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日本の人口動向推移

日本では少子高齢化・人口減少が叫ばれています。
その流れは止まることがなく、ついに2015年をピークに日本の総人口は減少を始めました。そして2015年に約1億2000万人だった人口が、2065年には約8800万人まで減少するという予測がされています。約27%の人口が減少してしまうのに加え、高齢化も加速して行きます。2015年ではすでに4人に1人が65歳以上となっています。

出典:日本の将来推計人口平成29年推計 国立社会保障・人口問題研究所

また未婚率の上昇、出生率の低下等々、日本の人口が増加する兆しは見えません。仮に何らかの対策を今取ったとしても、18歳の若者は18年後にならなければ物理的に存在しません。2007年には財政破綻した北海道夕張市ですが、人口減少を食い止めることが出来ず、また若者離れが進んで行きました。それが日本全体の将来像になってしまうかも知れないのが日本の現状です。

日本の購買力の変化

日本の少子高齢化が加速して、総人口が大幅に減少してしまうとどうなってしまうのでしょうか?それは日本国内での購買力が大幅に下がってしまうということなのです。高度経済成長期では景気が右肩上がりでした。それは日本の人口が増加することで購買層が増え、購入する総数が増加したため、作れば売れるという時代が続いて来たからです。しかし人口が1億2000万人から8800万人に減少すれば、27%というマーケットが無くなってしまうことになります。1/4のマーケットが喪失する訳ですから、その影響は甚大なのものになります。

例えばコンビニエンスストアを例にとってみましょう。2015年の日本のコンビニエンスストア市場規模は10.2兆円ありました。計算を単純化しますが、1/4の人口が減少すれば購入者が同じだけ減る訳ですので、2.5兆円程度の売上げが減少する事になります。そうした人口減の影響はコンビニエンスストアだけではなく、全ての小売業にとっても同じような影響が出ますし、保険などの金融サービスにも当てはまります。日本国内にいる日本人を主要顧客対象としている企業にとっては、購入者が1/4いなくなってしまうという緊急事態なのです。

出典:visualizing.info

また高齢化が進んでくるため、新しい商品を開発しても売れにくくなる時代もやって来るでしょう。スマートフォンの普及はかなり進んで来ました。2017年での10代・20代の普及率は90%ですが、60代となると50%程度になってしまいます。新しいものに対する興味や関心度という視点からすると、全員に当てはまるわけではありませんが、どうしても高齢になるに従って薄くなって来ますし、新しいものに切り替える不便さや面倒さといったことも関係すると思われます。

出典:Marketing Research Camp

こうした状況を考えると、日本市場で売るという発想だけをしていては企業存続が危うくなり兼ねません。昨今では地方創生が叫ばれていますが、日本全体の総人口が減少する状況では、内需拡大だけは遅かれ早かれ破綻するのは見えています。そのためにも新しいターゲットを見つける必要があり、手遅れになる前に出来るだけ早めに対応する必要が急務だと言えるでしょう。

生き残りのための新たなターゲットとは?

日本国内で日本人を相手に売るという内需拡大では先が見えているため、市場や顧客を新しく捉えなおす必要があります。そうなると必然的に焦点を充てなければならないエリアが見えて来ます。
それは、①海外市場への参入、②海外からの訪問者の誘致の2点です。

日本国内市場は人口減少により縮小して行きますが、海外を見ると人口はまだ増加傾向にあります。人口が多い国の方が需要は高いため、どうしても海外市場を無視する訳には行きません。特に人口が増加して行く東南アジア、アフリカといった国々への参入検討は重要なものとなるでしょう。 アジアの人口は2017年4,478万人から2050年5,267人、アフリカだと2017年1,247万人から2050年2,478万人の予測となっています。また海外市場にターゲットを移すとは言っても、日本国内の産業も活性化して行く必要もあります。しかし日本人だけをターゲットにしていては、マーケットは縮小して行くだけですので、海外からの訪問者を誘致して、彼らに顧客となって貰うことが必要になって行きます。

