モラハラという言葉について、このようなことを感じてはいませんか?
- 「モラハラって何? どんなことが当てはまるの?」
- 「パワハラとモラハラの違いとは?」
- 「もしかして自分はモラハラをされている?」
モラハラは倫理に反する嫌がらせであり、精神的にダメージを与えることを指しています。
本記事では、モラハラについて基本的な知識から、モラハラに該当する行為の具体的な例、そして被害に遭った際の対処法を解説していきます。
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モラハラ(モラルハラスメント)とは?意味や定義を解説
モラハラ(モラルハラスメント)とは、「道徳」や「倫理」を意味するモラルと、「嫌がらせ」を意味するハラスメントという2つの言葉がつながってできた言葉です。したがって、「倫理や道徳に反している、精神的な嫌がらせ」という意味となります。
殴ったり叩いたりするような肉体的な嫌がらせではなく、言葉や態度を使って精神的に攻撃し、被害者のメンタルに少しずつダメージを与えるという点が特徴です。
詳しくは後述しますが、一般的には下記のような行為がモラハラとされています。
- 悪口や嫌味を言う、怒鳴る
- 立場を利用して圧力をかける
- コミュニケーションをとらない
- 睨んだり冷たい態度で接する
- 人前でバカにする
わかりやすく言えば「大人が大人をいじめる行為」と言えるかもしれません。モラハラは職場や夫婦間で生じることが多く、上司が気に入らない部下に対して嫌がらせをしたり、夫が妻に対してモラハラを行うことなどがあります。
ただ、一般的に、特に夫婦間でイメージされているのは「男性から女性へのモラハラ」ですが、モラハラには男女の区別はされていないため、どの性別間であったとしてもモラハラとして成り立ちます。
モラハラの発祥
モラハラという言葉をつくったのは、フランスの精神科医であり心理療法家、そして医学博士でもあるマリー=フランス・イルゴイエンヌという女性です。彼女が1998年に「モラルハラスメント」という書籍を執筆したことで、モラハラが広く認知されるようになりました。
フランスはモラハラやハラスメントに対して世界でも先進的な取り組みをしており、フランスでは労働法のL.1152-1条により、企業はモラハラに対して何らかの予防をしなければならないと定められています。
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パワハラとは?
パワハラは職場において地位や権力、人間関係が優位な立場にある人物が、自分よりも立場が弱い人物に対して肉体的・精神的に攻撃することです。
パワハラの特徴は、職場における地位や人間関係が使われている点です。一般的なパワハラは立場が強い上司が、立場の弱い部下に対して行います。
モラハラは法律で明確に定義されているわけではありませんが、パワハラは「労働施策総合推進法・パワハラ防止法」で明確に定義されており、厚生労働省によれば下記の要件を満たした場合はパワハラと認定されます。
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
そして、具体的に下記のような行為がパワハラに該当します。
- 叩いたり押したりする身体的な暴力
- 馬鹿にするような事を言ったり辱める精神的な攻撃
- 仲間はずれにしたり、無視をするなどの人間関係の切り離し
- 明らかに不可能な業務を押し付けること
- 全く仕事をさせなかったり簡単な仕事ばかり押し付けること
- プライベートに必要以上に加入すること
モラハラとパワハラの違い
上記で見てきたように、パワハラは法律で定められた明確な定義があり、職場で生じるものという前提がありますが、モラハラは定義もなく職場でも家庭でも起こり得るという違いがあります。
パワハラは職場において立場の違いを利用して行われますが、モラハラは職場や家庭、友人との関係においても成り立ちます。また、パワハラは精神的な暴力も身体的な暴力も含まれますが、モラハラは言葉などによる精神的な攻撃が該当します。
しかし、このような細かい違いは存在しますが、場合によってはモラハラとパワハラを同義として扱っているケースもあるため、注意しなければなりません。モラハラ対策が進んでいるフランスではモラハラと呼ばれ、日本では同じことがパワハラと呼ばれることもあります。
