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「パーパス・ブランディング」とは?VUCA+コロナの時代を生き残る企業に必要なこと

コロナ・ショックを受け、社会では混沌が続いています。
廃業、企業倒産、解雇、雇い止め、内定取り消しといった現象には歯止めが掛からず、収束の兆しも見えない中で、「企業の存在意義」が改めて問われています。

大企業の間でも業績悪化への対応の仕方は分かれていますが、企業経営者として現在、そして今後どのような決断をすべきかは短絡的に考えてはいけません。

そこで知っておきたいのが「パーパス・ブランディング」の考え方です。

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泥沼の終わりはまだ見えず

コロナ・ショックが招いた雇用状況の悪化は、月を追うごとに深刻さを増しています。

厚生労働省の8月末の調査では、コロナによる解雇・雇い止めは全国で5万人を超えた他、内定取り消しにあった学生の数が昨年度の5倍に上ったことも明らかになりました。
厚生労働省が把握している内定取り消しは174人ですが、実態はこんなに小さな数字ではないでしょう。

東京オリンピックの開催延期による業績への影響がこれから現れる企業も多いと考えられるため、秋以降の「リストラの第2波」への懸念も広がっています。

また、近年は「モノ消費からコト消費へ」と言われてきましたが、パンデミックによって「コト消費」も不満足なものになってしまいました。

そのような不安定、閉塞感、といった中で消費者の関心が向かうのは「ブランド」です。
それも、「モノのブランド」ではなく「コトのブランド」です。

そこで再び注目されているのが「パーパス・ブランディング」です。

文字通り「目的をブランド化する」ことです。
この場合の「目的」とは、「企業の目的=企業の存在意義」のことで、
「自分たちはこのような形で社会に貢献する存在だ」
と宣言し、その行動をブランド化していく経営戦略です。

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自社製品のネガティブな面も飲み込んだビール会社

パーパス・ブランディングの一例を挙げてみましょう。

南アフリカ最大のビールブランドであるカーリング・ブラックラベルは「暴力根絶キャンペーン」を展開しています。

一見結びつきそうにない「ビール」と「暴力根絶」の関係ですが、実は事業継続のためには切っても切れない関係になっています。

南アフリカは酒類の消費量が多く、その多くは男性です。
そして、過度の飲酒と女性への暴力との間に相関関係があることが否定できないという現実が浮かび上がってきました。

自社の事業が関係する問題ではありますが、カーリング社はあえて積極的な行動に出ました。
「女性への暴力根絶」を自社の「パーパス」に掲げ、運動に投資することを決めたのです。

そして大反響を呼んだのが「#NoExcuse」というハッシュタグでのキャンペーンです。
女性への暴力は「言い訳無用」、南アフリカの男性はこうした暴力と戦うべきだというメッセージをテレビやSNSなどで拡散しています。

商品としても「#NoExcuse」缶ビールを製造し500万本生産したほか、サッカーチームの協力を得て選手に「#NoExcuse」と書かれたアームバンドを試合中に着用してもらうなど、キャンペーンは巨大なものになりました。

「女性への暴力根絶」がどのくらい実現したかを現段階で数値化するのは難しいのが現実ですが、運動の広がりじたいが南アフリカの男性たちの意識の変化の現れだと言って良いでしょう。

消費者のほとんどを占める男性に変化を促し、商品ではなく「#NoExcuse」という行動を自社のブランドとして確立したのがこの運動です。

また、カーリング社は今後ノンアルコールや低アルコール商品の展開に力を入れるとしています。
過度の飲酒を控えるための商品作りで、社会貢献しようというものです。
同時に事業としても、新規市場の開拓に繋がるという側面を持っています。

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「パーパス・ドリブン」と従来型CSRとの違い

「パーパス」を明確にし、そのために行動している企業は「パーパス・ドリブンな企業」と呼ばれます。

「ドリブン」とは英語の”driven”です。目的によって駆動する企業、ということです。

「企業の社会的責任」という意味合いでは、すでにCSRを導入している企業も少なくないと思われますが、従来のCSRとは捉え方が違います。

従来型のCSRは、
「なんとなく慈善活動のようなことをしなければならない」
という雰囲気で捕らえられがちです。
そのため、具体的な活動としても、自社の事業と関連性のないものを選んでしまいがちです。

一方でパーパスドリブンは、自社が「なぜ」「何のために」事業をするのか、「どのように」社会貢献するのか、と言った疑問から始まります。
結果、自社のリソースを使った、オリジナリティのある行動を取ることができます。

また、もう一つの特徴として、パーパスドリブンはSNSとの親和性が高いという点があります。
「共感」「共有」を好む「ミレニアルズ」「Z世代」が消費の中心になる時代では、SNSなしでの社会活動は考えにくいと言えるほどです。

SNSの拡散力を示す典型例として「#deleteC」というハッシュタグがあります。
ご存知の方も多いことでしょう。

Cとは「Cancer=がん」のことで、がんを消す=治せる病気にしようというコンセプトで、売り上げの一部をがんの治療研究の支援にあてるのがこのキャンペーンです。

例えばサントリーは主力商品「C.C.レモン」でこれに参加しています。
商品名を逆手に取って、その一部を消すという大胆な発想でありますが、キャンペーン時期になると「C.C.レモン」の写真が「#deleteC」ハッシュタグと共にSNSに多く投稿されます。
投稿のために商品を買うという流れも生まれているのです。

「C.C.レモン deleteCラベル」
(https://www.suntory.co.jp/softdrink/news/pr/article/SBF0915.html より)

コクヨは「キャンパスノート」、ニチバンは社名「NICHIBAN」の「C」で参加しており、これらの商品の画像も多く投稿されます。

写真を撮って投稿することで「共感」の場所に参加でき、さらに参加体験を「共有」することができるという動機で商品が買われていくのです。
そして共感が共感を呼んでいきます。

また、パーパスブランディングとして最近強烈な印象を残したのはナイキでしょう。

大坂なおみ選手の全米オープンでの黒マスクが話題になりました。
一部ではネガティブな意見も出る中で、ナイキは彼女の行動を応援するメッセージをTwitterに掲載し、31万の「いいね」を獲得しています。

ツイート上では直接的な言葉で語られてはいませんが、そのナイキのパーパスは

“Our purpose is to unite the world through sport to create a healthy planet, activate communities and an equal playing field for all.”

というものです。

「スポーツを通して世界をひとつにすることで、地球上の全ての人に健康をもたらし、世界を前進させ、全ての人が平等に競技できる場所を作ること」といったところでしょうか。

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人材育成や社員の「やりがい」にも

モノ、コト、に続き、これからの消費者は不確実性の中で「共感」によって動く時代になるでしょう。
パーパスブランディングはその流れに沿うものでもあります。

同時に、社員一人一人にも
「自分は何のためにここで仕事をしているのか」
を認識させることもできます。
逆に、「パーパス」の部分を共有できない従業員を長く雇うことが良いかどうかといった考え方もできるでしょう。

Facebook社のマーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学の卒業式で「パーパス」について触れています。

「誰もが目的意識を持つ世界を創造することが、私たちの世代の挑戦である」
「自身の目的を持つだけでは不十分であり、他者のために目的意識を生まなければならない」
と語っています。

「良いモノを作って売ることが社会貢献」
と日本人は考えがちですが、「良いモノ」とは何なのかということを今一度考え直さなければならない時代に来ています。

自分たちの考える「良いモノ」は社会、消費者に「共感」に与えられるものであるか?
そうした視線が何よりも重要になるでしょう。

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