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テスラはなぜ注目されるのか?インパクト投資を呼び込む理由を徹底解説!

 テスラ(Tesla, Inc.)は、創業2003年の若い会社でありながら、今や時価総額がトヨタ自動車の2.8倍、すなわち1兆ドル(約110兆円)ある世界第1位の自動車メーカーです。なぜテスラはこれほどまでに投資家から注目を集めるのでしょうか。この記事では、その理由を徹底的に解説していきます。

テスラとは

 テスラは、米国テキサス州オースティンに本社を置く、アメリカの電動輸送機器およびクリーンエネルギー関連企業です。

 テスラと聞くと、電気自動車(EV)をイメージされる方が多いのではないでしょうか?ですが、テスラの現在の製品は電気自動車(EV)だけではなく、バッテリー、電動輸送機器、ソーラールーフをはじめ、様々な事業を展開しています。

テスラの歴史ー創業期

 創業当初のテスラは、自動車市場という参入障壁の高い市場に定着するため、非常に独創的な方法をとりました。それは、トヨタやフォードのような、大量生産によって比較的手頃な価格の車を作るというアプローチではなく、EVの需要を生み出す魅力的な車を作ることです。

 テスラのCEOであるイーロン・マスク氏は、次のように語っています。

「最初の製品を(大量に)販売できたなら、そうしただろう。しかし、自動車を作ったことがなく、技術の反復も1回だけで、規模の経済もない新興企業にとって、それは単に実現不可能だったのだ。最初の製品は、どのような形であれ高価なものになるだろう」

 

EVブランドとしてのテスラを確立した、テスラ・ロードスター

 テスラは2008年、高性能高級EVスポーツカー、テスラ・ロードスターを市場に送り出しました。このテスラ・ロードスターは、2012年1月に生産を終了するまでに、約2,500台が販売されました。

 テスラはこのテスラ・ロードスターを皮切りにブランドを確立。その後も先鋭的なコンセプトカーで耳目を集め、高性能高級EVを生産して市場に送り出すことを繰り返して行きます。ここまでであれば、少量生産の高級自動車ブランドとして一般的なビジネスモデルといえます。

 では、数ある新興EVメーカーや既存の大手自動車メーカーの中、テスラだけが抜け出してEVブランドを確立できた理由はどこにあったのでしょうか。そこにはこれまでの自動車メーカーとは異なる3つのアプローチがありました。それは、自動車の販売方法、アフターサービス、充電の3つを組み合わせて考えるというものです。

テスラとトヨタ自動車の違い:ビジョンが異なる

 世界を代表するトヨタ自動車とテスラを比較していきましょう。テスラとトヨタ自動車は、自動車製造メーカーという点では同じですが両者には大きな違いがあります。

 まず、テスラとトヨタでは生産規模が異なります。2021年に1049万台の車を販売したトヨタに対し、テスラの販売台数は93万台でした。つまり、トヨタは2021年、テスラの11倍の車を売ったことになります。

 テスラは2022年春、ベルリンとテキサスで新工場を稼働させ、生産能力を大幅に増強しました。テスラは毎年平均して50%ずつ生産能力を増やす計画です。順調にいけば、2024年までに約250万台、つまりトヨタの現在の生産能力のおよそ4分の1に達することは可能です。トヨタが2022年時点で85歳の会社であることを考えると、テスラにとって賞賛に値する成果であることは間違いありません。

 そんな若い会社であるテスラはトヨタに圧勝している分野があります。それはEVの分野です。テスラの販売する車はすべてEVですが、トヨタが2020年に販売した完全EVはわずか3,346台です。

 テスラは現在、完全自動運転(FSD)機能の向上に力を注いでいます。2021年には、レーダー技術に依存しないビジョンベースの自律走行システムが、米国市場向けに「ほぼ準備完了」であることを示唆しました。すでに、FSD機能を別途有料のアップグレードとして販売しており、顧客には無線でのソフトウェア更新を提供しています。ただし、テスラのFSD機能が今すぐ完全な自律性に近づけるわけではなく、テスラがそれを実現するには何年もかかるかもしれません。テスラが現在提供している機能はレベル2の自律性にしか達していません。しかし、改良を重ねるごとに、この機能はドライバーにとってより便利で価値のあるものになっていくはずです。