また、新型コロナウイルスによりリモートワークが普及した昨今では、「テレハラ(テレワークハラスメント」というハラスメントも増えているようです。テレワークやウェブ会議中に、パソコンの画面に写っている相手の住環境や部屋について言及したり、プライベートに踏み込んだりする行為がテレハラと呼ばれています。
モラハラの加害者になりやすい人の特徴
モラハラをしてしまいやすい人、つまり加害者になりやすい人の特徴が下記の4つです。
- プライドが高く自己中心的
- 過保護や放任して育てられた
- 仕事でストレスを感じている
- 劣等感を感じている
それでは1つずつ解説していきます。
プライドが高く自己中心的
プライドが高く自己中心的な人物は、自分が偉いと考えており、自分は間違えるはずがないと思い込んでいます。
これにより、何かミスをした際にそのミスを誰かに指摘された場合、恥ずかしさから烈火のごとく怒り、その感情を相手にぶつけます。この結果、モラハラとなるのです。
過保護や放任して育てられた
子どもの頃に親から甘やかされたり過剰な愛情を注がれて育った場合、自分の言うことや行動を否定されることなく大人になるため、「自分の言動は認められて当たり前だ」という態度になります。
また、子どもの頃に親が子育てを放任し、愛情を受け取らずに育った場合は愛情に飢えた大人になるため、周囲の人間に対して適切に接することができなくなるのです。
この結果、どちらにしてもモラハラと受け取られやすい言動が増えてしまいます。
仕事でストレスを感じている
仕事において重要なポジションにいる場合や、自営業やフリーランスで不安定な生活をしてストレスを感じ続けていると、周囲の人間を使ってそのストレスを発散してしまうことがあります。
劣等感を感じている
自分になにかコンプレックスや劣等感を感じている場合は、周囲の人間に出産や結婚、昇進など喜ばしいことが起こると、強い嫉妬を感じてその相手に対して批判的なものの見方をしてしまいます。
他者に起きたおめでたい出来事や、祝うべき出来事を素直に喜べない場合は、自分に劣等感を感じていることが多いです。
劣等感を感じているからといってモラハラをするというわけではありませんが、そのような人物は他者に対してキツイものの言い方をする傾向があります。
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職場での「注意」を受け入れてもらうためには、「順番」が重要であるモラハラの被害者になりやすい人の特徴
モラハラの加害者になりやすい人の特徴をみてきましたが、一方で被害者になりやすい人の特徴としては下記のようなものが挙げられます。
- 人の顔色や空気を大事にする
- 空気が悪くなったら自分から謝ることが多い
- 発言をすると否定的なことを言われるため、発言を控えるようになった
- 相手の機嫌をとるために相手の希望通りに動いてしまう
- 自分の希望はなく相手がどうしたいか(怒らないか)で動いている
このように、被害者になりやすい人は受け身な性格で、相手に対して言いたいことを言えないような人に多く見られます。
モラハラを受け続けると生じる症状
モラハラは身体的な暴力が伴わないため、肉体的なダメージを負うことはありません。しかし、それが返ってモラハラを我慢し続ける原因にもなってしまいます。
モラハラを受け続けると精神的なダメージしか負わないため、気づきにくいという特徴があります。したがって、モラハラによる兆候をいち早く察知できるようにしておくことが大切です。
まず、モラハラをされ始めてから初めにでる症状は、眠れなくなったり食欲がなくなることや、イライラ、無力感、倦怠感などが挙げられ、これらはストレスにより生じます。
それから症状が進むと抑うつ状態になります。「自分が悪いんだ」や「こんなこともできない自分は価値がない」など考えるようになり、自分を責めるようになります。そしてやる気が全くなくなり、楽しさや興味関心を失ってしまうのです。
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モラハラは職場に限らず、家庭や学校などでも起こるものです。ここではまず、職場ではどのような行為がモラハラに該当するのかを見ていきましょう。
職場のモラハラについてマリー=フランス・イルゴイエンヌは、下記の2種類に大別しています。
陰湿な行為を何度も行う
陰湿な行為を何度も行うことの具体的な例は、下記のようなものが挙げられます。
- 相手の人格や性格、見た目について嫌味や暴言を言う
