下記のような疑問を感じている方はいませんか?
- 「景気敏感株って何? ディフェンシブ銘柄とどう違うの?」
- 「代表的な景気敏感株にはどんな銘柄があるの?」
- 「景気敏感株の見分け方は?」
本記事では景気敏感株やディフェンシブ銘柄などの基本的な知識や両者の違い、代表的な銘柄、選び方などを初心者の方にもわかりやすく解説していきます。
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目次
景気敏感株とは
株式投資において、「不景気のうちに株式を買い始めることで利益を出すべきだ」と頭では理解していても、実際にできる人は多くはありません。
では、どうすればこれができるようになるのでしょうか。
その方法の一つとして「景気敏感株」をチェックして、徹底的に追求していくことが挙げられます。
株式市場には数千という上場企業がありますが、それらの株式は所属する業種や値動きなどの特徴から、下記のように分類できます。
- ディフェンシブ株
- 輸出関連株
- 大型株
- 小型株
- 景気敏感株
景気敏感株とは「シクリカル銘柄」や「景気循環株」とも呼ばれ、経済危機など景気の動向によって業績が大きく変動する銘柄のことです。
主に、半導体、化学、非鉄、電気、輸送用機器、銀行、不動産、鉄鋼、機械、精密、商社、証券など多くのセクター(株式相場や株式市場を分析するときに区分するグループのこと)が景気敏感株に該当します。
好況時にはモノが売れるので多くの素材や設備、工場が必要になります。
しかし、不況になると企業は生産量や仕入れの量を調整して、過剰な在庫を減少させるため需要が低迷します。
そして生産が落ち込むなど、景気の動向で受注が左右されて業績に直結する銘柄群が景気敏感株です。
景気敏感株購入のメリット・デメリット
景気敏感株の特徴として挙げられるのは、短期間で大きく株価が変動しやすいことです。
このため、景気敏感株を可能な限り底値で買い、高値のときに売ることができれば大きな単発収入が期待できます。
つまり、景気敏感株のメリットは大きな「キャピタルゲイン」が見込めるということになります。
キャピタルゲインとは、株式や債券など、持っている資産を売ることで得られる売買差益のことです。
しかしその一方で、景気敏感株は値動きが激しいので、投資する場合は的確かつ迅速な判断をすることが必要になります。
意思決定が遅れたり、間違った判断を下してしまうと大きな損失につながる可能性が高くなります。
したがって、景気敏感株はハイリスク・ハイリターンといえるでしょう。
景気敏感株に該当する業種
景気敏感株には、鉄鋼や化学、セメント、繊維、ガラスなどの素材産業が多く含まれています。
東京証券取引所は東証1部に上場する企業を33種類の業種に分類しています。
この分類をもとに考えると、景気動向に敏感な素材産業は「繊維、化学、紙パルプ、鉄鋼、非鉄金属、ゴム、ガラス土石、鉱業、石油石炭」の9つの製造業が挙げられます。
さらに、海運(物流)と卸売(仲介)といった非製造業も加えて、合計で11業種が「景気敏感株」と考えて問題ありません。
なかでも、株式市場での流動性や値動きの大きさ、マーケットにおける機関投資家からの人気を考慮すると、
- 卸売
- 非鉄
- 海運
- 鉄鋼
- 化学
の5つの業種が「代表的な景気敏感株」と考えて差し支えないでしょう。
「産業のコメ」は鉄鋼から半導体へ
かつて「産業のコメ」といえば鉄鋼でしたが、現在では半導体に変わっています。
これにより、電子部品メーカーや半導体セクターも景気敏感株の一つとして考えることもできるでしょう。
また、半導体産業・電子部品メーカーに原材料の調達を行っている専門商社や総合商社も含まれることになります。
景気敏感株を見分ける方法
「景気敏感株に該当する業種はわかったけど、一つの企業が複数の事業を手がけている場合はどうなの?もう少しわかりやすい見分け方はないの?」
と疑問に感じる方もいるのではないでしょうか。
そこで、大まかにですが景気敏感株かどうか判断できる見分け方をご紹介します。
簡単にいうと、
- BtoB(企業間取引)の業種は景気に左右されやすい
