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従業員がやる気を出す簡単で単純な法則について

「どうすればウチの従業員たちは、もっと仕事に打ち込んでくれるんだろう」
という悩みは、多くのベンチャーや中小企業経営者にとって、共通の悩みではないだろうか。
多くの場合、組織では上に行くほど仕事に対するロイヤリティーが高く、下に行くほど仕事や組織に対する熱意は低い。
中小ベンチャーであればその傾向は特に顕著で、多くの場合経営トップの熱量に、従業員だけでなく役員までもついて行けていない。

そんなわかりやすい事例を、先日たまたまテレビのドキュメンタリーで見かけることがあった。

 

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目標未達の原因

ある先進的な家電製品を造るベンチャー企業で、新製品発表会をデパートの特設会場を借り切って行うことがあったそうだ。
ものは調理家電で、普通の家庭であれば毎日使う馴染み深いもの。
そしてこの時の展示即売目標は50台。
それに対して実績は、わずか10台という惨敗に終わった。

直ちに会社に戻ると、すぐに反省の営業会議が始まる。
そして、営業担当者は目標未達に終わった原因分析について、
「お客様からの質問に答えることができなかった」
「少し難しい使い方を聞かれると、即答できずに商機を失った」
という意味のことを次々に答える。
それら意見を営業部長が引き取り、
「もっと製品について勉強をしなかったことが、目標未達の原因だった」
とまとめ上げた。

そして議題が一巡すると、黙って聞いていた社長は静かにひとこと、皆にこう質問した。
「この中で、これを一度でも家で使ったことがあるものは?」
誰も手を挙げない。
毎日使うような家電製品であり、その先進的な製品を売ろうとしているのに、誰もそれを生活の中で使っていなかったというのだ。
さすがにこれでは、売れるものも売れるはずがない。結果はなるべくしてなったものと言ってよいだろう。

ただ従業員の立場になってみれば、その気持はよく分かる。
家に帰ってまで仕事のことを考えたくない。
家でリサーチしてもいいですけど、残業代は出るんですか?
私生活まで侵食するのはブラック企業だ!

まあそんなところではないだろうか。
しかしその一方で、経営トップであれば、
「なぜその程度のことすらやろうという気にならないのか」
と、疑問に思うのもよく分かる。
このようにして、会社は経営者とその他大勢の間に、埋めがたい溝が生まれる。

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小さな会社のブランディング

 

話は急に変わるようだが、中小ベンチャー企業を経営している人で、あるいはそういった会社に勤めている人で、自社のコーポレートカラーが指定されているという人はいるだろうか。
もしくは自社には社訓や行動規範が定められていて、それらを説明できる人はどれだけいるだろう
おそらく、かなりの少数派のはずだ。

そしてそういう会社で、経営者に
「なぜブランディングに取り組まないのですか?」
と聞いても、返ってくる答えは、
「うちみたいな小さな組織には必要ない」
「そんな事をしても、人の行動は変わらない」
「組織が大きくなれば考える」
というものであることが多い。
しかしこれは、本当に正しい考えだろうか。

本来ブランディングとは、文字通りブランド化されていないものに価値を付与して、ブランド化する作業を指す。
大企業として既に成長しているような会社であれば、世間や顧客が勝手に商品やサービスに一定のイメージを作り上げ、すなわちブランド化していることがほとんだ。
であれば、ブランディングとはむしろ、知名度が低く、商品やサービスが世間に知られていない中小企業こそが、積極的に取り組むべきものではないだろうか。
にも関わらず、中小ベンチャー企業でこのような作業に熱心に取り組む経営者というのは余り多くない。

「利益に直結しないから」
というネガティブな理由を上げる経営者も多いが、これもおそらく正しくはない。
歴史を紐解いても明らかだが、史実に名を残すような組織や会社には、特定のイメージ、すなわちブランドが成立していた。
例えば戦国随一の武勇を謳われた、甲斐武田家の「赤備え」。
甲冑や旗指し物に至るまで真っ赤に染め上げた集団は戦場ではひときわ目立ち、それゆえにその働きが悪いと味方は一気に浮足立ち、敵は一気に勢いを増してしまう。
もちろん精強であれば味方は勢いを増し、敵はその強さに恐れをなすだろう。
その精強さの伝説は現代にも語り継がれ、昭和で人気を博したロボットアニメでは、強さの象徴として真っ赤に染め上げたロボットが大暴れする敵キャラとしてシンボルになったほどだ。

これほどわかりやすい精鋭部隊の一員に選ばれたら、末端の兵士でも一気にモチベーションが上がるのは容易に想像がつくところだ。
自分が何者であり、そして何を期待されているのかが誰の目にも明らかだからだ。
そしてその一員であることが、とても誇らしい。
やる気を出さない理由が見当たらない。

昭和の時代の松下電器に思いを馳せても、松下イズムのブランドはいくらでも挙げることができるだろう。
どんな不況でも、絶対にリストラをしない哲学を貫いた経営者。
販売店を大事にし、利益も損失も分かち合った経営者。
人によって心に残る言葉はいろいろだと思うが、おそらくその多くが、ポジティブな言葉、すなわちブランディングされたイメージで記憶されているのではないだろうか。

このような、精強である上にブランディングに成功している組織を相手に同じマーケットで戦おうと言うのであれば、せめてブランディングくらいできていなければ、どうしようもない気がしないだろうか。
自社とは何者であり、どのような付加価値を提供する存在であるのか。
それを定義することこそがブランディングであるわけだが、取り組むために必要になる元手など、たかが知れている。
中小ベンチャー企業こそが、むしろ積極的にブランディングに取り組まない理由がないのではないだろうか。

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従業員がやる気を出す簡単で単純な法則について

 

冒頭の話に戻りたい。
新製品の発表会を兼ねた展示即売会という大事な場であるにも関わらず、十分な商品知識を持たないまま現場に立った営業担当者を、その会社の社長はほとんど叱ることがなかった。
もちろんテレビカメラの手前ということもあると思うが、きっとこの社長には、自分の経営に足りないものがよくわかっていたのではないだろうか。

「一台でも多く、家電製品を売ること」
おそらくこの時の従業員に自分たちの存在意義を聞いてみると、このように回答したはずだ。
そのように、自分たちが組織に存在する理由を低く見積もらしてしまったのであれば、実際に自分で使って見ようなどと、考える理由はないだろう。
会社がブランディングを怠るとこのように、自己評価の低い従業員を量産してしまい、結果として会社は利益を失うことに直結する。

全ての会社は、健全に会社を経営しようと思えばそこで働く役職員全員に、
「自社とは何者であり、どのような付加価値を顧客や世間に対して提供している会社なのか」
「自分は何をするための存在であり、受け取る給料の対価は何であるのか」
を正しく理解させてあげなければならない。
近年、社員が自律的に働くことを理想にするティール組織やホラクラシーという考え方がどんどん注目を浴びているが、なんのことはない。

わかりやすく言えば、「自律した個人で構成された、有機的に機能する組織」というだけのことだ。
そのような組織を造るため必要なものは、結局のところ、ただこれだけのことであると言っても、おそらく言い過ぎということはないだろう。
そしてそのために必要なことは会社のブランディングであり、従業員一人ひとりに、自分自身をわかりやすく捉えさせて上げることではないだろうか。
「従業員がやる気を出す簡単で単純な法則」とは、その程度のものかも知れない。

部下のやる気・モチベーションについて、お悩みではありませんか。
しかし、部下のモチベーションで上司が悩む必要はありません。

 

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