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【企業事例】ニッチトップ戦略とは?メリットやデメリット成功事例を解説

経済産業省は2020年6月に、7年ぶりとなる「グローバルニッチトップ企業100選」を選定しました。

「グローバルニッチトップ企業100選」とは、世界市場のニッチ分野で勝ち抜いている企業や、新型コロナウイルスの感染拡大・米中関係の悪化などによる社会情勢の変化のなかで重要性を増している部素材等の事業を行っている優良企業を113社選定したものです。

本記事ではグローバルニッチトップ企業に関する基本的な知識から、ニッチトップ戦略のメリットやデメリットなどを解説していきます。

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グローバルニッチトップ企業とは

経済産業省が選ぶ「グローバルニッチトップ企業」とは、グローバル市場において「ニッチマーケット」で高い競争力を有し、サプライチェーンにおいて重要性が高まっている部品・素材に関連する事業を行っている企業を指しています。

ニッチマーケットとは、「顧客の需要があるにも関わらず規模が小さいため、商品の供給がなかった市場や潜在需要を掘り起こす産業」のことです。

グローバルニッチトップ企業を選定することで、市場規模は大きくなくとも世界的に高いシェアを誇り存在感を増している企業の経営努力を讃えて、社会に知ってもらうことを目的としています。

(参考:2020年版グローバルニッチトップ企業100選丨経済産業省

ニッチ分野に強い日本企業

実は、日本企業はニッチ分野で大きな存在感を発揮していることをご存知でしょうか?

日本企業はAmazonやAppleといったGAFAのようなグローバル企業には真っ向勝負をしても勝てないため、ニッチマーケットで大きなシェアを握る戦略で差別化を図っているのです。

実際、経済産業省が選定した113社のグローバルニッチトップ企業は、それぞれのニッチマーケットにおいて平均で世界シェア43.4%を誇っています。

さらに、世界市場規模は今後5年から10年で平均2.21倍の高成長が見込まれているのです。

TOPIXを大きく上回る株価

グローバルニッチトップ企業はTOPIX(※)を大きく上回っていることがわかっています。

選定されたグローバルニッチトップ企業113社のうち、上場している企業は45社あります。

この45社とTOPIXの対象となっている各銘柄の2014年度における営業利益を100として指数を算出し、1社あたりの推移を見ると、増益率の平均は、2017年度移行はグローバルニッチトップ企業45社が上回っているのです。

さらに、2014年処を100としたグローバルニッチトップ企業45社の平均株価は、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年から、TOPIXを上回り大幅に引き離しています。

※TOPIX:東証株価指数。東証一部上場企業の全銘柄を対象として、算出・公表している株価指数のこと。

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ニッチトップ戦略とは

それでは、コロナ禍においてこれほどまでに大きな成長を実現している企業が実践する、「ニッチトップ戦略」とはどのようなものなのでしょうか?

ニッチトップは小規模の分野でトップを狙っていく戦略ですが、反対の「大規模の分野で勝負する」とどうなるでしょうか。

規模が大きな既存市場で戦うと、大企業にシェアを奪われることに対して常に警戒し、対策を実行していかなければなりません。

また、同じような製品を扱う企業が多いほど価格競争に巻き込まれる可能性が高くなるので、収益率が下がる傾向にあります。

しかし、ニッチトップ戦略がうまくいけば、ライバルとの価格競争に巻き込まれずに成長することが可能です。

ニッチトップ戦略の方法

ニッチトップ戦略とは、自社の強みを最大限発揮できるニッチな市場を選び、シェアを拡大・独占していく戦略のことです。

自社の強みを活かすことで他社との違いを全面に打ち出して差別化を図り、シェア1位を目指します。

ニッチトップ戦略を実践して、市場における自社の支配力を高めることで価格決定権を持つことができれば、価格競争から抜け出して収益を確保しやすくなるのです。

規模が大きい市場は魅力的ですが、規模が大きいほど大手企業など高い競争力を持つライバルがいます。したがって、ニッチトップ戦略によってまずは基盤を整えることが効果的となります。

