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「どうしたらいいと思う?」答えを言わない上司は部下をダメにする

多くのマネジャーが、「部下に質問すること」を良いことだと考えている。
「上司」「質問力」などの名前を冠した書籍も、少なくない。

「安易に部下に答えを教えず、考えさせる」
「質問をすることで、曖昧な部分を明確にする」
「良い質問が、良い回答を引き出す」

など、質問をすることのメリットはたしかに多い。
私が過去に在籍していたコンサルティング会社でも、「上司は答えを教えてしまう前に質問しろ」と、マネジャーに徹底していた覚えがある。

 

 

\ \ 絶対にしてはいけない部下との関わり方/ /

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「部下に質問をする上司」の下にいたときの話

「部下に質問をする上司」の下にいたときの話

そういえば、私の上司は特に質問が多かった。
私がクライアントに持っていく資料をレビューしてもらおうと、

「お客さんに持っていく資料ですが、構成をどのようにしたらよいか、わからなくて……」と上司の席に行き相談する。

と、上司は

「まあ、そこに座りなさい」といい、
「安達さんはどう思うの?」と質問を質問で返してきた。

もちろんこのままでは話が進まないので、私は私は必死に考える。

「最初は、前の会議の決定事項から書くと良いと思っています。次は今見えている課題を列挙して、最後に宿題事項を書こうかと。」

上司はそれを黙って聞き、手元の紙に書きつける。
そしておもむろに言うのだ。

「安達さん、今のはとても良いと思う。説明もしやすい。だけど、プレゼンテーションの原則を外しているかな。」
「プレゼンテーションの原則?」
「そう。なんだと思う?」

また質問だ。
私は無い知恵を絞り、いくつかの考えを上司に述べるが、上司は首を振るばかり。
上司は言った。

「ヒントをあげよう。安達さんがクライアントの責任者だったら、何から聞きたい?」
「えー……。」

私は悩んだ。

前の会議の決定事項……ではないだろう。
課題の列挙……だろうか?いや、列挙されてもなあ…
んー、はっきりと「今やらなきゃいけないこと」を最初に伝えたほうが良いのかな…

上司は、自分のメールを見て、何かを作業している。
私の回答が遅いので、自分のことを始めたのかもしれない。
15分くらいあれこれ試行錯誤し、
私は散々迷った挙げ句、

「えーと、「今やるべきこと」から書いて、理由と課題はその後に。決定事項は最後に書きます。」

と上司に述べた。
上司はこちらを見て、

「なんでそう思ったの?」とまた質問してきた。
「今回のミーティングは、時間が押しているので、宿題事項と理由から話をすべきかと。」

上司は言った。

「いいんじゃない。じゃそれで行こう。プレゼンの原則は、相手が一番聞きたいことを最初に、だよ。」

と言った。
そして、私の役に立ちそうな本を一冊、渡してくれた。

毎回こんな感じだった。

「私の上司は、決して答えを言わない」人だった。

そして、彼がその「答えを言わない上司」であることで、私は多くことを学んだ。

 

