組織における緊急の課題を解決するために組まれる組織「タスクフォース」。
『鬼滅の刃』でも同様に、鬼に立ち向かうためのタスクフォースが「遊郭編」で編成されています。
宇髄天元は登場時はかなりチャラそうな柄の悪い男であったためか、そこまで人気はありませんでした。
しかし、「遊郭編」が始まるとその人気はたちまち上昇。実際、2017年5月の第1回『鬼滅の刃』人気キャラクターランキング(※1)でランキング外だった天元は、2020年3月のランキング(※2)では、13位の位置に付けています。
本記事では、宇髄天元の活動から、タスクフォースを正しく導く方法を学んでいきます。
※1『週刊少年ジャンプ 2017年47号』より
※2『週刊少年ジャンプ 2020年47号』より
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鬼滅の刃とは?
※本記事はネタバレを含みます。
『週刊少年ジャンプ』で連載された『鬼滅の刃』は日本で大ヒットを記録した漫画です。
本作品の主人公「炭治郎」は田舎の一軒家に住む6人兄弟の長男。慎ましくも幸せな生活を送っていました。
物語は一家が鬼に襲撃されるところから幕を開けます。
炭を売りに街へ出ていた炭治郎は「今日は鬼が出るから泊まっていきなさい」と知り合いに声をかけられ、その晩は自宅に帰ることを取りやめました。
翌朝、戻ってみると家族は鬼に殺されていて、一人生き残っていた妹の禰豆子も鬼に変えられてしまっていました。
そんな妹を人間に戻すための手がかりを探しに、炭治郎は鬼の頭領「鬼舞辻無惨」を探す旅に出るのです。
鬼殺隊に入団した炭治郎は、那田蜘蛛山での戦闘を終えたあと、胡蝶しのぶの元で修行をします。そしてある日、胡蝶しのぶの部下「神崎あおい」を連れ去ろうとする「宇髄天元」と対峙するのです。
鬼滅の刃はなぜヒットしたのか?
『鬼滅の刃』のヒットの理由は、コロナ禍による巣篭もり需要、ある種「憂さ晴らし」とも言えるような「スカッとする話」だからなど、多くの要因があります。
その中で『鬼滅の刃』が、さまざまな世代にとってわかりやすい作品だったということは無視することができないでしょう。
『鬼滅の刃』は記号的な表現が多く、怒っている、悲しんでいるなどが見てすぐにわかります。
そして勧善懲悪ではなく、実は鬼にも悲しい過去がある。悪役を倒したはずなのに、涙を流さずにはいられない。
そんな「善悪とは何か?」という問いを読者に投げかけ、全ての諸悪の根元を鬼の頭領「鬼舞辻無惨」に集約する物語。
主人公のみならず、読者までを打倒「無惨」に巻き込むストーリー性が『鬼滅の刃』の魅力です。
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甘露寺蜜璃の「人たらし術」とは?組織マネジメントで必要なスキルを解説【鬼滅の刃】鬼滅の刃が日本社会に与えたもの
鬼滅の刃が日本社会に与えたものは「有限のものへの熱狂」でした。他のジャンプ作品、例えば『ONEPIECE』や『ドラゴンボール』などはステージをクリアするごとに主人公たちが強くなる漫画です。
それに対し、『鬼滅の刃』は「終焉」へと進む作品です。伏線を回収し、物語が短く完結するからこそ、読了後のカタルシス、その気持ちを周囲に伝えたいという思いは膨れ上がります。
タスクフォースのチームリーダー:宇髄天元
『鬼滅の刃』では「鬼殺隊」と呼ばれる鬼を殺すための隊が編成されています。
その中で最も強い剣士を集めたリーダー格が「柱」と呼ばれる存在です。「柱」に求められるのは、プレイヤーとしての能力と、マネジメント能力です。
そんな柱のうち、忍の家系に生まれたのにもかかわらず、「派手を司る祭りの神」を自称する宇髄天元に興味を惹かれたという方も多いのではないでしょうか。
ここからは、『鬼滅の刃』「遊郭編」で活躍した宇髄天元を深掘りしていきます。
宇髄天元とは?【ネタバレあり】
誕生日 | 10月31日 |
年齢 | 23歳 |
身長 | 198cm |
体重 | 95kg |
出身地 | 不明 |
声優 | 小西克幸 |
宇髄天元は柱の中でも高身長でイケメン。
『鬼滅の刃』6巻44話「隊律違反」で初登場しました。