ニッチマーケットで安定した利益を得られるようになれば、そのマーケットを屋台骨として他の市場に参入することもできるでしょう。

池クジラ戦略とは

ニッチトップ戦略について説明する時に、よく用いられる例えが「池クジラ戦略」です。

池クジラ戦略とは、自社が見つけた小さな池(ニッチマーケット)で、圧倒的に強いクジラ(ニッチトップ)になろうという考え方です。

強いライバルがひしめく大きな海や湖で戦うと、価格競争になり利益が出せなくなる可能性が高くなります。

また、誰も知らない新種の魚(新奇性があるオリジナル商品)として、広い海で戦おうとしても生き残れるかどうかわかりません。

そこで、まずは誰もが知っている「クジラ」でいいので、住む場所を変えることでライバルを減らすことが重要になるのです。

ニッチトップ戦略(池クジラ戦略)なら中小企業でも勝てる

例えば、ゲーム機をつくるのであれば、任天堂の「Wii」やMeta社の「Meta Quest」のように独自の製品をつくる必要はありません。

真新しい機能のない普通のゲーム機でも、例えば目に障害がある人や高齢者向けに開発することで、ライバルがいなくなります。

なぜなら、マーケットがとても狭い(ニッチ)からです。

池クジラ戦略やニッチトップ戦略で重要なことは、「どのマーケットにしようか」と考えるのではなく、「マーケットのどの領域を削り取ろうか」と考えることにあります。

あえてマーケットを小さくすることで、自社の強みを最大限活かせるニッチマーケットの発見・創造ができれば、中小企業でもナンバーワンになることは不可能ではありません。

ニッチトップ戦略のメリット

ニッチトップ戦略には下記のようなメリットがあります。

  • 高い収益性の確保
  • 価格競争から逃れられる
  • 認知を広げやすく、ファンの獲得がしやすい

それでは1つずつ解説していきます。

高い収益性の確保

ニッチトップ戦略のメリットの1つ目は、高い収益性の確保ができる点です。

マスに向けた販売戦略とは異なり、ニッチトップ戦略はそれぞれの顧客に個別最適化した製品やサービス開発・販売をすることで、市場シェアの寡占度を高められます。

さらに顧客が増えるほど集客数・販売数も増えていくため、結果的に高い収益性を実現できます。

実際の例として、一般消費者向けの糖度計や塩分計を販売することで、業績を伸ばした企業を見てみましょう。

従来では市場には事業者向けに開発された大きな測定器ばかりでしたが、一般消費者が気軽に使える計測器を販売したことで、「普段食べている食べ物の糖度や塩分が知りたい」という新たな需要の発見につながりました。

