いまやコンプライアンスよりも重要ともいわれる『リスクマネジメント』。
なぜリスクマネジメントがここまで注目されているのか、また、その具体的な実施方法はどのようなものなのかを把握していないことこそ、これからの企業経営において『最大のリスク』と言えるかもしれません。
この記事を読むことで、
- リスクマネジメントの基本や注目されている理由がわかる
- リスクマネジメントの具体的な方法がわかる
- リスクマネジメントと似ている言葉との違いがわかる
ようになります。
ぜひリスクマネジメントを適切に行い、健全な企業経営にお役立てください。
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目次
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、企業経営などにおいて発生しうるリスクを管理することです。また、リスクを回避する一連のプロセスを総称してリスクマネジメントと呼ぶこともあります。
企業経営においては企業価値を高めるために、事前に発生し得るリスクを算定することでリスクを最小にする必要があります。企業価値に損失を与えるリスクに対して事前に対策をとることで、企業価値を最大化するのです。
ビジネスを進めるうえではあらゆるリスクが付き物なので、それらを排除するリスクマネジメントこそが経営者に求められます。
リスクマネジメントが注目され始めた背景
昨今、リスクマネジメントは企業を経営するうえで注目を集めており、最近よく耳にするようになった「コンプライアンス」を超えて「リスクマネジメントの時代がくる」とまで言われています。その背景にはいくつか要因がありました。
その要因の一つとして挙げられるのが、保険業界での出来事です。20世紀初めに国際的な不況に陥った際、アメリカでコスト削減の必要性が高まった保険業界で多くのトラブルが生じ、保険管理体制を改めることが求められました。これがリスクマネジメントが注目されるきっかけと言われています。
これを受けて、それまでリスクマネジメントが暗黙的に行われてきた日本でも、リスクマネジメントに対する意識がより高まり、その体制を整えるようになってきました。例えば、民間企業でも環境リスクや不正リスクに力を入れてマネジメントをする企業も増えてきています。
さらに、リスクマネジメントを専門とする部署を配置する企業も多く見受けられるようになりました。
リスクマネジメントを実施する企業は増えている
リスクマネジメントを実施する企業が多いことは、日本の経営コンサルティング会社の「デロイトトーマツコンサルティング」の調査でも明らかになっています。
日本国内外の企業に対してリスクマネジメントプランを作成しているかどうかを調べたところ、国内本社では「策定している」と「一部策定している」が合わせて、89.5%も占めており、国内の子会社でも72.2%もの企業が策定していることが、この調査からわかっています。
このように、今日では日本企業のおよそ7~9割ほどが、リスクマネジメントを実践しているのです。
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リスクマネジメントの目的とは
リスクマネジメントの目的は、リスクを抑えることで企業経営を効率化することです。
これには、リスクを定量化して事前に策を講じることが有効です。特に、業務のアウトソーシング化が進んでいる現代においては、リスクを可視化することで事業・業務に携わる全ての人がリスクを把握できるようにする必要があります。
さまざまな業務フローにおいてどのようなリスクがあるのかを明確にすることで、ひとつひとつのリスクとそのマネジメント方法を認識することが可能になるのです。
リスクマネジメントは何故必要?
