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識学のおかげで組織崩壊寸前の状態から脱することができた

鳥取市の綜合印刷出版は、社名が示す通り印刷加工と出版を手がける企業だ。1949年に創業した歴史ある会社だが、同社を2013年から率いる田村仁美社長は、識学を導入する前までマネジメントに悩み、「会社が崩壊するかもしれないという危機感を抱いていた」と話す。そんな状態だった組織は、識学によってどう変わったのか。

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マネジメントに疲れ果てていた

問:識学を導入しようと決めた経緯について教えてください。

識学のことは2019年の夏にネット広告を見て知り、意識するようになっていました。その頃からマネジメントの悩みを抱えていたのです。

というのも、ある部署にいた10人程度の社員のうち、5人のベテランが一斉に退職するという事件がありました。1人の社員が「辞めます」と言ったら、芋づる式に抜けていってしまったのです。

それでも会社を畳むわけにはいきません。残ったのは、社歴が10年程度のメンバーが2人、入社から半年しかたっていない若手が2人。そこに私が加わって、「さあ、どうしようか」と会議をしましたが、一人ひとりが異なる価値観をぶつけるだけで、全然話がまとまりませんでした。

今振り返れば、私は識学の広告にあった「あなたはこんなマネジメントをしていませんか」という通りのマネジメントをしていましたね。機嫌を取るために社員をご飯へ誘ったり、社員の性格に合わせて言い方を変えたり、いわゆる、社員に寄り添ったマネジメントをしていたのです。

しかし、これだと私の真意が伝わりません。何より、私がこのために非常に多くの時間を割かねばらず、疲れ果てていたのです。

識学の資料をダウンロードしてみたところ、ご連絡をいただき、講師の方から話を聞くことになりました。2019年9月のことです。すぐに導入を決めたので、10月から受講を開始しました。

問:当時は社内でどのようなことが起きていたのでしょうか

私より社歴の長い社員たちが私の指示を聞こうとしませんでした。私自身、マネジメントの正解が分かっていませんでしたから、仕事を命じて、「そんなの無理です」と言われると、「そうなのかな」と思ってしまい、強い態度を取ることができませんでしたね。

なかには、「社員皆の味方」を自負し、意見を集約して私に上申することを仕事の一部にしている課長がいました。反対に、私から今までの慣習を壊すようなことを彼に言うと、彼は自分の部下に対してそれを伝えようとしなかったのです。

識学を導入する半年前に、当社としては珍しく新卒社員が数名入社しましたので、私はこれを機に、「教育カリキュラムを整えましょう」と社内に号令をかけつつ、「新人に示しがつかないから、今まで一人ひとりに合わせて変えていた指導の仕方を改め、皆平等に接することにします」と宣言しました。そうしたら、特に気難しい性格だった社員が辞めてしまうということもありました。

識学導入は存続のために必要な投資。それを惜しんで会社が崩壊する方が問題

問:識学の導入に際して迷いはありませんでしたか。

全然ありませんでしたね。識学は、意識構造学という学問をベースにした考えであり、そこに信頼感がありました。

私自身、大学生だった頃に心理学を学んでおりましたので、「こうすれば人は動く」という知識はあったんです。ただ、それゆえに細かく人の特性を見極めないといけませんし、私にしかできませんから再現性がありませんでした。

私は社長ですが、母が常務をしていまして、筆頭株主でもあります。それゆえ、識学を導入するにあたり母を説得しなければなりませんでしたが、その時間がもったいないと感じ、自分のお金で投資することにしました。それくらいの覚悟を持って会社を変えたいと思っていたのです。「会社が崩壊するかもしれない」という危機感を本気で抱いていましたから。

決して小さくない額の投資でしたが、会社が存続できるのだったら十分回収できると思っていました。それを惜しんで会社がバラバラになってしまったら、その方が問題です。

問:他のコンサルティングサービスは検討しませんでしたか。

もともと、私が社長に就任する前から他社のコンサルタントにお世話になっていました。社長に就任してからは、営業会議の改善を図るための意見をもらったりとか、若い管理職向けに改善思考に関するレクチャーをしてもらったりもしましたね。

ただ、これまでの組織を大きく変えることを考えたときに、今までお付き合いのあるコンサルタントに頼っては、改革のスピードが遅れる気がしたんです。当社の内情を把握し過ぎているがゆえに私や会社に寄り添ってしまうだろうと。

