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働き方改革とは? 基礎知識から具体的例まで分かりやすく解説

国民誰もが活躍できる「一億総活躍社会」の実現に向けてスタートしたのが働き方改革です。働き方改革によって、労働力の増加や生産性の向上などが期待されています。

本記事では、働き方改革の基礎知識や企業にもたらすメリット、具体例などについて詳しく解説します。

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働き方改革とは?

働き方改革とは、2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法(働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律)」です。(※)具体的には、年次有給休暇取得の義務化や残業時間の上限設定など、労働に関するさまざまなルールが見直されました。

働き方改革関連法は2019年4月から順次施行されています。しかし、業種によっては猶予期間が設けられており、例えば建設業の場合、2024年4月1日から時間外労働の上限規制がスタートします。

※出典:厚生労働省 岐阜労働局「働き方改革関連法が成立しました」

働き方改革の目的

働き方改革の目的には、労働力の増加や出生率の向上、生産性の向上などがあります。いずれも日本が抱えている問題を解消するためです。それぞれの目的について解説します。

労働力の増加

働き方改革は、働きやすい環境を作り労働力を増加することが目的です。日本は少子高齢化が進んでおり、15~64歳の生産年齢人口の減少が問題となっています。

実際に内閣府の発表によれば、出生数は2006年から減少傾向にあり、2065年には55万7,000人と2006年の109万3,000人の半分近くになってしまうことが予想されています。(※1)

また、日本は高齢化も深刻です。2065年には総人口に占める75歳以上の人口が25.5%になり、これは国民約3.9人に1人が75歳以上という状況です。

出生数の減少、高齢者の増加は生産性年齢人口の減少にもつながっていて、2065年の生産性年齢人口は4,529万人と2020年の7,509万人を大きく下回ってしまいます。(※2)

このような状況において、出産後であっても働きやすい環境作りや高齢者の雇用促進などの働き方改革によって、労働力を確保することを目指しています。

※1~2 出典:内閣府.「令和4年版高齢社会白書」

出生率の向上

先述のように日本は出生数が減少していますが、同様に減少しているのが出生率です。日本の出生率に関して、2006年は8.7だったのに対し2020年には6.8、2065年には6.3になると予想されています。(※1)

このような出生率の減少の対策として期待されているのが、働き方改革です。女性の中には、就業の機会やキャリアに影響を及ぼすことから結婚、出産に対して消極的な人もいます。内閣府は出産前後の就業状況の変化を次のように発表しています。(※2)

 有職無職
出産1年前73.5%25.6%
出産6カ月後32.2%67.4%

このように働くことが原因による出生率の低下を防ぐことも、働き方改革の目的です。出産後も働きやすい環境を作ることで、出生率の向上につながると考えられています。

※1 出典:内閣府「令和4年版高齢社会白書」.
※2 出典:内閣府「平成18年版 少子化社会白書 第4章 働き方の改革」

生産性の向上

日本は他国と比較すると労働生産性が低いと耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。実際に日本の労働生産性は OECD(経済協力開発機構)に加盟している38カ国中27位という結果もあります。(※)

労働生産性が低いといくら働いても利益が得られず、企業の成長の妨げや従業員のストレス、疲労の蓄積につながりかねません。

働き方改革は、長時間労働を是正して生産性向上を目的としています。しかしただ長時間労働を是正するだけでは、生産性の向上は図れません。

長時間労働を是正して生産性を向上させるには、業務の無駄な工程を見直す、システムやIT、AIを導入するなどして効率化を図りましょう。

※出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2022」

働き方改革によって企業が解決すべき課題

働き方改革によって企業が解決すべき課題には、長時間労働や正社員と非正規社員の待遇差改善、働き手不足の解消などがあります。特に長時間労働については、法律で定められた時間外労働の上限を遵守しなければなりません。

長時間労働

長時間労働は従業員の過労死につながる可能性があり、大変危険です。日本では長時間労働による過労死が問題となっているため、働き方改革では長時間労働の是正を定めています。

働き方改革によって、原則⽉45時間、年360時間が時間外労働の上限となりました。また特別な事情があり、労働者と企業側とが合意した場合の特別条項であっても、次の点は守らなければなりません。(※)

・時間外労働が年720時間以内
・時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満
・時間外労働と休⽇労働の合計について、2カ月平均、3カ月平均、4カ月平均、5カ月平均、6カ月平均が全て1⽉当たり80時間以内
・時間外労働が⽉45時間を超えられるのは、年6カ月が限度

時間外労働の上限を超えてしまった場合や特別条項の条件を超えてしまった場合は、6カ月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

一部の企業には長時間労働を美徳とする風潮があるため、残業が常態化してしまっているかもしれません。しかし長時間の労働は法律に違反するのはもちろん、従業員の過労死や生産性の低下につながる恐れがあります。

