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【キングダム】成蟜(せいきょう)に学ぶ軌道修正力

『週刊少年ヤングジャンプ』にて2006年より掲載されている『キングダム』は、原泰久さんが描いた漫画作品。世界中から人気を博す、『ヤングジャンプ』の代表作です。

『キングダム』には、数々の魅力あふれるキャラクターが登場しますが、王弟「成蟜」が登場した際、「嫌なやつだな」と思った方は少なくないでしょう。

『キングダム』において、成蟜は政に対して反乱を起こす左建外易な王弟として描かれているため、それも無理ありません。

しかし、『キングダム』の中でも、成蟜ほど「悪人」から「頼れるリーダー」になった人物は他にいません。

本記事では成蟜の人物像、リーダーシップやマネジメントの観点から見た成蟜の成長を解説します。

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キングダムとは?

※本記事はネタバレを含みます。

『キングダム』は「信」という少年が大将軍を目指す物語で、秦国によって統一されるまでの紀元前の中国を描いています。

信は、戦争孤児として親友「漂」と共に暮らしていました。

ある日、秦の文官、昌文君がふたりの前に現れ、漂に王宮へ来るよう誘いました。

大将軍になることを夢見る漂は、信に先立ち王宮へ向かうのです。

漂が昌文君と共に消えてから約1か月が過ぎたある日、信は街で何やら不穏な噂を耳にします。それは、王宮で反逆が起きたとの内容でした。

噂を耳にし眠れぬ夜を過ごす信。そこに現れたのは瀕死の漂でした。実は漂を昌平君が連れていった理由は、秦の国王である「政」と漂がよく似ていて、身代わりにするためだったことが判明します。

政の影武者として親友漂が使われたという事実に怒りを感じながらも、漂の夢でもあった天下の大将軍の夢を叶えるため、信は政と行動を共にすることになります。

キングダムはなぜ日本でヒットしたのか?

『キングダム』は、2021年12月には累計発行数が8,400万部を超えるほどの作品になり、2022年には、実写映画の2作品目の公開が決定しています。

起業、転職が比較的容易になった今、新しいことに挑戦しようとする人からの支持を集める名作となりました。

『キングダム』がこれほどの人気作品になれたのは、物語から学べる人間関係、戦術が現実世界でも役立つものだったからです。

変化が早いこの時代の中で、私たちはうまく立ち回るためのヒント、マインドセットを『キングダム』から学ぶことができます。

参考:『キングダム』を読むと出世に役立つ?|東洋経済

キングダムが日本社会に与えたもの

『キングダム』が日本社会に与えたのは、目標達成への熱い想いです。

『キングダム』は、紀元前770年〜紀元前221年まで続いた中国の「春秋戦国時代」と呼ばれる、各国が武や知を用いて力を誇示していた時代を描いた作品です。

したがって、登場人物の思想や生活様式が現代とは異なります。

しかし、『キングダム』に登場する人物たちの「目標に向かう姿勢」は現代にも通じるものがあります。

考え方や生活スタイルが違っても、自分の夢や目標に立ち向かう人たちの葛藤や希望は同じです。

「大将軍になる」という夢を追う信、「中華を統一する」という目標を掲げる政、ふたりのひたむきな努力に自分を重ねる方も少なくないでしょう。

登場人物が思い思いの目標を持ち、その目標を達成するために心の炎を燃やしていた作品だからこそ、私たちの心の中にも火を灯す作品となったのでしょう。

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【キングダム】人は間違えても立ち直れる | 成長を遂げた成蟜

人間は「正解」のみを選ぶことはできません。

時には間違え、その度に成長します。

キングダムでも、全てのキャラクターが正しい正義を貫けたかというとそうではありません。ただ、過ちを犯し失墜したものの、最後には部下から愛され散っていった人物がいます。それが成蟜です。

ここからは、そんな『キングダム』のキャラクター成蟜を詳しく深堀ります。

キングダムの成蟜とは?

