突然ですが、下記のような課題を抱えてはいませんか?
- 「変化が激しく先行きが見えない時代で、会社の未来を託せるリーダーが必要」
- 「経営幹部候補に必要な能力を培える経験を積ませたい」
- 「経営幹部に意思決定をする的確な判断力や確固たる軸を持たせたい」
近年は変化が激しく、さまざまな要因が複雑に絡み合って先を見通すことができない「VUCAの時代」と呼ばれています。このような目まぐるしく変化するビジネス環境において、企業はその変化に適切かつ迅速に対応していかなければなりません。
しかし、すべての意思決定を1人の経営者だけで担っていては、環境の変化についていくことができず、取り残されてしまいます。このため、現在は経営者視点で事業活動や経営について考えられる経営幹部・管理職の育成が喫緊の課題となっています。
つまり、経営者の能力に依存する経営から抜け出すべく、経営幹部にはこれから会社の未来を担う中核として責任感を持たせ、経営者目線で考えられるようになってもらう必要があるのです。
そこで本記事では、経営幹部を育成するために求められる観点や課題、経営幹部に求められるスキルなどを解説していきます。
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経営幹部の育成が求められる理由とは
そもそも経営幹部とは「将来的に企業経営者や上位管理職など、企業にとって重要なポジションに就き、大きな功績を残すことを期待されている人材」を指しています。とはいえ正確な定義はなく、企業によってさまざまな人材が含まれます。
このような経営幹部の育成が、企業の生き残りのために重要な課題であると近年注目が集まっています。ここでは、なぜ経営幹部の育成が求められるようになったのかを見ていきましょう。
- 経営者の立場で仕事ができる人材が必要
- 深刻な後継者不足
- 「実行」の重要性
それでは1つずつ解説していきます。
経営者の立場で仕事ができる人材が必要
経営幹部の育成が重要な理由の1つとして、経営者の立場で仕事ができる人材の必要性が急速に高まっていることが挙げられます。
冒頭で解説したように現代はビジネス環境の変化が激しく、経営者1人ですべての意思決定や判断を行っていては、環境の変化についていくことが困難になりました。
このような環境において、変化に対して迅速に適応していくには経営者視点で考えられる経営幹部が重要な役割を担います。
経営者が判断に悩んだ際に、自身の経験や専門性の高い知識をもとに経営判断を下したり、適切な意見を伝えられる経営幹部がいれば企業はより強くなり、より成長できるでしょう。
深刻な後継者不足
東京商工リサーチの調査によると、2021年1月から10月に後継者難(後継者がいないこと)によって倒産した企業は累計309件にのぼっています。このままいくと、年間で過去最多だった2020年の372件を上回る可能性が指摘されています。
5,016件ある倒産全体に占める「後継者難」の構成比は6.1%で、前年同期の4.5%を上回っています。産業別で見てみるとサービス業が最も多く68件で、「後継者難」倒産のおよそ20%を占めました。
このように、後継者がいないことが原因で倒産してしまう企業が増えており、後継者となれる経営幹部の育成が急務となっているのです。
(参考:後継者難倒産が累計309件、年間最多を更新する可能性も【2021年1-10月】丨東京商工リサーチ)
「実行」の重要性
グローバル企業の経営アドバイザーとして有名なラム・チャラン氏の自著『徹底のリーダーシップ』の日本語訳の解説をしている、ファーストリテイリングの柳井正氏は「良い企業も悪い企業もやっていることは一緒です」と語っています。
そして両者の違いについて「どの程度までやるのか、どの水準を目指すのか、それだけです」と解説しており、実行の重要性を語っているのです。そして経営において実行を担うのは誰でしょうか?
それこそ経営幹部でありリーダーです。だからこそ、経営幹部やリーダーの育成が失敗すると、企業の意思決定が実行されなくなるため、企業の成長が止まり生き残りが難しくなってしまうのです。
経営幹部を育成する際に直面する課題とは?
