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カンパニー型組織とは?メリットデメリットや事業部制との違い、運営の注意点を解説

近年、注目を集めている「カンパニー型組織」という組織形態をご存知でしょうか。

事業をカンパニー=1つの会社のように扱うことで、迅速な意思決定を可能にする組織形態のことを指し、環境の変化に対して臨機応変な対応が可能というのが、注目の理由です。

しかし、メリットだけではなくデメリットもあるため、慎重に運営をしなければなりません。

本記事ではカンパニー型組織の基本的な知識とメリット・デメリット、そして運営する際に注意するべきポイントを解説していきます。

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カンパニー型組織とは

カンパニー型組織は、事業一つひとつを「カンパニー」という括りで社内分社化する組織構造であり、「社内カンパニー制」や「カンパニー制組織」と呼ばれることもあります。独立採算制をとっており、執行委員なども設置され、大きな権限を委譲されています。

このような構成にすることで、組織全体の経営方針を決めたり、戦略の策定をする機能を本社部門に集約することができ、カンパニーは事業と戦略遂行に集中できるようになります。

戦略を策定するところと、戦略を遂行するところ(カンパニー)を分けることで、事業単位の戦略よりもさらに大きな視点で、組織が成長できる戦略が立案可能になるのです。

日本では、SONYが1990年代にカンパニー型組織を取り入れ、各カンパニーに権限を委譲。事業の責任者は1つの会社を経営していくような責任を負って経営するというスタイルになりました。

その後、日本でも少しずつ採用する企業が増え、各事業部に大きな権限が与えられるため、迅速な意思決定と戦略の実行が可能となるとともに戦略の自由度が増し、事業部の買収や売却もスピード感を持って行われるようになりました。

しかしその一方で、事業部、つまりカンパニー間での交流が減るため、新しいアイデアが生まれにくいことや、経営資源を適切に振り分けるのが困難になるという点が課題です。

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カンパニー型組織が採用される理由

アメリカで始まり、日本ではSONYが1994年に採用したことで注目を集めたカンパニー型組織。なぜ大企業はこの構造にするのでしょうか?

カンパニー型組織を取り入れる前のSONYは事業部制を採用していましたが、創業してから初めての赤字になったため、カンパニー型組織を採用。その結果、業績の改善に成功したことを受け、さらに注目を集めて多くの企業に広まっていったという背景があります。

また、それまで主流だった事業部制組織の問題解消につながるというのも大きなポイントでした。

事業部制組織は収益の強化を目指す組織形態で、カンパニー型組織同様、事業部に対して権限が渡されていますが、その権限はカンパニー型組織ほど大きくはなく、経営に関わる大きな意思決定は事業部だけでは行えなかったのです。また、人事権もなく、収益の強化という目的と矛盾が残る組織形態でした。

一方で、カンパニー型組織では独立採算制をとっているうえに、経営に関わるように大きな決定も事業単体で可能で、経営スピードが事業部制組織よりも速くなります。その結果、収益の強化が達成できて、環境の変化に対して臨機応変な対応が可能な組織形態として、注目を集めるに至ったのです。

カンパニー型組織と似ている他の組織形態との違い

組織形態にはいくつも種類があり、どれもメリットがあればデメリットも存在します。そのなかから自社に最適な形態を用いることで、より良い組織にできるはずです。

下記の2つの形態との違いを見ていきましょう。

  • 事業部制組織
  • 持ち株会社

それでは1つずつ解説していきます。

事業部制組織

事業部制組織はカンパニー型組織とよく似ており、どちらも収益の強化が目的です。事業部制では事業や地域ごとに部門をつくり、事業に必要な基本的な機能を持つことになります。

事業ごとに部門がわけられ、各々に権限が委譲させられることや、法的には同一の組織であるという点は共通しています。しかし、収益の強化を目指す組織形態とはいえ、全ての権利があるわけではありません。

まず、両者の最も大きな違いは、「独立採算制をとっているかかどうか」にあります。独立採算制なのはカンパニー型組織だけで、事業部制の場合は、経営に関わるような大きな意思決定や人事に関することは事業部だけで決めることができません。そこには必ず組織全体や本社部門の意思が介入してきます。