 対照的に、トヨタは自律走行分野での取り組みについて、それほど声高に、あるいはオープンに語ってはいません。しかし、それはトヨタが大きく遅れているということを意味しません。トヨタは、米国と日本にあるトヨタ・リサーチ・インスティチュートを通じて、自動運転技術の開発に取り組んでいます。最近では、自動運転技術企業のオーロラ社とも提携し、自動運転の強化に取り組んでいます。トヨタはすでに日本でレベル2の自律走行車を発売しており、2021年には米国でも販売を開始しました。テスラと同様、トヨタもこれらのモデルで無線によるソフトウェア更新を提供しています。自律走行に関して、トヨタはテスラにそれほど遅れをとっていないでしょう。

 

 テスラはその先進的な運転機能で注目を集めていますが、今のところ、トヨタ自動車よりも進んでいるわけではありません。テスラが完全な自動運転を実現する可能性があるとすれば、トヨタも同じです。

テスラのコア事業への5つのこだわり

 ここからは、テスラのコア事業への5つのこだわりを紹介していきます。

自社開発のECU

 テスラは2019年、自社で独自の統合ECUの開発に成功しました。ECUとは、エンジンの燃焼制御、燃費管理やAT(自動変速)、エアバッグ、車間距離制御など、自動車のさまざまなIT機能を制御するコンピューターです。一般的な自動車には、ECUが20~30台搭載され、それぞれが個別に働いています。ECUは、ドア用、エアコン用、パワーステアリング用といった具合に制御対象に応じて別々に用意されているのです。それぞれの制御対象にあるセンサーからのデータを取得するとともに、別系統で供給される12Vの電源からの電力をオンオフしてモーターやヒーターなどのアクチュエーターを動かしています。

 テスラが持っているのは、こうした単機能のECU群やセンサー群を統合制御する統合ECUです。テスラは、独自に開発した深層学習用のニューラルネットプロセッサーもECUに搭載して、自動運転に特化させています。テスラのECUは、最初から自動運転ありきで設計され、プロセッサーから全て内製しているため、どんな自動車メーカーにも実現できなかった統合ECUの開発に成功したのです。

電池開発会社を240億円で買収

 テスラはEVの心臓部にあたる電池の開発に熱心に取り組んでいます。その一環として、テスラは、2019年に電池技術を手掛ける米企業のマクスウェル・テクノロジーズ(カリフォルニア州)を買収しました。マクスウェル・テクノロジーズは、電極や蓄電システムを製造し、自動車メーカーや再生可能エネルギー会社に供給しています。テスラはマクスウェルを完全子会社にし、電池システムの開発・生産効率を高め、電池性能の向上とコスト削減につなげる狙いです。実際、新型のEV(EV)「モデル3」などの生産がこの買収以降拡大しました。

NVIDIA製から半導体を切り替える

 テスラは2019年、自社設計の自動運転コンピューターを搭載した車の生産を開始し、これまでNVIDIAから供給を受けていた半導体を自社設計の半導体に切り替えたました。テスラ独自のAI(人工知能)チップは、多くの自動車メーカーも採用するNVIDIA製システムの10倍以上の演算性能を誇ると発表されています。その後、NVIDIAは、その比較は正しくないと公表し、テスラを批判しました。

 もともと、テスラはイスラエルのモービルアイと提携し、同社から技術の供給を受けていましたが、2016年に同社との提携を解消しました。その後はNVIDIAに乗り換えていたのです。

専用のインフラ設備「スーパーチャージャー」

 テスラは、ドライバーがテスラ車を約30分間で充電できる「スーパーチャージャーステーション」のネットワークを独自に構築しました。現在は、米国

を中心に運用がスタートしています。スーパーチャージャーは無料で利用できます。その目的はもちろん、EVをより安く簡単に維持できるようにすること、そしてEVの普及を加速させることです。

 

