突然ですが、以下のような疑問を感じてないでしょうか?
- 「リーダーシップってなんだろう?」
- 「マネジメントとはどのように違うの?」
- 「リーダーに求められる素質はなに?」
リーダーシップは部下を引っ張り、組織の目標を実現するために欠かせない力です。さらに環境の変化が激しい近年では、一部の人だけに求められる能力ではなく、組織のメンバー全員にこの能力が必要だとされています。
本記事では、リーダーシップについて基本的な知識から、必要性、必要なスキルを身につける方法を解説していきます。
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リーダーシップとは?
よく「リーダーが重要」や「メンバーを統率できる人材が必要」といったことを耳にしますが、リーダーシップとは実際にはどのようなものでしょうか?
一言で表すなら「統率力」や「指導力」となり、組織やチームを率いてビジネスを効率的に進めていくのに必要不可欠な素質です。
そして、基本的なポイントは下記の3つです。
- 目標を達成するための方向性を決める
- 目標を効率的に達成するためにメンバーのモチベーションを維持・向上させる
- 目標達成までに生じるトラブルに対処する
会社や組織においてはリーダーとなる人物の行動は、メンバーの模範となるので、メンバーに良い影響を与えるためにもリーダーは的確な行動をとる必要があります。
部下を統率し指導するには、目標を実現するためにチームを統率する能力や、メンバーのパフォーマンスを最大限に引き出す能力、課題や問題を解決する能力などのスキルが求められます。
組織力として成長するならリーダーシップは欠かせない
組織は、人と人とが協力することで個人では実現できないことを達成するために存在します。ですが、リーダーが部下を統率し引っ張っていかなければチームはまとまらず、大きな成果もあげられません。
したがって、リーダーはメンバーに対してそれぞれがどのような役割があり、何をすればいいのかを明確にし、メンバーが積極的に業務に取り掛かることができるように指導する必要があります。
リーダーシップはリーダー以外も求められる素質
チームのリーダーや企業の経営者など実際に組織を引っ張っていく人物だけがその能力を身につければ良いと考えている人が少なくありません。
しかし、昨今では経営者や上司、管理職のみならず、組織やチームに属しているならば一般社員であろうと欠かせない能力だと考えられています。
なぜなら、近年は環境の変化が激しく、ビジネスに関わる要素も複雑で先の読めない「VUCAの時代」となったからです。このような環境のなかで企業が生き残るためには、従業員一人ひとりが自発的かつ積極的に行動し、組織として成長していくことが重要になります。
リーダーシップを構成する3つの要素
これまでたくさんの学者や研究者たちが言及していますが、ここでは「経営の神様」と呼ばれた経営学者、ピーター・ドラッカー氏の考え方を見ていきましょう。ピーター・ドラッカーはリーダーシップの要素として以下の3点を挙げています。
- 仕事
- 責任
- 信頼
それでは1つずつ見ていきましょう。
仕事
あなたは「リーダー」と聞いてどのような人物を想像するでしょうか? もしかしたら、スティーブ・ジョブズのような天才でカリスマ的なリーダーを思い浮かべたかもしれません。
しかし、ピーター・ドラッカーによると「リーダーシップは生まれ持っての才能や先天的な能力によるものではなく、仕事である」と喝破しました。つまり、才能や性格に左右されるものではなく、仕事として考え、実践していくことであるとされています。
責任
リーダーと言うと地位の高い役職や権力のある役職を想像するかもしれませんが、これもドラッカー氏は否定しています。ドラッカー氏はリーダーシップを、権力や地位の高さなどではなく、「責任」だと考えました。