社会環境が目まぐるしく変化する現代において、あらゆるリスクが日増しに増えていることが、リスクマネジメントの必要性が高まる理由です。
リスクに直面する機会が増えるなか、生じうるリスクを管理するべく、企業経営においてリスクマネジメントを講じることは必要不可欠なのです。
企業が継続的に事業を行うためにも、経営者やマネージャーにとっては必須のスキルと言っても過言ではありません。
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リスクマネジメントの手法
リスクマネジメントの具体的なステップは下記の4ステップからなります。
- リスクを把握する
- リスクを分析する
- リスクを評価する
- リスクに対応する
リスクマネジメントは1度行えばいいというものではなく、継続的にリスクマネジメントの手法自体を見直さなければなりません。リスクマネジメントを行う際は、このようなプロセスを辿りながら業務フローを見直してみましょう。
それでは1つずつ解説していきます。
リスクを把握する
まずはじめにやるべきことは、どのようなリスクが存在するのかを特定し、把握することです。
具体的には、リスク管理部門だけではなく、社内の各部署において調査し、考えられるリスクを挙げていってもらいます。こうすることで様々な立場の人からリスクを教えてもらえるので、自分だけでは見つけられないリスクを発見することが可能です。
この段階では、とにかくリスクの可能性があれば1つでも多く列挙することがコツになります。なぜならリスクには様々な種類があり、一般的な業務をしている際に考えうる金銭的リスクや労務リスク以外にも、社会的なリスクや事故や災害のリスクといったものまで多岐にわたるからです。
この時、リストアップしたリスクに対して「これはあり得ないだろう」という姿勢で対応しないように注意しましょう。想定可能なリスクはどんな小さなものでも明らかにしなければ、リスクマネジメントの意味がありません。
リスクを分析する
次にリスクの分析ですが、ここではリストアップしたリスクの重大性や影響力、発生確率を明らかにしていきます。
リスクの影響力や生じる確率を明確にすることで、リストアップしたリスクを可視化でき、その重大さを理解しやすくなります。リスクとリスクを比較検討することで重大性や優先順位の評価が可能になる、重要な作業です。
しかし、実際に分析をしてみると影響力や発生する確率は、数値化することが容易ではないケースも多々あります。例えばリコール発生のリスクを考えると、死亡事故が生じた場合の社会的信頼をお金に換算することは不可能です。
リスクを評価する
リスクの分析が済んだら、次はリスクを評価するステップです。ここでは、分析を通して影響力や発生確率といった重大性が明らかになったリスクを比較検討し、対策を講じるための優先順位を評価していきます。
ステップ1でリストアップしたリスクは、小さなものから大きなものまで多々あるはずです。その大小あるリスクに対して対策を同時に講じることはできません。
したがって、分析結果をもとにリスクを評価し、影響力や発生確率が高いものを判別していきましょう。とはいえ、影響力と発生確率が高いリスクばかりに手をかけるのは賢明ではありません。
なぜなら、重大性が高くはないが低くもない複数のリスクに対してすぐに対策ができる場合は、重大性の高いリスク1つに対策を打つよりも高い効果を得られる可能性があるからです。
大切なのはリスクの大小だけではなく、どのリスクにいつ対応すればどれだけの効果があげられるのかを把握することになります。
リスクに対応する
そして最後のステップが、リスクに対して実際に対応していくことです。
このステップに関してはさらに深堀りする必要があるので、次項で詳しく解説していきます。
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リスク対応の2つのタイプ
リスクへの対応方法には「リスクコントロール」と「リスクファイナンシング」という2つのタイプが存在します。リスク対応の主な具体的方法はさらにそれぞれ2つずつの合計4つがあるため、少しややこしいかもしれません。
下記の表をみるとわかりやすいため、ご参考ください。
リスク対応のタイプ | リスク対応の具体的方法 |
リスクコントロール | ・リスクの回避
・リスクの低減 |
リスクファイナンシング | ・リスクの移転
・リスクの容認 |
リスクコントロールはリスクを軽減することで、リスクファイナンシングはリスクによる損失を補填するためのマネジメント手法です。
それでは、2つのタイプのについて詳しく解説していきます。
リスクコントロール
リスクコントロールとは、起こり得るリスクを把握してコントロールすることです。
具体的には、事業活動を進めるうえで起こり得るリスクの原因を特定し、発生確率、想定被害額などを定量化するなどが挙げられます。
リスクコントロールの具体的な方法には、リスクを避けるために「回避」することや起こり得るリスクを最小限に抑える「低減」があります。
リスクファイナンシング
リスクファイナンシングとは、発生してしまったリスクに対して金銭的な補填をすることです。
ビジネスにまつわるリスクをお金という定量的なもので示すことにより、リスクに対する金銭的な被害に備えることができます。