専用の車載用AIハードウェア

 テスラは、EVだけではなくAIハードウェアの開発にも注力しています。2021年、テスラはAI分野の優秀な人材の採用を目的としたイベント「AI Day」で、すべてのコンポーネントの垂直統合を完了させるという野心的な計画を発表しました。垂直統合を進めることによって、AIの学習からラベリング、ニューラルネットワークの設計に至るまで、様々なAI技術を自社開発することによって、テスラは、競合他社よりも速いスピードで開発を進められるのです。

テスラがあえて内製化をする2つの理由

 ここまで説明してきたように、テスラは、新しい自動車開発のために必要な技術を外注するのではなく積極的に内製化しています。なぜテスラは技術の内製化を進めるのでしょうか。その理由を2つ説明していきます。

開発を高速化するため

 自動車業界は、外注と下請構造で成り立つサプライチェーンに依存しています。テスラは、自動車業界のなかでその製造機械の多くを自社で開発し、自動運転のソフトウェアも自分たちで設計し、今後は電池の生産も内製化するのを計画しています。他社に外注してしまえば、会社間のやりとりが発生し、決断に時間とコストがかかってしまいます。

 内製化することで、社内だけでやりとりが完結するため、時間を短縮できるだけでなく、エンジニアチームが工場の生産チームと話し、改善のヒントをもらい、すぐに実行するといった、問題解決がやりやすくなるのです。新しい技術の製造を始める際に、現場のチームは数千もの細かな判断を下さなければなりません。もし技術の製造を外注してしまえば、その工場に長期にわたって社員を派遣し、常駐させなければならなくなります。

バッテリーを安定的に供給するため

 バッテリーを製造する上で、特に重要となる原料がリチウムとコバルトです。バッテリーはEVでは重要な部品であり、バッテリー不足はEV製造スケジュールに大きな影響を与えます。テスラはバッテリー不足によるスケジュール遅延を回避するために、ドイツにギガ・ベルリンと呼ばれるバッテリー工場を建設するなど、自社で生産する体制を整えました。このバッテリー工場は、世界最大級のリチウムイオン電池工場となっています。

 バッテリーの内製化を機にテスラが狙うのが、EV市場の「プラットフォーマー」です。電動化技術だけでなく、自動運転技術や車載電子基盤などを含めて、広く他社に外販する狙いがあります。

テスラを支える3つのトレンド

 テスラが注目されるもう一つの理由は、テスラが時代の要請に応える可能性をもった企業であるからです。つまり、環境要因がテスラの好調を後押ししているのです。以下では、テスラを支える3つのトレンドについて解説していきます。

カーボンニュートラル

 気候変動問題を受けて、現在、温室効果ガスの排出を実質ゼロにする、カーボンニュートラルの取り組みが世界的に広がっています。「排出を実質ゼロ」というのは、実質ゼロとは、温室効果ガスの排出量が森林が吸収する量を下回る状態です。人が呼吸をするだけで二酸化炭素は出ますから、排出をのものをゼロにすることはできませんが、排出量を地球が吸収する量より少なく抑えることができれば、実質的に温室効果ガスの排出量はゼロだと見なせるわけです。

 自動車業界でも、カーボンニュートラルの取り組みを進める必要があります。2021年10月31日から11月13日まで英国グラスゴーで開催された「第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)」において、自動車分野に関しては「世界のすべての新車販売について、主要市場で2035年までに、世界全体では2040年までに、EV(EV)等、二酸化炭素を排出しないゼロエミッション車とすることを目指す」という共同声明も出されています。欧州を中心として、「カーボンニュートラル=EVの普及」とする図式が展開されています。

 結果として、電気自動車の開発には大きな期待がかけられており、EVを得意とするテスラにも注目が集まっているのです。

CASE

 CASEとは、Connected(コネクティッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとった言葉で、自動車の開発の方向性を示した言葉です。ここまで説明してきたテスラのビジネスモデルに合っていることがわかると思います。コネクティッドとは、いわゆる通信機能です。車の通信機能が高まると、数多くのメリットが生まれます。単純に車の中で映画や音楽などを今よりもさらに楽しめるようになります。

