近年、テクノロジーが急速に発展し、ビジネスにおいてさまざまな新技術が活用されるようになりました。
さまざまな面で便利になっていく一方で、それらテクノロジーの1つである人工知能(AI)が人間にとって代わり、仕事が奪われるのではないか、ということが危惧されています。
しかし、日本では古くから人工知能には太刀打ちできない「KKD」が尊重されてきました。
ただこのKKDも時代遅れという指摘があるため、今後はどのように活用していくべきかが問われています。
そこで本記事ではKKDについて、
- 概要
- フレームワーク
- メリット・デメリット
- 注意点
- 伝承する方法
などを解説していきます。
目次
KKDとは
KKDとは、
- 経験(KEIKEN)
- 勘(KAN)
- 度胸(DOKYOU)
の頭文字をとった造語で、日本の製造業を中心に大切にされてきた考え方であり、手法です。
たとえば何らかのトラブルが生じた場合、職人がもつ長年の経験と勘によって解決法を導き出し、度胸によって実行に移します。
製造業だけではなく、「ものづくり大国」である日本の職人が持つ職人技は、高度な専門性をもつ技術であり、まさに経験と勘、そして度胸の賜物であるといえるでしょう。
しかし、経験や勘に基づいたノウハウは属人化しやすいという欠点があり、長期的には組織にネガティブな影響をもたらす可能性が指摘されています。
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KKD法とは
KKD法とは、KKDに基づいて工数等を推定する手法のことです。
IT業界で用いられることが多いとされています。
ただし、KKDだけを用いて問題解決をし続けると、トラブルに発展する可能性もあるのです。
例えば、明確な基準が定められていないので、判断を下す従業員によって結果が異なってしまうことや、KKDを保有する従業員が転職・退職してしまうと、KKDに基づくノウハウも失われてしまうことが挙げられます。
さらに、KKDはこれまでの経験に基づくものなので、裏を返せば経験したことがない事態・状況に対応することができないという問題もあります。
KKDを用いたフレームワーク
KKDに基づいてプランの推定を行うKKD法ですが、前述したようなリスクがあります。
そういったリスクを避けるために用いられる、KKDを用いた他のフレームワークを併せて紹介していきましょう。
OCOMO法
1981年に考案された手法で、過去の情報をもとに構築された統計を参考にします。
ソフトウェア開発の工数や開発期間の推定に用いられました。
昨今は、テクノロジーの発展によりビッグデータの収集と分析が容易になったため、属人化していた経験や知識、ノウハウといった抽象的な情報を明確なデータとして蓄えることができるようになりました。
OCOMO法はデータを蓄えるまでにある程度の期間を必要としますが、蓄積されることでKKD法のリスクをカバーできます。
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LOC法
LOC法とはソフトウェアの規模を調べる手法で、ソースコードの行数をもとに推定します。
昔からある手法で、現在でも用いられています。
ただし、事前に標準的な記法(コード規約)を決めておく必要があり、途中で状況が変わり仕様を変更しなければならなくなった際には対応できないことがデメリットです。
KKDのメリット・デメリットとは
ここでは、KKDのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
KKDでは経験や勘をもとに判断するため、迅速な意思決定と実行が可能になります。
また、新しい領域の業務については、経験がないため正確な対応はできませんが、経験や勘を応用することはできます。
データを分析する手法では過去のデータがないため分析できず役に立ちませんが、KKDであれば新たな領域でもこれまでの技術や経験の応用で成功率を高められるのです。
デメリット
しかし一方で、KKDではノウハウや知識が一部の職人に属人化しやすいというデメリットがあります。
これにより、退職や転職によって知識・技術が失われるリスクがあるのです。
さらに、勘に頼る部分が大きくなるため、どうしても非論理的・非合理的なものになり根拠に欠けてしまいます。
また、必ずしも「経験が長いから正しい判断が可能」というわけではない点にも、注意しなければなりません。
KKDは時代遅れ?
個人が長い年月をかけて培うKKDは、そう簡単に伝承することができません。
技術や技能の面では伝えることができても、勘や度胸といった部分に依存すると、ミスが頻発したり事故につながる可能性があります。
また、環境の変化が激しい現代においては、常に新たな情報をもとに判断しなければなりません。
したがって、ベテランが若手に教えるというやり方は、現代では通用しなくなってきているのです。
まとめ:今後はIoTでKKDを伝承する時代に
KKDのメリットを活かしつつ現代に最適化することが重要です。
その方法がIoTを用いてKKDを伝承することです。
たとえば、ビデオカメラで従業員の動きを撮影し、モーションキャプチャによって分析することが挙げられます。
これは実際に研磨作業や溶接作業の伝承に生かされています。
このように、ベテランのKKDをIoTによってデータ化・分析することで、言葉だけでは伝承が難しい技術やノウハウを若手に伝えることができるのです。
今後はIoTからさらに進み、メタバース空間でKKDを再現するなどの仮想空間をビジネスに活かす動きも進むことでしょう。