したがって、カンパニー型組織と比べると、経営スピードが遅くなります。

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持ち株会社

カンパニー型組織では、カンパニーは独立した会社と同じように扱われますが、実際には同じ法人として扱われることになります。しかし、法的にも別の法人として扱われるのが持ち株会社で、ホールディングス制(Holding Company)と呼ばれることもあります。

持ち株会社は、事業に直接的に関わるような経営はせず、株式をもつことで組織や事業をコントロールする形態です。国内では戦後しばらく持ち株会社はできませんでしたが、1997年に法律が変わり、設立できるようになりました。

カンパニー型組織をとっている企業でも、さらに自由度の高い経営や戦略を実現するために、持ち株会社に変える事例は少なくありません。また、持ち株会社にするために、その準備としてカンパニー制に変更する会社も増えつつあります。

カンパニー型組織を導入するメリット

カンパニー型組織を導入するメリットが下記の4つです。

  • スピーディーな事業運営
  • 全体を俯瞰できる人材を育てられる
  • 責任の所在をハッキリさせられる
  • 競争による成長につながる

それでは1つずつ解説していきます。

スピーディーな事業運営

組織の規模が大きくなってくると、どうしても意思決定や経営判断のスピードが遅くなり、環境が変わった際に臨機応変な対応が難しくなってきます。

しかし、カンパニー型組織では独立採算制をとっており、それぞれに必要な権限が移譲されています。したがって、本社の判断を待つ必要がないため、スピーディーな事業運営をすることができるでしょう。

現代は市場や環境の変化が激しく、すぐに対応しなければライバルに追い抜かれてしまいます。そんななかで迅速に対応できることは、収益強化につながります。

全体を俯瞰できる人材を育てられる

カンパニーは独立した存在として扱われ、事業の責任者は1つの企業を経営するのと同じように仕事を進めていく必要があります。つまり、長期的な戦略の立案や投資に関する決定などをしていくことが求められるため、カンパニー型組織では、全体を俯瞰して組織を運営できる人材を育成可能というメリットがあるのです。

組織を担う人材がいなければ、組織が長く存続することはできません。また、経営者の視点を持てるようになれば、通常の業務をするうえでも役立ちます。

経営視点を持つ人材が増えるほど、組織全体の成長につながるでしょう。

責任の所在をハッキリさせられる

営業やマーケティングといった機能ごとに部署を構成する「機能別組織」では、経営に関する判断は基本的に経営者が行うため、組織の統制がとりやすいというメリットがあります。しかしその一方で、責任の所在が不明瞭になる点がデメリットです。

そこで、カンパニー型組織であれば責任の所在をハッキリさせられます。なぜなら、カンパニー型組織では組織図が単純になるうえに、複数の事業で責任者をする従業員がほとんどいないからです。

さらに、これにより事業の責任者は自分の業務に集中できるというメリットも生じます。

競争による成長につながる

カンパニーはそれぞれ独立した企業のように扱われるため、他のカンパニーと程よい緊張感を持って切磋琢磨できる関係にあります。

これにより、それぞれが競争することで、組織全体の成長につながります。

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カンパニー型組織を導入するデメリット

カンパニー型組織にはいくつものメリットがありますが、一方で導入することで生じるデメリットもあるので注意しましょう。そのデメリットが下記の3つです。

  • 組織内のコミュニケーションが減る
  • 重複により経営資源のムダが生じる
  • 隠蔽体質の傾向が高まるリスク

それでは1つずつ解説していきます。

組織内のコミュニケーションが減る

カンパニーはそれぞれが1つの企業として扱われながら運営されていくため、何も対策をしなければ事業間のコミュニケーションが減ってしまいます。すると、利益につながるような情報や技術などが組織内で共有されなくなり、経営資源の有効活用ができなくなってしまいます。