- あえて聞こえるようにして陰口を言う
- 何度も無視や舌打ちをしたり、睨む
- ありもしない噂を広めて風評被害を出す
- 業務に必要な指示をしない
このようなことを行う可能性があるのは、上司や先輩に限らず職場の全員となります。
立場の優位性を使った行為
立場の優位性を使った行為では、パワハラのように成績が伸び悩む部下に対して上司が嫌味を言ったり、無視をすること、他の従業員の前でバカにしたりすることが挙げられます。
また、誰にでもできる雑用のような仕事ばかりを押し付けたりすることもモラハラです。
他には、
- 業務時間外に仕事を依頼する
- あえて人がいるところで怒鳴る
- 飲み会への強制参加
なども該当します。これらを行いやすいのは上司や先輩となります。
もちろん、適当な範囲の指摘や指示はモラハラに該当するわけではありませんが、明らかに過剰な指摘や叱責が何度も続いたり、立場を利用して嫌がらせをしてくる場合はモラハラと認識されます。
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もし、モラハラをされた際には、適切な対処をすることが重要になります。モラハラの加害者に対して直接やめるように言ったとしても、モラハラが止まる保証はありません。そもそも、加害者にやめてほしいと伝えられるほどの勇気がある人は、モラハラの被害者になる可能性は低いでしょう。
したがって、モラハラに限らずハラスメントの被害に遭った際のために、何をするべきかを知っておくべきです。
モラハラをされた際の具体的な対処法が下記の5つです。
- 何を言われたのか録音する
- 何をされたのかを日記に記録する
- SNSやメッセージのデータを保存する
- 窓口や上司に相談する
- 法的な手段をとる
それでは1つずつ解説していきます。
何を言われたのか録音する
まず、ハラスメント被害で重要なことは、どのような被害を受けたのかを証明する証拠集めです。
モラハラでは悪口や嫌味を言われることがあるため、その際にICレコーダーやスマートフォンの録音機能を使って、その内容を記録しておきましょう。
明確な証拠があれば、被害を訴えた際に加害者は「自分は何も知らない」とは言えなくなるでしょう。
何をされたのかを日記に記録する
無視や睨みつけられた際には録音や録画をすることは難しいため、そのような内容に関しては毎日日記に記録することが重要です。
記録の際は行間をあけずに毎日事細かに書いていけば、後々書き加えることが難しいため、捏造だと思われる可能性を減らせるため、証拠として信憑性が高まります。
SNSやメッセージのデータを保存する
SNSやLINE、メールなどでモラハラをしてくる際は、そのメッセージを保存したり証拠となる画面をスクリーンショットして残しておきましょう。
LINEなどは送信した後に相手がメッセージを取り消すことができるため、消される前に保存しておくのが望ましいです。
また、何度もしつこく電話をしてくる際は着信履歴が流れないうちにスクリーンショットをして、証拠として記録しておきます。
窓口や上司に相談する
モラハラを受けている際は、信用できる友人に相談してみても良いでしょう。
職場で被害に遭った際は、加害者の上司にあたる人に直接相談することも良いですが、それでも改善しない場合は、法務部や人事部に伝えます。
また、社内で解決しそうにない場合は、都道府県の労働局に相談するのがおすすめです。
法的な手段をとる
モラハラが度を越しているようであれば、侮辱や名誉毀損として損害賠償請求も視野に入れましょう。モラハラの加害者である本人だけではなく、会社に対して請求ができることもあります。
家庭で起きるモラハラでは、弁護士や法テラスに一度足を運んでみることをおすすめします。弁護士に相談すれば、早いうちに離婚を成立させられる可能性が高いです。
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まとめ モラハラが深刻なら…
ここまで、職場や家庭におけるモラハラの例や対処法を解説しました。
パワハラは職場に限定されるものですが、モラハラに関しては職場に限らず家庭でも起こりうるものです。どちらにせよ、モラハラの被害に遭った際は放っておかず、適切な対処をしていくことが重要になります。
もし、深刻な状況であれば弁護士にサポートしてもらう必要があるでしょう。
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