宝くじで高額当選をした人は、不幸になる。幸せになることはない。
そんな話を聞いたことがある人は多いと思うが、その内容は概ね、贅沢が癖になり、すぐにお金を使い切ってしまい人生が破綻した、という類の話ではないだろうか。
そしてそんな都市伝説まがいの話を聞くたびに、多くの人はこう思うはずだ。
「なんでそんなバカなことをしたんだろう。自分なら、少しずつ大事に使う。決して浪費はしない。」
と。
しかし、実際に高額の宝くじに当選して、
人は巨額の“不労所得”を一瞬で手に入れても、生活レベルを変えないことなどできるだろうか。
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目次
宝くじに当たった人のその後は不幸になるリスクがある
宝くじで当たったとしても「消して浪費することはない」と鉄の意思を持っている人は多い。しかし、実際は宝くじを当たっても消費が減らないことが、以下2つの効果から明らかになっている。
- パーキンソンの法則
- ラチェット効果
それぞれ解説をしよう。
パーキンソンの法則
パーキンソンの法則とは、「収入が拡大すると支出もそれに準じて増える」という理論だ。
正確にはパーキンソンの法則の第二法則が収入と支出の関係に該当するのだが、人は収入が増えるとそれに準じて支出を増やすという傾向がある。
このため、一時的にであれ収入が増加すると、少しばかりであれど以下のように考えるようになる。
- 少しだけであれば贅沢な食事にお金を使ってもいい
- 今まで行きたかった旅行に行ってみよう
一度で止められればいいのだが、一度支出を増やしてしまうと、その後支出を減らすことができない可能性がある。
それがラチェット効果と呼ばれるものだ。
関連記事:「パーキンソンの法則」をわかりやすく解説!「人が足りない」が嘘である理由
ラチェット効果
ラチェット効果とは、収入が減少しても消費はそれほど変化しないという理論のことだ。
ラチェット効果によると、消費行動においても同様のことがいえる。
例えば、先ほどの例で言えば「少しだけ贅沢な食事をしてみよう」という一つの行動が契機となり、一度のはずだった豪華な食事が月に一度、週に一度と増えていく。
そして、収入はさほど増えないのに支出は減らない。
このような悪循環が「宝くじ当選者」を貧困の道へ走らせるリスクがある。
「決して私だけはそんなことはない」と考えている人ほど上記のような傾向があるようだから、宝くじに当選すると生活水準が上がり、支出を減らせないリスクがあることは頭に留めておくのが良いだろう。
不安を煽るわけではないが、宝くじに当たったからと言って幸せになるとは限らないのだ。
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宝くじに当たった経営者の体験談
本質的には宝くじとは異なるが、ITバブル真っ只中には革新的な技術を保有していない企業であっても、「IT技術」を保有した企業であれば、資本金を多く獲得できる時代があった。
ここからは、宝くじという、身に余る「資本金」の調達に成功した、いち経営者の末路を紹介しよう。
ITバブルの真っ只中、「宝くじ」に当選した社長がいた
もう20年以上も前の話だが、大手証券会社の仕事に耐えられず数年で逃げ出した筆者は、設立間もないIT企業に転じた。
時代はITバブルのまっただ中で、ITに少しでも関係するジャンルでさえあれば猫も杓子も上場できたような時代だ。
今からは想像できないかもしれないが、ネット上に無料で転がっているようなフリーソフトのようなものを開発したというだけで、時価総額が1000億円を超えたような会社もあった。
VC(ベンチャーキャピタル)に勤めていた知人の一人は億単位の成功報酬を得てアーリーリタイアメントをするなど、まさにITバブルというにふさわしい、狂乱した時代の果実を謳歌した。
そんな環境なので、私ももちろんIPO(株式の新規上場)を考えない理由はない。
売上わずか数億円程度の会社だったが、事業計画書をまとめると複数のVC(ベンチャーキャピタル)に投資を呼びかけ、また証券会社に主幹事宣言書を入れると、すぐにIPOに向けて走り出した。
するとたちまち数億円の投資を集めることができてしまい、そしてその株主人脈から大手商社、大手通信会社、大手電機メーカーと取引先がどんどん広がっていく。
驚くような速さで、会社は商談のスケールをアップさせて行くことができた。
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前兆:「宝くじ」が招いた経営トップの変化
そして後は、このまま順調にIPOを達成するだけ・・・
と言う成功ストーリーを語りたいところだが、やはり世の中はそんなに甘いものではない。
資金調達から程なくして、経営トップの様子が変わり始める。
最初の異変は、大阪本社の移転だった。
それまで、雑居ビルの一角にこじんまりと構えていた本社を、駅前1等地のビルに移転すると言い出す。そして直ちに移転を決めると、身の丈に合わない高級なオフィス家具を調達し、社員の3倍分もの机とイスを並べてみせた。
とはいえ、これだけではまだ、経営トップの判断の範囲である。
受け取りようによっては下品ではあるが、それだけの速さで会社を成長させるという覚悟であるなら、経営企画責任者としてトップをサポートすべきだ。株主への説明も十分にできるので、直ちに問題視するような話ではない。
むしろ、積極的な投資をリスクと捉えるような臆病な経営企画責任者など、ベンチャー企業に必要ない。
積極的な投資と、浪費の違い
しかし状況は、残念ながらそういうことではなかった。