このように、顧客が持つ潜在的な需要を発掘・創造することで新たなマーケットを独占し、売上に貢献することが可能です。

価格競争から逃れられる

ニッチトップ戦略のメリットの2つ目は、価格競争から逃れられることが挙げられます。

ニッチトップ戦略では、マーケットを選ぶ際にライバルが少ない・いないマーケットを選んで事業を展開するので、価格競争に巻き込まれる可能性が減ります。

ライバルが少ない中で自社の強みを生かして高いシェアを握ることができれば、自社の希望通りの価格で販売することができるため、利益をあげやすくなるのです。

しかし、ライバルとの価格競争に陥ると自社の想定よりも受注単価が下がり、目標とする利益をあげられなくなってしまうでしょう。

コストカットを目的として製品やサービスのクオリティを下げると、顧客満足度の低下だけではなく企業のブランド価値や信頼性の毀損につながってしまいます。

収益性が低い状態だと長期的な事業継続は難しくなるため、価格競争は避けるべきといえます。

認知を広げやすく、ファンの獲得がしやすい

ニッチトップ戦略を実践することで価格競争から逃れることができれば、企業に残る利益を増やすことができます。

その結果、その分だけ新製品や新たなサービスの開発やPRにリソースを振り分けることができるため、さらに付加価値の高い製品・サービスを顧客に提供することが可能です。

これにより、認知度を高めて売上や集客をさらに伸ばせるでしょう。

また、ニッチトップ戦略ではライバルにはないオリジナリティを出せるため、ファンの獲得につながりやすいというメリットもあります。

「ここでしか味わえない」や「ここの製品・サービスでしかできない」と感じさせることができれば、企業のブランド価値をさらに向上させることが可能です。

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ニッチトップ戦略のデメリット

ニッチトップ戦略は多くのメリットを期待できますが、もちろん下記のようなデメリットもあるため、注意しておきましょう。

  • 選んだマーケットが大きくならない可能性がある
  • ライバルが参入する可能性がある

それでは1つずつ解説していきます。

選んだマーケットが大きくならない可能性がある

ニッチトップ戦略のデメリット1つ目は、選んだマーケットが大きくならない可能性があることです。

ニッチトップ戦略ではライバルが少ないマーケットを選ぶことが重要ですが、それだけでうまくいくわけではありません。

ある程度の売上が立っても、マーケットが成長せずに事業を継続できるほどの十分な利益が出せない可能性があります。

そもそも大手やライバルがいない理由が、「それほど旨みがないから」という可能性も考えられます。したがって、マーケットを選ぶ際は入念なリサーチをもとに、どのような需要があるのかを調べた上で、計画的に進めることが重要です。

ライバルが参入する可能性がある

ニッチトップ戦略のデメリット2つ目は、ライバルが参入する可能性があることです。

ニッチトップ戦略で事業が軌道に乗り、マーケットが成長したとしても継続的にシェアを握り続けるかどうかはわかりません。

参入当初は高いシェアを握ることができたとしても、市場が成長すると他社にシェアを奪われる可能性があります。参入した時はニッチな市場だとしても、市場が大きくなるとともにライバルの参入が増えるかもしれないからです。

昨今では1つの企業が他社を買収して異業種の事業を展開する企業が少なくないため、ニッチな市場でシェアを握り続けるには、ニッチトップ戦略と並行して差別化戦略も実践しなければなりません。

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【企業事例】ニッチトップ戦略の成功例

それでは、ここからは実際にニッチトップ戦略で成功を収めた企業事例を見ていきましょう。

ここでは下記の2社のケースを紹介します。

  • 日東電工株式会社
  • レーザーテック

それでは1つずつ解説していきます。

日東電工株式会社

日東電工株式会社は大阪市に本社を構える、粘着テープなどの包装材料や半導体関連材料・光学フィルムなどを製造している株式会社です。

日東電工株式会社は、自社の強みを活かすことができるニッチ市場で、独自の技術によってトップシェアを目指すニッチトップ戦略を実践しています。

さらに、日東電工株式会社ではグローバルシェアナンバーワンを目指す「グローバルニッチトップ戦略」と、各国・エリアの市場において特有の需要に応じた製品を提供してトップシェアを獲得する「エリアニッチトップ戦略」というように、ニッチトップ戦略を2つに分けて実践しているのです。

(参考:Nitto独自のビジネスモデル ー「三新活動」「ニッチトップ戦略」丨Nitto

レーザーテック

経済産業省が選定したグローバルニッチトップ企業113社で上場している企業のなかで、売上高営業利益率が最も高い企業が、レーザーテックです。

レーザーテックは半導体検査装置のメーカーで、同社の売上高営業利益率は37.1%と業界トップクラスを誇っています。また、マスクブランクス検査装置で世界シェアをほぼ独占しています。

2019年6月時点で株価は2,000円を下回っていましたが、その後およそ1年半で1万5,690円という高値を付け、時価総額は1兆3,000億円を上回りました。

レーザーテックはグローバルニッチトップ戦略だけではなく、「最速の開発」や「研究開発型ファブライト」といった経営戦略を実践しています。

まとめ

ここまでニッチトップ戦略に関する基本的な知識から、メリット・デメリットを見てきました。

ニッチトップ戦略は、世界情勢が不安定化し、少子高齢化が進む環境において安定的な収益を確保するには効果的な戦略です。

また、普段、私たちはGoogleやAppleといった表舞台で華やかに活躍する巨大企業に目を奪われがちです。しかし、なじみのないニッチな分野においては、世界で圧倒的なシェアを握る日本企業が実はたくさん存在します。

こうした知る人ぞ知る、隠れた有望株の今後の活躍に注目してみてはいかがでしょうか。

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