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部下に「どう思う」と質問する上司が鼻につく人たち

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ところが、である。
この話を何人かの人にしたところ、

「部下に「どう思う」と質問する上司は、すごい鼻につく」

という人が、結構いることに気づいた。
私は「すぐに上司が答えを言ってしまったら、下の人が成長しなくないですか?」と尋ねた。
すると、彼らは決まって、

「いや、早く答えが欲しい。余計なことをしなくていいから。」というのだ。

うーむ。
こんなに人によって捉え方が違うものなのか。
なんでこんな違うのか。
私は不思議だったが、ある時、同じように

「「どう思う?」と聞く上司にイライラする」

と言った人に理由を聞いてみた。
すると、彼は言った。

「早く答えを言ってくれたほうが、お互い時間の無駄遣いにならないでしょう?」

いつもの答えだ。
ただ、私は今回、理由を知りたかったので、もう少し突っ込んだ。

「でも、「上司が、考えさせてくれること」は、結構重要じゃないですか?」

相手はキョトンとしていた。

「考えさせてくれる?何を?」
「相談したことについてです。プレゼンテーションや提案、仕事のやり方とかいろいろ。」

すると彼は言った。

「まさか、「考えさせてくれる」なんて、ありえないですよ。」

私は意外だった。

「上司が質問する、ってそういうことじゃないですか?」
「ちがいますよ、上司が質問するときって、だいたい「俺の考えてることわかるよな」っていう忖度の世界じゃないですか。くだらない。」
「「忖度の世界」……。なるほど。」

彼は言った。

「いつも「どう思う?」って聞いてくる上司、昔いました。」
「はい。」
「で、答えるじゃないですか。すると上司は「ちがう。もっとよく考えろ」って、馬鹿にしたように言うんですよ。なかなか正解が出てこないと、イライラして怒るときもありました。」
「なるほど、それは嫌ですね。」
「でしょう?他にも、上司が「どう思う?」って意見を求めてくることもありましたが、結局「俺の考えてること、わかるよな」っていう感じで、自分と同じ意見が出てくるまでやらされるんです。もう、うんざりですね。」

別の会社の方で、

「どう思う?って、上司に聞かれるのは、めちゃくちゃ嫌ですね。「決定事項の答え合わせ」になってしまうようなときは、特に嫌です。時間の無駄だからやめてくれと。」

という意見もあった。

 

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「鼻につく上司」は「質問」をしているのではなく、正解を早く言えと「命令」をしている。

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私は、「質問が鼻につく上司」と、「質問のうまい上司」を比較して考えてみた。
そして、気づいた。
私が、自分の上司から質問を受けても、ちっとも嫌でなかったのは、
彼が、私が自分で「正解」にたどり着けるよう、質問に相当の工夫をこらしてくれていたからだ。

私の過去の上司は、単に「どう思う?」とだけ聞いていたわけではない。
ヒントを与え、私の見解を書き留め、図を書き、本を渡してくれた。
私が答えるまで、何分でも待ってくれた。
全力で私が早く「正解」にたどり着けるように、道筋をいつも示してくれていた。

反面、質問されたくない上司はどうだろう。
「どう思う?」とだけ聞いて、正解が早く出ないと馬鹿にしたり、怒ったり、「勉強が足りない」とあざ笑ったりする。
そんな上司の下では、「どう思う?」などという質問を受けるのは苦痛でしかない。
結局それは「質問をしている」のではなく、正解を早く言えと「命令」をしているだけなのだ。
そういう意味では、「上司は部下に質問しなさい」という言い方は良くない。
「正解を教えてはいけない」と誤解される可能性が高いからだ。

実際には「上司は部下が正解に自力でたどり着けるよう、ヒントを与え、時に質問などを織り交ぜなくてはならない」なのだ。
だから、質問が下手な上司は、かえって部下から不信感を持たれてしまう。

 

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マネジメントのシンプルなキャッチフレーズは言葉足らず

「部下には◯◯せよ」といった、マネジメントのシンプルなキャッチフレーズは、大体において言葉足らず

今回は「質問せよ」という、シンプルなキャッチフレーズが言葉足らずであることに気づいた。
だが、こうした事例はまだまだある。

「上司は聞きなさい」
「上司は任せなさい」
「上司はビジョンを語りなさい」
「上司は部下の感情に配慮しなさい」

だが、マネジメントにおいては、相手が人だけに、「シンプルなキャッチフレーズ」は、大体において言葉足らずだ。
ときに上司は、

聞くよりも話さなければならない。
任せるよりも、自分が率先してやらねばならない。
ビジョンより実務で結果を出さなければならない。
部下の感情よりも、数字を見なければならない。

つまり、上司にとって必要なのは
「状況をよく見て、判断せよ」という誠に基本的で、難しいことなのだ。

そして、それができなければ、迷惑を被るのは部下なのである。

 

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