その際の「ならば誰よりも派手な血飛沫を見せてやるぜ。もう派手派手だ」というセリフから、とりあえずチャラそう、という印象を受けた読者の方も多かったことでしょう。
しかし、遊郭編での活躍を見て、その印象が変わった、という人もいるはずです。命をかけて妻や一般の人を守り抜こうとする宇髄天元からは、「漢気のある頼りがいのあるお兄さん」の姿が見て取れます。
自分は傷つきながらも他人を守ろうとする姿、そして妻たちから深く信頼されている様子が、天元が誠実な人間だということを物語っています。
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鬼殺隊と聞くと、宇髄天元以外にも「胡蝶しのぶ」「煉󠄁獄杏寿郎」などの柱を想像する方がいらっしゃるでしょう。例えば、胡蝶しのぶであれば毒だけでなく薬も作れることから、後衛としての役割を果たしていたことがわかります。
一方、宇髄天元は緊急課題に取り組むタスクフォースのリーダーとしての役割を負っています。元忍者の家系のため、諜報を得意とする天元は、一般人の生活の中に巣食う「上弦の鬼」(敵の幹部)の位置を把握し、抹殺するのです。
そしてその正義感は煉󠄁獄杏寿郎に匹敵するほど。無限列車編にて煉󠄁獄杏寿郎は命を落としますが、宇髄天元と煉󠄁獄杏寿郎が重ねられて漫画の中で描かれているのは、その正義感故なのでしょう。
宇髄天元はかっこいい?イケメンと言われる理由
宇髄天元は鬼滅ファンからかっこいい、イケメンとの呼び声が高い柱のひとりです。そこまで鬼滅ファンを没頭させる魅力がどこにあるのかをここから解説します。
妻3人を守りぬく
宇髄天元には3人の妻がいます。決して女好きというわけではありません。
天元の家系は一夫多妻制が取られており、15歳を迎えた天元は、一族の長が選んだ3人の女性を妻として迎えました。それが須磨・まきを・雛鶴の3名のくのいちです。
3人は情報収集のため遊郭に潜入していましたが、上弦の鬼「惰姫」にその正体を見破られ、捕えられてしまいます。
天元は、彼女たちを救い出すことに成功しますが、その後彼女たちに以下のように伝えます。
雛鶴に対しては「お前はもう何もしなくていい、解毒薬が効いたら吉原を出ろ わかったな」と一言。そして雛鶴を抱き寄せます。
須磨・まきをに対しては「派手にやってたようだな。さすが俺の女房だ」と頭を撫でる。
これを聞いた3名は皆涙を流しています。天元がかっこいい、イケメンと呼ばれる理由は美男子であることよりも、こうした気遣いにあるのでしょう。
読者の方も、なんとも頼り甲斐のある男だと思ったのではないでしょうか。
価値観がぶれない
忍びの一族である宇髄天元は小さい頃から親による訓練を受けてきました。一族が衰退する中で、親の指導は厳しくなり、9名いた子供たちのうち残ったのは天元と2つ下の弟だけでした。
「教育」が終わった頃には、弟は既に父の生写し。部下は使い捨てのものであり、妻は子供を生むためなら死んでもいいと考えていました。それが当たり前だと教えられてきたからです。
しかし天元は違いました。人を簡単に殺していいわけはないと、強い信念を持ち戦い続けてきたのです。そして優先すべき命の順序を決めていました。
大切なのは妻3人、その次に一般の人、そして最後は「天元」自身でした。この価値観がぶれることなく、天元は上弦の鬼と戦い続けます。
自分のことを後回しにしてでも周りを守ろうとした姿に心を打たれた人も多かったのではないでしょうか。
煉獄杏寿郎と重なる正義がある
宇髄天元と煉獄杏寿郎には重なる部分があり、漫画の中でも2人を重ねるような描写があることが見て取れます(天元の後ろに煉獄さんが透けて映るシーンが漫画で描かれている)。
宇髄天元と煉獄杏寿郎に共通するのは、竈門炭治郎、炭治郎の同期の我妻善逸と嘴平伊之助の計3名、通称「かまぼこ隊」を「継子」と呼んだことです。
例えば、以下のセリフは煉獄杏寿郎と重ねられて描かれています。
「こいつらは三人とも優秀な俺の継子だ 逃げねぇ根性がある 手足がちぎられても食らいつくぜ そしてテメェらの倒し方はすでに俺が看破した 同時に首を切ることだ 二人同時にな そうだろ!!」
自分よりも他の人間を優先して守る強い意志と、主人公の炭治郎たち部下を信じ抜く姿勢、正義感が宇髄天元と煉獄杏寿郎を重ねさせたのでしょう。
宇髄天元に見る「組織マネジメント」とは?
