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【2022年現在は?】「ムーアの法則」の限界はいつ?終焉の原因は?トランジスタ数が倍増し続ける秘密とデバイスの動向

ムーアの法則とは、「半導体のトランジスタ集積率は18ヶ月で2倍になる」という法則です。

intelの創業者の一人、ゴードン・ムーアが提唱したためこのように呼ばれています。

しかし、実際に半導体の集積率が18ヶ月で2倍になり続けるのでしょうか? また、未だにこの法則は生きているのでしょうか?

「ムーアの法則には限界がある」という見方もあれば、「ムーアの法則は成立し続ける」と見る向きもあります。どちらにも根拠があり、どちらの説にも根強い支持者がいます。

ムーアの法則はどのような影響をもたらしたのでしょうか?

本記事では、ムーアの法則に関する基本的な知識やその影響、ムーアの法則とは異なる見方などを解説していきます。

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ムーアの法則とは?

半導体最大手intelの共同創業者であるゴードン・ムーアが、1965年にアメリカの雑誌『Electronics』で発表した「半導体のトランジスタ集積率は18ヶ月で2倍になる」という法則がムーアの法則です。

「法則」とついていることから、ムーアの法則は科学的に立証された絶対的なものであるかのように勘違いする方がいるかもしれませんが、ムーアの法則は経験則の類であり、未来予測の一つに過ぎません。

ムーアの法則が発表された1965年当時は、「18ヶ月で2倍」という成長率は最低でも10年は続くだろうと予測されていました。そして、ゴードン・ムーアは1975年に、次の10年を予測して「2年ごとに2倍になる」と修正したのです。

この予測は1975年以降も当たり続け、これ以降「法則」として認知されるようになりました。

18ヶ月で2倍? 24ヶ月で2倍?

ムーアの法則について語られる際には、半導体の集積率が「18ヶ月で2倍になる」という場合と、「24ヶ月で2倍になる」という場合があります。

上記でも述べたように、ゴードン・ムーアは1975年に「2年で倍増する」と修正しており、「18ヶ月と言った記憶はない」と明かしています。

では、なぜ未だに「18ヶ月で倍増する」と言われているのでしょうか?

おそらく、intelのMPUの性能が18ヶ月で倍増してきたことにより、これと混同されたことが理由だと考えられています。

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ムーアの法則の技術的な意味

「半導体の集積率が2倍になる」とは、具体的にはどのようなことなのでしょうか?

仮に「18ヶ月(1.5年)で2倍になる」とした場合、下記のように増え続けることになります。

時間 倍率
1.5年後(18ヶ月) 2倍
2年後 2.52倍
5年後 10.08倍
10年後 101.6倍
20年後 10,321.3倍

そして、実際に2000年頃までは上記の表と似たペースで素子数が増え続け、この進歩とともにCPU(マイクロプロセッサ)の処理能力向上、半導体メモリの大容量化も加速度的に進みました。

このムーアの法則の技術的な意味は、18ヶ月経てば「同じサイズの半導体の性能がおよそ2倍になること」であり、「同じ性能の半導体の製造コストがおよそ半分に減る」ということでもあります。

半導体の性能が2倍になる

「半導体の集積率が上がること」はそのまま「処理能力の向上」を意味します。

したがって、半導体の性能は1年半~2年ごとに倍増するということになるのです。

パソコンの頭脳であるCPUを例に考えると、今は1秒間に1,000個の処理しかできなかったとしても、1年半か2年経つと、同じサイズのCPUで2,000個の処理ができるようになります。

半導体の製造コストが半額になる

同じ面積で処理能力が2倍になるということは、18ヶ月から25ヶ月後には同じ性能の半導体を2倍製造できることになります。

したがって、コストはそのままで2倍の半導体素子を製造できるようになるのです。これにより、必要な性能や機能が同じであればコストは半分になり、同性能のCPUは半額になります。

ムーアの法則は限界を迎えた? 終焉説は本当か

2010年代後半から半導体の開発ペースは落ち始めており、「ムーアの法則のペースが維持できなくなる」や「ムーアの法則は限界」といった説が広まり始めました。

米国半導体工業会(SIA)は2015年、「半導体国際ロードマップ」というレポートで「ムーアの法則は2021年で終焉を迎える」と予測していました。

GPUを中心に設計に特化している半導体メーカー「NVIDIA」の最高経営責任者であるジェン・スン・ファン氏は、2017年5月に大手半導体企業のCEOとして初めて「ムーアの法則は終わった」と発言しています。

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(参考:2015 International Technology Roadmap for Semiconductors丨SIA

「ムーアの法則」終焉説の根拠とは?

なぜ、ムーアの法則は限界を迎える、または終焉したと語られるようになったのでしょうか?

その根拠として代表的なのは、「物理的に不可能である」というものです。

もともと集積回路は肉眼でも確認できる大きさでしたが、2016年には10nm(ナノメートル)プロセスになり、素子1個の幅が1億分の1メートルという精密さで作られるようになりました。

このように驚異的な微細化が進んでいますが、最終的には原子の大きさという壁にぶつかります。

5nmあたりになってくると、原子1個(約0.1nm)を考慮してつくらなければなりません。

こうした物理的な限界によって、ムーアの法則は2021年頃に終焉を迎えると言われていました。

現在、ムーアの法則は限界を超え、成り立っている

では、NVIDIAのCEOや米国半導体工業会が発表したレポートのように、現在ではすでにムーアの法則は終焉を迎えているのでしょうか?

