組織コンサルタントという職業柄、多くの社長とお会いします。
そして、そのほとんどが、業績が悪い、もしくは伸び悩んでいる、すなわち会社の経営状況に課題を抱えている社長様です。
そして、よくこんな言葉を耳にします。
「うちの業界は、いい人が集まらないから」
「うちレベルの会社に優秀な人材は来ないよ」
「うちの会社は、そもそもの人材の質が低いから、管理職の成り手がいないんだよ」
でも、実は社長のこの発言、いえ、この発言の裏にある他責の思考こそが、会社の成長を阻害している原因なのです。
目次
そのまま使える人材は、幻想。
まずは、残酷な現実について、お伝えします。
優秀な人材が、たまたま、あなたの会社の扉を叩き、入社する。
そして入社後、その優秀社員が自走して、あなたの会社を勝手に成長させてくれる。そんな夢みたいなことは滅多に起こりません。
というよりも、そんな他人頼みの採用方針がNGです。
いくら中途採用であっても、半年~9か月くらいは戦力として使えないということを、まずは念頭に置いて人材採用を進める。それが、採用における基本です。
そして、優秀な社員の入社を望むよりも、入社してから優秀な社員に変えていく。社員を『変える』ことこそが社長の仕事なのです。
優秀な人材って?
世の中には優秀なキャリアを持つ人が数多くいます。
『大手有名企業で事業部長をしていました』
『ベンチャー企業で営業責任者を務め、上場を経験しました』
『厳しい営業ノルマで有名な企業で営業成績において3年連続MVPを獲得しました』
中途採用でヘッドハンターから寄せられた職務経歴にワクワクした方も多いのではないでしょうか?
では、社長が求める優秀な人材とは、どのような人材でしょうか?
- 「即戦力となる人材」
- 「自社のカルチャーにフィットする人材」
- 「自社にないアイデアを持ち込んでくれる人材」
- 「新しいことに積極的に挑戦する人材」
- 「周りを巻き込んで、自走できる人材」
社長が求める優秀な人材、その特徴を言葉にすると様々です。
但し、一つ、社長が求める優秀な人材に共通することとして、間違いなく言えることがあります。
それは、「結果として、社長が求める成果を出せた人材」だということです。
社長がこれから雇う人材に求めていることは、過去のキャリアではなく、社長の会社における未来の成果であることは間違いないことですよね。
未来は、過去の延長線上にあるため、過去に優秀な実績を上げてきた人材、すなわち輝かしいキャリアを持つ人が、入社後も優秀な実績を上げる可能性は高いと言えるでしょう。
ですが、そもそも「社長が求める成果」が明らかにならない限り、採用した人が優秀な人材となり得ることは絶対にありません。
どんなに優秀なキャリアを持つ中途社員を採用したとしても、その人に何を求めているかを明確にしない限り、「結果として、社長が求める成果を出せた人材」となることはありえないのです。
その優秀さは、仕事をしてみないと分からないのでは?
社長が求める優秀な人材の定義が「結果として、社長が求める成果を出せた人材」であるとすれば、社長の会社に入社後でしか、優秀かどうかの判断は出来ません。
加えて、「結果として、社長が求める成果を出す」ためには、少なくとも3つの機能が社長(会社)の中で整理されている必要となります。その3つとは、以下の通りです。
- 求める目標(成果)が明確になっていること
- 目標に対する役割・責任・権限が明確になっていること
- 目標に対する達成度を評価する仕組みがあること
例えば、あなたの会社にとって優秀な営業系人材は、どのような人材かと言えば、社長(または上司)が設定した営業目標に対して、会社のルールや自らの権限の範囲内で、継続達成できている人材です。
この3つの機能があって初めて「結果として、社長が求める成果を出せた人材」かどうかが分かります。
つまり、結局のところ、採用後、現場に入れて仕事をさせてみた後でないと、採用した人材が社長の求める人材かどうかが分からないのです。
採用面談時、見るべき3つのポイント
『「結果として、社長が求める成果を出せた人材」が優秀な人材であることは分かった。加えて、それは、入社して働いてみてからでないと分からないことも分かった。
だからと言って、誰を雇っても、会社に3つの機能(目標、役割、評価)さえあれば優秀な社員になるわけではないだろう。』
このような反論があることは当然のことでしょう。
では、採用面談時、求職者について見るべきポイントは、どこになるのでしょうか。
それは以下の3つです。
- 他者評価を受け入れることが出来るか。
- これまで目標に向かって成果を追い求めてきた経験があるか。
- 最低限の業務理解能力があるか。
それぞれについて以下で見ていきましょう。
①:他者評価を受け入れることが出来るか
「結果として、社長が求める成果を出せた人材」が優秀な人材ですので、優秀な人材であるためには、社長(他者)の評価を素直に受け入れることが必要です。
「社長が言っていることも一理あるが、自分には自分のやり方があるので・・・」
「前の会社では、このやり方で実績を出してきた。今更やり方は変えられません。」
「自分がこの会社で実績を出せないのは、自分の周りにいる社員が無能だからです。」
いくら過去のキャリアが素晴らしい人材であっても、上のような発言がある限り、社長が求める成果を出すことは不可能です。