経営幹部を育成する際に、多くの企業は下記のような課題に直面します。
- 経営幹部向けの研修をしたが実行できていない
- 経営幹部がプレイヤーとして活動している
- 経営幹部育成の研修をしても効果が出ない
- 経営幹部が現場のマネジメントに集中しすぎる
それでは1つずつ解説していきます。
経営幹部向けの研修をしたが実行できていない
経営幹部や管理職に登用をする際に、ほとんどの企業は「コンプライアンス遵守」や「目標設定・評価」についての研修を行います。
しかし、このような一般的な研修では経営幹部に求められる能力や知識を教えるだけであり、本来求められる役割を果たせていない場合が多く見られます。
これは経営幹部が果たすべき役割を教えられていないことが原因です。
研修では必要な知識や能力を教えることも重要ですが、登用された役割に求められる業務範囲の理解や、経営幹部としてどのように仕事をするべきかといった意識や姿勢をつくりあげることが重要になります。
経営幹部がプレイヤーとして活動している
多くの企業において経営幹部や管理職に登用する際は、現場で大きな功績や結果を出した優秀な人材に声がかかります。したがって登用された経営幹部には、それまでに自身が結果を出したやり方やうまくいった方法に基づいた「クセ」のようなものが染み付いています。
そして、ほとんどの経営幹部や管理職はその「クセ」をもとにメンバーを育成してしまうのです。
これにより、自身と同じタイプのメンバーや似ている人は育成がしやすく成長しますが、それ以外のメンバーについては育成がうまくいかず成長につなげられないといった状況に陥ります。
そうなると、本来ならメンバーに任せるべきであった仕事を任せられないため、経営幹部がプレイヤーとして仕事をせざるを得なくなってしまうのです。
経営幹部育成の研修をしても効果が出ない
経営幹部や管理職を育成するための研修を行う企業は多いですが、そのほとんどは研修によって短期的に意識が高まる効果があるだけで、長期的には行動が変わらなかったり、変化しても長続きしないという結果に終わってしまいます。
研修を行っても成果につながらなければ意味がありません。研修によって得た知識や学びが現場で活かされるようにするには、継続的にPDCAサイクルを回し続けなければならないでしょう。
経営幹部が現場のマネジメントに集中しすぎる
経営幹部や管理職による現場のマネジメントは成功してはいるが、経営者の考えていることやビジョン、意志や戦略が現場に落とし込まれていないというケースも少なくありません。
これは、経営幹部や管理職が現場のマネジメントに集中しすぎることで、経営側の意志やビジョンを現場に伝えられていないことが原因です。
経営幹部や管理職は所属している部署のメンバーをマネジメントすることだけが仕事ではなく、経営と現場をつなげるという大きな役割も持っています。
したがって、経営者の意志やビジョンを現場に落とし込む存在として、現場と経営のどちらの立場でも考えられる経営幹部を育成しなければなりません。
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「VUCAの時代」において今後、企業経営の難易度は上がっていくなか、「経営力の強化」は欠かせません。そのためにも経営を任せられるような経営幹部を育成する必要があり、特に下記の3つのスキルが求められます。
- ビジョンを掲げるスキル
- 「問い」を立てるスキル
- 総合的な人間力
それでは1つずつ解説していきます。
ビジョンを掲げるスキル
現代の企業や組織は、複雑で見えにくく、まとまりにくくなっていると言えます。
最新のITテクノロジーを活用したサービスなど、カタチのない商材も増えている昨今、いかに素晴らしい商品やサービスだとしても、機能性だけに特化したものであれば、投資家や消費者から望ましい反応は得られないでしょう。
そして、組織もまた複雑化しており役割が細分化され、一つひとつの業務に注目してしまうとビジネスの全体像をつかめません。
また、日本はモノづくりで成長した国であるため、その時代と現代とを比べると仕事に手応えを感じることが難しくなってきており、働いていても虚しいと感じる労働者も増えています。
このように、グローバル化や多様性の拡大も含めたビジネスモデルの複雑化が進んでいるなかでは、事業活動を通して何を目指すのか、明確な軸となるビジョンが重要です。
ビジョンにより組織をまとめる
このような環境の変化に適切に対応して、組織をまとめるために求められるのがビジョンです。
自社がどのような企業であるべきなのか、事業活動によって社会をどう変えていきたいのかといった企業が目指すべき姿を掲げて、従業員や投資家、顧客などステークホルダーに伝えていかなければなりません。