出典:総務省統計局 世界の統計2017

海外市場への参入

日本市場が縮小するから海外に売ろうとして、現在製造している商品をそのまま持って行くだけでは、単なる価格競争に巻き込まれてしまう可能性があります。いくら売れても充分な利益が出なくては意味がありません。十分な利益を確保して売るために必要となるのが、海外の競合他社にはない何らかの“イノベーション”なのです。

イノベーションにも色々ありますが、海外企業の商品にはない機能を付けて、“技術のイノベーション”で勝負する方法があります。例えば海外から来て驚かれるのは、暖房温水洗浄トイレ。日本のホテルでは大抵どこでも装備されていますが、海外のホテルでは殆ど見られません。海外旅行に行った方なら分かると思いますが、冬の便座に座った時の便座の冷たさにビクッとした経験はないでしょうか?トイレというどこにでもある商品なのに、便座が温かい、また温水でお尻を洗ってくれるという少しのイノベーション。日本に来た外国人にとって評価が高いのが、この暖房温水洗浄トイレなのです。

トイレの便座を作っているメーカーは、海外も含めれば多くの会社が存在します。もし何のイノベーションもない便座であれば、競争となるのは価格だけです。しかし価格だけの勝負となれば、新興国で製造されたものには敵いません。日本で製造して、その商品で海外市場に参入しようというのであれば、一定のコスト競争力は必要ではありますが、それ以上に海外の競合他社にはない付加価値を付けるための技術のイノベーションが重要だというのが、今まで経験から学んだ教訓となっています。

その他にも商品そのものではなく、“サービスのイノベーション”もあります。例えば同じ商品を提供しながらも、日本式に徹底した業務管理により短納期で納入出来ることを武器にして、そのサービス性で日本では中小企業ながら海外の大企業との取引きをしている会社があります。これも海外企業では多い納期が遅い、また納期が遅れがちというのに対して、短納期で確実に納期を守るサービスのイノベーションが有効となっています。日本で生活していると実感としてないかも知れませんが、私の個人的な経験からすると、海外ではサービスが一定していることの方が少ないように思います。例えばヨーロッパの鉄道は遅延が日常的に起こります。私がアメリカで勤務していた時も、取引先から頻繁に納期遅れの連絡が来るため、その度に客先に謝罪の連絡を入れなければならないことが多々ありました。約束した期日や時間に確実に間に合わせることは、日本ではイノベーションとはなり得ないでしょうが、海外市場ではそうしたサービスがイノベーションとなり得るのです。日本企業が海外で成功した要因のひとつが、そうしたサービスの安定感や良さにあったのではないかというのが私の実感したところなのです。

その他にも、日本ではイノベーションと思えないのに、海外から見るとイノベーションになってしまうケースもあります。例えば中国からの観光客が買って行くのは家電だけではありません。粉末ミルクや薬品など、自国製品に対する懸念を持った人たちが購入して行きます。日本で徹底している品質管理ですが、日本にいれば当たり前と考えてしまうことも、海外の国から見れば革新的なことなのです。中国や香港の人達が日本の野菜を購入するもの同じ理由からだと考えます。 こうした事も日本ではイノベーションと言えないことですが、海外の人達からすればイノベーションになり得るのではないでしょうか?

イノベーションというと何か斬新で革新的なことでなければいけないという思い込みがあり、そのせいで何もアイデアが浮かばないのではないでしょうか?顧客や市場で何か困っていることへの解決策でも良いですし、“あったらいいな”程度の発想で十分なのです。そうしたほんの少しの“イノベーション”を見つけることで、価格競争に陥らずに新規海外市場に参入して行くことは決して難しいことではありません。

海外からの訪問者の誘致

海外市場への進出に対して、海外からの訪問者を誘致して、国内販売を増やすにはどうしたら良いのでしょうか?それには訪問してみたい思わせるための“体験のイノベーション”が必要になります。