リスクファイナンシングの具体的な方法には、リスクを第三者に移転する「移転」とリスクを受け入れる「容認」の2種類があります。
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具体的なリスクへの対応方法4つ
リスク対応のタイプは先程簡単に解説しましたが、ここでさらに詳しく解説していきます。
リスク対応の具体的方法は下記の4つがあります。
- リスクの回避
- リスクの低減
- リスクの移転
- リスクの容認
それでは1つずつ確認していきましょう。
リスクの回避
リスクの回避とは、起こり得るリスクに備えるために関連する事業活動を停止することです。
事業活動を停止させることにより、リスク発生の回避が可能になります。しかし、事業によるリターンを得ることもなくなってしまうため注意しましょう。
パターンとしては、得られるリターンに対して発生し得るリスクが重大である場合、リスクの回避という選択をすることがあります。
リスクの低減
リスクの低減とは、起こり得るリスクを最小限に抑える対策のことです。
リスクに対して未然に防止策を立てること、リスクの源泉を一か所に集中させずに分散させることなどの対策があります。また、リスクが発生してしまった場合を想定し、被害を最小限にとどめる対策もリスクの軽減として必要です。
リスクの軽減を行うためには、事業活動を細分化すること、追加資源を投入することでリスクの発生を抑えるなどの対策が挙げられます。
リスクの移転
リスクの移転とは、第三者に金銭的な損失を移転させることになります。
リスクの移転として代表的なのが損害保険です。損害保険は相互扶助的な考えによるサービスであり、毎月・あるいは毎年一定の保険料を負担することで、将来の損害に対して保険金を受け取るという形でリスクに備えることができます。
リスクへの対策として損害保険の活用を検討するのは賢い選択と言えるでしょう。
リスクの容認
リスクの容認とは、リスクの発生を受け入れることです。
企業は全てのリスクに対して対策できるわけではありません。したがって、発生頻度が少なく影響力も小さいリスクであれば受け入れてしまうことも必要になります。
小さいリスクを容認するためにも、起こり得るリスクの評価・分析をして経営に大きな影響を与えるリスクとそうでないリスクを選別しておくことが重要です。
リスクへの対策を打つにはコストがかかるため、重要性の低いリスクに対して多額のコストをかけることのないようにしていきましょう。
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リスクマネジメントと混同されがちな言葉とその違い
「リスクマネジメント」という言葉には、下記のようにいくつか混同されがちな言葉があります。
- クライシスマネジメント
- 危機管理
- リスクヘッジ
- リスクアセスメント
これらの言葉は何がどのように違うのでしょうか?
それでは1つずつ解説していきます。
クライシスマネジメント
まずもっとも混同されがちな言葉が「クライシスマネジメント」です。
「クライシス」とは「既に起きた危機」を意味する言葉であるため、クライシスマネジメントとは「発生するであろう危機に対して管理をし、発生後の対処をすること」ということになります。
クライシスマネジメントでは、「危機的状況は必ず生じる」という前提のもと考えれており、危機が発生した後のことを考えます。一方で、リスクマネジメントは「危機的状況が生じないためにリスクを管理すること」を考えるのです。
危機管理
「危機管理」は、先程解説した「クライシスマネジメント」と「リスクマネジメント」の過程をあわせた概念の総称として使われます。
つまり、危機的状況が生じる「前」と「後」のリスクを管理することが「危機管理」です。
リスクヘッジ
「リスクヘッジ」は発生する可能性のあるリスクの重要度を検討して、前もってリスクが生じた時に対応できるシステムを用意しておくことです。
主に株式投資などの資産運用で用いられる言葉で、資産価値が減った時に備えて下落幅を最小限に留めるために、様々な種類の株式に分散して投資しておくことが挙げられます。
これもまた、考えられるリスクを「低減」するリスクマネジメントです。
リスクアセスメント
リスクアセスメントとは、職場に存在するリスクを特定し、除外・低減する方法を指します。
また、リスクの優先度設定や、リスクの見積もり、リスクを低減させる措置を決める一連の工程も意味し、事業者はその結果をもとに正しく労働災害防止対策を行う義務があります。
「アセスメント」とは「評価」を意味しており、リスクアセスメントではリスクの評価までとなっています。一方で、リスクマネジメントではリスクの特定から実際に対応する工程までが含まれています。
まとめ リスクマネジメントを的確に行おう
ビジネスにおけるリスクマネジメントの対応手法および実施手順を見ていきました。
企業経営にはリスクが付き物であり、あらゆるリスクを想定し、リスクマネジメントを的確に行うことが企業価値を最大限に高める重要なポイントといえるでしょう。
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