ビジョンによるつながりが強い組織をつくるには、ビジョンを立てるだけでなく、経営側から常にそれらを発信する必要があります。
「問い」を立てるスキル
近年、先進国を中心に経済が低迷しており、商品やサービスが簡単に売れない時代となっています。他者のマネをしても価格競争になり、ひねりのないアイデアで勝負してもすぐにコモディティ化したりライフタイムバリューが短いものになるだけです。
このように、企業が今後も生き残っていくためには、顧客に対してこれまでとは異なる新たな価値を創り出して提供しなければなりません。
このような状況で求められるのが、「問い」を立てるスキルです。常識を疑ってみたり、社会が求めているものに疑問を抱くことで、新たな価値や答えを見出す必要があります。
総合的な人間力
企業活動や企業としての態度には、経営陣の考え方や気質が映し出されます。例えば、経営陣が前例主義的な場合は新たな挑戦を避ける企業になり、経営陣が信用されていなければ従業員は企業の決定に懐疑的になるでしょう。
また、経営陣が倫理観にかけている場合は、いつか従業員による不正が生じるかもしれません。
このように、経営陣の態度や考え方は企業にそのまま映し出されるため、経営幹部や経営者には経営に関する専門的な知識やスキルだけでなく、総合的な人間力が必要不可欠なのです。
具体的には、高い倫理観や誠実性、信念、社会性やコミュニケーション能力などが挙げられ、これらを育成するには一般教養やリベラルアーツを学ぶことが効果的です。
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経営幹部を育成する際は、下記の3つの観点が重要になります。
- 育成の方向性
- 育成の方法
- 育成の内容
それでは1つずつ解説していきます。
育成の方向性
まず、どのような経営者に育成するのかという方向性を決めなければ、育成計画をつくれません。育成計画とは「誰に、どのような方法で育成をしていくのか」ということです。
どのような経営者にしたいのか、つまり「将来的な経営者像」を決める際は、人事部門のみならず経営者や役員が積極的に関わっていかなければなりません。
具体的には、5年後や10年後には自社を取り巻く環境がどのように変わっているのかなどを見極めて、経営者像を決めることが重要です。
育成の方法
経営幹部を育成する方法といえば、実際に仕事をして、その経験によって成長を促すことが挙げられます。となると重要なのは、「経営幹部や幹部候補にどのような仕事をしてもらうのか」ということです。
今の業務の延長線にある仕事を与える方法もありますが、一方で部署異動させることでさまざまな仕事を経験させるほうが成長する場合もあるでしょう。
人は、自身が直面したことがない状況や環境で達成しなければならないことがある場合、より多くのことを学び、成長します。
とはいえ、経営幹部や幹部候補生となると既に組織において重要な働きをしていることがほとんであるため、育成が目的とはいえ、そう簡単に異動させることができない場合もあるでしょう。
したがって、この時もまた人事部門のみならず、経営者や役員も関わる必要があります。
育成の内容
そして、3つ目は「何を学んでもらうのか」という育成の内容です。
実際に仕事をすることで得られるものはコミュニケーション能力や問題解決力、業務に関連するノウハウや知識、経営観などいくつも挙げられます。しかし、マーケティングや財務会計などの経営知識を学ぶには、Off-JTによる育成が求められるでしょう。
他にも、自社が経営を行ううえで重要とする価値観である「コア・バリュー」や、経営哲学などの「フィロソフィー」といった、自社にとって重要な価値観を共有するためにもOff-JTは効果的です。
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ここまで、経営幹部の育成の重要性やその方法に関して解説しました。
目まぐるしく変化する現代社会において、企業が成長し続け、そして存続するためには、経営者の能力に依存した経営スタイルから脱却すること、そして後継者となる人材を確保・育成することが欠かせません。
経営幹部となる人材はこれまでの業務において優秀な従業員であることから、なかなか育成に時間が取れないといった場合も多いでしょう。
さらにやり方によっては育成の成果が出ないといったこともあるため、適切な人材を選ぶこと、そして適切な育成方法を取ることで、大切な時間や労働力を無駄遣いすることなく、経営幹部の育成につなげていきましょう。
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