出身 秦国
身分 王族
地位 王弟
公妃 瑠衣
声優 宮田幸季
実写 本郷奏多

成蟜は、『キングダム』の1巻から登場している人物で、秦国の王である「政」の異母兄弟です。成蟜は政が人質として幼少期を送ったのとは異なり、王宮で何不自由ない生活をしていました。

しかし、王位継承時に、自分ではなく「趙姫」の血を受け継いでいる政が王になることになったため、左丞相「竭氏(けつし)」を仲間に引き入れ、政を陥れることに。

反乱は途中まではうまくいきましたが、信や山の民の協力を得た政の活躍により、竭氏は死亡、残った成蟜も反逆罪に問われ、しばらくの間幽閉されてしまいます。

当初は冷酷かつ残忍な性格で、主人公「信」たちと対立する成蟜でしたが、物語が進むに連れて人間的な成長を見せます。

この後の成蟜の著しい成長は、一度失敗をした後でも立ち直れるという強い希望をビジネスパーソンに与えてくれます。

史実における成蟜との違いは?

『キングダム』に登場する成蟜は実在した人物であることが分かっていますが、作中とは少し違った人生を歩んでいます。

ここからは、史実における成蟜についても確認しましょう。

基本的なプロフィールは同じ

『キングダム』における成蟜のプロフィールは基本的に史実に基づいています。史記や戦国策を確認すると、成蟜が政の弟であることは確かなようです。

また、史実でも、成蟜が10歳のときに腹違いの兄である政が王位についています。

細かい人柄までは不明ですが、漫画のように「王」と「芸者」から生まれた「混血」の兄に対し、恨みを抱いていた可能性はあります。

キングダム序盤の反乱は起こしていない

成蟜に関する『キングダム』の物語と史実の違いとして『キングダム』の序盤の反乱が挙げられます。作中では、政に対して反逆を起こして王位の獲得を狙っていましたが、史実には記載がないようです。

実際の歴史の進行とは異なっていますが、序盤の反乱があったことで、物語に深みが増したことには変わりありません。

最初の成蟜の反乱は原泰久さんが狙って付け足したストーリーだと考えられます。

参考:史記国字解. 第1|国立国会図書館デジタルコレクション

謀反を起こした

史実では、紀元前239年に軍隊を率いて趙を攻撃した成蟜は、政に対して「成蟜の乱」と呼ばれる謀反を起こしますが、その過程については諸説あるようです。

屯留と呼ばれる場所を陥落させてから住民をまとめあげて拠点とし反乱を起こしたという説や、屯留と蒲鄗の兵士を率いて反乱を起こしたという説も残っています。

詳しい内容については後述しますが、史実では「成蟜の乱」を意図的に起こしたことになっています。しかし、『キングダム』の作中では呂不韋の策略に嵌められたことになっているため、成蟜は首謀者ではないということになっています。

参考:史記国字解. 第1|国立国会図書館デジタルコレクション

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【ネタバレあり】キングダムにおける成蟜の人生について

『キングダム』における成蟜の人生は以下の通りです。

  1. 政を敵視して反乱を起こす
  2. 幽閉される
  3. 幽閉から解かれる
  4. 屯留で呂不韋の陰謀に巻き込まれる
  5. 蒲鶮(ほかく)に切られて死亡する
  6. 仲間に見取られ瑠衣が意思を受け継ぐ