リーダーは自分の偉さをメンバーに見せつけるのではなく、メンバーを観察し適切な指導をもとに良い行動を促し、失敗してしまった際にはその責任を負わなければなりません。
信頼
そして、構成する3つ目の要素は「ついてきてくれる人がいること」を挙げています。実際にメンバーが自分についてきてくれなければ、それはリーダーとは言えません。
そしてドラッカー氏は、メンバーがただ言うことを聞くのではなく、メンバーに「信頼」されている必要があると考えています。
したがって、カリスマ的な方法でメンバーを動かしていたとしても、それはリーダーシップを発揮しているとは言えないでしょう。実際にドラッカー氏は「カリスマ性は扇動的資質でしかない」と指摘しています。
リーダーはしっかりとメンバーを統率し方向性を決めて、責任を負うといった実際の働きぶりによって、メンバーからの信頼を獲得する必要があるのです。
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古代ギリシャの哲学者は「リーダーシップ」をどう考えたのかマネジメントとリーダーシップは同じではない
リーダーシップの話題になると、「マネジメントとはどのように違うの?」と疑問を抱く人がいるのではないでしょうか。この2つは混同されがちな概念であるため、両者の違いについて解説していきます。
リーダーシップは組織が掲げたビジョンへとメンバーを引っ張っていく力を指しており、マネジメントは、一般的には目標達成を目指してメンバーや部下を管理していくことを指しています。
例えば、森を切り開いていくことが目標であれば、リーダーの仕事としては以下のようなことを考えることが挙げられます。
- 「どの方向に木を切って進んでいくべきか?」
- 「どうすればもっと効率的に切り開いていけるか?」
- 「チームの結束力を高めるにはどうすればいいか?」
一方で、マネジメントを行うマネージャーは、下記のようなことを考えるのが仕事になります。
- 「仕事ができるメンバーは誰か?」
- 「木を切るペースはどのくらいなら目標を達成できるのか?」
- 「リーダーが示した目標を達成するには、どのように木を切るのが良いか?」
このように、リーダーシップはチームが進むべき方向性を示し、マネジメントではリーダーが示した目標を達成するために最適な方法を考えたり、目標達成のためにメンバーを管理します。
つまり、リーダーは「戦略」を示し、マネージャーは「戦術」を決めるのです。
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リーダーシップが必要な理由とは?
冒頭でも解説したように、昨今ではリーダーのみならず誰もがリーダーのように主体的かつ積極的に動くことが大切になってきています。その背景には、環境が変化するスピードが上がっていることや、新型コロナウイルスや働き方改革などの社会的制約の増大などがあります。
さらに、現代はダイバーシティ(多様性)が推進されていることもあり、多様な価値観を認めることが求められているため、1人のリーダーが多様な価値観を持ったメンバーを統率することの難易度があがっています。
1人のリーダーがメンバーをまとめあげても、その結果、メンバーの個性や強みが抑制されてしまうこともあるのです。
したがって、多様な価値観を持つメンバーの能力やスキルを組織の原動力として利用するためには、メンバーの一人ひとりが持つ個性や強みを把握し、理解して部下をまとめられる人材が欠かせません。
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【動画編】リーダーシップの種類6タイプとそれぞれの特徴リーダーシップで必要となる資質
実際に、ビジネスを進めていくなかでリーダーシップが欠かせない場合は、どのような能力や資質がもとめられるのでしょうか?
