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付加価値とは?正しい計算方法と粗付加価値額や労働生産性との関係をわかりやすく解説!

経営者

付加価値ってどういう意味なんだろう?
本記事でていねいに付加価値について説明します。

専門家

付加価値とは、ビジネスにおいて企業活動によって独自に付けられた価値を意味します。

付加価値は消費者が製品やサービスを選ぶ上での決め手になる部分です。したがって競争を生き残り成長するためには、付加価値についての正しい知識をつけるとともに、付加価値を高めるための対策が求められます。

本記事では付加価値の意味や改善方法について解説します。

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付加価値とは会社が新たに加えた価値のこと

付加価値とは、製品やサービスを展開する上で会社が新たに加えた価値です。

様々な製品・サービスが溢れている現代は、消費者にとって「価値の有無、大小」が選ぶ際の大きな要素となります。したがって、企業が選ばれる存在であり続けるには付加価値が重要なのです。

また、付加価値はGDP(国内総生産)とも深い関係があります。実はGDPは具体的には「ある国で経済活動により生み出された付加価値の総額」を意味しており、付加価値が高いほど生産性が高いと考えられているのです。

付加価値はなんの役に立つのか

付加価値という言葉や考え方は以下2つの場面で利用されるケースが多いです。

  • 非付加価値業務の削減
  • 業績比較

利益増大には経費削減が効果的です。しかし付加価値を生み出す業務にかかる経費まで削ってしまうと、それに伴って付加価値まで削れてしまう恐れがあります。

適切な経費削減のためには「この経費は付加価値を生む上で必要か」という観点から検討し、その結果として非付加価値業務にかかる経費の絞り込みが必要です。

また付加価値は業績比較でも役立ちます。各事業年度ごとの利益だけでは企業が新たに加えた利益についての比較はできません。各事業年度において生み出された価値、すなわち付加価値の比較も業績比較において重要です。

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付加価値の2つの計算方法

付加価値の計算方式は2つあります。

  • 積上法(日銀方式)
  • 控除法(中小企業方式)

付加価値の計算方法によって、計算に使う経費の種類が異なります。付加価値に対する考え方も違うため、それぞれの方法について把握した上での計算が必要です。

付加価値の計算方法2つについてはこの後それぞれ解説します。

専門家

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積上法:日銀方式

積上法は日銀方式とも呼ばれる計算方法です。以下の式によって算出されます。

付加価値=経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課

積上法は「付加価値は企業の様々な活動が重なって積み上げられる」という考え方による計算方法です。したがって利益や費用の合計が付加価値として算出されます。

付加価値といえば一般的に日銀方式の計算方法を示します。

専門家

経営者

それぞれの科目の意味を教えて欲しいな。

積上法を使って付加価値を正確に算出するためには、計算で使用される費用について押さえる必要があります。それぞれについて具体的に解説します。

参考:りそなcollaborate | ResonaBank

人件費とは

人件費とは企業で発生した経費のうち、従業員の労働に関して発生した費用です。

具体的には以下のような費用が人件費に含まれます。

  • 給与・賃金・各種手当など
  • 賞与および賞与引当金
  • 販売費
  • 法定福利費(企業が負担する社会保険料や労働保険料)
  • 退職給付引当金など退職関連の費用
  • 慰安関連など福利厚生費

社員や従業員に対して直接支払われる費用だけでなく、社員などを雇う上で必要な法定福利費なども人件費に当てはまります。

会社が付加価値を生み出すには、社員などによる働きが必要不可欠です。

したがって積上法に人件費が含まれています。

専門家

賃借料とは

賃借料とは会社経営のために外部から動産を調達する際にかかる費用のことで、例えば以下が含まれます。

  • 外部から借りたパソコンレンタル料
  • コピー機のレンタル料

賃借料は、リース料という別科目で処理される場合もあります。

減価償却費とは

減価償却費とは固定資産の取得価額を耐用年数に応じて配分した費用です。

高額な固定資産は購入した年だけでなく、その後何年かにわたって使用し続けられます。しかし購入した年に取得価額を全額費用計上してしまうと、該当の固定資産による事業への影響が正しく反映されません。

固定資産によって収益が生まれたと正しく表すために、耐用年数に応じた費用配分、すなわち減価償却が必要です。

なお付加価値の計算においては、減価償却費を含める場合と含めない場合があります。それぞれのケースについて解説します。

専門家

粗付加価値:減価償却費を含める

粗付加価値は積上法において、減価償却費を含めて算出したものです。

減価償却費は他社から購入した資産の価値に関連する費用ですが、付加価値を生み出すためには様々な場面で固定資産の活用が必要とされます。材料費などと違って購入価値がそのまま売上に反映されるわけでもありません。