そのため、テレワークをはじめとした多様な働き方の導入や、システムやITを活用した業務の効率化などを図りましょう。

※出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」

正社員と非正規社員の待遇差

働き方改革は、正社員と非正規社員で発生していた不合理な待遇差も禁止しており、厚生労働省はガイドラインで次のような点で待遇差を生まないように示しています。(※)

・基本給
・昇給
・手当
・教育訓練・福利厚生など

こちらのガイドラインに反したからといって罰則が科せられることはありません。しかし不合理な待遇差を理由に従業員が退職していく、社会的なイメージが低下するといったリスクにつながる可能性があります。

そのため、企業は正社員と非正規社員の待遇差を解消するようにしましょう。

※出典:厚生労働省.「同一労働同一賃金ガイドライン」.

働き手の不足

企業は働き方改革によって、働き手不足の問題も解消していく必要があります。先述のとおり、今後の日本は生産性年齢人口の減少が予想されます。

そのため、プライベートとのバランスが取れたワーク・ライフ・バランスのある環境を整えることを心がけて、離職者を増やさないようにしましょう。また高齢者の雇用に備えて、高齢者が働きやすい環境を作っていくことも大切です。

企業における働き方改革に向けた具体的な取り組み5選

企業における働き方改革に向けた具体的な取り組みとして、以下が挙げられます。

・テレワークの導入
・フレックスタイム制の導入
・高齢者の再就職支援
・育児休業取得の促進・保育所の設立
・非正社員から正社員への転換制度

このような取り組みを実施することで、働き方改革に取り組めるのはもちろん、従業員の満足度向上にもつながります。

1. テレワークの導入

オフィスに出社することなく、自宅やコワーキングスペースなどで勤務するのがテレワークです。テレワークは新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって実施する企業が増加しました。

総務省の発表によれば、2回目の緊急事態宣言期間にあたる2021年3月1日~3月8日には38.4%もの企業がテレワークを導入しています。(※)

テレワークを導入することで、さまざまな理由でオフィスに通勤できない人を採用できるため、新たな人材の確保が可能です。

テレワーク導入にあたっては社内でルール作りが必要です。100%テレワークを実施するか、週何日かのテレワークを実施するかなど、実施する頻度のルールを策定しましょう。

またテレワークを導入する際は、セキュリティ対策のルール策定も大切です。従業員がUSBメモリを紛失したりフィッシングサイトにアクセスしたりしないように、対策を講じましょう。

※出典:総務省「令和3年 情報通信白書」

2. フレックスタイム制の導入

フレックスタイム制は従業員が始業時間、終業時間を自由に選択できる勤務制度です。

フレックス制の中には、始業時間、終業時間の自由な選択が可能な完全フレックス制もあれば、必ず出社するべき時間(コアタイム)を決めるタイプ、一定の範囲内に任意で出勤できるフレキシブルタイムなどさまざまなタイプがあります。

フレックスタイム制を導入することで、育児や介護など従業員の都合にあわせて勤務可能です。

3. 高齢者の再就職支援

内閣府の調査では、現在仕事をしている高齢者のうち約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答しており、70歳くらいまで、もしくはそれ以上という回答と合計すると、約8割が就労に意欲を持っていることが分かります。(※)

このような状況を受け、生涯現役支援窓口事業の実施などさまざまな高齢者の再就職支援が行われています。

なお高齢者の再就職支援は国だけでなく、事業主にも求められていることです。例えば、離職予定の高齢者に対して教育訓練の受講、資格試験の受験など、求職活動のための休暇を与えるといった取り組みに努めましょう。

※出典:内閣府「平成29年版高齢社会白書 4 高齢者の就業」

4. 育児休業取得の促進・保育所の設立

育児と仕事を両立させるために、従業員が育児休暇を取得するように促進しましょう。育児休業は女性だけでなく男性も取得可能です。厚生労働省では「イクメンプロジェクト」として男性の育児休業取得を促進しています。

育児休業は女性、男性ともに取得することで育児休業期間が延長されて、子どもが1歳2カ月になるまで育児休業の取得が可能です。(※1)

また事務所内に保育所を設立する企業もあります。子どもがいる家庭では、子どもが保育所に入れず就業できないというケースがあり、事務所内の保育所設立によってこのような状況を解消可能です。

企業が主導する保育所の設立は内閣府も「企業主導型保育事業」としてサポートしています。次のような条件を満たせば、企業内の保健所設立に助成を受けられます。(※2)

・一般事業主(子ども・子育て拠出金を負担している事業者)である
・平成28年4月以降に新たに保育施設を設置する事業者である
※平成28年3月31日以前に事業所内保育を実施しているであっても、定員を増やす、空き定員を他企業向けに活用する場合も対象

