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マネジメントの人材活用の極意は「個性が違うリーダーシップの組み合わせ」にある

大きな組織になれば複数のリーダーシップが必要になり、組織は複雑になってきます。仕事をする場合のマネジメントの役割は、この複雑になったチームをまとめて成果を出すことです。

問題は、誰をリーダーにするかでしょう。仕事していると、同じリーダーでもいろいろなタイプの人がいることがわかります。細かいところにうるさいタイプ、拘らないタイプ、優しいタイプ、怒らせると怖いタイプ、いろんな人がいます。

では強い組織を作るには誰をおくべきでしょうか。 人の気持ちを鼓舞するのが上手い人でしょうか? それとも、優秀で頭の切れる人をおくべきでしょうか。

 

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コリン・パウエル氏に学ぶリーダー術

 

「個性の違うタイプの複数の指揮官を組み合わせよ」と言っている人がいます。

それは米国で国務長官を務めていたコリン・パウエル氏です。ジャマイカ系の移民2世で、ニューヨークのストリートに生まれた彼は、陸軍に入り、最高位まで上り詰めます。

1991年の湾岸戦争では米国の統合参謀本部議長として、米国の陸軍、海軍、空軍、海兵隊を統括する立場につきます。また、米国の外務大臣に当たる国務長官に、黒人として初めて就任したことでも知られています。

国務長官になる前の彼は、もともと軍隊の指揮官として、率いる部下たちにモチベーションを与え、尚且つ命を落とさないように慎重に指揮する必要がありました。

そんなパウエル氏が書籍「リーダーを目指す人の心得」で明かしたさまざまな極意は非常に興味深いのですが、その一つが「個性の違うタイプの人を組み合わせよ」ということです。「人材の組み合わせの妙」と題した章から、元アメリカの国務長官のマネジメント術を学んでみましょう。

 

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黙って行動するタイプ、細かく質問するタイプをどう使い分ける?

 

コリン・パウエル氏が、第101空挺師団第二旅団を指揮していたとき、個性が大きく異なる有能な指揮官が何人かいたそうです。

ある指揮官は「やれ」と命じればそれだけで黙って行動するようなタイプです。ところが別の指揮官は「いつですか?」「どのようにですか?」「優先順位はありますか?」「そのあと、私は何をすればいいのですか?」などと細かく質問してくるタイプでした。

あなたの職場にも、命令したことに対し、「わかりました」と判断して突き進んでいくタイプの人もいれば、「やり方はどうしましょうか? 何を調べてやれば良いですか?」などと細かく確認してくるタイプの人もいることでしょう。

果たしてどちらが優秀かといえば、答えはどちらも優秀なのです。問題は、どうやってこの人たちを配置し、仕事をしてもらうかです。

 

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人材を組み合わせることでチームは力を発揮する

 

パウエル元国務長官は、「このふたりのいいところを活用し、お互いの強みが弱みを補完し合うようにすることが私の仕事だ」と言っています[1]。

彼は言っています。

「行動派の指揮官はあっぱれで周りをわくわくさせるが、基本的なところを確認せずに出撃してしまう場合がある。これでは困った事態に陥りがちだ。指示の細かいところや戦場全体の様子も把握できなかったりする。もうひとりの指揮官はこまごま確認してくるので面倒なのだが、こちらの方がうまい戦略を立案し、慎重に実行することが多い。」[2]

短い命令で「わかりました」と判断していく人は、行動が早くて周りを引っ張っていきますが、細かいところに目が行き届いていない可能性があります。一方、あれこれと細かいところを確認し、納得行くまで動かないタイプの人は、上司であるあなたをイライラさせるかもしれません。

つまり、両方に良いところと悪いところがあるので、ここをうまく組み合わせることで、チームがより大きな力を出せるように導くわけです。

また、パウエル氏は自分が副官を選ぶときは、自分より厳しく、怖い人を探したそうです。

「私は善玉、あるいは従軍牧師の役割として、規律を遵守させる役割は副官にしてもらうのだ。」[3]

つまり、自分が副官を選ぶ際にも、正反対のタイプを指名するのです。これはサラリーマンにも当てはまるのではないでしょうか。「とにかくやれ、数字を出せ!」とハッパをかけるようなタイプの部長の下に、慎重に物事を進めたり、部下をフォローするタイプの副部長がいれば、二人は補完し合うことができるのです。

 

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部下たちにも、正反対の性格の人を組み合わせる

 

さらに面白いのは、コリン・パウエル氏が部下に求めるものです。

彼はたくさんの条件を上げています。

最初、「特に変わったものはなく、能力、知性、個性、倫理性、度胸、優しさを伴う厳しさ、士気高揚の力、忠誠心などだ」と言っており、いかにも軍人、という感じです。しかしその後に「自分やチームと相性の良い人も欲しい」とか、「シチューには少量のスパイスが必要だ。だから私は個性的な人間も欲しい。一風変わった人物がいたほうが、チームに活気が出るのだ」と書いています。

現場でも同じです。
例えば、私は編集の現場に長くいましたが、編集者には細かいことを気にしないタイプの人が多いのに対し、校閲部には逆に、細かいところを慎重に進めていくタイプの人が多いのです。

同じように「原稿を読む」仕事をするのですが、両者の読み方は真逆です。編集者が企画意図がずれていないか? 面白いか? 読者にわかりやすいか? などを重視するのに対し、校閲部の人たちは、事実に間違いがないか、表現に問題がないかなどを慎重にチェックするのです。こうして、「違うタイプ」の人が一緒に仕事することで、補間しあい、仕事が進んでいくわけです。

さらに、ちょっと変わったアイデアを出す人がいると、行き詰まった編集会議で新しいアイデアを提供してくれたりします。

 

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同じ人ばかりで仕事を進めると危険でもある

 

さて、私が住むマレーシアではマレー系、インド系、中華系と3種類の違った人たちが住んでいます。この3民族、それぞれ傾向も得意分野も違います。

ある華人が、「それぞれの人種により対応方法も文化も違うから、組み合わせることで、どんな人にも対応できるチームができる」と話していて、なるほどな、と思いました。

インド系が得意なことと、華人が得意なことが違う。それをうまく組み合わせるのが典型的なマレーシアのチームなのだと。

そういえば、マレーシアで私が働いていた会社には、様々な人がいました。お客さんがマレー語を話せばマレー語が得意なマレー人、広東語を話す方には華人が対応するなどして使い分けていました。また、キリスト教徒が休みに入るクリスマスにはマレー系が、ムスリムが休むラマダンにはキリスト教徒がそれぞれ代わりに働くことで、フォローし合う面もみられました。

こうして、複数の違う個性が集まることが、チームで作業することの醍醐味なのかも知れません。リーダーがチームを作るときに必要なのは、個性を適材適所に配置し、「組み合わせること」なのでしょう。

 

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参照
[1]出典「リーダーを目指す人の心得」コリン・パウエル/トニー・コルツ著・井口耕二訳 (飛鳥新社)
[2]出典「リーダーを目指す人の心得」コリン・パウエル/トニー・コルツ著・井口耕二訳 (飛鳥新社)

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