したがって固定資産を耐用年数に応じて費用配分した減価償却費は、付加価値計算に含めるべきという考え方があります。

粗付加価値はそのような考えに沿ったものです。

積上法の計算式として紹介した内容は、厳密に言うと粗付加価値の計算方法です。

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純付加価値:減価償却費を含めない

純付加価値は粗付加価値とは真逆で、減価償却を含めずに計算された付加価値です。

粗付加価値は「減価償却費は他社から購入した資産に関連する費用だが、購入価値がそのまま売上に反映されるわけではない。付加価値を生み出すために必要な費用なため、減価償却費を付加価値の計算に使う」という考え方によるものでした。

一方で純付加価値は、他社からの購入価値は一切排除するべきという考え方によるものです。したがって一般的な仕入れとは異なる性格とはいえ、他社からの購入価値に関する減価償却費は含めないべきと解釈されています。

金融費用とは

金融費用とは、資金調達において発生した費用を指します。具体例は以下の通りです。

  • 支払利息
  • 社債利息
  • 社債発行関連(社債発行費償却・社債発行差金償却)
  • 割引料(期日より早く債権が支払われた際の値引費用)

資金調達は事業展開、すなわち付加価値の生み出すために必要です。したがって資金調達に関連する費用は、付加価値に含まれます。

また社債発行に関連する償却費や債権回収における割引料といった費用も、資金調達関連となるため、金融費用に当てはまります。

経営者

割引料も含まれるんだね。

租税公課とは

租税公課とは税金および公的費用を意味する用語です。

企業経営のためには税金の支払いが必要な場面があります。したがって租税公課は付加価値を生み出し続ける上で必要と考えられる費用です。

租税公課に当てはまる支出の例を紹介します。

  • 印紙税
  • 登録免許税
  • 固定資産税
  • 事業税
  • 印鑑証明書発行手数料
  • 公共サービスに関する費用

なおすべての税金が租税公課に当てはまるわけではありません。たとえば法人税は経営に必要不可欠ですが、租税公課とは全く別の考え方によって処理されます。

租税公課に当てはまる費用については注意が必要です。

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控除法:中小企業庁方式

控除法とは中小企業庁方式とも呼ばれる計算方法です。控除法においては、以下の式によって付加価値が算出されます。

付加価値=売上高-外部購入価値

積上法では付加価値を生み出すための活動にかかった費用を足して計算しますが、控除法は売上から自社の活動ではない部分を控除して計算します。

外部購入価値の具体例は以下の通りです。

  • 仕入高(材料や買入部品など、製造に直接用いた費用)
  • 外注加工賃(自社ではなく外部の人間に支払った費用)
  • 消耗品費
  • 水道光熱費
積上法と控除法、それぞれの計算方法について正しく理解する必要があります