識学であれば、それができるかもしれないという期待があったのです。もしこれでだめだったなら、また別の方法を探せばよいと考えていました。

3カ月に1度の目標設定によって成長スピードの向上を実感

問:どのようにして識学の浸透を図っていきましたか。

まず、午前中に私が講師の方から指導を受けて、話の要点をメモし、午後から私が管理職に対して受け売り講座を実施していきました。それを1年間続けて、以降は毎年理論学習をするたびに識学への理解が深まっていると感じています。

理論学習に合わせ、当社では理解度チェックテストを実施してきました。最初のテストで80点を取れたら合格。これを評価項目のなかに入れています。

80点を取れなかった人は再テストを受けてもらい、そこでは90点を超えなければ合格になりません。そこで不合格なら、100点を取れるまで延々とテストが続きます。こうすることでテストに慣れ、識学理論を覚えければならないという意識が根付きました。

それと、ルールを徹底して守らせましたね。ルール違反を許した方が仕事が早く終わったとしても、長期的に見ればデメリットは多いです。「逸脱してもまあいいや」を許さなかったことは、識学が社内に早く浸透していった大きな理由ではないでしょうか。

といっても、ルール変更は頻繁にあります。朝に発表したルールをその日のうちに変えたこともありました。そういうときは、社内のコミュニケーションツールですぐに伝え、運用します。

問:識学の導入によって社員の皆さんから反発はありませんでしたか。

変化を嫌がった管理職が、「つらいです」と漏らしたことはありました。部下に嫌われることを恐れて、指示をしたくなかったようです。

それくらいですかね、識学に対するアレルギー反応というのは。その管理職も、今や当社のなかで識学への理解がとりわけ深くなっていますから、私も期待しています。

実は、私自身、それまで1年に1回だけだった目標設定を「3カ月に1度のスパンにしましょう」と言われたときは、「えっ、そんなに頻繁にやるんですか。せめて半年に1度でよいのではないですか」と講師の方に言ってしまったことがありました。結局、勧められた通りにしたところ、本当にやってよかったと思っています。

1年間で達成すべき目標であっても、毎日集中しているわけではなく、それこそ「最後の1カ月間だけ頑張って達成したらそれでよし」としてしまうことがありました。3カ月で区切ることで、「この期間のうちに習得できることは何か」に目線が向きます。社員の負担も減りますし、成長も自覚しやすくなるのです。自社の成長スピードが4倍になった気がしますよ。

社員に気を遣い過ぎて根回しに疲れている社長に識学の受講を勧めたい

問:組織改善が図れましたか。

はい。行動指針書を作成し、管理職と一般社員それぞれの役割定義をしたので、各人が何を求められているのか明確になり、迷いがなくなりました。私の指示が社員にスムーズに浸透するようにもなりましたね。

それから、作業効率が格段に向上しました。従来、繁忙期の2~3月の間、社員は連日残業続きで、土曜日も毎週出社しなければならなりませんでしたが、もうそんなことはありません。繁忙期だろうと土日は休めますし、残業時間も大幅に減りました。

これは、期限と状態を明確にして仕事をするという識学の教えのおかげです。当社の業務のうち、特に印刷の仕事はオーダーメイドであるがゆえに顧客と細かくやり取りしながら進めていく必要がありますが、もともと、「いつまでにどの段階へ至っていないと納期が守れないか」をしっかり約束する文化がありませんでした。

納期があったとしても、それが本当のデッドラインなのか希望なのかも曖昧でしたし、顧客から連絡がなくても催促していなかったのです。そのため、約束期日が本当のデッドラインだったときは、後工程にしわ寄せが来るということを繰り返していました。期限と状態をはっきりさせた打ち合わせによって、こうした面倒はなくなったのです。

昔は和気あいあいのんびり仕事をする会社でしたが、今はなるべく雑談を排除して、いかに集中して仕事に臨むかを社員が意識するようになっています。

問:どんな会社や経営者に識学はお勧めでしょうか

全ての経営者にお勧めですが、なかでも、年上の社員に囲まれた後継ぎ経営者でしょうか。社員が言うことを聞かなくて困っている、社員に気を遣い過ぎて根回しに疲れている社長には、識学が非常に有効だと言いたいです。

そこに悩まなくてよくなると、会社をいかに成長させるかに頭を働かせることができます。私は今、「社員のためには何をしたらよいか」を考える時間が以前に比べ少なくなりましたが、私の思考が社員のためになっている時間は大きく増えているはずです。

それから、製造業の会社。なぜなら、業務が属人化し過ぎてしまう傾向があるからです。ある一人のベテラン職人に頼り切りになり、その人がいなくなったらどうしようもありません。識学の考えをもとに評価制度を構築していくと、ブラックボックス化した技術を明らかにすることにもつながります。当社では今、誰がどの仕事を担っても大丈夫な状態になっていますよ。

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