自分が旅行に行く時を考えてみれば、大して変わらない体験であれば、価格の安いところを選んでしまうでしょう。あるいは魅力を全く感じなければ、幾ら価格が安くても旅行を断念して他の活動をするかも知れません。これは海外からの訪問者を誘致する時も同じではないでしょうか?あくまでも私見ですが、その地域に行かなければ食べられない名物があるから、その地域に行かなければ見れないものがあるから、様々な候補地の中から選択するのだと思うのです。そこに行かなければ体験出来ないと思わせるようなイノベーションがなければ、ただ価格を下げ続けて訪問者を誘致するしかなくなってしまいます。しかしそれでは誘致する側では財務的にも厳しくなりますし、また魅力を感じない訪問者はリピーターにもなってくれず、また口コミで良さが広がることも期待出来ません。

我々が海外旅行に行く時もそうですが、海外から日本に来る時に何となく日本に来たという人はなく、何か目的を持って訪問します。当然のことながら、自国で体験出来るのであれば高いお金を払い、時間をかけて訪問する人はいません。また旅行先を選ぶ際にもいくつか候補があるでしょうから、その中から日本を選ぶための理由が存在します。つまり、日本に行かなければ体験できないような何か“イノベーション”が必要なのです。

日本には季節の四季があり、伝統的な日本文化があり、他にはない日本料理といった食文化もあります。世界から見て犯罪率も低くかなり安全な国である上、スキーと温泉、桜や紅葉を楽しみながら仏閣散策など、様々な楽しみの組み合わせを提供することが出来ます。こうした国は決して多くはありません。日本政府が掲げる訪日外国人観光客を2020年に4000万人という目標も、達成可能な数値だと思うのです。

但し、これには少しの工夫も必要だと考えます。日本人が発想してしまうと、どうしても日本人の視点でしか物事を捉えることが出来ません。日本の良さをアピールしているつもりでも、海外の人からすれば興味を引かないこともありますし、逆に日本人からすれば当たり前のことが、非常に興味深い事象になることもあります。海外の人から見て何が“イノベーション”になるのかは、やはり海外の人達の視点でなければ分からないでしょう。浅草ではメロンパンの店に外国人が行列を作っています。ヨーロッパでも日本人が運営しているパン屋でメロンパンが売れているそうです。海外では固いパンが多く、外側がカリカリして中が柔らかい甘いメロンパンは不思議で美味しい食べ物なのでしょうが、これも外国人の口コミで広がったものであり、日本人が考えてアピール出来るものではないと思われます。最近は語学の問題もあり外国人スタッフを雇用しているところもありますが、単に従業員の一人として考えるだけでなく、海外からの人達が何に興味を持ち、何が“イノベーション”となり得るのか、もっと意見を吸い上げる必要もあるように感じます。サービスのイノベーションでも触れましたが、日本人が気付いていないのに海外から見ればイノベーションになるものが実はたくさんあるのではないかというのが個人的な実感なのです。

将来にむけて

少子高齢化・人口減少という今までにない減少に見舞われる日本。しかし、“イノベーション”により海外市場への参入、海外からの訪問者の誘致によって、活性化させて行くことは可能ですし、それが日本を救うための有効な方策です。しかし少しのイノベーションと言っても、実際に取り組んで見れば決して簡単なことではありません。何度もトライアル&エラーをしながら、何がイノベーションとなり得るのか模索しなければなりませんし、時間もかかることでしょう。そう考えれば、その内に取り組もうではなく、今すぐにでも取りかかる必要があります。

またここでは、技術のイノベーション、サービスのイノベーション、体験のイノベーションとして例を挙げましたが、イノベーションを体系化はしていません。何故なら体系化してしまうと、どうしてもその枠組みに囚われてしまい自由な発想が出来なくなってしまうからです。ネーミングも含めて、自由な発想でイノベーションを考える事が、本当のイノベーションに繋がるのだと考えます。

若い人達が自ら考え行動し失敗にくじけることなくイノベーションの模索を継続すること、そうした若い人達を経験豊富な高齢者が支援すること、また海外からの意見も取り入れながら常にイノベーションを追い続けて提供していくこと、それが人口減少という日本の現状に立ち向かうために必要なことなのです。

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