遊郭編での戦いの最中、かまぼこ隊、妻3名を率いて指示を出す宇髄天元の姿は、組織における理想の上司そのものです。
結成して間もないチームで成果を出すことができたのは、宇髄天元の組織マネジメント力によるものです。
ここからは宇髄天元の組織マネジメントを見てみましょう。
【宇髄天元から学ぶ組織マネジメントに必要なもの①】リスクマネジメント
宇髄天元から学べる組織マネジメントのひとつ目はリスクマネジメントです。
宇髄天元がマネジメントをする上で大切にしていたのは命でした。いつどんな状況が訪れても部下が迅速に動けるように、天元は命を大切にするように説いています。
戦いの中ではどんなに強いものでも命を落とすリスクがあります。現に、遊郭編の前「無限列車編」で柱屈指の実力者である煉獄杏寿郎が上弦の鬼に敗れ、命を落としています。
こうした緊急事態になってから考えて動くのではなく、大切にすべきものを前もって指示しておくことで、部下は迷うことなく動くことができます。
緊急時のリスクを想定し、先に部下が考えなくても良いように決めておく姿勢は学ぶべきことがあります。
【宇髄天元から学ぶ組織マネジメントに必要なもの②】部下に任せる
宇髄天元は実は部下に仕事を任せるのがうまくありません。命の重さに順序をつけると、自身の命よりも部下である妻の命を優先してしまうため、強い相手と妻を戦わせることができないのです。
炭治郎たち部下も同様です。「遊郭」に上弦の鬼が存在するとわかった際には、天元は炭治郎たちに対し「お前らはもうここから出ろ 階級が低すぎる」と伝えています。
これは足手纏いになるという側面もあるでしょうが、それよりも上弦の鬼が相手では部下の命を守ることができないという天元の配慮でもあるのです。
しかし、物語では天元を守るため、炭治郎たちかまぼこ隊も天元の妻も鬼との戦いに加勢します。
そんな突如として現れた部下に、天元は任せられる仕事を適切に判断し、命令を下しています。
他の柱にもマネジメント能力が高いものはいますが、迅速に味方の能力を把握し、天元のように任せることはできなかったかもしれません。
【鬼滅の刃】悲鳴嶼行冥とは?鬼殺隊のリーダーから学ぶコーチング型リーダーシップ宇髄天元から学ぶ「タスクフォース」の正しいあり方
タスクフォースとは、緊急性の高い課題を解決するために短期的に召集されるチームのことです。
タスクフォースで重要なことは機動性と戦略性です。任務上大きな権限を付与されるタスクフォースを率いるためには機転のよさ、マネジメント能力が求められます。
天元はタスクフォースの中で、明確に部下たちに指示を与え、次の世代を担う若手の育成も同時に行っていました。
実際、タスクフォースにおいては、部下を育成することで、チーム力を強化するという目的が含まれることが多いのです。
- 課題の明確化
- スケジュール管理
- 業務サポート
- 問題の解決に必要な情報の収集
- 正しい人材の抜擢
初めは人材の選抜として、胡蝶しのぶの部下「神崎あおい」を連れて行こうとした天元ですが、炭治郎たちの提案を飲み、すぐにかまぼこ隊を連れていくことにしました。
そんな天元の姿をみると、実は元々かまぼこ隊を率いて遊郭に行こうとしていたのではないか、と妄想を膨らませてしまいます。
まとめ|宇髄天元は「鬼殺隊」におけるタスクフォースリーダーだった
宇髄天元は遊郭編の戦いで片腕と片目を失っています。こうした背景があり、天元は鬼殺隊から事実上引退しました。
しかし、その後も柱稽古に参加し、部下を育成する様子からは彼が良いリーダーだったことがわかります。
また、天元が毒に犯されて身動きが取れなかった際には、天元の妻のひとりである須磨が「天元様死なせたらあたしもう神様に手を合わせません 許さないですから」と言っていることからも十分な人望があったことが窺えます。
そして、何よりも緊急時に作成したチームメンバーの強みを活かして、チームを導くリーダー。こうしたリーダーは組織に一人は必要です。
鬼殺隊の「柱」は皆優秀ですが、その中に宇髄天元が選出されたのには、こうした人柄の良さ、そして卓越した情報収集スキルで、タスクフォースを導く力があったからなのでしょう。
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