成蟜のリーダーとしての成長や魅力を知る前に、作中における流れを把握しておきましょう。

①政を敵視して反乱を起こす

『キングダム』の作中では、物語序盤で成蟜が政に対して反乱を起こします。

反乱を起こした主な理由は、純血ではない政よりも、自分の方が王としてふさわしいと考えていたからです。

自分こそが王にふさわしいと考えて政の暗殺を目論み、政の一派と全面的な争いをすることになります。

②幽閉される

政を敵視して成蟜は反乱を起こしましたが、政の側についた信、河了貂の活躍により、反乱は失敗に終わります。

共に反乱を起こした竭氏は山の民によって切られて死亡しますが、残った反逆者の成蟜と家臣たちは幽閉されることになりました。

家臣と共に幽閉された成蟜は、物語からしばらく姿を消すことになります。

③幽閉から解かれる

秦国が順調に領土を広げる中、国内では政と呂不韋との権力争いが顕著になっていました。

呂不韋は、相国(丞相よりも上)と呼ばれる位に昇りつめ、大きな発言権を得ていたのです。

呂不韋にこれ以上権力を握らせないためには、政に味方してくれる有力な権力者が必要でした。そこで、政は成蟜を幽閉から解放して、味方に付けようと考えたのです。

成蟜が政の側に付くことで、血統を重んじる他の権力者たちも政の味方になりました。

幽閉から解放された成蟜は今までの態度を改め、政を国王として認めつつ、秦国のために行動するようになります。政が秦国に不在のときは、政からの言いつけを守り、呂不韋から玉座を守るような行動を見せました。