程なくして経営トップは東京駅の近くに新たな支店を出すと、都内1等地に家賃100万円ほどの高級マンションを契約してきてしまう。社宅としての法人契約だが、個人的な住居で会社の収益に貢献しない。
そして高級車のリース契約にファーストクラスでの“海外視察”など、完全に何かが壊れた。
会社の業績が伸びており、その利益の範囲内であればまだかろうじて、ステークホルダーへの理屈付けは可能かもしれない。しかしその時、会社は売上すら、まだ資金調達時点からほとんど伸びていない状況だった。
つまり、エクイティで調達した数億円というキャッシュを見て、完全に気が大きくなってしまった末での乱行だった。
これこそ、宝くじで大金を手にした者が陥る罠である。
危険:経営者すら「宝くじ」で感覚が麻痺する
投資家から預かった資本金で、全く意味のない浪費を始めるという最悪の行動を、経営トップは始めてしまったということだ。
率直に言って、外部株主の持ち株比率がそれほど大きくない状況であれば、その意見は経営に大きな影響を及ぼさない。
経営者の品格次第だが、外部株主の構成比が30%以下に留まるのであれば、「貰ったお金」であるかのように振る舞う下劣な真似すら可能だ。
未上場であれば、経営トップのモラルや品格次第でどうにでもなる。
後先を全く考えないのであれば、だが。
だからこそ、投資家は未上場の会社に投資するにあたって経営トップの品格やモラルを何よりも重視し、ビジネスモデルと人物を品定めする。
そしてこの時、私は明らかに間違った経営トップに自分の知見を提供して資金調達をサポートしてしまった。
彼は表向き、IPOに向けて努力を続けたがその実、投資家から預かった資本金を
「誰にも返す必要がないフリーキャッシュ」
であると捉えていることは明らかだった。
控えめに言っても、自分で用意し、積み上げた資本金の使い方ではなかった。経営トップに対し、身の丈に合わない資本金を調達するサポートをしてしまった私にももちろん、彼を批判する資格など無い。
私はそれから間もなくして会社を去ったが、その後同社は程なくしてリビングデッドに陥り、経営破綻した。
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宝くじに当たったらどうするべきか
それでは「宝くじ」に当たったらどうすればいいのだろうか。
宝くじに当選したからと言って、誰しもが不幸になるわけではない。
- お金はどこから生まれるのかを再認識する
- 給料に対する誤解
まずは上記の2点を理解することから始めよう。
お金はどこから生まれるのかを再認識する
原則として、会社が利益を得る手段は1つしかない。
- お取引先様に商品やサービスを提供する
- お取引先様から対価をいただく
というシンプルな流れだ。そして、そこから得たキャッシュで
3.経営者以下、全役職員が給与を得る
ことになる。テクニカルな話は別として、本質的なお金の流れは1→2→3以外にありえない。
お金のありがたみを知る
顧客に商品やサービスを提供し、その対価として得られた利益であれば、それを無駄遣いするような発想は、まともな経営者であれば持ち得ない。
自分で積み上げた資本金であれば、売上も立たない段階から高級マンションに引っ越し、高級車を調達するような経営者などまずいないだろう。
筆者は資本金500万円で会社を起こした時、オフィスの机は自宅の納戸に眠っていたガタつくボロボロのものを使用した。
電話機は、FAX兼用の中古を2,000円くらいで調達し、インクリボンが無くなると指で無理やり巻き戻して再利用した。キャッシュフローが均衡するまでは、文字通り爪に火を灯すように、大事に大事に資本金を使い事業を育てた。
それが起業ということであり、お金と顧客のありがたさを心身に叩き込む、経営者の最初の修行とも言うべきステージだ。
しかし、この段階でにわかに数億円の“フリーキャッシュ”が会社の口座に振り込まれてしまったらどうなるだろうか。
本来的には、リスクを背負い非常な決断で会社を起こした経営トップですら、心身のバランスが崩れわけのわからないお金の使い方を始めてしまうこともあり得てしまう。
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「宝くじ」から学ぶ教訓:給料に対する誤解はないか?
誰よりも会社を大事に思い、事業を育てることに文字通り命をかけたはずの経営者ですら、有り余るキャッシュを目の前にしたら、このようなことをやらかす。
だからこそ、会社経営者は、「お金はどこから生まれてくるのか」を常に意識し、そしてそれを役職員に徹底して教育しなければならない。
よくあるビジネスパーソンの勘違いに、
- 会社から給料を受け取る
- 顧客に商品やサービスを提供する
- その対価として顧客からお金を頂く
という流れで、自分自身の収入を捉えているケースがある。
この勘違いを放置すると、社員の興味は顧客に向かずに、「給料をくれる上司や自社の経営トップ」に向いてしまう。
そしてこの勘違いを根本的に修正しない限り、お金はどこから生まれるのかを理解しない従業員が会社に溢れ、やがて経営は立ち行かなくなるだろう。
もちろん、言うまでもなく正しい流れは
- 顧客に商品やサービスを提供する
- その対価として顧客からお金を頂く
- 会社から給料を受け取る
である。
「そのお金は、どういう性質のものなのか」
「そのお金は、どこから生み出されたものなのか」
「そのお金は、どう使うべきなのか」
この3つを正しく理解しない限り、本来的にはリスクを背負い勇気を持って起業した経営者ですら狂う。
だからこそ経営者には、自分自身はもちろん、自社の全ての従業員に「お金とはなにか」を徹底し教育して欲しいと願っている。