また、複数の事業を行う組織では、事業同士の交流によるシナジー効果が本来得られるはずですが、コミュニケーションが減ることでこれもなくなります。さらに、カンパニーと本社との関係も希薄になることもデメリットといえるでしょう。

重複により経営資源のムダが生じる

企業には、事業運営に必要な経理や人事といった機能があります。しかし、本来は本社で共有されている機能が、各カンパニーに存在することになるため、機能が重複してしまいます。この結果、経営資源のムダやコストの増大につながるのです。

対して、機能別組織では各機能は1つずつしか存在しないため、効率的な運営ができます。

隠蔽体質の傾向が高まるリスク

各カンパニーに対して大きな権限が委譲されることはメリットですが、一方で権力を持ちすぎることによるデメリットも生じます。それは、カンパニーが利益を追求しすぎるがあまり、会計で不正を行ったり、都合の悪いことを隠蔽するといったリスクが高まることです。

カンパニー型組織にする際に注意するべきポイント

カンパニー型組織に変更するのであれば、組織のかたちを大きく変えることになるため、慎重に運営していかなければなりません。特に、今までの組織形態に慣れていた従業員からすると、反発や困惑を招くことになります。

したがって、カンパニー制で失敗しないための注意点を抑えておくべきでしょう。カンパニー型組織にする際に注意するべきポイントが下記の3つです。

  • カンパニー間のコミュニケーションを促す
  • 人材や評価方法の適切な設定
  • 適切な人材マネジメントや評価方法の設定

それでは1つずつ解説していきます。

カンパニー間のコミュニケーションを促す

上記で解説したように、カンパニー型組織ではカンパニー間のコミュニケーションが減ることがデメリットとなります。カンパニーが成長していくほど、内部だけで業務を遂行できるようになるため、他の組織との交流が失われていくのです。

これはシナジー効果の低減につながり、結果的に組織力が低下してしまいます。したがって、こういったことを把握した上で経営したり、シナジー効果が生まれやすいような仕組みやシステムを取り入ることが重要です。

適切な人材マネジメントや評価方法の設定

カンパニー型組織では、事業運営だけでなく人事も独立していますが、業績への評価がどのような基準になっているのかは、組織を通して明らかにしておかなければなりません。もし、評価基準が組織のなかでバラバラであれば、従業員のなかに不満をもつ者が現れます。

したがって、各カンパニーで異なる事業を展開している場合でも、誰もが納得できるように適切な設定をしておきましょう。一つの組織の中にいくつも会社があるカンパニー制では、特定のカンパニーだけ有利な評価を受けていたり、基準が異なっているとモチベーションが下がってしまいます。

カンパニー間で適切な競争関係を育むためにも、誰もが納得できる評価にしなければなりません。

本社は適切な距離感を保つ

カンパニーと本社との関係が希薄になるデメリットがあると解説しましたが、かといって本社とカンパニーの距離が近すぎても良くありません。なぜなら、カンパニーは1つの独立した会社として扱わなければならず、本社が必要以上に口出しをすることは憚られるためです。

したがって、本社とカンパニーとの間には適切な距離感を保つ必要があります。例えば、「不採算事業は売却する可能性もある」という緊張感がある関係をもつことで、カンパニーは結果を出すために努力するようになるでしょう。

さらに、カンパニーには大きな権力があるうえに、利益追求や結果至上主義になることが多くなります。その結果、不正や隠蔽などのリスクがあるため、組織はコーポレート・ガバナンスの強化を実行していくことが重要です。

とはいえ、カンパニーを見張るだけの関係ではなく、カンパニーがどのように経営されているかを通して、事業の責任者を見守っていくことも必要になります。

まとめ

ビジネスの環境は今後もさらに複雑化し、変化するスピードも速くなっていくことでしょう。

環境の変化に迅速に対応できるカンパニー型組織は、組織の成長と生き残りに有効ですが、本社にカンパニー制をうまく使いこなせる実力がなければ、運営することは難しいでしょう。

「カンパニー制にすれば全て解決」といった魔法のようなものではないため、導入する際はメリットやデメリットを把握した上で、自社に最適な組織のかたちを模索していくことが重要です。

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