや各種福利厚生などの導入をすべて自社で決めなければなりません。運営のオペレーションは非常に煩雑ですので、アウトソーシングする方が業務効率化の面からも理に適っています。
カフェテリアプランを導入するためのフロー
カフェテリアプランを導入しようと思っても、すぐに移行できるわけではなく、様々な準備や手続きが必要です。カフェテリアプランのフローは以下のようになります。
- ポイント原資となる予算の調達
- カフェテリアプランのメニュー設計
- 事務運用フローの設計
- ポイント管理システムのテスト
- 従業員向けの説明会
アウトソーシングするなら準備期間をかなり短縮でき、最短6ヶ月程度で準備可能です。アウトソーシング企業と綿密に打ち合わせし、フローをしっかりと確認しましょう。
カフェテリアプランの代表的なアウトソーシング企業
カフェテリアプランの導入や運営、委託におすすめの福利厚生代行サービス企業を5社紹介します。カフェテリアプランをアウトソーシングする場合、導入手順は以下のようになります。
- 福利厚生代行サービス企業に問い合わせ
- コンサルティングによる福利厚生の現状分析
- 最適なプランやメニューの提案
- 提案をもとにしたカフェテリアプランのメニュー設計
- 運営の開始
- 定期チェックや次年度に向けての制度改善
カフェテリアプランは、現状分析からメニュー設計にかけて多くの期間を要します。カフェテリアプランを検討しているなら、早めに福利厚生代行サービス企業に相談しましょう。
福利厚生アウトソーシングのパイオニア「リロクラブ」
リロクラブは、総合福利厚生パッケージ「福利厚生倶楽部」をはじめとする福利厚生サービス提供しています。1993年にサービスの提供を開始した、福利厚生アウトソーシング業界のパイオニア的企業です。カフェテリアプランの利用申請は、2018年からペーパーレス化を実施しています。
リロクラブでは、低コストで充実した福利厚生制度の構築・導入を可能にし、導入コンサルティングから管理運用までトータルでサポートしてくれます。契約数は業界最多の1万4800社で、会員数は638万人です。利用率向上やポイント消化率向上につながる提案を、PDCAサイクルを通して行ってくれます。
豊かな企業社会と地域社会の実現を目指す「イーウェル」
1,300社以上の企業や団体の福利厚生制度をサポートしてきたイーウェルは、福利厚生や健康支援サービスを通じて、健康で豊かな企業社会と地域社会の実現を目指しています。イーウェルの福利厚生代行サービスの特徴は「費用の見える化」「従業員ニーズの見える化」「社内文化の見える化」の3つです。
この可視化した3つのデータについてクロス分析を行い、どの層の従業員にどれほどの費用を使って福利厚生を行うのがベストか提案します。イーウェルのカフェテリアプランは、従業員ごとのライフスタイルやニーズに合ったメニューを各自で選択できるため、従業員満足度の飛躍的な向上が期待できるでしょう。
JTBと連携した旅行も安い「JTBベネフィット」
JTBベネフィットは、福利厚生パッケージ「えらべる倶楽部」や、従業員のモチベーションを向上させる「サンクスコレクト」などを提供しています。多様化する働き方や価値観に合わせたソリューションを提供し、働くことの価値を最大化することがJTBベネフィットの理念です。
「えらべる倶楽部」ではカフェテリアプランのほか、パッケージサービスも提供しており、JTBと連携した全国のレジャー、グルメ、リラクゼーション、旅行が満載のサービスとなっています。また、導入後の利用率の高さはJTBベネフィットの大きな特徴の1つです。
日本初の自動決済システム対応「ベネフィット・ワン」
福利厚生パッケージ「ベネフィット・ステーション」をはじめとする、各種福利厚生サービスを提供しているのがベネフィット・ワンです。ベネフィット・ワンは日本で初めて自動決済システムに対応したことでも知られており,ベネフィット・ステーションの利用者数は863万人で、導入団体数は1万1,600社に上ります。
ベネフィット・ワンが提供するカフェテリアプランは、ワークライフバランスの強化や戦略的な健康経営の推進が可能です。また、人事・健康データの一元管理が可能なため、企業はコア業務に専念できます。
手間なく低コストで導入「リソルライフサポート株式会社」
リソルライフサポート株式会社が提供する福利厚生代行サービス「ライフサポート倶楽部」は、従業員の個々のニーズに対応した多彩なメニューを誇るパッケージ型サービスです。手間なく低コストでカフェテリアプランを導入できることや、企業イメージの向上にも役立つことで人気となり、リソルライフサポート株式会社を利用している法人は2,000社に上ります。
ライフサポート倶楽部では、宿泊・レジャーなどの余暇支援から介護や育児のサポートまで、多様化するニーズにしっかりと応えます。また、従業員は豊富なメニューから選択でき、2親等までカフェテリアプランを利用できる点は嬉しいですよね。
まとめ カフェテリアプランの導入は企業のイメージアップにも
カフェテリアプランとは、企業が一定の補助金をポイントで支給し、従業員が多岐にわたるメニューから能動的に福利厚生を選択できる仕組みのことです。1970年代にアメリカで生まれ、1990年代には日本でも導入されはじめました。
育児や介護から宿泊・レジャーに至るまでさまざまなメニューから選択できるため、従業員満足度の向上に役立ちます。ライフワークバランスや健康経営の促進にも役立ち、生産性の向上が期待でき、福利厚生が充実していることは企業のイメージアップにもつながるでしょう。カフェテリアプランを導入して福利厚生の充実させてみてはいかがですか?
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