 たとえば、テスラは、「オーバー・ジ・エア(OTA)」と呼ぶ技術を用い、ネット経由で車に新しいソフトを取り込むことで、新しい機能を追加したり、性能を向上させたりすることができます。日本国内のテスラ車は、1カ月半に1回ほどのペースでソフトを更新しています。システム変更やバグの修正、エンターテインメントコンテンツの拡充などの恩恵も、ソフトの更新によって受けることができます。

MaaS

 MaaSとは、Mobility as a Serviceの略です。利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段として「移動」を位置づけるという考え方を意味します。

 テスラは、すでに、モビリティ事業(電気自動車事業)に加えて、太陽光発電・蓄電・電力需給調整システム事業も手掛けており、複数の事業を展開することで「移動」の概念に変革をもたらそうとしています。テスラは、単なる自動車開発企業ではなく、利用者のあらゆる移動ニーズを満たすサービスを総合的に手掛ける会社なのです。さらに、ロボタクシー(自動運転×ライドシェア)の領域にも進出し始めています。

テスラが販売した車種と価格

 テスラは、すでに様々なEVを生産しています。ここでは、日本国内で販売されている3つの車種について価格を含め説明していきましょう。

Model S

 Model Sは一回の充電で約500kmを走行できる自動車です。テスラにとっては、2車種目となるEVです。社内インテリアにもこだわっていて、17インチのタッチスクリーンを採用するなど、次世代の車をめざして開発されました。日本でも2011年に発売されています。2022年3月時点において、販売価格は1,200万円〜となっています。

Model X

 Model Xは、SUVタイプのEVです。満充電で約580キロ走行、時速100キロまで到達するのに3.9秒という驚異的な動力性能を持っています。前後にひとつずつ搭載されたモーターの駆動により走行するEVで、日本では2016年より販売が開始されました。Model Xには、電動後部ドア「ファルコンウイングドア」が設置されており、これまでにない特徴的なドアとなっています。 2022年3月時点において、販売価格は1,300万円〜です。

Model 3

 Model 3は、コンパクト・ラグジュアリーセダンタイプのEVです。2016年に発表されました。Model 3は、今までスポーツタイプや大型セダンが主力であったテスラとしては初となるCセグメントサイズ(4.2m~4.5m 大きめのコンパクトカー)の車両であることが特徴です。日本の駐車場にも駐車しやすい大きさに設計されています。より小さくシンプルで手頃な価格を実現したModel 3は、世界の持続可能エネルギーへのシフトを加速するというテスラのミッションを達成することを目指して開発されています。2022年3月時点において、販売価格は500万円〜です。

原油高がテスラへのEVシフトを押し進める可能性がある

 2022年3月現在、原油価格が歴史的な高騰をみせています。原油価格が高騰している背景には複数の要因があります。産油国による協調減産と石油需要の回復が同時に行ったためです。また、ロシアによるウクライナ侵攻も原油高を招いています。ロシアからの輸入が経済制裁によって禁止された結果、今後も原油価格は高騰していくことが予想されています。

 原油高が続けば続くほど、経済的には商品の値上げが予想されますが、これはEVシフトを推し進めるきっかけとなるかもしれません。EVは電気だけで動きます。

 自動車メーカー各社が、半導体などの部品調達難で自動車を減産しているために、欧州の自動車販売量は低調であるものの、EVの販売台数は順調に伸びています。エネルギー価格の上昇で電気料金も上昇してはいますが、ガソリンや軽油ほどの価格上昇のインパクトはありません。エネルギー価格の上昇によって消費者が経済的な理由からEVを選択するなど、想定を上回るペースでEVの普及が進む可能性がある以上、この流れはテスラにとって追い風となるかもしれません。

まとめ

 投資家からも大きな注目を集めるテスラは、CASEやMaaSといった未来の移動を実現するうえで欠かせない企業となっています。これまでの自動車業界では当たり前に行っていた技術の外注をせずに、積極的に内製化し、EVに特化して開発を行うことで競争力を獲得し、自動車メーカーとしては時価総額世界一の企業へと成長しました。CEOを務めるイーロン・マスク氏のユニークなキャラクターも相まって、世界中の投資家から注目されているテスラからは、今後も目が離せそうにありません。

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