- BtoC(企業と一般消費者の取引)の業種は景気に左右されにくい
ということがいえます。
また、
- 買い物(投資)の規模が大きい業種は、景気に左右されやすい
- 買い物(投資)の規模が小さい業種は、景気に左右されにくい
という傾向があるため、参考にするとよいでしょう。
日本における代表的な景気敏感株
日本における代表的な景気敏感株の例は下記の2つがあります。
- JFEホールディングス(5411)
- トヨタ自動車(7203)
それでは1つずつ解説していきます。
JFEホールディングス(5411)
JFEホールディングスは、大手鉄鋼メーカーや大手造船メーカーを傘下に持つ持株会社です。
かつて「産業のコメ」と呼ばれた鉄鋼は、電線やビルなどの社会インフラや自動車産業に必須とされ、日本経済だけではなく世界の景気動向に影響を受けます。
例えば、米国ではバイデン政権が掲げる5年間で1兆ドル規模の巨額インフラ投資法案が上院を通りました。
そして景気敏感株が買われる動きが加速した結果、JFEホールディングスや日本製鉄、神戸製鉄などの鉄鋼株の株価が上昇。
東証33業種別株価指数の値上がり率ランキングで鉄鋼が第1位となりました。
過去にもアメリカでインフラ投資計画が持ち上がると、建設資材などのニーズが高まると予想されて東京市場で鉄鋼株が物色されるケースが多いです。
今回も同じように投資マネーが流入したと考えられます。
トヨタ自動車(7203)
トヨタ自動車は愛知県に本拠を構える自動車メーカーです。
自動車産業は海外に販売拠点があるケースが多く、鉄鋼業と同じように景気の影響を受けやすい産業です。
自動車産業は米中貿易戦争や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う海外工場の閉鎖など、世界的な情勢がダイレクトに影響します。
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景気敏感株に徹底的に注目するべき理由とは
景気敏感株の値動きに対して徹底的に注目するべき理由は、景気敏感株は景気の善し悪しに先だって変わるためです。
景気敏感株は、景気が良い時は株式市場全体の動きに伴って大幅に値上がりしていきます。
しかし景気が悪くなり始める少し前に、景気敏感株だけが他の銘柄よりも一足早くピークを形成して株価が下がり始めるのです。
景気が良くなり続けることはなく、いつかは景気は悪くなります。
「株価は景気に先行する」という基本的な原則があるので、いずれかのタイミングで「景気は良いのに株価だけが値下がりしていく」という状況になります。
景気敏感株で状況の変化を捉える
このような状況に陥っても、大半の投資家は好調な景気と値下がりする株価の相反する動きに気づくことができません。
また、それまでの成功体験もあるため、つい深追いしてしまい株価がピークを形成していることを見逃して、失敗してしまうのです。
こうした景気と株価の転換点において、状況が変わったことを先んじて教えてくれるのが景気敏感株に注目する理由です。
景気敏感株以外の銘柄や業種が好調・堅調の際に、景気敏感株だけがピークを作った後に値下がりするときがあります。
このような形で景気の転換点を教えてくれるのが景気敏感株なのです。
景気敏感株が景気の動向に先んじて動く理由
そもそも、なぜ景気敏感株の株価は景気の動向に先んじて動くのでしょうか。
明確な答えはありませんが、考え方の一つとして挙げられるのは、景気敏感株となるセクターは「一般的に社会全体の産業に必要となる、基礎的な原材料や素材を供給している」ということです。
社会を支える重要な業界
例えば、鉄鋼業界の場合は、自動車や産業機械、造船などの産業、さらに高層ビルや鉄道、橋などの社会インフラに欠かせない材料を供給しています。
また、石油化学産業の場合は、さまざまなパーツの原料となるプラスチックや合成ゴム、合成洗剤や界面活性剤などを生産しています。
さらに、普段は目に見えず何が使われているか気にすることが少ないですが、パソコンやスマートフォンの内部に存在する、メモリやCPUなどのコアとなる部品や精密機器をつくるためにはレアメタルが必要です。
このレアメタルを供給しているのが非鉄業界です。