※1 出典:厚生労働省「 男性の育休に取り組む 育児休業制度とは」
※2 出典:内閣府「 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット」

5. 非正社員から正社員への転換制度

「パートタイム・有期雇用労働法」が改正されたことによって、非正社員を正社員へ転換推進する措置が求められるようになりました。具体的な措置としては以下が挙げられます。

・正社員を募集する際にパートタイム労働者(非正社員)への周知する
・新たに正社員を配置する際にパートタイム労働者への応募の機会を設ける
・正社員に転換するための試験制度を実施する

非正社員を正社員に転換することで、企業は非正社員・正社員問わず自社のノウハウが蓄積された優秀な人材を継続的に採用可能です。

企業が働き方改革の取り組みを行うメリット

企業が働き方改革に取り組むことによるメリットは、以下の3点です。

・業務の効率化
・人材の流出防止
・採用力の向上

業務の効率化をはじめとしたこれらのメリットは、企業の売上増加やコスト削減にもつながる可能性があります。

業務の効率化が図れる

働き方改革によって以前は残業して終えていた仕事も、就業時間内に終わらせる必要があります。

時間内に終えるために従業員がより効率的に業務を進めようと取り組むことが大切です。またITやシステムなどを導入することでも、業務の効率化が期待できるでしょう。

人材の流出を防げる

企業が働き方改革に取り組むことで、人材の流出を防げます。テレワークやフレックスタイム制など多様な働き方の導入は、従業員の自社への満足度向上が期待できます。

会社への満足度が高いと、従業員は自社で働くことに高い価値を感じるため、人材の流出低下が期待できるでしょう。人材が流出せず定着することで、採用にかかっていたコストの削減にもつながります。

採用力が向上する

多様な働き方や育児休業制度取得の促進、保育所の設立など働きやすい環境の企業は、働く上での特長や魅力になります。

このような魅力を外部に打ち出していくことで、求人への応募が増える可能性が高いです。採用力が向上することで少ないコストでさまざまな優秀な人材の採用ができるようになります。

働き方改革を実現するために押さえておくべきポイント

業務の効率化や採用力の向上など、働き方改革のメリットを得るためには、次のようなポイントを押さえましょう。

・従業員の意識を変える
・従業員の勤怠状況を把握する
・組織内で働き方改革プロジェクトを設立する

働き方改革はトップダウンで指示しても、実際に現場で勤務する従業員の意識が従来のままでは改革が進みません。まずは従業員の意識を変えることから取り組みましょう。

従業員の意識を変える

働き方改革を実現するためには、仕事における時間の使い方について意識改革を促しましょう。

例えば、長時間労働によって業務を終えることが常態化してしまっている場合、時間の使い方に対しての意識改革が求められます。従業員の時間に対する意識が変わることで、業務が効率化され、生産性の向上につながります。

従業員の意識を変えるためには、管理者が働き方改革についての啓蒙を行うことが必要です。

従業員の勤怠状況を把握する

企業は従業員が長時間労働していないか、残業が続いていないかなどの労働状況、勤怠状況を把握しておきましょう。従業員の勤怠状況を把握するためには、タイムカードやPCなどの使用時間の記録など、客観的に記録を確認する方法があります。

従業員の勤怠状況を客観的に把握していない、従業員の自己申告制を採用している場合は、罰則規定はありませんが、法令違反の是正勧告対象となってしまうので注意しましょう。(※)

※出典:厚生労働省「 客観的な記録による労働時間の把握が法的義務になりました」

組織内で働き方改革プロジェクトを設立する

企業が働き方改革を進める上では、組織内で働き方改革プロジェクトを設立するのがポイントです。一部署だけで働き方改革を進めようとしても、他部署が改革を推進していなければ、改革の進みが遅くなってしまう可能性があります。

例えば、外勤の営業部と内勤の部署とで働き方改革に対して意識の違いがあると、改革が思うように進まないかもしれません。そのため組織全体のプロジェクトとして、部署を超えて連携する必要があります。

具体的には各部署のトップを集めてプロジェクトを設置します。プロジェクトのメンバーを対象に外部講師による研修などを実施して、働き方改革を推進していきましょう。

企業に多くのメリットをもたらす働き方改革に取り組もう

働き方改革によって労働力の増加や出生率の向上、生産性の向上が期待されています。そのため企業においては、長時間労働の是正や非正社員と正社員との格差解消などが求められています。

具体的には、テレワークの導入やフレックスタイム制の導入、育児休業取得の促進などに取り組んでいきましょう。働き方改革に取り組む上では、従業員の意識を変える、従業員の勤怠状況を把握するなどのポイントを押さえることが大切です。

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