成蟜は自分の使命に気づき、少しずつ仲間からの信頼も取り戻していきます。

④屯留で呂不韋の陰謀に巻き込まれる

成蟜の公妃である「瑠衣」が、故郷である屯留(とんりゅう)に里帰りをしていると、趙軍が屯留に進行してきたという連絡が入ります。

瑠衣は、成蟜が問題ばかり起こしていた時から成蟜を気にかけている妻であり、お互いに思い合っている間柄です。

成蟜は兵を従えて趙軍を鎮圧しますが、呂不韋の陰謀に嵌められ「秦国に謀反を起こそうとしている」という噂を流されてしまいます。

呂不韋は、成蟜を不届き者として処罰することで、政陣営の勢力を減らそうとしていたのです。

⑤蒲鶮(ほかく)に切られて死亡する

再び謀反を画策した罪により、成蟜は屯留で捕らえられます。

しかし、政たちからすると成蟜が今更謀反を起こすことは考えられませんでした。

政は成蟜を助けるために「壁」を将軍とする鎮圧軍を送り、信たちに成蟜救出の任務を授けます。

ところが、成蟜は瑠衣を逃すために自ら囮になったことで、呂不韋側の蒲鶮(ほかく)によってすでに切られてしまっていました。

⑥仲間に見取られる

信たちの救出も間に合わず、成蟜は傷が深かったため死亡してしまいます。

しかし、彼の周りには、公妃である瑠衣や心から慕ってくれていた家臣たちがいました。かつて竭氏によって担がれた家臣ではなく、成蟜に忠誠を誓った者たちです。

死を覚悟した成蟜は、瑠衣に対して最後の言葉を託します。

「俺は初めて会った時からお前に惚れている」

「自分の一派をまとめあげ、政の元に一本化しろ」

成蟜が最後にした行動や言動は、人を信じず自分勝手だった成蟜が仲間を想い、慕われるように成長した証だと言えるでしょう。

⑦瑠衣が意思を受け継ぐ

成蟜が亡くなった後、遺言通りに成蟜の一派は瑠衣が引き継いでいます。

成蟜は「自分がいなくなることで、勢力の半分はいなくなる」と予想していましたが、9割近くの家臣がそのまま留まりました。

その後も瑠衣率いる一派は、政の最大の味方として尽力し、呂不韋との権力争いでも大きな力を発揮します。

成蟜から学ぶマネジメントの失敗と成功例

これまで紹介してきた成蟜の人生では、失敗と成功が大きく描かれており、マネジメントにおいても参考になります。

  • 「支配」では人は動かない
  • 自分の役割を理解する
  • 間違えを認め軌道修正することも大切

それぞれの項目について詳しく確認してみましょう。

【成蟜から学ぶマネジメントの失敗と成功例①】「支配」では人は動かない

成蟜は物語の序盤で、権力を使って王座を獲得しようとしていましたが、信や政の活躍によって阻止されています。

成蟜の目論みが失敗に終わった理由としては、配下の忠誠心が低かったことが挙げられるでしょう。

実際、信達が成蟜を追い詰めた際、成蟜を庇おうとする人は誰ひとりいませんでした。

人を支配したつもりでいても、その人がピンチの時に味方になってくれる可能性は低いです。

【成蟜から学ぶマネジメントの失敗と成功例②】自分の役割を理解する

「玉座というものは 王族のものと決まっておろうが」

この発言は、政が秦国に不在なのをよいことに、呂不韋が玉座に座ろうとしたときに成蟜が投げかけたものです。

呂不韋を個人的に憎んでいたからではなく、政が出陣する前に以下のような言葉を託されたからこその発言だと考えられます。

「留守中 この国を頼むぞ成蟜 今託せるのはお前だけだ」

成蟜は、王族である自分の役割を理解して「国を守る」という、自分にできる役目を果たそうとしたのです。

会社でも、人の上に立つ人物は成蟜のように自分の役割を正しく認識する必要があります。

その認識が誤っていると、『キングダム』序盤の成蟜のように、組織を間違えた方向に引っ張ってしまう恐れがあるため注意しましょう。

【成蟜から学ぶマネジメントの失敗と成功例③】間違えを認め軌道修正することも大切

成蟜は、物語が進む中で自分の過ちを見直して成長しました。そして、最後はリーダーとして家臣達から慕われる形で人生の幕を閉じることになります。

成蟜が大勢の人々から慕われるようになった要因は、自身の間違いを認めて軌道修正したからです。

リーダーも同様です。新規事業に舵を切った際、後に引けぬ状況となることがあります。しかし、時には失敗を認め事業の撤退をするなど、プライドよりも組織の存続を重視する必要があります。

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成蟜から学ぶリーダーの条件とは?

『キングダム』の作中でも大きな成長を遂げた成蟜からは、リーダーのあるべき姿や注意点が見て取れます。

  • インセンティブによる経営はうまくいかない
  • リーダーは会社のビジョンに向き合う必要がある
  • プライドが邪魔をして軌道修正できないリーダーは失格

これらを具体的に確認していきましょう。

インセンティブによる経営はうまくいかない

インセンティブはモチベーションと同じく「動機付け」を意味しますが、その中でも外発的な動機付けに該当します。インセンティブが効果的に働くときはありますが、インセンティブだけでは会社をうまく回すことはできません。

会社の利益を上げるためには、外発的な動機だけでなく、社員が自ら成長したいと思うための内発的な動機付けも必要です。

リーダーは会社のビジョンに向き合う必要がある

リーダーの条件として、会社のビジョンに向き合うことの重要性も挙げられます。そもそも会社のビジョンや成し遂げたいことが明確でなければ、評価制度や指標も曖昧になります。

適切な制度や指標を作成し、社員のモチベーションを維持するためには、目指すべきビジョンを明確にする必要があります。

プライドが邪魔をして軌道修正できないリーダーは失格

リーダーの役割は「会社の利益を最大化させること」です。

「自分のプライドを優先すること」ではありません。

失敗をしてしまったときに、プライドが邪魔をして正しい方向へ舵を切れないリーダーには誰もついてきません。事業が間違った方向に進んでいるのであれば、それを認め、撤退することも必要です。

軌道修正もリーダーに求められる立派な決断だと理解しておきましょう。

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まとめ

成蟜は、最初こそ独裁者的な人柄で他人を支配していましたが、最後には政や家臣達から信頼され、多くの人に慕われる人物に成長を遂げました。

成蟜が信頼されるリーダーになれたのは、過去の失敗から学び、自分の役割を再認識したからです。

『キングダム』は、あくまでもフィクションではありますが、成蟜の行いや反省点は、ただの絵空事として片付けられません。

リーダーとして活躍するためには、失敗を認め改善するという姿勢が重要なのです。

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