半導体受託生産世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は、2nmチップの製造工場を増やすために、2022年の設備投資額が最大440億ドル(およそ5兆円)に達すると発表しています。

つまり、2016年に10nmプロセスだった半導体が、6年で2nmプロセスにまで微細化が進んでいるのです。

確かに微細化のペースは落ちつつありますが、止まっているわけではありません。

したがって、ムーアの法則はまだ成り立っていると言えるでしょう。

ちなみに、ウイルスの大きさは約100nmであるため、いかに小さいかがわかるのではないでしょうか。

(参考:台湾TSMC、22年の設備投資5兆円 2ナノ品新工場建設丨日本経済新聞

ムーアの法則が終わらなかった理由

なぜ、「ムーアの法則は終焉を迎える」という予測は外れ、現在でも成り立っているのでしょうか?

確かに、TSMCが製造を進める2nmプロセスにもなると、およそ原子2個分となるため微細化は限界に近いでしょう。

しかし、2次元的な微細化ができないのであれば、縦に積み上げていく3次元構造にすることで集積度を上げられるようになったのです。

このような3次元構造デバイスが登場するまでは、ムーアの法則はチップあたりのトランジスタ数の増加または、増加させるための微細化の法則と認識されてきましたが、現在では、その認識も変化しつつあります。

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社会が変えたムーアの法則の影響とは? 

ムーアの法則は、半導体の進化を促進する黄金率となっています。IT業界がムーアの法則をもとに研究開発をし続けてきた結果とも言えるでしょう。

そして、このムーアの法則によって私たちの日常や社会にも、下記のような大きな変化がもたらされました。

  • 生活のあらゆる場面で半導体が用いられるようになった
  • スマートフォンの大幅な普及

それでは1つずつ解説していきます。

生活のあらゆる場面で半導体が用いられるようになった

アメリカの調査会社IC Insightsは、2021年のIC出荷数量は前年比21%増の3,912億個と大幅に増える見通しだとしていました。

そして、実際に2021年のIC出荷数量は予想をわずかに上回り前年比22%増となっています。また、2021年のIC市場は前年比26%増となっており、2022年はさらなる拡大が予想されているのです。

さらに、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って半導体不足が長引く中、2022年にはICの出荷数量は10%ほど伸びておよそ4,320億個だと見られています。OSDと合わせると半導体出荷数量は1兆3,000億個にもなるとされています。

このようにここ数十年間、右肩上がりでIC出荷数量は増え続けており、半導体はスマホはもちろん、テレビ、パソコン、ゲーム機、自動車、電車、飛行機など、私たちの身の回りのありとあらゆるものに搭載されるようになりました。

(参考:2021年のIC出荷量は前年比21%増、IC Insights予測丨TECH+
(参考:2022年の半導体市場は前年比11%増、IC Insights予測丨TECH+

スマートフォンの大幅な普及

総務省の「令和2年版 情報通信白書」によると、2019年における世帯の情報通信機器の保有状況は、「モバイル端末全体」(96.1%)のうち、スマートフォンは83.4%となり初めて8割を超えました。

2010年ではスマートフォンの保有率は9.7%であり、10%にも満たなかったのにも関わらず、およそ10年で83.4%にまで増えているのです。

また、2019年における個人のモバイル端末の保有状況を見ると、スマートフォンの保有者の割合は67.6%となっています。

(参考:総務省|令和2年版 情報通信白書|情報通信機器の保有状況

複数のデバイスの動向について

ムーアの法則によってさまざまなデバイスの微細化が進んでいます。

ここでは下記のデバイスについて、近年の動向を紹介していきます。

  • DRAM
  • NAND
  • MPU
  • APU
  • GPU

DRAM

DRAM(Dynamic Random Access Memory)とは、半導体メモリの一つであり、読み出しや書き出しが自由に行えるRAMのことです。

DRAMのトランジスタ数は2000年代初めまでは毎年およそ45%ずつ増えていましたが、2016年に登場した16Gビット世代の頃には、その成長率はおよそ20%に下がりました。

NAND

NANDフラッシュメモリは、回路規模が小さく安価での大容量化ができます。

年間成長率は2012年頃までは60%ほどでしたが、その後は30%ほどに半減しています。

2020年時点の2D NANDの最大容量は128Gビットでしたが、3D NANDの最大容量は1.33Tビットです。

96層のQLC(クワッドレベルセル)と多層化技術によって3D NANDの最大容量は1.5Tビットとなり、128層技術を用いることで2Tビットも可能になります。

MPU

マイクロプロセッサはMPU(Micro-Processing Unit)とも呼ばれ、コンピュータの演算や制御などを1枚の半導体チップに集積したものです。コンピュータの心臓であり頭脳でもあるCPUに用いられることが多いです。

このMPUのトランジスタ積載数は、2010年までは1年でおよそ40%ほど増え続けてきましたが、その後は半減しています。また、intelは2017年にトランジスタ積載数を公開しなくなりました。

APU

アプリケーションプロセッサ(APU/Accelerated Processing Unit)は、世界的な半導体メーカーであるAMDが開発したデバイスです。

CPUとGPUを1つのデバイスに収めている点が特徴であり、iPhoneなどに使用されています。

iPhoneに使用されているAPUのトランジスタ数は、2013年以降は年間43%ずつ増えています。

GPU

GPU(Graphics Processing Unit)は、主に計算量が多い画像処理関連の演算を行うデバイスです。

GPUの設計に特化して世界的な半導体メーカーになったNVIDIAのGPUは、他社のGPUよりも多くのトランジスタを搭載しています。

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まとめ

ここまで、ムーアの法則に関する基本的な知識から、終焉説と現在まで成り立っている理由をみてきました。

半導体の性能は上がり続ける一方で、コストは下がり続けてきました。そして、その傾向は今後もしばらくは続くでしょう。

これによって私たちの身の回りのデバイスや道具も様変わりし、社会が大きく変化しました。

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