- Environment(環境)
- Society(社会)
- Governance(統治)
- サステナビリティ・アカウンティング・スタンダード・ボード(SASB)
- グローバル・レポーティング・イニシアチブ(GRI)
- 気候関連財務開示タスクフォース(TCFD)
目次
ESG投資とは?
ESG投資とは、ESG(Environmental, Social, and Governance)の要素や結果を考慮した投資銘柄の選定を行うことを言います。 ESG投資は、「社会的責任投資(social resuponsibility investing)」、「インパクト投資(impact investing)」、「持続可能な投資(sustainable investing)」と呼ばれることもあり、いずれも大きな意味の違いはありません。 ESG投資とは、特に、ESGの要素に対する企業の方針や業績を考慮して投資判断を行う手法です。ESG投資は経済だけではなく、環境や人間の福利にも配慮して投資を行う「持続可能な」投資方法として広く知られています。 <<あわせて読みたい>> SDGs(持続可能な開発目標)とは?17の目標や事例をわかりやすく解説!ESG投資は新しいものなのか?
ESG投資は、決して新しいものではありません。何百年も前から、宗教的・倫理的信念が投資判断に影響を与えています。イスラム教徒は、武器の禁止を含むシャリア法に準拠して投資を行っていました。今日では、企業の社会的責任(CSR)や社会の持続可能性が注目されていることから、市場への倫理的な参加に対する投資家の意識が高まっています。 2006年に責任投資原則(PRI)が発表されたことで、ESG投資は正式に投資の主流になったと言えるでしょう。2,000人以上の署名者がいるPRIは、ESG投資に関する公式な基準として広く知られています。 <<あわせて読みたい>> SDGsウォッシュとは?意味のない「SDGs」は止め、参考事例からできることを学ぼう社会的責任投資からESG投資へ
以前は、社会や環境に配慮した投資を「社会的責任投資」(SRI)と呼んでいました。社会的責任投資は、1920年代に米国で始まったとされています。これは、資産を持つ教会が信仰に基づいた基準で、アルコールやたばこ産業などの特定の投資対象をポートフォリオから除外したことがその始まりです。 また、第二次世界大戦後の公民権運動や反戦運動の高まりの中で、環境や社会的な目標に沿って企業の行動に影響を与えるために、SRIの主要な形態である株主擁護活動が行われるようになりました。 このような「責任投資」は、信仰に基づくものであれ、社会運動に関連するものであれ、経済的リターンよりも倫理的・道徳的配慮を重視するという点で、主流の投資家からはニッチな投資カテゴリーとみなされていたのです。環境(Environment)への配慮の時代へ
しかし、1990年代に入り、ESGが注目されるようになってからは、流れが変わっていきます。環境の分野では、1992年のリオ地球サミット、1996年の環境マネジメントの国際規格(ISO14001)、1997年の京都議定書の採択などがありました。 世界的に環境意識が高まり、有害化学物質やリサイクル、気候変動など、さまざまな環境問題に対応したルールや規制が導入された時代です。社会(society)への配慮の時代へ
移民が多く存在する欧州では、移民との完全統合に向けて、インクルージョン(包摂)が重要な社会問題として浮上していました。社会的一体性は中心的な社会的課題となり、人権の尊重はCSRの優先テーマとして浮上するようになります。 1990年代半ばからは、アパレル業界が国際的なサプライチェーンの中で児童労働などの人権侵害を行っていたことが問題視され、Gap Inc.などの不買運動が起きた時期でもありました。 新しいミレニアムの初期には、企業倫理やコンプライアンスの問題が話題になります。日本では雪印や日本ハムなどの大手企業による食品の安全性や偽装表示が相次ぎ、米国ではエンロン・スキャンダルが史上最大の監査の失敗として挙げられました。ESGの時代へ
このような社会情勢の変化のなかで企業経営者は、環境マネジメント、機会均等、ワークライフバランス、サプライチェーンにおける労働権などの社会的責任を、コストをかけた「社会貢献」だと考えていました。しかし今日では、ビジネスのリスクと機会を管理するために不可欠なものとして受け入れるようになっています。 それと同時に起こったことが、環境・社会的パフォーマンスを長期的な企業価値の指標として注目する機関投資家の増加です。また、上記のような不祥事の原因となった不健全な企業文化、不透明な意思決定、過剰な役員報酬といった、ガバナンスや透明性の問題をリスク要因として捉えるべきだという認識も広がるようになりました。ESGは現代のビジネスに不可欠な要素
つまり欧米の経営者の中には、社会貢献をビジネス上の追加コストと考えるのではなく、ESG方針をビジネスのリスクと機会の管理に不可欠なものと考える人が出てきたのです。 一方で、宗教や社会運動に基づく価値判断ではなく、事業リスクと事業機会の評価に基づく投資判断において、ESG基準の重要性を欧米の投資家が認識し始めました。 同時に、企業が強固なESG方針を追求するインセンティブを与えることで、産業や社会全体にポジティブな影響を与えることが、ESG投資には期待されています。 特に欧米の大手公的年金基金は長期投資を目的とし、社会的使命を担っていることから、ESG投資がパフォーマンスを向上させ、社会にポジティブな変化をもたらす可能性があると考えられました。そして2006年に「責任投資原則」が制定され、欧州を中心とした機関投資家の間でこの原則が急速に広まってきたのです。 <<あわせて読みたい>> カーボンニュートラルの企業の取り組み事例から未来を考えるESG投資の目的
ESG投資という言葉は、2006年に国連主導で策定されたグローバルなガイドラインである「責任投資原則」に端を発するものです。 すべての署名機関は投資判断を行う際に、財務データに加えて「EGS要素を組み込む」ことを誓約し、責任投資へのアプローチを忠実に表す詳細な公開情報を提供することが求められています。ESG要素を投資に組み込む
では、「ESG要素を組み込む」とは具体的にどういうことなのでしょうか? 基本的には、潜在的な投資先のESG方針を投資基準に含め、必要に応じて、より強力なESG方針を採用するよう投資先に働きかけることです。 ESGとは、環境、社会、コーポレート・ガバナンスに関する取り組みを指し、具体的には下記のような要素に関する取り組みが挙げられます。- 炭素排出量
- エネルギー効率
- 資源効率
- リサイクル
- 水資源
- 再生可能エネルギー
- 化学物質の管理
- 森林・海洋資源の保全
- 環境配慮型製品の製造・販売
- 職場の多様性
- サプライチェーンにおける労働条件
- 児童労働・強制労働
- 現代奴隷制