ここでは、リーダーシップとして最適な人が持つ下記のような資質や能力を見ていきます。
- コミュニケーション能力
- 実践する力
- 信頼される力
- 責任を全うする力
それでは1つずつ解説していきます。
コミュニケーション能力
リーダーの仕事は、つまるところ「メンバーを動かすこと」にあります。つまり、人の心や気持ちを読み取り、どのようにすればその人が気持ちよく行動してくれるのかを考えられるコミュニケーション能力が求められます。
大切なことは、自分が求める行動をメンバーが実際にとっていることです。「なんかリーダーから言われたからとりあえずやっておこう」と思われてしまっては、メンバーの行動が本質的に変わることはありません。
リーダーには、自分の言動により、望ましい行動変容をメンバーに起こさせる力が必要です。
実践する力
リーダーとなる人物は、どのメンバーよりも先をいき、常に動いているイメージがありませんか? 行動することを恐れず、どんどん実践していく姿はメンバーにもよい影響をもたらし、信頼を得ることができます。
しかし一方で、部下の方がよく働いているのにいつも動かない上司は、部下からするとどのように感じるでしょうか? おそらく「この上司についていきたい」とは思わないでしょう。
リーダーという立場になると人に指示をする機会が増えることで、メンバーを手足のように扱ってしまうことがあります。しかし、これでは信頼関係を壊してしまうため、メンバーに「この人の支えになろう」という気持ちが生じるほど、自分が率先して動くことが重要です。
信頼される力
リーダーとメンバーの間には信頼関係が必要不可欠です。
どれだけ優れた能力を持ったリーダーだとしても、信頼できないような人間にはついていきたいと思えません。
メンバーから信頼されるためには、日常的な行動が重要な意味を持ちます。約束を守る、誰が相手でも同じ態度で接する、まず自分で動く、責任を持って仕事に取り組んでいる…などなど、こういった些細なことや態度を、常にメンバーから見られていることを忘れずに、意識することが重要です。
もし、個人的な感情や考えをもとにメンバーに対して不平等な扱いや、正当な評価を下さないのであれば、メンバーはリーダーのことを信じられません。リーダーにとって、メンバーが気持ちよく働けるようにするためにも、健全な関係を構築することが求められます。
責任を全うする力
責任感のないリーダーはリーダーとして不適格だといえます。
難しいと思える仕事であろうとリーダーであれば責任をもって果敢に挑み、トラブルや問題が生じれば責任を持って対処すること。それがリーダーとしての務めです。チームとして高い目標を達成する過程においては、何かしらの問題やトラブルは必ず生じます。
そこで対応に失敗したり、上司が責任をとらなければならなくなったとしても、誠意を持って問題に対処しようとする気概は持ち合わせておかなければなりません。
しかし、責任感のないリーダーであれば難しい問題やトラブルから逃げたり、「自分だけ失敗しなければいい」と考えてメンバーの仕事に無関心になってしまいます。
リーダーシップとしてのスキルを獲得する方法
ピーター・ドラッカー氏はリーダーシップは生まれ持っての才能ではなく「仕事」であると考えました。つまり、リーダーシップとしてのスキルは努力次第で獲得できるものなのです。
ここでは、リーダーシップとして必要な能力を身につける、下記の方法を解説していきます。
- まずは自分から信頼する
- プライベートで人との関係をつくる
それでは1つずつ解説していきます。
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有事に求められるリーダー像 リーダーシップが引き出す意外なモチベーションとはまずは自分から信頼する
リーダーシップに必要な能力として「メンバーに信頼される力」を挙げましたが、まずメンバーに信用してもらうために自分からメンバーを信用することが重要です。
メンバーに対して細かくあれこれと指示をして、仕事の最中にも口出しをすると、メンバーはリーダーに信用されていないと感じます。したがって、まずはリーダーがメンバーを信頼し、その証として仕事を任せてみると良いでしょう。
プライベートで人との関係をつくる
リーダーシップにはコミュニケーション能力が重要です。会社のなかで一緒に働いている顔なじみのメンバーとだけ関わっていても、コミュニケーション能力は鍛えられません。なぜなら、相手は自分の価値観や考え、性格などを知っていて自分も相手のことをよく知っているからです。
そのような間柄では頭を使ってコミュニケーションをとる機会が減るため、コミュニケーション能力が鍛えられません。
だからこそ、相手のことをよく考えて接する必要のある、プライベートでの人間関係をつくることを心がけましょう。
まとめ
ここまでリーダーシップの重要性や必要なスキルを身につける方法を解説してきました。
リーダーシップは管理職や上司、経営者にだけ求められる能力ではありません。組織力の強化には、従業員の一人ひとりがリーダーシップを発揮していく必要があります。
しかし、リーダーシップは一朝一夕で身につけられるものでもないため、従業員のリーダーシップスキルを育てるなら、早めに手を付けておくこと、もしくは人材を採用する際には可能な限りリーダーシップを発揮できる人材を見抜いて採用することが重要です。
理想的な組織にするためにはトップダウンで部下を動かすのではなく、部下が自発的に動いてくれるようにしなければなりません。そのためにも、リーダーシップを発揮して部下の個性や気持ちを尊重し、パフォーマンスを最大限発揮できるようにしていくことが求められます。
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