このような社会を支える素材の原料となる石油やレアメタルなどのほとんどを上記で挙げた景気敏感株の素材セクターが供給しているといえます。
景気が悪くなり、「もうこれ以上悪くなることはない」といえる状況になると、企業は景気が好転することを見越します。
そして原材料の銅やナフサなどの、産業界の基礎となる素材を調達しようとします。
もしくは、不景気を放置できない政府が、景気の底入れを促進する政策を打ち出す可能性も高まります。
これを受けて企業も行動を起こしやすくなるのです。
このようにして、値下がりを続けた景気敏感株が「これ以上値下がりすることはない」という状況になると、景気敏感セクターの株価と業績は他の銘柄に先んじて好転すると考えることができます。
これこそが景気敏感株に「景気を先読みする力」がある理由なのです。
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景気敏感株の対義語、ディフェンシブ銘柄とは
ディフェンシブ銘柄とは、景気の動向による影響が少ない銘柄のことです。
「内需株」とも呼ばれ、その特性から、景気敏感株の対局にある存在として扱われます。
ディフェンシブ銘柄には、水産や食品、医薬品、電力・ガス、電鉄などの「生活必需品」が該当します。
生活必需品は景気の良し悪しに関係なく必要とされるので、景気が悪くなったとしても影響は限定的なのです。
特に、鉄道や電力・ガスといったインフラ系の企業は、展開する事業の顧客のほとんどが国内に存在します。
したがって、海外の景気の影響を受けにくい点が特徴です。
ディフェンシブ銘柄を保有するメリット
ディフェンシブ銘柄を保有するメリットとして挙げられるのは、配当利回りが高い銘柄が多いことです。
なかには配当利回りが4.98%の銘柄も存在し、日経平均の配当利回りを考えると高水準であることがわかります。
なぜディフェンシブ銘柄の配当利回りは高いのでしょうか? それは、ディフェンシブ銘柄にはすでに成熟した安定企業や大企業が多いためです。
一般的に企業は成熟期に入ると利益が伸びにくくなるため、株主を引き止めておくためにも配当金を増やす傾向にあります。
このように、ディフェンシブ銘柄には
- 景気に左右されにくい
- 配当利回りが高い
といったメリットがありますが、もちろんデメリットも存在するため注意しましょう。
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ディフェンシブ銘柄を保有するデメリット
ディフェンシブ銘柄を保有するデメリットは下記の2点です。
- キャピタルゲインを得ることが難しい
- 景気に左右されにくいとしても大幅に値下がることもある
それでは1つずつ解説していきます。
キャピタルゲインを得ることが難しい
景気敏感株は値動きの激しさから大きなキャピタルゲインを得やすいと解説しました。
しかしディフェンシブ銘柄は株価の変動が小さいため、得られるキャピタルゲインも少なくなりがちです。
短期間で利益をあげたいという場合は、ディフェンシブ銘柄ではなく景気敏感株への投資がベターでしょう。
景気に左右されにくいとしても大幅に値下がることもある
とはいえ、ディフェンシブ銘柄も大幅に株価が下落することがある点に注意しておきましょう。
例えば、東京電力の東日本大震災当日の株価は2,121円でしたが、週明けの14日からは3日連続でストップ安となり、17日には741円となりました。
わずか4日間で6割以上も値下がりし、震災から6ヶ月後には300円台にまで落ち込みました。
このように、ディフェンシブ銘柄でも「下がる時は下がる」ということを認識しておきましょう。
まとめ
ここまで景気敏感株やディフェンシブ銘柄に関する基本的な知識などを見てきました。
景気敏感株は景気の動向に左右されやすく、キャピタルゲインを得るのに向いていますが、的確な判断ができなければ大きな損をする可能性があります。
一方のディフェンシブ銘柄は株価は安定していますが、キャピタルゲインを得ることは難しいです。
このように、どちらにもメリット・デメリットがあるため、上手に組み合わせて投資をしていくことが重要となります。