「自ら選んでこの会社に入社したからには、この会社のルールに合わせる必要がある。」
「社長が求める成果が出せていないとすれば、自分が変わらなければならない」
このように、現在の環境を認識し、不満を述べることなく、自ら積極的に新しい会社のスタイルに合わせていく。他者による評価を受け入れ、自らの責任として物事を捉え、行動を変化させていくことが出来るかどうかが、成果を出せる人材としてのポイントです。
②:これまで目標に向かって成果を追い求めてきた経験があるか。
繰り返しとなりますが、「結果として、社長が求める成果を出せた人材」が優秀な人材です。そのため、優秀な人材であるためには、社長が求める成果を出すことが必要となります。
「人手が足りない、時間もない、だから社長が求めることなどできません」
「社長が求めるレベルは高すぎる。達成することは不可能です。」
「今まで前例がない。そんな目標、社員も納得しませんよ。」
いくら過去のキャリアが素晴らしい人材であっても、現在のヒト・モノ・カネが足りない状況だと、上記のような言い訳で思考が停止してしまいがちです。
ただ、これらの不足がある状況から、目標に向かって成果を追い求めてきた経験がある人材であれば、話は別です。
これまで高い目標に向かって、成果を追い求めてきた経験があり、不可能だと思われていたことを乗り越えてきた経験があるか、面接の際に積極的に確認しましょう。
特に将来のリーダー人材を採用する際、重要なポイントとなります。
③:最低限の業務理解能力があるか
最後に必要なのは、最低限の業務理解能力です。
「結果として、社長が求める成果を出せた人材」が優秀な人材ですので、優秀な人材であるためには、当然ある程度の業務理解能力が必要となります。
社長が求める成果を出す上で、最低限必要な能力をどのように判定するのか。
企業によっては、適性テストを用いることもありますが、入社後、求める成果を出す上で、最低限必要な能力は何なのか、あらかじめ直属の上司となる現場担当者と打ち合わせ、明確な基準を設けておきましょう。これが、3つ目のポイントとなります。
また、忘れてはならないのは、①②③の順番で応募者をチェックすることです。
なぜなら、業務理解能力は入社後のマネジメントで高めることが可能ですが、他者評価を受け入れることが出来るかどうかは入社後のマネジメントで変えることがかなり難しいからです。
よくあるのは、業務処理能力が高さに惹かれて採用したスタッフが、上司の方針に異を唱えるばかりで機能しないといったケースです。これは、最も重要な①のポイントを無視して、②③のポイント、つまり過去の実績に惹かれて採用してしまった場合に発生します。
実際の採用現場では、申告な人手不足になってから採用を進めるケースも少なくありません。目先の忙しさに囚われ、業務処理能力に比重を置いてしまいがちですが、他者評価を受け入れることができる人材なのか、しっかりと確認するようにしましょう。
本当に肝心なのは採用後
採用するまでの道のりは遠いですよね。
求人募集を出し、書類とにらめっこし、多数の面接を行い、漸く採用が決まり、一安心と落ち着きたくなることでしょう。
しかし、ここまで「結果として、社長が求める成果を出す人材」を採用するためのポイントをお伝えしてきましたが、実は入社後の目標設定と評価基準、役割設定で成果を出す人材に『変える』ことはそれ以上に重要なのです。
もちろん、入社して直ぐに、社長が求める成果を出せる人材も中にはいます。
しかし、あくまでもそれはマイナーなケース。
そのため、伸びる人材を採用したうえで、社長(または上司)が入社した人材を優秀な人材に変えていくことが必要不可欠です。そして、その仕組みづくりをすることこそが、社長の役割です。
使える人材に『変える』3つのポイント
では、どうしたら優秀な人材に変えていく仕組みづくりができるのでしょうか。
そのためには、少なくとも3つのポイントが社長(会社)の中で整理されている必要となります。
- 求める目標(成果)が明確になっていること
- 目標に対する役割・責任・権限が明確になっていること
- 目標に対する達成度を評価する仕組みがあること
一方、上記①②③がないとどうなるか。
社長(会社)が求めていることが採用した人材に伝わらないままに、求める成果と実績の差分は認識されず、採用した人材が変わることはないのです。
こちらの詳細については、弊社のダウンロードコンテンツや、安藤の書籍「リーダーの仮面」をご覧ください。
さいごに
もし、人を変えることが出来ないなら、『優秀な人材が、たまたま、あなたの会社の扉を叩き、入社。入社後、その優秀社員が自走して、あなたの会社を勝手に成長させてくれる。』
そんな奇跡みたいな確率に会社の成長を賭けるか、社長が現場に出続けて、現状のままなんとなく事業を続けていくか、どちらかです。
私たち識学は、「目標設定、役割・責任・権限、評価基準」を明確にすることで、「社長が求める成果を出せる人材」を輩出する、再現性のある仕組みの構築方法をお伝えしています。
もし、「具体的にどのような目標設定、役割・責任・権限、評価基準を作ればよいのか」「それをどのように運用したらよいのか」など、詳しく知りたい方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度識学のコンサルタントにご相談ください。