専門家

付加価値に関わる指標

メリット

付加価値は経営改善のための分析や業績比較など、様々な場面で活用されます。付加価値を上手く活用するには、付加価値に関わる指標についても把握が必要です。

付加価値との関わりが深い主な指標は以下の3つです。

  • 付加価値率
  • 限界利益率
  • 資本生産性分析

それぞれの指標について解説します。なお今回記載した内容は、中小企業実態基本調査速報と同じ計算方法・考え方を用いたものです。

参考:中小企業庁 | 令和2年中小企業実態基本調査速報(要旨) 18ページ(注1)など

付加価値率

付加価値率とは、売上高のうち付加価値の占める割合です。生産性の観点から分析する上で用いられる指標で、以下の式によって算出されます。

付加価値率=付加価値額÷売上高×100

付加価値率が高い企業ほど他社からの購入価値に依存しておらず、自社における加工度が高いです。

付加価値率は、製造業のように自社による生産や加工が実施される業種では高く、製品を仕入れて別の場所へ販売する卸売業では低い傾向が見られます。

参考:経済産業省企業活動基本調査速報 2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)6ページ

限界利益率

限界利益率とは売上高のうち、売上高から変動費を引いた利益である限界利益の占める割合です。変動費とは売上高に比例して変動する費用です。

限界利益率の計算式は以下の通りです。

限界利益率=限界利益 ÷ 売上高×100

変動費のうち大部分が外部購入価値に該当します。したがって付加価値率と限界利益率は近い数値になるケースが多いです。

とはいえ考え方や計算に使用される費用項目には相違があるため、混同しないよう区別する必要があります。

資本生産性分析

資本生産性とは資本の投下、すなわち機械など固定資産に対する設備投資によって生産された価値を表す数値です。

それを踏まえ、資本生産性分析は設備投資によって生み出された付加価値を算出する分析を意味します。資本生産性を算出する計算式は以下の通りです。

資本生産性=付加価値÷総資本×100

資本生産性が高いほど、設備投資が付加価値に大きく貢献しているということになります。

資本生産性分析は設備投資の成果が出ているか、投下した資本を十分に活用できているかを測る上で効果的な手法です。

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付加価値を高めるためには

経営者

付加価値はどうやって高めればいいんだろう?

企業が付加価値を高めるためには、適切な対策を取る必要があります。今回取り上げる方法は以下の3つです。

  • 他社との比較
  • 損益計算書の分解
  • 分配率の確認

それぞれの方法について意味や必要性、具体的な進め方を解説します。

①他社との比較

他社比較とは言葉通り、自社と他社の比較をする行為です。まったくの異業種ではなく、同業他社との比較が効果的です。

付加価値の算出ができたとしても、自社のデータのみでは高いか否かの判別ができません。しかし同業他社と比較をすれば、自社の生み出す付加価値の程度、ひいては自社の競争力を測れます。

ただし非上場企業は財務諸表を公開していないケースが多いため、具体的な付加価値の計算が難しいです。その場合は中小企業庁による「中小企業実態基本調査」などを活用し、業種における平均値を活用するのが効率的です。

②損益計算書を分解する

付加価値を計算するためには損益計算書を活用する必要があります。

損益計算書とは企業が出した損益を示す書類です。収益・費用・利益(赤字の場合は損失)が記載されており、勘定科目(金額の性質を意味するラベルのようなもの)ごとに分類されています。

付加価値は企業が生み出した価値を意味するため、収益や費用の額が記載された損益計算書を使えば分析できます。損益計算書を分解し、各項目を上手く使って算出しますが、その際には変動費と固定費に関する知識が必要です。

変動費と固定費それぞれの意味、勘定科目の例を紹介します。

変動費

変動費とは売上高の大きさに比例する費用です。製造業の場合、売上を上げるにはそのぶん製品も多く作らなければならないため、製造に必要な材料費なども大きくなります。

変動費に該当する費用の例を紹介します。

  • 仕入高
  • 外注化工賃
  • 販売にかかる手数料
  • 商品の配送料

なお変動費は事業内容によって違いがあります。

たとえば車両を使った移動販売業を営む場合、売上を出すためには車両の使用が必要です。したがってガソリン代は変動費になります。

一方で車両の使用頻度が売上と関係ない場合、ガソリン代は固定費としての性質が強くなります。

固定費

固定費は変動費の逆で、売上に関わらず一定額が発生する費用です。以下のような費用が該当します。

  • 工場や事務所などの地代家賃
  • 減価償却費
  • リースしている器具備品にかかるリース料
  • 税理士や社会保険労務士などに支払う報酬

なお、固定費は売上との連動性がない費用を意味し、必ずしも文字通りの「固定されている費用」とは限りません。地代家賃は新設や引っ越しなどが発生すれば変動しますが、売上高との直接的な関連性はありません。

固定という単語は入っていますが、常に一定で変動がない費用という意味ではなく、売上に影響されない費用を指す用語と認識しておきましょう。

③分配率を確認する

分配率とは付加価値のうち人件費の占める割合です。労働分配率と表現されるケースもあります。

人件費は経営において最も高額になりやすい費用です。大きすぎると経営を圧迫する恐れがあるため、付加価値に応じた適切な金額にする必要があります。

分配率の計算式は以下の通りです。

分配率=人件費÷付加価値×100

分配率が高すぎると、経営が厳しくなるリスクも高くなってしまいます。

ただし自社の数値だけでは判断できないため、同業他社との比較が必要です。また企業規模や利益額によっても違いがあるため注意しましょう。

まとめ:付加価値をうまく企業経営に活用しよう

付加価値は企業経営を進める上で大切な要素です。企業がどれほどの価値を生み出したか、今後も経営を続けるために必要な価値を生み出せたかを測る上で役立ちます。

付加価値を計算するためには式だけでなく、計算に使う費用の種類についても把握が必要です。また付加価値と関係が深い指標についても押さえておくと、付加価値をより有効活用できます。

付加価値を高めるための方法は、イメージに反して実は意外と簡単です。

付加価値をうまく企業経営に活用しましょう。

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